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【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!]【オリジナル】 [転載禁止]©2ch.net

1 :名無しになりきれ:2015/08/15(土) 16:28:03.71 0
【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!\【オリジナル】
http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1394972079/

2 :GM ◆N/wTSkX0q6 :2015/08/15(土) 16:31:55.71 0
過去スレ
1:『【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!【オリジナル】 』
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1304255444/
2:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!【オリジナル】  レス置き場
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1306687336/
3:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!V【オリジナル】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1312004178/
4:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!W【オリジナル】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1322488387/
5:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!X【オリジナル】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1331770988/
6:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!Y【オリジナル】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1342705887/
7:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!Z【オリジナル】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1356693809/
8:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン![【オリジナル】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1374415628/
9:【TRPG】遊撃左遷小隊レギオン!\【オリジナル】
http://kanae.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1394972079/


避難所
遊撃左遷小隊レギオン!【古巣】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/10454/1376802302/

まとめWiki
なな板TRPG広辞苑 - 遊撃左遷小隊レギオン!
http://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/483.html

3 :GM ◆N/wTSkX0q6 :2015/08/15(土) 16:32:24.70 0
【モトーレン→キリア】

モトーレンを下敷きにしながら聖女と『上司』はどうにかこうにか登攀を成功させ、地盤の裂け目から脱出した。
半透明な結界の向こうに貴人二名が這い出たのを確認して、組織人としてのモトーレンは安堵。
あとは、自分がどのようにして脱出するかだ。

(ってもまあ、難しいことじゃないんだけど)

幸い――如何なる理由にてか、地表一枚隔てた地盤は非常にもろくなっており、
風防結界と合わせて激突の衝撃の殆どを吸収してくれた。
飛行服にデフォルトでかけられた防御魔術も合わせれば、実質微損にまで抑えられている。
五体は当然満足に動くから這ってでも出られるし、何なら飛翔系の適当な術式で飛び出したって良い。
そうして十全に脱出を終えたら、次はこちらが反撃に出る番だ。

(聖女も無事に救出したし、これであの一課連中の殲滅をはばかるものは何もなし……!
 とっととライトウィングと合流して、絨毯爆撃で殺る!)

元老院からは、ヴァフティアの暴走さえ止められるなら多少の犠牲は構わないとさえ通達されている。
モトーレンとていたずらに民間の被害を増やすのはよしとしないが、しかしいまはなんといっても非常時だ。
人命さえ避けるなら、住宅街の一角が更地になるぐらいは許容されるだろう。

モトーレンは、護国十戦鬼。
『殲鬼』の鬼銘を賜った、本物の英雄である。
本来であれば――つまりはおりいった諸事情さえなければ、遊撃一課など比較にもならない程の手練なのだ。
むしろモトーレンを敵に回して、前述の『諸事情』を盾にこの段階まで生き残っているファミア達を褒めるべきだが閑話休題。
その枷を見事に解除し、解き放たれた『殲鬼』の本気の殲滅を前に一課は半刻と生き延びることはできないだろう。
あの半端な出来の魔族とて、彼女の敵ではない。

(だから……ああもう、早く行ってくださいってば!)

結界から這い出た聖女と『上司』が、なにやらその場でまごついている。
そこにいられると非常に邪魔だ。飛翔魔術なんて使おうものならふっ飛ばしてしまうかもしれない。
遊撃一課の接滅は元老院の悲願、あの上司とて早急にそれを達成することを望んでいるはずだ。

(……ってあれ?元老院じゃないならあの人は一体なんなの……?)

言うまでもなく遊撃課は一課も二課も元老院直属の組織だ。
課長というリーダーを据えてはいるが、組織図としての課員の上司とはすなわち元老院のみである。
しかし、現職の元老院のどの顔にも頭上の『上司』は一致しない。

「…………!?」

なにか、透明で硬質な薄膜のようなものが、モトーレンの中で少しづつ剥がれていくような感覚。
しかしそれを言語化するよりも先に、『上司』がこちらを振り向いた。
手に持っているのは、十字の意匠のあしらわれた短刀。
それが風防結界の表面へ突き立てられるのと同時、全ての薄膜が剥がれ落ちた。

「あっ――」

その認識を言葉にして吐き出すよりもはやく、結界に刺さった短刀『千年樹氷』の効果が発動する。
対象の時を強制的に進める遺貌骸装の力が、モトーレンに『結界を千年貼り続けた疲労』を叩き込む!
最早声を出すことすらままならない尋常ならざる虚脱感に、モトーレンは地割れの中で崩れ落ちる。

>「あー畜生、マジ重いわ。つか死ぬかと思ったわー。死んでないのが奇跡じゃないかこれ、ほんとにさぁ!」

『上司』だった者の軽薄な声が狭い空から降ってきたが、それを聞くことなくモトーレンは意識を失った。

4 :GM ◆N/wTSkX0q6 :2015/08/15(土) 16:33:07.95 0
【アノニマス→マテリア・ファミア】

>『――私はもう、私を貫き通せる。……あの人のように』

ファミアに対する盾としながらマテリアへ飛びかかる、その眼前。
周囲に転がっていたふた振りのバスタードソードが弾かれるようにして飛び、マテリアの両手に収まった。
その構え、アノニマスには見覚えがある!

>『双剣――』

突撃槍が双刃によって阻まれる。
またしても、今度はセフィリア=ガルブレイズの影がマテリアに重なって見える。

「誰かと思えば!列車でこの俺を袖にしくさったグラスリッパーかッ!あの時のことは今でも根に持っているぞ……!!」

槍を弾き飛ばされても、まだ己にはこの五体がある。
鉄塊に等しい甲冑姿で体当たりすれば中型までの魔物ならバラバラに撥ね飛ばせるのがブリガンダインだ。
いわんや、マテリアの矮躯!その想像図は語るべくもないッ!!

「何度でも言うぞマテリア!所詮誰かのパクリに過ぎん貴様の攻撃など――!」

>「あなたの言う通り……これは所詮、借り物の、偽物です。でも」

マテリアが更に動いた。
双剣の姿勢から、両腕に剣を抱えたまま、異なる構えへ。
アノニマスもよく知るとある従士の剣術が、そこへ重なった。

>「私が力を借りられるのは、私を助けてくれるのは、一人だけじゃない。だから――」

セフィリアの幻影の隣に、同じく幻影の姿が生み出された。
レクスト=リフレクティア。その血の体現する剣は――

>『――轟剣!!』

音のない剣の嵐がアノニマスを襲った。
無数の剣戟を叩き込む遺才剣術が、ふた振りの剣によって更に二倍の手数!
それはつまり!

「――遺才を合体させただとォォォォォッ!!?」

生み出される斬撃は、まさに銀閃の『壁』めいた圧倒的圧力!
さながらアノニマスは自ら切り株に突進して逸死した猪の如く真正面からの『打撃』を貫けない!!

「馬鹿な……魔族の肉体を媒介にして、異なる遺才を共存させるとは……!!」

面頬の頬っつらをガンガンぶっ叩かれながらアノニマスは驚嘆した。
血に宿るという特性上、遺才は1人に一種が大原則だ。
異なる遺才の持ち主同士が子を成したとしても、より強く継いだ方の遺才一種のみが発現する。
競合する魔族の力を身体の中で制御できるだけの力が人間にはないからだ。

だが、マテリアはそれを成した。
劣化複製とは言え、『魔族の強靭な肉体』という基礎能力のゴリ押しで完遂したのだ!
……否、おそらく成し遂げた理由はそれだけじゃあないだろう。

>『私は今でも人間で――決して孤独なんかじゃない。私は……人の強さを知っている』

マテリアの吐いた啖呵がリフレインする。
そう、彼女は"知っている"のだ。
この遺才の持ち主がどんな人間で、何を信念とし、持てる力をどう振るったか。
傍にいて、知ったからこそ、反発しない『力の合わせ方』を選びとることが出来る!

5 :GM ◆N/wTSkX0q6 :2015/08/15(土) 16:33:44.70 0
「だが!それがどうしたというのだマテリア!遺才を2つ重ねても、このアノニマスを砕くに至らんぞ!
 そしてこれで打ち止めだな?遺才は二重が限度だ――腕は二本しかないものなあ!!」

謎の算数を公言しながらアノニマスは退がらなかった。
二重の遺才をその身に受けつつも、すべて受けきって、あまつさえ僅かずつに前進を再開する。
如何に高速無数であっても所詮は斬撃、ブリガンダインを破壊できる剣などこの世には存在しない。
このまま耐え続けていれば、負担の大きい技を連続行使するマテリアが今度はジリ貧だ。
何の事はない、アノニマスはただ待っていれば良いだけなのだ。

>「ファミアちゃん!全力で!」

――そして、待っていたのはアノニマスだけではなかった。
銀色の嵐が不意に晴れる。
視界が自由になったアノニマスの面頬が次に切り取った景色は、ドアップの騎竜の鼻面。

>「"どちらか"じゃない!これが――私達二人分の拒絶です!」

「ほげぇッ!?」

重量500kgはゆうに越える巨大な騎竜と真正面から接吻して、甲冑男は竜ごと石畳を転がった。
バキバキバキ……と鎧の各所が砕け、再び鼻っ柱を面頬に強打して鼻血が出る。
騎竜――モトーレンの愛竜ライトウィングもまた鎧を着た狂人との正面衝突によって腹に響く呻きを漏らした。
歪んだ面頬の隙間から垣間見える、『投げ』のフォロースルー姿勢の……ファミア!

「馬車一台ほどもある重さだぞ……!!」

石畳に横たわる騎竜の身体が持ち上がる。
面頬から血を流しながら、アノニマスがライトウィングの横っ腹から這い出てきた。
ひしゃげた鎧は修復を開始しているが、ダメージに対して明らかに追い付いていない。
浴びせられ続けた"双"轟剣、そして叩きつけられた巨大質量に、設計された以上のダメージを受けている。
それでもなお動き続けられるのは、ひとえにアノニマスの遺才遣いとしての実力の証左である。

――アノニマスは、攻撃を避けるということができない。
フィン・ハンプティの天鎧との最も重要な差異は、その防御方式にある。
天鎧の防御は『受け流し』。
魔術を含めたあらゆる攻撃の軸をずらし、明後日の方向へ捻じ曲げることでダメージを"受けない"技術。
対してブリガンダインのそれは『受け止め』。
その常軌を逸した頑丈さで、すべての攻撃を受け入れ弾き返すことでダメージを"抑えこむ"技術。

ダメージを数値化するとすれば、フィンが0ダメージを積み重ねていくのに対し、
アノニマスは0.00001ダメージに抑制することで自己治癒力による回復を追い付かせているのだ。
彼はボロボロになった甲冑で立ち上がる。

「拒絶とは、つらいものだよなファミアちゃん。
 俺はされたことないけど、きっとでも多分拒絶される側にも問題があるんじゃないかと思うよ」

踵でライトウィングを小突く。
面頬の隙間から見下ろした竜の、その瞳もまたこちらを見返している。
アノニマスとてこの騎竜とは長い付き合いだ。
モトーレンと組んで任務地に空挺されるのは今に始まったことではないし、
そうでなくともモトーレンに対する度重なるつきまとい行為の影にはやはりこの竜の姿もあった。

ライトウィング自身はアノニマスのことを『主人が蛇蝎の如く嫌っている汚物』としか認識していなかったが――
主人を撃墜させた上に地面で伸びていた自分を振り回しあまつさえ汚物に激突させた少女、
つまりファミアと敵対するという点で竜と汚物は付和雷同に頷いた!

「そう、貴様にも自覚があるんじゃないか、マテリア。英雄の成り損ないよ。
 ここで我々遊撃二課を打ち倒したとして、貴様は一体これからどうするつもりなの。
 そんな化物みたいなツラ引っさげて、いまさらまともな社会に復帰できるなどとは思うまい」

6 :GM ◆N/wTSkX0q6 :2015/08/15(土) 16:34:20.72 0
そうでなくとも遊撃一課には、もう居場所がない。
帝都のポストを終われ、彼女たちを知る者は殆どが消されたか口封じをされている。
帝都に戻ったってどこにも行くところはないし、お尋ね者になるのが関の山だ。
ましてや、マテリアは魔族だ。
元老院の当初の目的通り、魔族になってしまった。

「予言しよう、社会は貴様を拒絶する。意味不明な理屈で魔族に成り下がった貴様を拒絶するッ!
 社会に参画できないというのは、人として生きる道を失うのと同じことだぞマテリア。
 なにせまともな収入はないし、友達だってつくれないし、結婚だって――まあそれは俺が娶ってやらんでもないが」

長口上に時間稼ぎの意図はない。
今すぐに攻撃を受けたってアノニマスは遜色なく戦闘に移れるだろう。
だがどうしても聞いておきたかった。魔族になったマテリアが、この後の自分をどう考えているのか。
元老院は、遊撃一課を無理やり魔族化させるつもりだった。
だがマテリアは、他ならぬ自分自身の意思で魔族化したのだ。
そこに意味がなくてはならないと、そう思う。

「このアノニマスに言わせれば魔族はぼっちの欠陥生物よ。力とは!誰かの為に振るって初めて意味を持つ!!
 人と人のつながりは、個々人の持てる力に意味を与えるための概念だ。
 だがそこに魔族は含まれない。孤独な力は空回りするばかりだ」

それとも、とアノニマスは言った。

「ヒトの為に力を振るうとでも言うつもりか?人間がそれを求めるかね。俺には想像がつかんな。
 いつ我々に牙を向くとも知れぬ化物の力など、誰が頼ると言うんだ。
 だから結局、貴様にはもう居場所がない。どこに行っても石を投げられ、やがて討滅されるのを待つ身だ」

少なくともマテリアは、人間社会においての存在意義を失っている。
アノニマスですらまともに働いているというのにだ!

「――貴様にも、人間としてまだやりたいことがあったんじゃないのか?」

言いたいことだけ言って今度はファミアへ向き直る。

「ファミアちゃんはまだ人間だから安心して俺と繁殖しようね」

瞬間、予備動作なしでアノニマスは跳躍した。
地に伏せていたライトウィングがその強靭な尻尾で甲冑を弾き飛ばしたのだ。

「さあ始めるぞ化物よ……その孤独を終わらせてやる」

瞬間、神殿を十字に横断するようにして石畳に亀裂が走った。
それは地盤ごと割断された『地割れ』――神殿を中心にヴァフティアを4分割するような巨大な裂け目だ。
突如として出現した裂け目に、その中心点、神殿中央で結界に囚われたままのエレノラが伏したまま飲み込まれていく。
一瞬にして崩壊した足場の中、空中のアノニマスだけが十全に動くことができた。

「劫火の如き熱抱擁を受けよ――ッ!!」

同時、アノニマスの背後から巨大な火球が迫ってくる。
それはライトウィングが吐き出した火竜のブレス。
ゴーレム一基を丸々消し炭に変える威力の火柱を、しかしアノニマスは背に受けて飛翔する。
範囲攻撃だ。ブリガンダインを纏ったアノニマスだけが無事で、その他を焼きつくす。
汚物と竜はその連携をアイコンタクトだけで完成させた。


【神殿中央から街を四分割するような巨大な亀裂が発生。
 モトーレンとエレノラが飲み込まれ、アノニマスはブレスを背に飛翔。
 撃破目標1ターン】

7 :マテリア・ヴィッセン ◆ylJAv3iKVhVX :2015/08/18(火) 03:45:40.42 0
>「"どちらか"じゃない!これが――私達二人分の拒絶です!」

強い意思を秘めた言葉と共に、暴風のような風切り音が聞こえた。
瞬間、マテリアは双剣を逆手に持ち替えた。
それを地面に突き立て――その勢いを利用し跳躍。
微弱な音弾により推力を得たその跳躍は、まるで風に飛び乗っているかのようだった。

直後に、下方から激しい衝撃音と金属がひしゃげ、へし折れる音が響いた。
しかし――その奥から聞こえる鼓動と呼吸は、尚も健在だった。

>「馬車一台ほどもある重さだぞ……!!」

「……それはこっちのセリフです。馬車一台ほどもある重さですよ」

ナードから聞き取れる生体音は依然として乱れていない。
対するマテリアには――感覚投影による多重遺才の反動が、確かに肉体に刻まれている。

>「拒絶とは、つらいものだよなファミアちゃん。
  俺はされたことないけど、きっとでも多分拒絶される側にも問題があるんじゃないかと思うよ」

だからこそマテリアは、ナードとライトウィングの「呼吸」が一瞬合致したことを聞き取っていながらも、動かなかった。
ナードは自分よりも強い――今はまだ。
傷が治り、より深く魔族に近づく為の時間が必要だった。

>「そう、貴様にも自覚があるんじゃないか、マテリア。英雄の成り損ないよ。
  ここで我々遊撃二課を打ち倒したとして、貴様は一体これからどうするつもりなの。
  そんな化物みたいなツラ引っさげて、いまさらまともな社会に復帰できるなどとは思うまい」

だが続くナードの言葉に、マテリアの心臓が一際大きく跳ねた。
思わず背後のファミアに意識が向きかけて――思い留まる。

>「予言しよう、社会は貴様を拒絶する。意味不明な理屈で魔族に成り下がった貴様を拒絶するッ!
  社会に参画できないというのは、人として生きる道を失うのと同じことだぞマテリア。
  なにせまともな収入はないし、友達だってつくれないし、結婚だって――まあそれは俺が娶ってやらんでもないが」

マテリアは――ファミアの音を聞かなかった。聞きたくなかった。
今聞いて、もしそれが恐怖や嫌悪を示していたら。
その後の戦闘において十全な判断力を保てるか、自信がなかったからだ。

>「このアノニマスに言わせれば魔族はぼっちの欠陥生物よ。力とは!誰かの為に振るって初めて意味を持つ!!
  人と人のつながりは、個々人の持てる力に意味を与えるための概念だ。
  だがそこに魔族は含まれない。孤独な力は空回りするばかりだ」

その恐怖から逃れるように――マテリアはナードの言葉に耳を傾けた。
彼の言う事は、確かに間違ってはいなかった。
魔族化したマテリアは、もう人間社会には戻れない。

そうなる事は分かっていた。
魔導短砲で自分の両眼を撃ち抜いた時、その結果どうなってもいいと思ってマテリアは魔導弾を放った。

議長の――あの哀れで孤独な少女の救いに、居場所に、なりたかった。
それが、その意志が「自分」なのだと。
人の身のままでは自分を貫き通せないなら、魔族になる事だって厭わないと、そう思っていた。
今でもその思いは揺らいでいない。

だが――「その後」について、マテリアは深く考えていなかった。
仮に恙無く事が運び、議長の心から孤独を拭い去れたとして、その後どうするのか。

8 :マテリア・ヴィッセン ◆ylJAv3iKVhVX :2015/08/18(火) 03:47:18.53 0
>「ヒトの為に力を振るうとでも言うつもりか?人間がそれを求めるかね。俺には想像がつかんな。
  いつ我々に牙を向くとも知れぬ化物の力など、誰が頼ると言うんだ。
  だから結局、貴様にはもう居場所がない。どこに行っても石を投げられ、やがて討滅されるのを待つ身だ」

ナードの未来予想図は、今ひとつマテリアの心には上手く落ちてこなかった。
ヒトの為に力を振るう――そんな高潔な目的を抱けるほど、マテリアはもう「人間」らしくない。

>「――貴様にも、人間としてまだやりたいことがあったんじゃないのか?」

その言葉を受けて暫し、彼女は考え込んだ。

「……あ」

そして、不意に合点がいった、と言った風に小さく声を漏らした。

>「さあ始めるぞ化物よ……その孤独を終わらせてやる」

「そっか」

>「劫火の如き熱抱擁を受けよ――ッ!!」

「私……したって……」

竜の火炎と十字路の崩落に伴う轟音の中で、マテリアは誰にも聞こえないような小さな声で何かを呟いた。

「……ファミアちゃん。議長ちゃんをお願いします。それから……戻ってきたら、多分もう一仕事」

振り返り、一方的にそう言ってから、マテリアは白く細い指で快音を奏でた。
瞬間――ヴァフティアから音が消えた。
自分自身の声も、呼吸音すらも聞こえない、完全な静寂が場を支配した。

「……ねえ、どうです。凄いでしょう。今の私なら……人の世から音を奪える。声を奪える。
 もし……明日から誰一人として声を発する事が出来なくなったら、社会はどうなると思いますか?
 誰も真実を叫べない、誰も助けを呼べない、誰も悲鳴を上げられない世界で、人は今まで通り生きていけるでしょうか」

マテリアの声だけが、静寂の中に響く。
それすらも――聞こえているのはナードだけだ。

「私、別に世界を壊したっていいんですよ。そうしない理由なんて、どこにもない」

轟音の中に飲み込まれた言葉を、マテリアはもう一度、口にした。

「壊して、ばらばらにして……そこに出来た隙間に、私の大好きなものを全部詰め込めばいいんです」

マテリアは、笑っていた。
その表情は、無邪気で、明朗で、嬉しそうで――極めて優しげだった。
ただその紅い両眼の奥に、滲み出るような金色が輝いていた。

「気付かせてくれて、ありがとうございます。貴方の事は大嫌いですけど……感謝します。
 私は……失いたくなかったんです。
 母の時みたいに、私が無知だから、無力だから、私の大事な人が死んでしまうのが嫌だった」

だから、と言葉は続く。

「人間の私がやりたくて、それでもどうしても出来なかった事は、魔族の私が受け継ぐんですよ」

9 :マテリア・ヴィッセン ◆ylJAv3iKVhVX :2015/08/18(火) 03:48:00.92 0
マテリアは先ほど地面に突き立てた剣に手を伸ばす。
切っ先が埋まった地面の揺れは――先ほどよりも穏やかだ。
地割れの勢いが、弱まっていた。

「……『天鎧』」

それを成しているのは、フィン・ハンプティの模倣遺才だ。
崩壊の勢いを、振動として集音魔力に吸収しているのだ。

「『風帝』……じゃ、なかったですよね。スイさんの遺才。今度会えたら、聞いとかなきゃ」

引き抜いた剣は、『天鎧』によって掻き集めた、振動を帯びた魔力を纏っていた。
それが切っ先よりも更に先へ――虚空へと伸びて、無形の風の刃のような、仮初の刀身を作り出す。

「『双剣』」

突き立てた剣は二本あった。
マテリアはそれらをゆっくりと掲げ、

「『轟剣』」

音の壁すら斬り伏せる、爆撃の如き剣技の構えを取る。

だが――不意にマテリアの膝がかくんと折れ、上体が揺らぐ。
複製品とは言え三つの遺才を併用した、その反動は甚大だった。
それでも――マテリアは崩れ落ちない。体勢を立て直し、迫り来る業火と汚物に真っ向から相対する。

「私は負けませんよ。さっき言った事を、必ず成し遂げてみせます」

身体の随所から流れていた血は、既に固まっていた。
彼女の両眼を構成する物と同じ結晶体が、血管をなぞるような模様を描いている。

『その為なら私は『鬼』にだってなってやる』

即ち――魔族の体組織の更なる拡張。

「――『崩』」

そして振り上げた刃を振り下ろす。
『天鎧』によって地割れの勢いを自分自身に伝わらせて、
『双剣』の軌跡を一つに束ね、
『風帝』の力で刀身を弾き加速させ、『轟剣』の速度を以って、

「――『剣』!!」

放たれた『崩剣』が、一閃の下にブリガンダインもろとも、騎竜の紅蓮を火の粉と散らした。

だが――それでも、それでもマテリアの刃はナードには届かないだろう。
百の劣化品を積み重ねても、極まった一に辿り着く事は出来ない。
それが遺才、それが天才というものだ。

そうなる事は分かっていた。マテリアはそれを「知っていた」。

10 :マテリア・ヴィッセン ◆ylJAv3iKVhVX :2015/08/18(火) 03:48:26.43 0
だから、次の一手は既に用意してあった。
地を蹴り、推進力を失ったナードへと迫る。

マテリアは手にした獲物を、横薙ぎに振るう。
速さも威力もない、容易く防御し、捕まえられるような攻撃を――ナードの両手に押し付けた。

その獲物は、剣ではなかった。
槍だ。先端に精緻な聖者の彫刻が施された、十字槍だ。
マテリアが左手で指を弾き、音弾を作り出す。
衝撃を与える対象は――

「……『遠き福音』」

振動を受けた十字槍が金属音を奏でる。
遠き福音が、紅い光を帯びた。
遺貌骸装に秘められた遺才が発揮される。

マテリア・ヴィッセンとナード・アノニマス、双方が槍の柄を手にした状態で。
自分の物ではない、模倣ではない完全な遺才による反動が、マテリアに身体を内から引き裂くような激痛をもたらす。

「魔族の体……やっぱり便利です。ちっとも『痛くない』。ですが……貴方はどうですか?」

問いの答えを待たずして、マテリアは再び遠き福音を奏でた。



【遺才は一人一つ】

11 :名無しになりきれ:2015/09/07(月) 14:50:33.34 0
これ完全にアカン奴や

12 :名無しになりきれ:2015/10/17(土) 21:05:18.67 0
ゴミの自演
自画自賛

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