5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

【TRPG】鋼の巨人と絡繰の龍【オリジナル】 [転載禁止]©2ch.net

1 :名無しになりきれ:2015/06/12(金) 23:29:53.44 0
ジャンル:バトル、SF、ロボット物
コンセプト:壮絶な技術の無駄遣い、格闘メインで殴り合え
期間(目安):未定

GM:あり
決定リール:要相談
○日ルール:一週間(七日)、ヤバそうなら事前に相談を
版権・越境:無し
敵役参加:なし
避難所:

テンプレ
名前:
性別:
所属・階級:(尉官以下が望ましい、最高でも佐官まででお願いします)(雰囲気用)
年齢:
性格:
外見:
備考:

機体名称:
系統:(○○型○○、フィーリングで)
基本性能:(速度・出力・装甲、後述)
武装:
その他装備:
備考:

基本戦闘スタイル:

2 :名無しになりきれ:2015/06/12(金) 23:30:23.91 0
世界観

これは、未来の話
終わらない戦争の末、人類は二種の超兵器と多種の防衛装置を開発した
超兵器の一方は『武神』
人を模した大型の兵器であるそれは、人を取り込み、それと合一する事で、人の動きの延長線上にあるありとあらゆる動きを再現する事に成功している
数多の武装を戦場に合わせ持ち替え、一騎当千の働きをするその姿はまさしく武神
もう一方は『機竜』
竜を模したその機械は、それ故に空を征する能を持つ
組み込み型の特大火力の砲、尾や爪による格闘戦、そして何よりも翼を有するが故の機動力を武器とする
大空を飛び、致命の一撃を放ち、地にあってもその爪で制圧するその姿、まさしく竜
防衛装置は多岐に渡るが、その多くが武神・機龍に組み込む形で開発された
それにより、低質量の弾丸等は弾かれ、低出力の(それでも人を殺しうる威力の)エネルギー兵器は容易く無効化される
また、極近距離用のジャマーも開発され、ミサイルの類も廃れてしまった

結果として、『高威力の砲撃』か『充分な質量の打撃』のみが有効打となりうるが、双方共に充分な機動力を有するが故に砲撃も大きな効果を与えられないケースが多く、必然、主流は格闘戦へと移っていった

そうして戦場の主役が格闘に移った頃、世界にある『異変』が発生する
それぞれの国の拠点が、同時にその『異変』に滅ぼされた時、人々は悟る
これは、共に立ち向かわなければならない、『世界の滅び』だと

そんなお話

3 :名無しになりきれ:2015/06/12(金) 23:30:48.44 0
兵器の性能について

機竜・武神の基本性能は三つの項目に最大10、最小1、総計15のリソースを振ることで決定する
一つは速度、最高速度でも加速力でも、とにかく速く動きたいならここにリソースを振ろう
一つは装甲、生半可な攻撃では傷一つ付かない強固な機体が欲しいならこれ
一つは出力、武装や特殊な兵装などで大きな効果や威力を引き出したいならここにこそ振ろう

特化型の力関係は速度>出力>装甲>速度……
あくまでも一般論なので、装備によっては例外もある

4 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/12(金) 23:36:36.44 0
/酉を忘れておりました
Word
・滅びの軍勢(ほろびのぐんぜい)
突如として現れた謎の存在
研究者の言によれば何らかの現象
分かっているのは同化して世界を消滅させること、古い機体の強化版のような赤黒い姿で現れること、此方の戦術を真似ること、身体の半分を吹っ飛ばせば再生しないこと

・機龍(きりゅう)
超兵器その一
空を自由に飛べて翼と尾がある、サイズは体高4m、尾を含む全長8m(目安)

・武神(ぶしん)
超兵器その二
人と同化して人の感覚で動ける、サイズは体高5m(目安)

5 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/12(金) 23:37:12.55 0
避難所はコチラ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/9925/1434119324/

6 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 00:01:36.09 0
ある程度人数が揃ったら導入用のロールを投下致します、ブリーフィングから始まる予定

7 :名無しになりきれ:2015/06/13(土) 02:25:45.30 O
何故か避難所に入れないです

8 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 02:42:50.80 0
あら、普通のしたらばの筈なんですが

専ブラ使用なら他の板を読み込んでから行くと行けるかも知れませぬ
テンプレは此方でも構いませんよ

9 :名無しになりきれ:2015/06/13(土) 19:56:49.10 0
そういや所属ってあるけど
組織名はテキトーにでっち上げてもええんか?
例えば自衛隊じゃなくて国防軍だとか、その中のどこそこの部隊とか

10 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 20:03:49.46 0
超特殊な部隊で中将より階級が上!とか言い出さない限りは制限はしません
あ、具体的な実在の国名出すのは無しでお願いします、連邦とか帝国とか適度にぼかしていただけると有り難い
尚設定を拾いきれるかは別の話
あくまでフレーバー程度、と考えて下さい

11 :名無しになりきれ:2015/06/13(土) 20:12:34.29 0
これ参加者たちがどういうチームとして戦うのかがよくわからないんだけど、
ストライクウィッチーズみたいな感じで、各国から集められた特殊部隊という認識で良いの?

12 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 20:30:52.78 0
その辺りの説明なかったですね
流れとしては
・滅びの軍勢で大体の国が傾く
・結構ガチでヤバいので休戦して手を結ぶ事に
・とりあえず動ける奴を集めて混成軍で出撃準備←今ここ

という訳なので、各軍から動ける人間を指揮できる人間の下に集めた段階となります
出自はバラバラで、とりあえず戦えはする人材の集まり、とお考え下さい

13 :名無しになりきれ:2015/06/13(土) 20:40:01.78 0
国家体系などは現実世界とは完全に別物って認識で良いんですかね
架空の国家を自分で設定してしまうのは可能?

14 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 20:48:50.61 0
>>13
その認識で問題ないです
構いませんが拾いきれる保証はないです

15 :名無しになりきれ:2015/06/13(土) 21:00:49.95 O
やっぱり入れないんでテンプレもこっちにしますね

16 : ◆.GMANbuR.A :2015/06/13(土) 21:01:30.25 0
テンプレ
名前:内藤=ハイウィンド=隆輝(ないとう・H・りゅうき)
性別:男
所属・階級:国防軍、対空武神隊、准陸尉
年齢:21
性格:温厚かつ非穏便
外見:ニコニコデブ
備考:年齢のわりに階級が高いのは対空武神隊が殉職者の出やすい部隊である為
   「武神超かっけえ」くらいのノリで国防軍に入って
   「武神乗ってる僕超かっけえ」くらいのノリで戦ってる。アホほど神経図太い。ていうかアホ
    国籍はニッポン。日本にあらず

機体名称:竜夜《ドラゴンナイト》
系統:高機動型特攻機
基本性能:速度10・出力3・装甲2
武装:斧槍
その他装備:着脱可能式背部プラズマスラスター
備考:ジュラルミンやカーボンナノチューブを多く用いて製造された軽量形の高機動機。
   通常の武神に比べて極めて軽い為、加速度、最高速共に非常に優秀。
   その用途は『地対空』。索敵の困難な地上から跳躍し、
   本来は装甲用であるタングステン鋼で穂先を形成したハルバードで機竜を貫き、または叩き切る為の機体。
   用途と機体そのものの装甲が薄い関係上、
   事前に察知されていた場合は撃墜され、死亡する危険性が非常に高い。
   その為別名は『次世代型神風機』
   もっとも、卓越した乗り手ならば弾数などに制限されずに、短時間に幾つもの機竜を撃墜出来る
   また本来は地対空武神だが、その加速力から放たれる質量攻撃は地上でも有用
   ちなみにドラゴンナイトの綴りはDragonnight
   この機体の訪れが機竜によっての、怯え竦むべき夜であれという願いから命名された

基本戦闘スタイル:高い機動力と槍を用いて頑張る



こんな感じでええんやろうか

17 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 21:06:22.44 0
>>16
素晴らしい厨二具合だ素晴らしい、OKですよ

18 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/13(土) 21:10:41.87 0
ではこちらにも初回用GMキャラのテンプレを投下させていただきます、参考になれば

名前:アレックス=サウスウィンド
性別:男
所属・階級:元連邦軍中佐
年齢:28
性格:クソ悪い(公称)
外見:金髪リーゼントグラサン
備考:都市奪還作戦チャーリー隊隊長

機体名称:LB-982Custom【ゲイルブレイド】
系統:強襲型軽機龍
基本性能:速度7/出力7/装甲1
武装:光学力場発生装置「LightBlade398」二基、「テイルハンマー」
その他装備:使い捨てブースター
備考:高速で敵を切り裂くことを目的とした高機動型軽機龍LB-982をベースに、高速域での機動性の確保と圧倒的な初速の為に装甲を投げ捨てたある意味潔い機体
出力系がかなりクレイジーな調整をされているので、本人以外にはとてもじゃないが乗りこなせない

基本戦闘スタイル:速度と火力を生かした一撃離脱

19 : ◆SLsyr0XB/w :2015/06/13(土) 21:42:24.89 O
こちらにも置きます、よろしくお願いします

名前:フレイア=レシタール
性別:女
所属・階級:今は無き神聖帝国の一等兵
年齢:15
性格:大人しい?
外見:白髪のボブ、水色の瞳、なんか小さい
備考:神聖帝国では12歳で徴兵令が下る。適性検査の結果機龍兵になるも、今回の敵により国が滅んでしまった。

機体名称:ワイバーン
系統:装甲特化対地機龍
基本性能:速度4・出力3・装甲8
武装:手足のある機龍、双方に硬質な爪がはえている
その他装備:「翼剣」翼の上下部分にも刃がついており、接近戦で不意をつく武器。装甲を利用してミサイルを潰すために飛ぶことも
備考:今ではない国の機龍のためか、仕様が微妙、装甲を活かすしかないタイプか?
基本戦闘スタイル:空から武神を爪で切りつけ、その後地上で格闘をして空へ離脱。止めより戦力を奪う戦い。
装甲を利用して戦中心に飛び込むことも。

20 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/14(日) 01:03:11.79 0
『抵抗軍』
仮の名としてそう名付けられた各国の残存兵をかき集めた軍隊の本部は、何もない荒野に建てられた研究所に置かれていた
各都市から離れていたが故に、そのままの姿を残した軍事施設
その本質は地下にこそある

とある大国が秘密裏に用意していたその場所は、数千の機龍、武神を格納して尚余る
あちらこちらから集まってきた人々は、ひと月の時を経て尚、忙しく動く

――――抵抗軍が、遂に反撃を開始する
その噂はすぐに認められ真実となり、今はその準備の為、動ける者は総動員で作業が進められている

そんな忙しさの中、「第三会議室」と銘打たれた部屋に、あなた方兵士が集められた

テーブルとそこに置かれたホログラフィー、そして人数分の椅子
後ろに置かれたボードには「C隊ブリーフィング」と投げやりに書かれている
そしてその上座、一番奥の椅子に、見事な金髪をリーゼントに固めた、室内なのに何故かグラサンを掛けた男がいる
階級章を見るに中佐らしい
全員が揃った所で、その男が声を上げた

「よぉーやく集まったなァクソ虫共!」
「んじゃまァ?あのクソッタレ共をブッ叩く為の?作戦会議を始めっぞ?」

適当に椅子にふんぞり返り、全員に座るように指示してから手元のリモコンを操作する
すると、中央のホログラフィーに、作戦目標の都市――旧帝国領の小規模な都市――が表示される

「のまえにィ?自己紹介がいるか?あァ面倒臭ェ、こういうのは偉ぶりたい連中にやらせろってんだ……」

「あー、あれだ、旧連邦軍所属、サウスウィンド中佐だァ」
「南風特攻野郎、の方が通りがいいかァ?ま、寝首掻くのはクソヤロウ共を片付けてからにしろよクソ虫共?」

オラ次、と適当な相手を指差していく、大人しく従った方が無難であろう

21 :名無しになりきれ:2015/06/14(日) 04:07:28.18 0
また最初の設定だけクッソ長いパターンか
既視感あるスレ立てだね

22 :名無しになりきれ:2015/06/14(日) 10:09:46.13 0
シェアワールドの>>1

23 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/06/14(日) 10:12:56.68 O
作戦会議に集まった人々を感情のこもらない瞳でさっ、と見渡し、其々の階級章を見た。
結果、自分が一番下の階級及び年齢であろう、と判断したフレイアは、椅子に座らず立ったまま中佐の話を聞いていた。
サウスウィンド中佐、彼が今回隊長であるのだろう。ならばその命令は絶対だ。
例え適当に指差されていようとも、上官に逆らうつもりなどない。
「神聖帝国一等兵フレイア=レシタール。現状祖国は壊滅、生存者無し。以上」
それだけ言い、口を閉じる。
自己紹介と言うにはあまりにずさんだが、彼女にはこれ以上話すことが思い付かなかった。
神聖帝国では戒律の下、兵士に無駄な交流を禁じていた為、名乗ることすら久し振りだ。
国がなくなったのだからその戒律など守らなくてよいのだが、フレイアはそう命ぜられていない。
命令を遂行する、彼女にとって一番優先する事はそれだけ…。
(…そう思い込もうとしているだけかも知れない…)
一瞬よぎった思考を直ぐ様沈ませ、無表情で他のメンバーの自己紹介を聞くのであった。

24 :名無しになりきれ:2015/06/14(日) 10:24:16.96 0
支援

25 : ◆.GMANbuR.A :2015/06/15(月) 02:17:49.30 0
内藤・H・隆輝はニッポン国籍の陸軍軍人だ。
初陣となったのはリューキュー防衛戦。
それは『滅び』の圧倒的な物量を前に陣地の防衛が不可能であると判断された戦いだった。

軍部は可能な限りの抗戦と、その間に資材や設備、人員の本土への回収を陸軍に命じた。
回収すべき物の中に、民間人は含まれていなかった。

だがリューキュー防衛戦にて指揮を任された毒島中佐は、それを好しとしなかった。
独自に特別攻撃隊の編成を宣言し、志願者を募った。
そしておよそ600人の大隊の内、半数以上がその特攻隊に参加した。

内藤もその一人だった。
正義感に突き動かされた訳ではないが、逃げるのはどうもカッコが付かないし、
別に本当にヤバくなってからでもいいんじゃないかと考えた結果である。

防衛戦は凄絶を極めた。
リューキューの飛行場は島の中央部にある。
故に敵に押し込まれる訳にはいかず、断固たる死守が求められた。

加えて、輸送機は機竜の手にかかれば容易く撃墜されてしまう。
それを防ぐには輸送機が離陸するタイミングで兵士達が敵陣に切り込み、護衛を果たす必要があった。
輸送機が安全に戦場を離脱出来るだけの陣地を維持する事が、毒島の大隊だけでは不可能だったのだ。

その任務の中核は、『竜夜』に搭乗する者達に与えられた。
竜夜の機動力と、対地対空両方を迅速にこなす性能は、輸送機の護衛に最適だった。

それはまさに決死隊だった。
資材、設備、重要人材、民間人、護衛すべき輸送機は四機あった。
戦力を分散させる余裕はなかった。輸送機は一度に一機ずつしか飛ばせなかった。

たった一機の輸送機を無事に戦域から離脱させる為に、200人の兵士が道を切り開いた。
その半分以上が陣地へ戻れずに敵陣で囲まれ、無防備な空で撃ち落とされ、死んでいった。
本土へ帰りたかった者も、リューキューの地で果てるつもりだった者も、等しく死んだ。

四度の特攻を終え、最後に残された作戦行動は撤退だった。
つまり、敵の包囲網を貫き退路を開く為の突撃だ。

全てが終わり、本土への撤退が完了した時、600人いた兵士達は僅か30人にまで減っていた。
内藤は、その内の一人だった。

26 : ◆.GMANbuR.A :2015/06/15(月) 02:21:08.58 0
>「よぉーやく集まったなァクソ虫共!」
>「んじゃまァ?あのクソッタレ共をブッ叩く為の?作戦会議を始めっぞ?」

そして今、内藤はニッポン国外のとある基地にいた。
捕虜としてではない。誘致されたのだ。
ニッポンが提供し得る最大級の対『滅び』戦力として。

>「のまえにィ?自己紹介がいるか?あァ面倒臭ェ、こういうのは偉ぶりたい連中にやらせろってんだ……」
>「あー、あれだ、旧連邦軍所属、サウスウィンド中佐だァ」
>「南風特攻野郎、の方が通りがいいかァ?ま、寝首掻くのはクソヤロウ共を片付けてからにしろよクソ虫共?」

まるで寝首を掻かなきゃ殺せないような言い方をするんだな、と内藤は思った。
思ったのだが――彼は腕を組み、首を傾げて目を閉ざしていた。
サウスウィンドの話よりもずっと気になる事があったからだ。

>「神聖帝国一等兵フレイア=レシタール。現状祖国は壊滅、生存者無し。以上」

(なんで誰もあの子が席に着いてない事に何も言わないんだろう……)

大の大人が揃って席に着いているのに、見る限り、そして実際にもぶっちぎりの最年少が一人だけ直立不動で立っている。
この大事な会議に遅刻をしたとか何かしらの理由があるならまだ分かるが、そういう訳でもない。
はっきり言って異常である。少なくともニッポン人の感性には違和感しかもたらさない。

「あの……ちょっといいですか。なんで君、わざわざ立ってるの?……宗教上の理由か何か?」

神聖帝国には厳しい戒律の数々があるという話は内藤も聞いた事がある。
だが、多国籍軍を編成する上でそれらは軋轢や不和の元にもなってしまうだろう。
ぶっちゃけた所見ていてモヤモヤするからやめて欲しいだけなのだが、正当な理由もあると言えばある。
そう自分に言い訳をして、内藤は思い切って言葉を発した。

「僕らは君より階級高いかもしんないけど、ぶっちゃけよその国の人間だしさ。
 ただの他人か……もうちょい情緒のある言い方をするなら、同志とか、仲間とか、そういうのでしょ。
 気にせず座んなよ。……君が宗派の教えを守る事に、強い価値を感じているなら、強要はしないけどさ」

少なくとも本人が望んで直立しているという体になれば、気分の曇りも少しは緩和される。
ニッポン人らしい今ひとつ踏み込みの浅い提案だった。

「あ、ついでに自己紹介もしとこっかな。内藤・ハイウィンド・隆輝。
 生まれはニッポン、階級は准陸尉。後は、えーと……」

あんまり味気ない自己紹介はなんか嫌だと、内藤は暫し思案。
それから「あっ」と声を零し、

「対機竜なら無敵ですよ、僕」

不遜とも挑発とも取られかねない言動を、極めて朗らかに続けた。



【自己紹介】

27 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/06/15(月) 02:40:06.81 0
戦争があった。
とても大きな戦争だった。

鋼鉄の竜は天を舞い山を薙ぎ、白金の巨人が腕を振るい地を掃う。
その戦争はきっと、遠き昔に語り継がれた神話を彷彿とさせる情景であった。

何時から始まったかも知れぬ戦争。
次から次に生まれていく、戦争を呼び水にした戦争。

怒りと嘆きと、血と炎。
男も女も大人も子供も区別す事なく、人々の屍を山よりも高く積み上げたその戦争。
恐らく、世界が終るまで終わる事が無いであろうその戦争は、けれど――――ある日突然に、終わりを迎えた。

殺し合いをしていた国も、泥沼の内戦を続けていた国も。
和平交渉を続けていた国も、狐狸の如く策謀を動かしていた国も。
ありとあらゆる国々が、ある日突然、平等に滅ぼされたのだ。

『異変』という未知の存在の手によって。



――――そして現在。
突然の滅びから生き残った者達は、一つの軍事施設に集っていた。
各地の残存兵が集まったその集団は、名を『抵抗軍』と言う。
残存兵の集まりであるが故に、信条も信念も、忠誠を誓う国も異なるその集団。
ただ、滅びに対する抵抗という事のみを共通の目的とした集団。

「……自己紹介、ですか」

その集団の中に、少女はいた。
灰色の髪を肩までの長さで切り揃え、薄水色の眼鏡を付けた少女。
黒色をベースとした軍服を纏うその少女は、齢の頃は10代後半といった所だろう。
人並み以上に整った容姿を持っているが、その容姿以上に印象に残る鋭い……まるで手負いの獣の様な瞳を持つ少女であった。

「……そうですね、相互認識は重要です。この様な状況で、いざという時に友軍誤射をされては堪りません」

フレイア=レシタールという神聖帝国の軍人……どことなく幼い雰囲気を纏う少女の国の悲壮な状況。
内藤・ハイウィンド・隆輝というニッポン国の軍人の不遜とも言える宣言など、それらを気に留める様子も見せず、
灰髪の少女はサウスウィンド中佐の自己紹介の促しを受け、淡々と口を開く。
……椅子から立ち上がりすらしないのは、サウスウィンドやその他の者を自身の上官として認ない事を暗に主張しているのだろう。

「……イザナ正統皇国所属、六角 桔梗(ろっかく ききょう)准尉です。
 正統皇国においては、首脳部は壊滅。軍部は私の様に特殊工作任務に出ていた者を除いて全滅。
 民間人の犠牲者も多数……端的に言えば、正統皇国は事実上滅びたと言って差し支えないでしょう」

そこまで言ってから、桔梗は少し口を噤み考える様子を見せた後、再度口を開く。

「……正統皇国で私が所属していた部隊は、第13特殊部隊。他国においては『亡霊』などと呼ばれていたと記憶しています。
 私に身内を害された方などいらっしゃいましたら、作戦決行の前に直接仰ってください。
 ……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」

淡々と述べる桔梗の顔に感情らしいものは浮かんでいないが、僅かに諦観の様な雰囲気が感じられた。

28 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/15(月) 22:51:02.61 0
第三会議室でブリーフィングが開始されるよりも約一時間ほど前のことである。

抵抗軍本部全体が慌ただしい反撃作戦の準備に追われている最中、
武神格納庫にいる整備班の人間達もまた最終チェックのため汗水たらして走り回っていた。
そしてその中に、工具台車を押して作業者の間を往復する一人の中年男性の姿があった。
「おーい!ヒゲ男!MP40!」
「は〜〜い!」
「おーい!ヒゲ男!モンキー!・・・いや、19のメガネだ!」
「は〜〜〜い!!」
「ここちゃんとマシ締めしてんのかぁ!?ヒゲ男!トルクとチェックペン!」
「はいは〜〜〜〜い!!」
ヒゲ男・・・その男は先輩作業者達からそのあだ名で呼ばれていた。
名前で呼ぶのがまどろっこしくて仕方ない現場では、
彼のように一目でわかる特徴が顔にあることはありがたかった。
しかし、謎の多い男でもあった。
上長からの連絡も特に無く、気がつけば一週間ほど前から一緒に武神をいじるようになった。
でも、誰もそんな事を気に留めたりはしない。
それくらいみんな忙しく、それだけみんな真剣だった。
なにしろ今回の作戦は、人類の存亡がかかっているのだから・・・

「ヒゲ男!こっちはもうカバーしていいぞ!」
「了解〜!」
そう呼ばれたヒゲ男は格納庫にある武神の一体に近づいた。
トルクレンチを構え、しかしヒゲ男はむき出しになっているその内部構造に目を凝らす。
(このモデルは油圧配管に設計上の難があったはずだが・・・
 改良されているな。悪くない・・・いや、いいセンスだ)
「バカやろこのやろー!!」
「ひゃ〜!?」
突然のヤクザキックにヒゲ男が吹き飛ばされる。
見ると、本当にヤクザのような強面でスキンヘッドの初老の男が立っていた。
「ぼさっとしてるんじゃねぇ!仕事がわかんねーなら床の掃除でもしてろボケ!」
「は、はい!班長!すいやせん!」
班長・・・ここの整備班きってのベテランであるその男は全ての作業者からそう呼ばれていた。
自分の命名規則に従うならハゲ男と言ってやりたいところだが、みんなおくびにも出さない。

ヒゲ男はモップを持って、整備が終わったばかりのとある武神の前の床を拭き始めた。
モリブデンオイルと男たちの汗がこびりついた床は簡単には綺麗にならない。
ふと見ると、若い作業者の一人が、武神が背負っている巨大な十字架を指さしながら叫んだ。
「班長!看護婦さんの十字架は整備しとかなくていいんですか?!」
看護婦さん・・・誰ともなくその武神を整備班はそう呼んでいた。
それはヒゲ男がそうであったように、見たまんまのネーミングであった。
この武神の本当の名前を誰一人知らない。
気がついたら、いつの間にかこの格納庫に置かれていたのだ。
幸いにも世の中に広く普及しているAM-47型武神と共通部品が多いため、
整備にはさほど問題はなかった。その十字架を除いて・・・
「火だるまになりたくなかったら、そいつには手を出すな!
 プラズマ・リアクターだ!専門家以外じゃ手に負えねぇ!」
そう班長が叫び返す。
「この武神の持ち主が出撃前に自分で調整するらしいっすよ〜!」
ヒゲ男がそう叫ぶと、若い作業者が感嘆の声を上げる。
「へーっ!すごいっすねー!」
「ふん!どうだかな!!」
班長は自分がいじれない機械がこの世に存在することが不満そうだ。
「俺としては、早くそのオカマ野郎の面を拝んでみたいところだなぁ!
 そうだろ!?ヒゲ男!」
ヒゲ男は満面の笑みを浮かべて班長へ顔を向けた。
「そうですね〜!」
ヒゲ男は腕時計に目を落とした。
(そろそろ良い頃合だな・・・)

29 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/15(月) 22:52:56.38 0
「よーし!そっちの作業も片付いたな!」
武神の整備が完了すると班長が作業者達を集めた。
「次は機龍の方をやるぞ!ヒゲ男!安全帯もってこーい!!」
「・・・班長!ヒゲ男がいません!」
「ぬぅあんだとぉ!?」
班長は、看護婦さんの前の床に放り出されたモップを見て全てを悟った。
「あの野郎!逃げやがったなぁ!!」
「探してきますか!?班長!」
「時間がねぇんだ!ヒゲ男は放っといて次いくぞ!次ぃ!!」

第三会議室でブリーフィングが開始されるよりも約20分ほど前のことである。
抵抗軍本部全体が慌ただしい反撃作戦の準備に追われている最中、
顔のヒゲが特徴的な中年男性がエレベーターに続く廊下を走っていた。
「あ、すいませーん、すいません!」
彼が着ているツナギがあまりに機械油で汚れていたので、
すれちがった軍服を着た二人組の男が思わず顔をしかめた。
「なんだぁアイツ?」
「この先のエレベーター、たしか作戦会議室行きだったよな」
「あいつが選ばれた兵士ぃ?まさかぁ!」

エレベーターに入ったヒゲ男は、背負っていた大きなリュックサックを床に下ろした。
「さーて、それじゃいっちょ行きますか!」
エレベーターの扉が閉まり、そして次にその扉が開いた時、
そこの薄汚いヒゲ男の姿は無かった。
かわりにエレベーターから現れたのは、スーツをびしっと着こなしたビジネスマンだった。
彼は腕時計に目を落とした。
「ブリーフィング開始まで20分。ふっ、これが大人の余裕というものだな」
リンネはきゅっとネクタイを締め直すと、悠々とした足取りで第三会議室へ向かった。

30 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/15(月) 22:54:04.89 0
そして現在。
第三会議室ではブリーフィングに先がけて兵士達の自己紹介が始まっていた。
>「対機竜なら無敵ですよ、僕」
そう言って内藤が自己紹介を締めた時、
彼の武神をずっと間近に見てきたリンネは決して不遜な発言だとは思えなかった。
ドラグナイトはかなり戦闘で使い込まれた武神である。
つまり、あのピーキーな武神を使い続けて生き延びれるだけの、
幸運以上のセンスが彼には備わっているということだ。

次に六角桔梗が自己紹介を始める。
>「私に身内を害された方などいらっしゃいましたら、作戦決行の前に直接仰ってください。
> ……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」
「それはどうかな?もしも私が君に身内を害された者であれば・・・
 今この場で君を撃つだろう」
リンネが指を鉄砲の形にして桔梗を撃つ真似をした。
彼女と目があったリンネは、
まるでビスケットをつまみ食いしたことがママにバレた子供のように口を押さえてみせる。
「オゥ!失礼、お嬢さん。ちょうど私が自己紹介をする番がきたみたいなのでね」
リンネは椅子から立ち上がると、わざとらしく両腕を広げて見せた。
「私のような有名人が改めて自己紹介というのも変な話だが、
 アイサツは大事だ。古事記にもそう書いてある。
 私の名前はリンネ……リンネ=シーナ。
 ご存知の通り、大手武神製造メーカーであるBCインダスタリーの代表取締役社長だ」
とリンネは言ったが、兵士の中で彼を知っている人間は少ないだろう。
兵士にとっては武神の性能を知ることは大事であっても、誰が作ったかはそれほどでもないからだ。
この基地の整備班がリンネをほとんど知らなかったのと同じように。
リンネは構わず続ける。
「しか〜し、だからといって恐縮する必要は一切ない。
 例え私がニシチューセッツ大学を17歳で主席で卒業していたとしても、
 それは過去の話だ。
 例え私が、あの名作武神であるジャイアントの開発者であり、
 世界で一番多くの武神を売った男としてギネスブックに登録されていたとしても、
 それは過去の話だ。
 だから、恐縮する必要は一切な〜い」
無駄に自慢話を挟みながらリンネは続ける。
「大切なことは過去に何があったかではない!
 今、これから、私達に何ができるかだ!
 
 う〜ん、今私とっても良い事を言った気がするぞ・・・
 この言葉。メモしておいて」
リンネが立ちっぱなしの少女、フレイアにそう頼む。
「君達が乗る武神は私のと比べたら旧式のようだが、君達は優れた兵士だ。
 きっと私ごときの助太刀なんて必要ないだろう。
 だが、もしも君達の乗機が敵の攻撃によって損傷してしまったのであれば・・・
 その時は彼女を探すといい」
リンネはそう言って、懐から1/30スケールの
グリントガール『本能モード』のフィギュアを取り出して机の上に置いた。
その顔は赤十字の書かれた仮面で隠されているが、あからさまに美少女なのだ。
「この白衣の天使が、君達の武神と機龍を癒してくれるだろう。
 そして、もしも彼女に恋をしてしまったのなら・・・どうか思い出してほしい。
 彼女の中に入っているのは、この私だ」
リンネはジョークを言ったつもりである。
これから起こるであろう笑いを聞くために、ドヤ顔で耳を傾けた。

31 :天城宗一郎 ◆b7dhPV6Nj6 :2015/06/16(火) 07:48:42.89 0
少しばかり、天城宗一郎という男の話をしよう。

年齢は満19歳。生まれも育ちも東洋に浮かぶ島国――瑞穂皇国だが、生粋の瑞穂人というわけではない。
母方に西洋系の血が混じった所謂クォーターであり、彼が持つ深海の如き双眸はその名残だ。

父方の家系は、先祖を起源とする古武術流派『天城一伝流』を今なお継承し続ける侍の血筋で、
息子である宗一郎も、無論幼い頃より武術の鍛錬を常とし、やがては自分も跡継ぎに流派を託すことを使命としている。

母は生まれながらに病弱で、宗一郎がまだ年端もいかぬ子供だった時に病死した。
父は志願して軍人となり、15度目の出撃の際に名誉の戦死を遂げた。
残された家族は宗一郎と、その3つ歳下の妹だけとなってしまったが、
妹は母の病を抱えて生まれたために体が弱く、今は兄からの仕送りを頼りに生計を立てている。

そして宗一郎もまた、軍人になる道を選んでいた。

父を殺した敵が憎かったから、という理由もある。
将校になれば妹を養うのに充分な給金を貰える、という理由もある。
あとは愛すべき故国の平和を護るため――という理由も、当然ある。

軍属へ志願した理由は到底一言で語れるものではないが、とにかく宗一郎は士官学校へと入学した。

生来真面目な性格も幸いし、学校での成績は目覚ましいものだった。
特にCQC(近接格闘術)では、徒手格闘でもナイフファイティングでも、同期で並ぶ者がいないまでの実力を誇り、
その高い格闘スキルを活用した、武神の操縦技術にも長けていた。

卒業後は士官候補生として着任し、それから半年ほど経った後、晴れて少尉に任官する。
急を要する戦時任官だったとはいえ、かなりのスピードで現在の地位まで登り詰めていた。
まだ経験は未熟ながら、宗一郎は間違いなく優秀な軍人だと言えたし、本人にもそういう自覚はあった。

世界に『異変』が訪れたのは、ちょうどその頃だった。

今までの価値観、倫理、国境、敵と味方の区別が吹き飛び、昨日までは銃を向け合っていた相手と手を取り合う。
それらに納得はできなかったが、必要なことだとは理解していた。
過去の憎しみを全て捨てることはできずとも、割り切ることは可能だ。
新たに現れた人類共通の敵を討つために、腹に抱えた悪心は消化して自らの糧とする。

ここは栄光の最前線。

『滅びの軍勢』との戦いに招集された、一握りのエース達が集う場所。
宗一郎はそのメンバーの一人で、周りもきっとそうなのだろうと、今この瞬間までは思っていた。

だが――

32 :天城宗一郎 ◆b7dhPV6Nj6 :2015/06/16(火) 07:49:10.92 0
(何だ、こいつらは……?)

見渡す限り、とても軍人には思えない有象無象がそこに居た。

>「よぉーやく集まったなァクソ虫共!」
>「んじゃまァ?あのクソッタレ共をブッ叩く為の?作戦会議を始めっぞ?」
>「のまえにィ?自己紹介がいるか?あァ面倒臭ェ、こういうのは偉ぶりたい連中にやらせろってんだ……」
>「あー、あれだ、旧連邦軍所属、サウスウィンド中佐だァ」
>「南風特攻野郎、の方が通りがいいかァ?ま、寝首掻くのはクソヤロウ共を片付けてからにしろよクソ虫共?」

まず隊長だと名乗ったこの男、見た目はただのゴロツキで、言葉遣いも宗一郎が知る常識とは掛け離れている。
階級章を見たところ中佐の肩書きだというのは本当らしく、上官である以上口を出すつもりはないが、
果たしてこれに自分の命を預けていいのかは、甚だ疑問が残る。

>「神聖帝国一等兵フレイア=レシタール。現状祖国は壊滅、生存者無し。以上」

そしてこちらの少女は態度こそまともながら、年の頃は妹よりも幼くさえ見える。
国によっては、学徒兵まで動員せねばならない程切迫しているとは聞いていたが、
彼女が平然と軍服を纏っている姿を見れば、それも改めて実感することができた。

>「あ、ついでに自己紹介もしとこっかな。内藤・ハイウィンド・隆輝。
> 生まれはニッポン、階級は准陸尉。後は、えーと……」
>「対機竜なら無敵ですよ、僕」

>「……イザナ正統皇国所属、六角 桔梗(ろっかく ききょう)准尉です。
> 正統皇国においては、首脳部は壊滅。軍部は私の様に特殊工作任務に出ていた者を除いて全滅。
> 民間人の犠牲者も多数……端的に言えば、正統皇国は事実上滅びたと言って差し支えないでしょう」
>「……正統皇国で私が所属していた部隊は、第13特殊部隊。他国においては『亡霊』などと呼ばれていたと記憶しています。
> 私に身内を害された方などいらっしゃいましたら、作戦決行の前に直接仰ってください。
> ……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」

二人の准尉は片方が肥満気味で、ちゃんと体を鍛えているのかどうか疑わしく、
もう一人はこれまた若すぎる少女だということを置いておけば、他のメンバーよりはマシな風貌に見えたが、やはり物言いが気に入らない。

一体ブリーフィングを何だと思っているのか。
上官に対する言動の酷さにしても、敵国同士の軍人が集められた抵抗軍の現状を鑑みても、
わざわざチームに不和をもたらすような発言をする理由が分からない。

33 :天城宗一郎 ◆b7dhPV6Nj6 :2015/06/16(火) 07:49:44.16 0
>「この白衣の天使が、君達の武神と機龍を癒してくれるだろう。
> そして、もしも彼女に恋をしてしまったのなら・・・どうか思い出してほしい。
> 彼女の中に入っているのは、この私だ」

そして最後のこいつの自己紹介まで至り、遂に宗一郎はキレた。

「いい加減にしておけ、貴様達」

リンネは観衆の笑いを期待していたが、返って来たのはドスの利いた怒声だった。
宗一郎は地声が別段低いわけでもないが、それでも普段よりは大分音程の低い声を出しながら、鋭い眼光を周囲に飛ばす。

「一体この場を何と勘違いしている? これから戦場に赴く前に――いや、そうでなくともだ。
 上官に対する口の利き方から指導しなければならない程、貴様らの祖国の軍規はお粗末なのか。
 軍隊とは徹底した縦社会であり、それが我々のような国境を越えた寄せ集めであっても、その規律に従うことが軍としてのチームワークを形成する。
 今まで何を教わってきたかは知らないが、俺と同じ部隊に入った以上、先程のような言動は二度と許さないと覚えておけ」

一頻り言い終えた後、宗一郎は起立してサウスウィンド中佐に向き直り、
改めて彼の命令に従うべく、腰の裏で手を組んで姿勢を正す。

「――出過ぎた発言を失礼致しました、中佐殿。自分は瑞穂皇国陸軍、武神第7連隊所属、天城宗一郎少尉であります。
 搭乗機は零式機動武神。主に近接兵装を用いた、前衛での格闘戦を得意としております。以上」

宗一郎は中佐に対する不信をできる限り押し殺したまま、指示された通りに模範解答的な自己紹介を終える。
仮に上官が信頼できずとも、ここが皇国軍でないとしても、軍である限りその命令は絶対だ。

34 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/17(水) 00:51:56.34 0
ロジーは、自分が世界で一番恵まれた人間だと疑わなかった。
幼い頃から人並み以上になんでもこなせたし、僅か8歳の時には実家の土木用軽騎竜を完璧に操縦してみせた。
12歳で倍率千倍の教導隊学校へ主席で合格し、15歳で教導勲章も手に入れた。
地元はロジーの輩出を天恵と謳い、教導官達はその騎竜繰りの手腕を奇蹟の業と口々に評した。

そうしてロジーは、生まれであるISE小国家連合体がその年の教導隊卒業生1000人の頂点を戴く、
5名の制空竜撃手(ストライクドラグナー)に任命される名誉を当然のように受け取った。
自分ほどの優秀な騎竜乗りなどこの世に存在するはずもないと思っていた。
なんてったって自分は、奇蹟の子なのだから。

歯車が狂ったのはそこからだ。
その年の成績トップは、ロジーと同じく神に愛された申し子は、同率一位で6人いた。
部隊編成上、制空竜撃手の椅子は毎年5つしか用意されていない。
誰かが補欠に堕ちる運命だった。

ISE首脳陣は当初、この奇蹟の子供たちにそれでも順位をつけようとした。
戦闘機動、飛翔砲撃、対武神格闘、あらゆる試験項目を6人に課した。
ロジーはもとより他の5人も、1人と欠けることなく全ての項目で満点を弾き出した。
全員が最優秀で、決着がつかなかったのだ。

最終的に、彼ら6人は教導隊で暮らしていた空母の甲板上に集められた。
教導官は目頭を揉みながら、今から100m先にあるあの5つの旗をとってこいと命じた。
旗を手に入れた者に制空竜撃手の座を与えると。
なんのことはない。最後の試験は、機竜操縦となんの関係もない、ただの100m走だったのである。

そして――天に二物も三物も与えられたロジーにとって、たった一つだけ弱点があった。
足が遅かったのである。

他の主席生5人に大きく遅れてゴールしたロジーに与えられたのは、制空竜撃手『補欠』の称号。
正規の連中に何かあった時の補充要員として飼い殺される未来への、絶望的な第一歩であった。

・・・……――

35 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/17(水) 00:53:05.34 0
「聞いているのかね、ギーグ君!」
「ギーガーっす」

ISE統合戦闘航空団・総司令部。
美しい内海に面した基地本営の一室で、ロジスティクス=ギーガー三等空尉は怒声を聞いた。
青い空を書割りに無数の軽機竜隊が飛び立ち、蒼穹に幾条もの白線を描く。
つい広々とした大自然に思いを馳せそうになるのを必死にこらえて視線を落とせば、上官の残雪頭が目の前にある。
制空竜撃部隊の徽章を胸に輝かせる上官は、甚だ面倒だといった風情で指令書を差し出した。

「国連から直文での招集命令だ。我が連合体から選りすぐりの機竜乗りを貸し出せとな!
 つまりはISEの誇る人類最後の砦、制空竜撃手を寄越せという要請だ、ギルガメッシュ君!」

「ギーガーっす。それで自分に白羽の矢が立ったってわけっすか。ははあ」

大陸西部の小国家が列強諸国と対等となる為に合併して成り立っているISEは、
他国に大きく遅れを取る国力を補うために、徹底した英才教育による人材の育成を実施している。
その最たるところが、ISE最強の練度を誇る機竜乗りのトップエリート集団、制空竜撃士(ストライクドラグナー)だ。
何を隠そうギーガー三尉、つまりロジーもまた毎年0.5%の倍率の中選ばれる制空竜撃士の一員なのである。

「世界の主要国家に突如現れ、破壊の限りを尽くした"異変"・『滅びの軍勢』……。
 各国協働で手を組み、共通の敵に立ち向かう、その御旗を君が握るのだ。
 まさに、英雄となるべく育てられた"奇蹟の子"、君にお誂えの任務だと思わんかね、ギギネブラ君!!」

「ギーガー……いや、なんでもないっす。滅びの軍勢ねえ、あんま現実味のない話っすね」

ロジーはかの敵を見たことがない。
ISE空軍の哨戒範囲に滅びの軍勢が出現したことがないからだ。
大陸の西の果てに小さく領土をもつISEは、一番近い滅びの地点からでも1000kmは離れている。
つまるところ、ド田舎の弱小国家過ぎて滅びの標的にならなかったのだ。

もちろんTV中継や軍事報告で何度も『滅びの軍勢』は見ているから、眉唾ものというわけではない。
ただ、リアルな危機感に乏しかった。
どこか霧の向こうというか、対岸の火事のような感覚でしかコトを認識していなかったのだ。

「実感があろうとなかろうと、要請は本物だ。我が軍としても国連の要請を無視することは出来ない。
 君にはすぐに出立してもらうぞ。機竜は君の搭乗機をそのまま抵抗軍の預りとすることにする」

「アイサ。その代わり、任期が空けたら昇任の話、考えておいて下さいよ」

「ああ約束しようギルデロイ君。無事戻ってきた暁には、君を正式な部隊員として迎え入れよう」

ロジーは、制空竜撃士としての称号を持ちながら、未だ敵軍との戦闘に出たことがなかった。
補欠の彼は既存の正規部隊には組み込めず、かと言って虎の子の制空竜撃士を通常任務で使い潰すこともできず、
正規部隊の遠征にくっついて行って空挺や物資輸送と担当するという宝の持ち腐れもいい所な運用しかされてこなかった。
早い話が、上層部も持て余していたのだ。教導隊を卒業して5年。
同期は既に一等空尉や、早い者は佐官にまでなっているのに、ロジーは未だ操縦士最下位の三等空尉のままだ。

だから、今回の派遣の話は上層部にとってもロジーにとっても渡りに船であった。
上は高い投資して育てたエリートをようやく適切な戦場で使うことができる。
最強の操縦士を貸し出したとなれば国連に大きく恩を売れるし、今後の外交カードにもなる。
そしてロジー本人にとっては、やっと訪れた戦功を挙げる機会だ。

5年間の下積みは本当に不毛だった。
敵を倒す為に機竜乗りになったのに、武神を連れて敵地の奥まで飛ばせられ、帰りは追い回されながら逃げ帰るだけ。
上官の覚えも悪く、未だにファミリーネームを間違えられまくる始末だ。

司令室を辞して、ロジーは硬く拳を握った。
いきなりでかい戦場だが、このチャンスは逃さない。必ず向こうでのし上がる。
この制空竜撃部隊の徽章に恥じない最強の機竜乗りとして、ロジスティクス=ギーガーの名を轟かせる。
野望を胸に、彼は抵抗軍本拠地へのチャーター機へ乗り込んだ。

36 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/17(水) 00:54:00.84 0
――……・・・

抵抗軍本部に到着したロジーは早速愛機をドッグに入れて、現地の整備士達との打ち合わせを済ませた。
公用語は教導隊で習得済みだ。田舎訛りが心配だったが、彼らの反応を見るにうまく喋れているらしい。
ここへ来る途中、いくつもの壊滅した都市を見た。
ISEにいくつかある国際空港からこの本部のある地へは本来一便で往来できるはずだが、
複数の空港を経由せざるを得なかった理由がようやくわかった。何箇所か、空港自体が消滅しているのだ。

しばらく休養して時差ボケと疲労を抜いた頃に、招集を受けた者達の現地入りが完了したとの連絡があった。
抵抗軍は作戦毎にいくつか部隊分けをしているらしく、ロジーはC部隊に割り当てられた。
一応航空戦闘団のフライトジャケットに袖を通し、腰に自動拳銃を吊ってブリーフィングに向かう。

>「よぉーやく集まったなァクソ虫共!」

会議室には既に何人かの隊員が集まっていた。
その中でもひときわ目を引くのは中央で不遜にも足を投げ出している金髪リーゼントの男だ。

>「あー、あれだ、旧連邦軍所属、サウスウィンド中佐だァ」

信じがたいことに、この素行の悪さで中佐、しかもこの部隊の隊長らしい。
戦時中というのがどれだけ切羽詰まった状況を示すのかこの男を見ればなるほど一目瞭然だ。
ロジーは微笑み顔の男の隣に腰掛けると、供された水のボトルを煽って紹介を待った。

>「神聖帝国一等兵フレイア=レシタール。現状祖国は壊滅、生存者無し。以上」

壁際で直立不動にしていた女が静かに自己紹介した。
よく見ればまだ年端もいっていないような、ロジーと一回りも違うような少女だ。
こんな幼い子供さえも戦線に投入しなければならないほど、逼迫している国もあるのだ。

>「あの……ちょっといいですか。なんで君、わざわざ立ってるの?……宗教上の理由か何か?」

隣の微笑みデブが誰もが思ったであろう疑問を代弁した。
この男、こんなナリしてなかなか紳士だ。だが立ちたくて立ってるんだったらお節介になりゃしないだろうか。

>「僕らは君より階級高いかもしんないけど、ぶっちゃけよその国の人間だしさ。
 ただの他人か……もうちょい情緒のある言い方をするなら、同志とか、仲間とか、そういうのでしょ。
 気にせず座んなよ。……君が宗派の教えを守る事に、強い価値を感じているなら、強要はしないけどさ」

「おいおいおい、あんまデリケートなことを聞いてやるなよ兄ちゃん。
 俺も経験あるけどよ、機竜乗りを二週間もやりゃ立派な痔主サマに永久就職だぜ。
 着席を奨めるなら、真ん中に穴の空いたクッションを敷いてやってからにするんだな」

ちなみにこの通称スケベクッション、ロジーも私物として個室に持ち込んでいる。
手放せない愛用の品なので譲ってやるつもりもないが、直立少女の気持ちはわかる。

37 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/17(水) 00:54:55.85 0
>「あ、ついでに自己紹介もしとこっかな。内藤・ハイウィンド・隆輝。
 生まれはニッポン、階級は准陸尉。後は、えーと……」

微笑みデブもとい内藤はその穏やかな笑顔を崩さぬまま、こう続けた。

>「対機竜なら無敵ですよ、僕」

「……ああ?」

べコォッ!と手に持っていた水のボトルがひしゃげる。
キャップがはじけ飛び、中身が僅かに溢れ出て握られたロジーの拳をつたう。

「大した自信じゃあねえか、ニポネーゼ(ニッポン人)。空もとべねえクズ鉄に刺せるほどこっちの機竜は甘くねえぞ」

ISEは海洋国家の割合が多く、必然的に陸戦兵器である武神戦力が軽視されていた。
如何なる軍事行動にもまず機竜による制空は必須で、武神を投入するにも機竜による空挺に頼る他ない。
ロジー自身、軍人の教養として武神操縦は修めているが、何を置いてもやはり機竜だ。

>「……そうですね、相互認識は重要です。この様な状況で、いざという時に友軍誤射をされては堪りません」

内藤とロジーの対立などどこ吹く風で、もう一人の少女が冷水のような口調で進行を取った。

>「……イザナ正統皇国所属、六角 桔梗(ろっかく ききょう)准尉です。
> 私に身内を害された方などいらっしゃいましたら、作戦決行の前に直接仰ってください。
 ……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」

(うわぁ、重たそうな奴多いなやっぱ)

滅びの軍勢と直面していない、滅びに家族も奪われていないロジーにとって、
戦争の悲惨さの体現者とも言うべき六角やレシタールの姿はとても陰鬱に映った。
自分は違う。俺はここに名を上げに来たのだと内心の頬っ面を叩いて表情を維持する。

>私の名前はリンネ……リンネ=シーナ。
 ご存知の通り、大手武神製造メーカーであるBCインダスタリーの代表取締役社長だ」

「マジかよ……うちの陸軍に卸してるメインサプライヤじゃねえか」

BCインダストリーの傑作機『ジャイアント』や『ゴリアテ』、『タイタン』はいずれもISE陸軍の主力武神だ。
といっても武神戦力に降りる予算が少ないので、基本的には市場に流れている中古の再整備品だが。
それでも必要十分に過ぎる性能は、そのコストパフォーマンスで幾度もISEの経済状況を救っている。

>「この白衣の天使が、君達の武神と機龍を癒してくれるだろう。
 そして、もしも彼女に恋をしてしまったのなら・・・どうか思い出してほしい。彼女の中に入っているのは、この私だ」

「やめろよ部隊のイロモノ係数1人で爆上げしてんじゃねーよ……」

ロジーは慄然と呟いた。
その奇抜過ぎる男の情報量は、内藤への怒りを押し流すのに十分過ぎた。
バカバカしくなったのである。
だが、全員が一様に毒気を抜かれたわけではないようだ。

38 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/17(水) 00:56:35.57 0
>「いい加減にしておけ、貴様達」

静かに謹聴していた純軍人然とした男が、低くドスの聞いた声を上げた。
それは怒声というにはあまりにも静かで、しかしただの忠告にしては凄まじい重圧を含んでいた。

>今まで何を教わってきたかは知らないが、俺と同じ部隊に入った以上、先程のような言動は二度と許さないと覚えておけ」
>「――出過ぎた発言を失礼致しました、中佐殿。自分は瑞穂皇国陸軍、武神第7連隊所属、天城宗一郎少尉であります。
 搭乗機は零式機動武神。主に近接兵装を用いた、前衛での格闘戦を得意としております。以上」

天城は自己紹介を終えると、何事もなかったかのように謹聴の姿勢に戻る。
対照的に、ロジーは立ち上がっていた。

「ちっと待てや、アマギっつったか」

会議室の机に快音立てて掌を突き、威嚇するように前傾姿勢になる。
会って一時間も経ってないうちから舐められたら負けだ。
つまりそれは、こんな弱気な代表よこすなんてISEも大したことないなと言われているのと同じなのだ。

「てめえが何をどう許さねえってんだ。
 そこのニヤつきデブもだけどよ、武神に乗るとみんな脳味噌がヒューヒューになんのか?あ?
 てめえらクズ鉄の武神が戦場で爆撃されねえで居られるのは誰のお陰だと思ってんだ。
 俺たち機竜乗り様が制空権をとってやってっからだろうが!」

ロジーはエリート故の、選民意識的な思想が強かった。
武神乗りが活動できるのは機竜のお陰、武神なんか機竜のオマケでしかないと、本気でそう思っていた。
これが本物の戦場を経験したことのない、お座敷軍人特有の視野の狭さである。

「同じ部隊の中だろうが、階級が一緒だろうが、俺は認めねーぞ。
 機竜が上!武神は下だ!武神乗り共はせーぜー毛虫みてーに這いつくばって前面投影面積削減しとけや」

しっかり啖呵を切ってから、ロジーはどっかりと椅子に深く腰掛け直した。
いたわっていた痔のことを完全に忘れていて、凄まじい激痛が身体を貫いたが、おくびにも出さず自己紹介した。

「ロジスティクス=ギーガー。ロジーって呼んでいいぜ。ただし武神乗り、テメーらはダメだ。
 所属はISE統合航空戦闘団、階級は三等空尉。――制空竜撃士(ストライクドラグナー)っつったら分かるよな?
 担当は空挺輸送(エアボーン)、武神のガラクタ共を敵地に放り込んでやんのが俺の仕事だ」

この時、ロジーは最も重要なことを自己申告していなかった。
彼が実戦経験のない戦闘童貞だということである。


<自己紹介。早速トラブる>

39 :フォルトゥナータ ◆FoVul/4mv2 :2015/06/17(水) 04:34:30.43 0
『抵抗軍』の精鋭の少なからずがそうであるように、フォルトゥナータ・フォルテもまた、天才と呼ばれる部類の人間である。
ただし、他の天才達とフォルトゥナータ・フォルテとは、はっきりと明確な違いがあった。

才能の多寡? いいや。
才能を生かせる状況? それはさほど違いはない。
才能への自信の有無? 惜しいが違う。

正解はこうだ。

フォルトゥナータ・フォルテは、あふれんばかりの才能と、その才能を生かす状況。そして溢れんばかりの自信を持った、その上で。
自身を『カンパーナ社の高価な備品』と認識して疑っていない、のである。

40 :フォルトゥナータ ◆FoVul/4mv2 :2015/06/17(水) 04:35:51.04 0
C隊の自己紹介も、残すところ一人を残すのみとなった。
注意を払って部屋の全体を見渡していた者なら、会議室の末席に長い黒髪の女性が残っている事は認識しているだろう。
彼女は四角く野暮ったい眼鏡をかけ、常にほんわかした笑みを浮かべて、状況を見守っていた。
(宗一郎とロジーの対立で全力で空気が悪くなった今では、少々困ったような笑顔に変わってしまっていたが)
早い時間からこのブリーフィングルームに来ていた者がいるなら、彼女が誰よりも早くこの部屋に来ていた事に気がつくだろう。ついでに、彼女の席の横にひっそりと置かれたクーラーボックスにも。

部屋にいる全員の視線を集めて、女性の笑顔が花のように咲いた。

「私の番ですねぇ。分かりましたぁ、でもその前にぃ」

花はずいぶんと間延びして咲いた。
そんな印象を室内の全員に与えながら、彼女は立ち上がると、傍らのクーラーボックスを開いた。
中に入っていたのは、全体が真っ黒に塗られた縦長の缶が全部で8本。
彼女はそれをトレイ(クーラーボックスに入っていた)にのせ、一人一人に配って回る。

「皆さんよくしゃべってのどが渇くかと思いますのでぇ、飲み物をご用意させていただきましたぁ。
 うちのスタミナドリンク、評判がいいんですよぉ。景気づけにはもってこいですよねぇ。
 あ、その缶はうちの試作品でしてぇ、ランダムでいろんな文字列が浮かぶのが売りだそうですよぉ」

彼女がそういうと同時、おのおのの目の前の缶に共通語で文字が浮かんだ。
内容は以下のとおりである。

サウスウィンド:『あんたが隊長』
フレイア:『元気出して』
内藤:『能ある鷹は爪を隠す』
桔梗:『過去は変わらないが、これからは変えられる』
リンネ:『急募:武神エンジニア。待遇厚遇、委細面談、詳細はお近くのスタッフまで』
宗一郎『話せば分かる。話そうとした?』
ロジー『これ飲んで目覚ませ馬鹿』
女性『カンパーナはいつもあなたの隣に』

文字に対して反応をしようとするであろう人々を、ぽん、と手を打って制する。
「ひとまず私も自己紹介をぉ。カンパーナ社から参りましたぁ。主任エンジニア、および警備軍少尉。
 フォルトゥナータ・フォルテと申しますぅ。以後お見知りおきを……」
深々と礼をし、続ける。
「私の“フォーヴァル”は、機竜ではありますがまったく新しいカテゴリですので、説明が難しいんですよねぇ……まあ、機竜乗りだと思っていただければOKですぅ」
着席。あとは中佐殿の腕前をごろうじろ、だ。


予断だが、カンパーナがドリンク開発部門を内部に持っているのは事実である。
その商品の中でもスタミナドリンクは「上司には秘密にしておきたい秘密兵器」の異名をほしいままにしている。飲むと、規定時間疲労も眠気も感じないのだそうだ。

41 :ロジー:2015/06/17(水) 08:30:42.75 0
名前:ロジスティクス=ギーガー(通称ロジー)
性別:男
所属・階級:ISE統合航空戦闘団/制空竜撃部隊/三等空尉
年齢:24
性格:万年補欠逆噴射馬鹿
外見:フライトジャケットに飛行帽。黒のショートウルフカット

備考:大陸西部の小国家連合体ISEに所属する機竜乗り。
    ISE全体でも年間5名しか選ばれないトップエリート『制空竜撃手(ストライクドラグナー)』の一人。
    ……なのだが、選ばれた年は十年に一度の大豊作で、トップが同率で6人も誕生してしまった。
    最終的に空母甲板で実施された100m走のタイムで順位を決め、6人中6番目のロジーは補欠合格に。
    以来5年間そのまま一度も実戦を経験することなく滅びの侵攻が始まり、
    当然のように暇していたロジーがISE代表として抵抗軍に貸し出されることに。
    機竜乗りとしての技量はトップの名に恥じないものだが、如何せん交戦経験のなさが色々足を引っ張る。
    侵攻前は空挺武神や兵站物資などの輸送を担当。
    敵地深奥への空挺任務の復路において武装した敵機竜三機と遭遇し、
    空コンテナしか積んでない輸送機竜一機で三時間立ち回り、敵を振りきって基地へ生還した逸話がある。
    決め台詞は『届けに来たぜ、奇蹟をな!』使ったことは今のところ一度もない。



機体名称:F91ヒューガ・ギーガーカスタム
系統:総合支援用ハイトルク型重機竜
基本性能:速度3/出力8/装甲4
   
   武装:35.6cm連装砲(2門の砲身をもつ主砲。殆どお守りのようなもので滅多に当たらない)
その他装備:牽引用ワイヤーアンカー(物資をピックアップしたり引っ張ったりする為のウインチ付極太ワイヤー)
        固定用ハードポイント(コンテナや空挺武神を固定するツメ。装甲に直結しており恐ろしく頑丈)
      多段変速スラスター(出力
と速度をトレードオフする推進器。最高速時には武装用出力のほぼ全てを食われる)

備考:ISEの国境なき技術提携が生んだ次世代型重機竜。
    重量物を格納しての飛翔に特化した設計で、加速は悪いし曲がれない。
    その分トルクは凄まじく、武装した重武神を2機抱えても平均的な重機竜の速度で飛べる。
    抵抗軍に貸し出されるにあたってロジー本人の希望で連装砲を追加されているが、
    それまでは本当に申し訳程度の機銃以外は武装を積んでいなかった。
    基本的にはドンガメ紛いの直線番長であり、戦闘機動なんてもっての他。
    同型機の基本運用は装甲と最高速度に任せて敵陣を強引に横断するものであり、
    敵陣中心で複数機に囲まれれば死を覚悟するほかない。
    上述のロジーの生還は彼自身の操縦技量以上に非武装と侮った敵の油断と幸運に恵まれてのものである。

基本戦闘スタイル:ロジーが補欠ながらに編み出した非武装なりの戦闘技術。
            機竜元来の牙と爪をつかった格闘戦と、ワイヤーで敵を捉えてトルク任せにぶっ飛ばす『投げ』、
            あと申し訳程度の連装砲でなんとか今日も生き残る。
            でも基本的には輸送担当なので敵精鋭相手には三十六計涙目敗走。
            味方の武神を敵の背後まで送り込むのは大得意。なんなら機竜もイケる。

42 :フォルトゥナータ ◆FoVul/4mv2 :2015/06/17(水) 18:53:11.73 0
名前: フォルトゥナータ・フォルテ
性別: 女
所属・階級:カンパーナ社主任エンジニア/カンパーナ社警備軍少尉
年齢: 23
性格: ゆるふわほえほえ(眼鏡あり時)/クールで切れ者(眼鏡なし時)
外見: レディススーツの黒髪ロングお姉さん。平時は黒縁の野暮ったい眼鏡をかけている。
備考: 生まれた時から「国」ではなく「会社」に忠誠を尽くして育った、筋金入りのカンパニーウーマン。
    他者には真似できない独特の理論からさまざまな技術を生み出すある種の天才であり、資格こそ(ただの)エンジニア
    でありながら彼女のカンパーナ社の業績への貢献は計り知れない。
    カンパーナ社が新興の機竜メーカーでありながらこの世界の軍需産業の一角にしっかりと食い込めたのは彼女の技術
    あっての事だと、彼女を知る者たちの間でまことしやかに噂されるほどである。
    ただし、年齢による経験の少なさはさすがにいかんともしがたく、実際の機竜、武神の運用を肌で感じる機会にはこれま
    で恵まれていなかったため、そこを埋めるため『抵抗軍』の先発部隊に志願した。
    なお、志願に当たってカンパーナ社からは警備軍の少尉(同軍機竜パイロットの最小階級)の階級を付与されているが、
    これは限りなく名誉階級に近い。彼女の軍での実戦経験は訓練や実験機の運用を除けばほぼゼロである。
    ただし、彼女の特異な才能を生かす特殊な機竜を保有しているため、軍の戦力としてはプラスマイナスで標準やや上程
    度である。
    なお、視力は左右ともに2.0オーバーであり、眼鏡は情報端末機能のついた伊達。

機体名称: フォーヴァル級1番機“フォーヴァル”
系統:航空母機型機竜試作機
基本性能:速度1出力10装甲4
武装: 多目的小型無人竜載機“ヴァルチャー”×70
    “フォボス”40mm光学機関砲×2
その他装備:対地対空汎用大型レーダーユニット“ミネルヴァ”
        竜載機遠隔コントロールシステム“ネスト”
        小型竜載機発着設備、および内蔵型格納コンテナ

 竜載機名称:多目的小型無人竜載機“ヴァルチャー”
 系統:小型無人機竜
 基本性能:速度5出力2装甲1
 武装:“LM12”9mm光学機関銃×1
     “ヴァルチャークロー”光学力場生成装置×2
 その他装備:標準的な機竜に搭載されている観測機器は一通り搭載されている。
    
備考:機竜本体の型式名、機体名は Flock Of VULture(ハゲタカの群れ)の略称。通常の機竜よりやや大型である(全高5m、
    尾も含めた全長10m)。旧世代の兵器である「航空母艦」をヒントに、無人の竜載機(艦ではなく竜に積むので竜載機)
    を大量に搭載した特殊な機竜。
    竜載機は、機竜の1/8程度のサイズでありながら、(標準的機竜、武神よりは劣るものの)高い戦闘力を持つ無人戦闘ユ
    ニットであり、“フォーヴァル”はそれらを“ネスト”による管制で有機的に連携させる事で高い状況対応力を持たせるとい
    うコンセプトの機竜である。
    “ネスト”による機体制御は最長で1km程度まで有効だが、高度な戦闘に必要な高速通信は実用距離が数百m程度と短
    く、武神、機竜の宿命である「格闘戦程度しか有効打がない」現状の打破にはいたっていない。
    将来的には基地からの遠隔制御で無人機竜、武神を安全に操る技術への発展も視野に入れているらしいが、その実現
    は早くとも十年単位の未来になるだろう。
    なお、“ネスト”による通信はフォルトゥナータ曰く「まあまず傍受されない」らしいが、どのような技法を用いているのかは
    彼女も含めた上位技術者程度しか完全には理解できていない。
    “ネスト”による竜載機制御には現在のところ高度な熟練と脳に対する過負荷に耐えられるある種の体質が求められ、
    現時点ではフォルトゥナータ・フォルテ以外にこれを実践できる人間は存在しないとされている。

基本戦闘スタイル:

    複数の竜載機を操り、比較的遠距離から相手を攻撃する。
    竜載機単体の火力は決して高くないが、相手の装甲の弱い点を狙ったりヒットアンドアウェイでかく乱してカバーする。

    また、非戦闘時には竜載機を多方向に飛ばして偵察の任を行う。

43 :Prelude ◆xMZSJ.LKvw :2015/06/17(水) 20:05:47.79 0
【王国の軌跡(T)】

突如として現れた、滅びの軍勢(ほろびのぐんぜい)は、瞬く間に赤黒く塗り潰した。
俺が好きだった王国の蒼い空を。そして、そこに住まう幾多の人々の生命と未来を。


また、あの時の夢だ――――


「武神龍騎兵……可能性の神……希望の象徴……主任……俺は……」

微睡と現実の境界で呟く。あの日、准尉の階級と共に与えられた言葉を。
滅びの軍勢に対する最後の切り札。救国の英霊を導く力。
俺は、ただひたすらにその理想を信じて戦った。
それが正しい事なのだと疑いもしなかった。
だけど、そんなのは全部、嘘だった。


――――主任が俺を利用するためだけに用意した、都合の良い幻想だった。


「姉さん……どうして……あんなの、まともな人間のやることじゃない……!!」

呟きは、叫びに変わっていた。
張り詰めた自分自身の声が、俺の意識を覚醒させる。
目に映るのは、格納庫の片隅に灯された照明を淡く反射する冷たい神鋼――――

44 :Prelude ◆xMZSJ.LKvw :2015/06/17(水) 20:07:58.93 0
【王国の軌跡(U)】

「機体チェックの最中に居眠りしてたのか……? 作戦開始が近いってのに、どうかしてる」

大陸中央高地に広がる、豊かではないけれど美しかった空と風の故郷、ハイランダー王国。
その次期主力兵装候補として開発が進められていた試作型武神"シュヴァリアー"の改修機。

「ここのところ寝不足が続いてたって言い訳は、ナシにしておこう。
 やれやれ、だ。報われることなんて、ないんだろうな……俺も、お前も」

見上げた愛機の開発コンセプトは"機龍との騎乗連携戦闘を想定した次世代小型高性能武神"だ。
一戦闘単位で武神一機と機龍一機、実質二機分のコストを要求される点が関係各所の不評を買い、
トチ狂った開発コンセプト故に、単騎運用時の機動性および対空性能が引き上げられる事も無かった。
無論、量産化を見送る判断が下される事になるが―――ここまでは、来歴書にも記載可能な範囲だろう。

問題があるとすれば、それ以降の展開だ。むしろ、問題しか存在していない。
俺から軍籍を奪い、故郷を奪い、財産をも奪って傭兵稼業に追い落とした忌むべき過去。
本機の量産計画が棄却された直後、開発主任は、以下の様な頭の悪いコメントを置き土産に失踪した。

『えらいひとには、ロマンが分からねーのであります。
 こーなったら、もー、例の計画を実行に移すしかないでありますね?
 次は、戦闘中に機龍と空中合体する武神の開発計画をねじこんでやるであります』

実際の所、主任――姉さん――の謎の行動力は、控え目に言って、常軌を逸していた。
ほどなくして軍上層部の主要ポストの相次ぐ不可解な急逝による玉突き人事により、
"ロマンを解する"逸材が王国軍議会のテーブルを席巻する愉快な事態となった。

「"戦争は純然たる数の暴力"……そう言ってたのは姉さんだろ? それなのに、どうして……」

その不審極まる要職交代劇の結果、採算度外視の高パフォーマンス・最高コストの武神、
"テング・サムライ〜風雲編〜"シリーズが、王国軍主力量産機の座を簒奪する事になる。



――――ほどなくして、ハイランダー王国は順当に滅亡した。

45 : ◆xMZSJ.LKvw :2015/06/17(水) 20:10:54.75 0
【キャラクター】
名前:カイ
年齢:17
性別:♂
所属:王国軍→フリーランス
階級:准尉→無階級(傭兵)
外見:瞳/髪ともに鳥羽色
備考:未返済借金額7000万(王国金貨換算)

【ユニット】
名称:RMF-EX07C"シュヴァリアー・カスタム"
系統:試作型武神龍騎兵・改式
性能:速度[2]/出力[10(※7)]/装甲[3]
武装:制式白兵刀"スタンカリバー"×2
特殊:改式斬艦刀"エクスカリバー"×1
備考:
・頭頂高:2m80cm/全高:3m10cm(両側頭部ブレードアンテナを含む)
・洋の東西が不明なフォルムを持つ元・王国軍次期主力量産候補機
戦闘:
・単騎運用時……二刀流での対地戦闘を主として行う。飛翔限界時間が数秒程度。
・機龍騎乗時……単騎の接地状態では取り回しが不可能な長刀身の斬艦刀を振う。

※『出力(-3)』……機龍に騎乗していない単騎運用時の出力水準

46 :名無しになりきれ:2015/06/17(水) 21:27:49.43 0
テンプレくらいルール通りに書こうよ
足りない項目もあるし

47 :名無しになりきれ:2015/06/17(水) 21:45:36.44 O
>>46
この方はこういう方ですから…判断はGM様に委ねてくださいませ。

48 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/18(木) 20:27:20.26 0
「……荒れんなクソ虫共、ブチ転がすぞ」

ロジーの発言を受け、フォルテが動いて尚荒れる室内を一瞬で静めたのは、発言と同時に椅子を砕いた中佐だった

「ロジー……って言ったなァ、小僧」
「俺ァ対武神の機龍乗りだがよ、武神が弱ェなんざ一度も思ったことはねェ。そして、武神には武神の仕事がある」
「んな事も分からねェで仲間を見下すようなクソ虫にも劣るクズに用はねェ、次は無いぞ?」

幾つかの作戦において、敵の要塞相手に突撃する場合、武神戦力無しでは突破出来なかったであろう場面が幾つかあった
逆に、武神相手に沈められそうになった経験も多い
故に、彼は武神乗りには敬意を表する
自身がCQCが苦手で武神操縦の適性が低かったことも一因だが

「それと一つ言っておく。現状において規律なんぞクソだ」

見てみろ、と手元の隊員名簿を示す
協力しているとはいっても、どこの国も情報を出し渋ったり、そもそも情報を出す権限を持つ者がいなかったりする
例え末端が今までの軋轢を忘れようとしても、上官の指示が絶対のままでは意味がない
経験上、上の人間ほどパワーゲームに拘りたがるからだ
名前と顔写真以外は穴だらけ、どうかすると武神乗りか機龍乗りかすら怪しい資料の山
……まぁ約二名、何をトチ狂ったか履歴書と仕様書と自伝、ついでにフィギュアを提出している者と、全項目を埋めた上で企業の宣伝もキッチリ行っている者がいるのだが

「規律に従った結果がこれだァ、これじゃ作戦もクソもねェ」
「そもそもここまで穴だらけだとマトモな指示なんざ望むべくもねェ」
「いいかァ、階級だとか規律だとか、敵とか味方とか、誰が偉いとかなんとかはこの際投げ捨てろ」
「俺が頭で、お前らは全部横一線のチームメイト」
「和気あいあい、てのは難しいだろうが、『あの国は気に入らんがコイツラは殺したくねェな』と思えるぐらいになってくれると楽だ。俺が」

大体俺がこういう役回りやってんのが間違いなんだよクソが、とブツブツ呟いた後、改めて向き直り

「そこのちびっ子、今言った通りだからとりあえず座れ」
「但しナイトウ、テメーは立ってろ、俺の敵だ。あと椅子寄越せ」
「あっ社長は座ってて下さい寧ろ黙ってて頂けますか出来れば一生」
「正統皇国の『幽霊』か、残念だが現状じゃ生かせねェかもなァ、クソッタレ共を闇討ち出来れば楽しかったんだが」
「それとそっちの優等生、そいつ一般人だから勘弁……は要らねェな、社長だし」
「あと手前ェ、一応資料来てるが実戦経験皆無じゃねェか、これから死ぬほど積めるから安心しとけ?」
「アンタいい女だな、このドリンクグロスで発注しといてくれ」

「ま、それなりに遺恨ある連中も居るだろうが?つまらねェことすんじゃねーぞ?ア?」

良い話を台無しにする勢いでまくし立て、ついでに適度に威圧しつつ、再びホログラフィーを操作する
微妙に照れてる風なのはまぁそういう事だろう

49 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/18(木) 20:29:35.89 0
ホログラフィーに映し出されたその都市は、他より頭一つ抜き出て高いビルを中心に、Yの字をした道路によって三分割されたような形をしていた

「見りゃ分かるだろうが、武神が楽に通れるのはこの三本、各都市への接続用の産業道路だけだ」
「でェ、この三本にそれぞれ3隊ずつを振り分け、三方向から核のある市庁舎を目指す、てのが今回の作戦だァ」
「どこぞの都市が時間差自爆なんぞした結果ァ、『核』を破壊すればその核から産まれた連中も纏めて消滅する、て事が分かってる。その後は各個撃破で任務完了、分かり易いなァ?」

幾つか操作すると、偵察ドローンによる『核』の映像が映し出される
赤黒く輝くクリスタルから、今まさに敵機龍が染み出す所であった

「クソッタレ共は赤黒一択だァ、この色に染めてる機体の奴は諦めて塗り替えろォ?最優先で作業して貰えるよう話は通してあるぜェ」
「なんせどこのお偉いさんも敵国を識別信号に入れるなとか抜かしやがるんでなぁ……」

更に操作を重ねると、街の外周、道の出口に合わせた南、北東、北西部分にそれぞれ青の光点が三つ写り、それから南側の一つが強調表示に代わる

「いいかァ、俺達は南通りから攻め込む」
「片側2車線だから、機龍も余裕持って飛べるだろ」
「建物の高さは約10m、アイラインで飛ぶといい感じだぜェ?」

続いて映し出されたのは南通りの映像
小さなビルが並び立ち、空には電線の類はない
恐らくは地下に張られているのだろう
その映像の中の幾つかの影を差し、

「見ての通り、こっちルートは武神が多め、それも設計初期で投げ捨てられたような『火力砲撃特化型』が中心だァ」
「要するに?ある程度のラインまではやりたい放題って訳だァ」
「当たると痛いで済みそうにもないがなァ」
「それと……今回、同じ南ルートをA隊とB隊が行く」
「連邦の精鋭かき集めたA隊が先頭、帝国提供のB隊が退路の確保、超寄せ集めの俺らは遊撃で好きに暴れろとのお達しだァ」
「前に出れるなら前に出ろォ、だとよ?」
「今回の戦果次第で今後の編成決めっから、気合い入れとけよォ?」

【作戦の概要説明:南から突っ込むよ!】
【好きに暴れていいよ!】
【編成が決まるそうだよ!】

50 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/18(木) 20:41:25.01 0
「それから……クソッタレ共の情報共有だ」
「解ってることは三つ、放っておくと周囲に同化してそこを世界から『消滅』させること、構成核を含む半分以上を失えば消滅する事、そして連中が『古い機体をそのまま強化したような機体に乗っている』事、だ」

コレを見ろ、と言って示したのは、体高15mを超える大型機龍の設計図と、『その通り』の形をした赤黒い機体だ

「一応最重要機密だから資料の方は見てない事にしろ――コイツは、連邦の天才が設計し、しかしかかる費用と自重の問題で廃棄された計画書だァ」
「見ての通り、クソッタレ共は完全に再現してやがる」
「……調べが付いただけで20ヶ国、実際にはそれ以上の国で同様の事が起こってるだろう」
「要するに、相手の機体スペックは、基本上だと考えろ。ああ因みに、今回目指す都市ではコイツは確認されてないから安心しろ?」

「クソッタレ共の倒し方はシンプル、全体の半分以上を切り離す事だァ、切り離した側は消滅する」
「逆に言えばそうしなきゃ意地でも動こうとするぜェ?」
「いいか、一体に対し二体以上で当たれ、先行が部位を落とし、後続がトドメを刺せ」
「訓練もクソもねェ、安心しろ、負けても世界が滅びるだけだ」
「だから安心して散ってこい、クソ虫共」

51 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/06/18(木) 20:43:15.92 0
「質問とかあるなら今の内に全部言えよォ?」
「それと、実際の編成を決めたいからテメェ等の戦闘スタイルを寄越せ、俺は機龍でブッた斬ってソッコで次、だ」

52 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/06/18(木) 21:55:20.35 O
一人ずつ自己紹介が進んで行く、それぞれの言葉を忘れないように、記憶に刻み込む。
長所短所を知ることは、戦いの場の動きにも関わる。
そんな学びのもと、話し出した内藤准陸尉を見る。

>「僕らは君より階級高いかもしんないけど、ぶっちゃけよその国の人間だしさ。
 ただの他人か……もうちょい情緒のある言い方をするなら、同志とか、仲間とか、そういうのでしょ。
 気にせず座んなよ。……君が宗派の教えを守る事に、強い価値を感じているなら、強要はしないけどさ」

「…仲間、ですか。申し訳ありません、座れと命令されなかった為立っておりました。
ですが…宗派はむしろ嫌いでしたので、改善に向けて善処致します…」

だがまだ座らない、相手の言葉を受け取りかねているのだ。
これは社交辞令か?ただの意見か?…この人物は「優しい」分類の者なのだろうか?
生まれた国の生き方しか知らない為、甘い言葉を素直に受け取ってよいのかわからない。

>「おいおいおい、あんまデリケートなことを聞いてやるなよ兄ちゃん。
 俺も経験あるけどよ、機竜乗りを二週間もやりゃ立派な痔主サマに永久就職だぜ。
 着席を奨めるなら、真ん中に穴の空いたクッションを敷いてやってからにするんだな」

こちらは…意味がわからない。
機体タイプの違いだろうか?そんな事例、神聖帝国には無かった。
勿論自分もなんともない、あったとしても畏れ多くてクッションを使うという発想にならない。
そして…

>「対機竜なら無敵ですよ、僕」

「内藤准陸尉、いつか時間ができましたらお手合わせ願います。私は機龍パイロットであります故…是非教育を」

この人物は「面白い」かもしれない。
機龍に強いパイロット、ならば彼は武神を扱うのだろう。
それならば是非手合わせし、技術や戦略を向上させてゆきたいものだ。
別に、悪意はない。
こういった交流では、黙りすぎてはいけないようだと感じただけだ。
まあ…無表情のままで言われた、内藤准陸尉がどう思ったかまでは分からないが…

53 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/06/18(木) 22:07:24.99 O
>「……正統皇国で私が所属していた部隊は、第13特殊部隊。他国においては『亡霊』などと呼ばれていたと記憶しています。
 私に身内を害された方などいらっしゃいましたら、作戦決行の前に直接仰ってください。
 ……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」
>「それはどうかな?もしも私が君に身内を害された者であれば・・・
 今この場で君を撃つだろう」

その後に話していた六角准尉と社長…社長とは軍属の場合どういう順位の立場なのだろう?
それにしても敵討ち、そんな概念もあったな、と言われて思い出した。
だが自分が戦った相手はあちらこちらの国、部隊移動もしょっちゅうだった。
これは後ろから撃たれても仕方ないかもしれない。
だが、長々とした様子で話す社長が、面白そうな事を言った。

>「大切なことは過去に何があったかではない!
 今、これから、私達に何ができるかだ!
 う〜ん、今私とっても良い事を言った気がするぞ・・・
 この言葉。メモしておいて」
「承知いたしました」
何故か渡されたメモとペン、特に疑問は持たず書き込むフレイア。
ただ、彼女が書いているのは、会議はじめから今までの全ての言葉だったため、意味は通じていないようだ。
でも言葉自体には考えさせられた。
過去を見るのではなく、これからを見る…悪くない、かもしれない。
それにしたって、書き起こさずとも記憶すればいいではないのだろうか?と思いながらペンを走らせる。
普通なら音声や文章で記録を残すものだと、知らないが故の考えだが…

>「この白衣の天使が、君達の武神と機龍を癒してくれるだろう。
 そして、もしも彼女に恋をしてしまったのなら・・・どうか思い出してほしい。
 彼女の中に入っているのは、この私だ」

「成る程、修理機能を持つ武神ですね。心強い機体です」
素直に戦場においてのメリットを考え、感想を述べる。
しかし、武神に恋するとはどういうことなのだろうか。
何かとんでもない隠し要素でもあるのか、と首をかしげる。
…彼女はジョークが通じるタイプでは、ない。

54 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/06/18(木) 22:52:27.40 O
>「一体この場を何と勘違いしている? これから戦場に赴く前に――いや、そうでなくともだ。
 上官に対する口の利き方から指導しなければならない程、貴様らの祖国の軍規はお粗末なのか。
 軍隊とは徹底した縦社会であり、それが我々のような国境を越えた寄せ集めであっても、その規律に従うことが軍としてのチームワークを形成する。
 今まで何を教わってきたかは知らないが、俺と同じ部隊に入った以上、先程のような言動は二度と許さないと覚えておけ」

こちらは天城少尉…今までならばこの言葉は当たり前の物と受け入れていた。
しかし…言いたい事がある。
発言して良いのか、未だに悩んでしまい、その間に次の人物が話していた。
ロジスティクス三等空尉、のはずだ。

>「てめえらクズ鉄の武神が戦場で爆撃されねえで居られるのは誰のお陰だと思ってんだ。
 俺たち機竜乗り様が制空権をとってやってっからだろうが!」
>「同じ部隊の中だろうが、階級が一緒だろうが、俺は認めねーぞ。
 機竜が上!武神は下だ!武神乗り共はせーぜー毛虫みてーに這いつくばって前面投影面積削減しとけや」

これは、なんというか、酷い。
おごりにもほどがある言葉としか言いようがない。
兵士になってから戦いの日々を送り、他とは違う機龍の扱いによって一人生き残った。
そんなフレイアには納得がいかない。
その気持ちを口にしたのは、中佐…いや、隊長だった。

>「ロジー……って言ったなァ、小僧」
「俺ァ対武神の機龍乗りだがよ、武神が弱ェなんざ一度も思ったことはねェ。そして、武神には武神の仕事がある」
「んな事も分からねェで仲間を見下すようなクソ虫にも劣るクズに用はねェ、次は無いぞ?」

中佐の立場以外に、彼には好感を持てた。
言葉こそ荒々しいが、言っていることは理想的だ。成る程、人は見かけによらない、という事か。
フレイアも自己改革の為にも思ったことを口にしてみることにした。
まず天城少尉へ体を向ける。

「僭越ですが私も発言致します。
天城少尉…私の祖国は、強すぎる縦社会化により簡単に滅びました。
厳しさだけでは、この戦いを勝ち残れるとは思えません。
命令を越えた協調性がある国の方が、多くの国民を守れているのは確かです。」

言いたいことを言いたいように言い、次にロジスティクス三等空尉の方を向く。

「ロジスティクス三等空尉、空尉の言葉は同じ機龍乗りとして恥ずべきものとしか思えません。
訓練過程で武神にも乗りましたが、そのスペックが機龍に劣ることはありませんでした。
何より機龍がいなくとも勝てる戦いがあり、武神がいなくとも勝てる戦いはない。
そもそもどちらかが強いならば、片方だけ開発を進めればよいのです。しかし、そんな事はない…事実を受け入れてもいない言葉は、何の説得力も持ちません。
私はこの部隊の仲間として、武神に乗る者への謝罪を求めます」

…喋り、疲れた。
ここまで自分の意思を伝えようとしたのは、何時ぶりだろうか?
よく舌が動いてくれたものだ。
喉も乾いてしまった。ああ、そう言えば飲み物を渡してくれた人物がいた…

55 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/06/18(木) 23:19:15.89 O
そう、最後に自己紹介をしていたが、私が会議室に入ったときに既に着席していた女性。
私は二番か三番目かに部屋へ入ったとのことで、驚いたので印象に残っている。
彼女はフォルトゥナータ少尉だ。

>「皆さんよくしゃべってのどが渇くかと思いますのでぇ、飲み物をご用意させていただきましたぁ。
 うちのスタミナドリンク、評判がいいんですよぉ。景気づけにはもってこいですよねぇ。
 あ、その缶はうちの試作品でしてぇ、ランダムでいろんな文字列が浮かぶのが売りだそうですよぉ」

成る程、気配りと言うのはこういった行為を指すのか。
しかし…『元気出して』と言われても反応し難い。
自分は現状健康体、元気である。訓練や戦闘で睡眠も食事も無かった時に比べれば、随分体の調子は良い。
だが…少し暖かい気持ちになった。これがどう言ったものかは、よくわからないが…
その後、アレックス中佐が椅子を壊したのだ。
そして今言われたのは…

>「そこのちびっ子、今言った通りだからとりあえず座れ」

「承知いたしました…しかし、どうせなら私の椅子をお渡しした方が…」

>「但しナイトウ、テメーは立ってろ、俺の敵だ。あと椅子寄越せ」

これは…座って良いのだろうか…
命令かどうかより、内藤准陸尉が立たされる方が気にかかる。
問題ある発言は…無くはなかったが、立つほどでは…
考えているうちに、アレックス中佐の視線を感じた。
…反抗しようもなかったので、大人しく座ることにした。

やっとホログラフィーを使いつつ、作戦内容を聞くことができた。
遊撃隊となると、目立つ動きが重要になりそうだ。
それにしても、話のなかで良い事と悪い事が一つずつ。
良い事は、敵が赤黒のカラーのみということだ。フレイアの乗る「ワイバーン」は軍服と同じで白い、塗り替えなくてすんで良かった。
悪い事は…15mの機龍資料だ。
いくらなんでも大きさが違いすぎる、単機で立ち向かうことは出来ない。
自機は空中でも格闘戦に持ち込めるが、逆にそれ以上の武装はない。
一人で出会ったら撤退するしかないだろう。今回は目撃がないという情報を信じて動くしかない。
だが…今後を考えると、ワイバーンに武器の搭載を考えなくてはいけないかもしれない。

>「それと、実際の編成を決めたいからテメェ等の戦闘スタイルを寄越せ、俺は機龍でブッた斬ってソッコで次、だ」

「戦闘スタイルとしては、空中から急襲し、翼の刃を使いながら格闘戦をし、戦力を奪ったら宙へ離脱、となっております。
一応戦線におりましたので、皆様より少ないですが、多少実戦経験はあります」
答えたのはいいが、どんな機体ならば相性が良いかはわからない。
単機戦ばかりの状況になることが多かったため、組む想像がつかないのだ。
誰と、組むのだろう…

56 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/06/19(金) 00:08:38.43 O
ああ、しまった。
一番大切な事を聞き忘れているではないか。
今を逃しては、質問の機会がなくなってしまう。
表情には出ていないが、慌てて挙手し、アレックス中佐に質問する。
「自爆装置の使用は認められていますか?」
…危機的状況で自爆する事は、一般的だと教えられていた。
そうではないと知るのが、この日になった。

57 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/06/19(金) 18:31:30.85 0
【騎士と飛龍(T)】


――――時は、作戦ブリーフィングの時点から約二週間前に遡る。


「はぁ、はぁ、はぁ、は―――」

機龍"ワイバーン"と共に到着し、降機を終えたばかりのフレイア一等兵。
その水色の瞳の中に、広大な格納フロアの喧騒を背にした不審者は居た。

「―――急に呼び止めて……ごめん……っはぁ……はぁ……」

正確には、立って居た場所から全力疾走で少女に駆け寄った不審者が、
肩幅に開いて曲げた両膝に手を付いた前屈姿勢で荒い息を吐いていた。

「でも……君の……を一目見て俺……黙ってなんていられなくなって……!!」

不審者は激しく乱れた息を整える事もせずに、何かを必死に訴えかける。
言葉よりも多くを語ったのは、不意に少女の白く細い腕を掴んだ掌の熱さだった。
上昇した心拍数と、それに比例して低下しているであろう(主に脳血管の)血中酸素濃度。

「このだだっ広いラボの中じゃ……今を逃したら……もしかしたら二度と会えないから……」

この場で出会った任意の二者に再会が訪れないといったケースは数多く存在する。
だが当該施設の特殊事情は、その理由に多彩なバリエーションの存在を許さない。

「だから……俺の頼みを聞いてほしい……」

不審者の着用しているジャケットは確かに軍服であったが、階級章は取り払われている。
つまり、ここで言う頼みとは階級に基づく指示・命令の類では有り得ず、
あくまで個人が個人に対する私的な懇請に他ならない。

「俺の……は……エクスカリバーで……出すために……とにかく……君に……乗りたいんだ」

全てが胡散くさく怪しげな如何わしさに彩られている、この状況に於いて――
――ただ、少年が少女に向けた鳥羽色の瞳に宿る意志だけが、真実だった。

「そうだ、名前をまだ――――」


『――――あそこだ! 確保ッ!!』


ほどなくして、新任若年下士官に対する声かけ事案の発生と、注意喚起の報が基地内を駆け巡る。
斯かる事案の真相、すなわち機龍に対する武神の戦闘騎乗の申し入れが明らかになったのは、
事件直後から拘留されていた自称傭兵(17)が失意の内に一週間の独房生活を終えた後――
――未だ名も無き飛行ユニットの完成を間近に控えていたリンネ=シーナの下に、
並立進行での機体連結機構増設要請がもたらされたのと同時の事だった。

58 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/06/19(金) 23:22:30.21 0
自己紹介は続く。
銃を向けあっていた者達が、互いを理解する為に。

>「それはどうかな?もしも私が君に身内を害された者であれば・・・
>今この場で君を撃つだろう」

「……大丈夫です。死角からのスナイプ以外であれば対処出来ますので」

桔梗の次に口を開いたのは、髭が特徴的な男性であった。
軍人と言うよりも企業戦士と言った方が似合いそうな出立をしたその男性は、桔梗と目が合うと手で銃の形を作り、
まるで子供が悪戯でもしているかの様に撃つ真似をして見せた。
男が懐に手を入れた瞬間、獣じみた反射神経で腰に巻いたホルスターから銃を抜こうとした桔梗であったが、
『安全性』の問題から室内に入る前に銃器の類を没収されてしまった事を思い出し、
視線を男の手から外さないまま少し腰を浮かせ何時でも飛びのける姿勢を作るに留め、平坦な声で返事をした。

どうやら髭の男性は、名をリンネ=シーナと言うらしく、驚くべき事にジャイアントシリーズを始めとする名機。
桔梗が戦場で良く目にした機体を製造している大企業の社長であるとの事であった。

「……死の商人」

おどける様に自身の武神を紹介するリンネを眼鏡の奥の瞳で捕えながら、誰にも聞こえないよう小さく呟いた桔梗の声色は
相変わらず淡々とした物で、そこに感情の色は見えず、ただ思った事が口から出た、という様相であった。
やがて、リンネの自己紹介も終わり更に次の人物が口を開く事になるのだが……

>「いい加減にしておけ、貴様達」

その青年の開かれた口から放たれた言葉は、怒気を孕んだ物であった。
黒髪に濃紺の瞳。如何にも軍人らしい厳格な空気を纏う青年は、
どうやら桔梗を含む前述の者達の自己紹介に対して思う所があったらしく、軍規と軍隊の常識を軸とした批判をしてみせた。
その言葉は正常な軍隊として見れば極めてまともなものであり、先日までの桔梗であれば躊躇いなく首肯するものであったのだが。

(……『規律には従う』……『祖国で何を教わってきたか』ですか)

今の桔梗は、天城宗一郎と名乗った瑞穂皇国の軍人の言葉に首肯する事は出来なかった。
積極的に否定する事もしない。ただ、彼女は先程リンネに向けた視線と同じく『炉辺の石』を見る様な視線を、義務的に宗一郎へと向けていた。
――――さて、この様にして桔梗は宗一郎の言葉を聞き流したが、この場に居るのは多種多様な価値観を持つ各国の軍人たち。
当然の如く、宗一郎の台詞を聞き流せる者ばかりではない。

>「ちっと待てや、アマギっつったか」

その筆頭。宗一郎と同じく黒の髪を持つ青年が、机を掌で叩き、憤懣やるかたないといった様子で立ち上がる。

59 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/06/19(金) 23:23:01.54 0
>「ロジスティクス=ギーガー。ロジーって呼んでいいぜ。ただし武神乗り、テメーらはダメだ。
>所属はISE統合航空戦闘団、階級は三等空尉。――制空竜撃士(ストライクドラグナー)っつったら分かるよな?
>担当は空挺輸送(エアボーン)、武神のガラクタ共を敵地に放り込んでやんのが俺の仕事だ」

ロジスティクス=ギーガー。
ISEに所属する事を公言するその人物は、先程の内藤の煽りじみた発言よりも更に過激な自己紹介をして見せた。
エリートと呼ばれる機龍乗りにありがちな、武神に対する選民意識を見せるその青年の発言に、
鉄面皮と言って差し支えない表情のままではあるものの、桔梗も口を開く。

「……ロジしゅ」

開いて。直ぐに舌を噛み。痛みで口を閉じた。
桔梗は口元に手を当てつつ周囲を見渡すも、ロジスティクスの起こした騒動でそれぞれ思う所があるのか、
彼女が犯した小さなミスに気付いた素振りを見せる者はいない。
これ幸いと、彼女は何事も無かったかの様にロジスティクスへと注意の言を投げかける事を取り止めた。
『……その考えでは、直ぐに死んでしまいますよ』。そう言う事を取りやめたのだ。
それはやはり、桔梗がこの挑発じみた言動を行う青年にさえも悪意すら抱かない……興味を持っていないからに他ならない。

そうして徐々に混沌の度合いを深めていく室内。その中で、とうとう最後の一人の紹介が始まった。

>「ひとまず私も自己紹介をぉ。カンパーナ社から参りましたぁ。主任エンジニア、および警備軍少尉。
>フォルトゥナータ・フォルテと申しますぅ。以後お見知りおきを……」

フォルトゥナータと名乗ったその女性は、柔らかな物腰でその場に居た面々にジュースを配って回る。
手馴れたその仕草は、見る者に安心感を与える物であり、喧騒は若干収まりを見せたのだが……。
眼前に置かれた飲料に浮かぶ、メッセージ。桔梗の前の物は『過去は変わらないが、これからは変えられる』といったものだが、
他の面々に関しては少々挑発する様な文面もあったりなどして、果たして彼女が何がしたいのか、桔梗には判別が付かなかった。
そんな最中。

>「……荒れんなクソ虫共、ブチ転がすぞ」

椅子が砕ける音と共に静かな怒気を見せるのは、アレックス。
物理的に齎された静寂の中で、彼はこれまでの出来事を咀嚼するかの様に一人一人の者達に言葉をかける。
彼の言葉は勿論桔梗に対しても向けられるのだが、

>「正統皇国の『幽霊』か、残念だが現状じゃ生かせねェかもなァ、クソッタレ共を闇討ち出来れば楽しかったんだが」
「……クソッタレ共ですか?」

言葉は、今は桔梗に届かない。
正統皇国の『幽霊』は、アレックスの罵倒が何に向けられるかさえ気づく事が出来ないのだから。
似たような境遇を持つフレイア。自身より幼い少女でさえも意志を見せる中、桔梗はただ沈黙を続ける事しか出来ない。
それは、彼女の人間としての何らかの欠落を示すものに他ならなかった。

60 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/06/19(金) 23:23:24.28 0
さて……こうして。アレックスが口を閉じ――――各々が紹介を終えると。
いよいよ、本格的なブリーフィングが始まった。

用意されたホログラフィーに流れていく映像は、始めは道。作戦目標への侵攻経路。
続いて、赤黒く輝くクリスタル……見る者の感情をざわつかせるその結晶体は、映像の中で次々に
赤と黒で色付けられた機龍を生み出している。

そんな映像と共にアレックスから告げられる任務。侵入経路から撃破対象までを、桔梗は条件反射的に一言一句違う事無く脳に叩き込む。
それは、気を抜いて聞き逃しなどすれば自身が危機に晒されるという事を経験と教育によって知っている事から来る反射行動であった。
唯一表情の動きを見せたのは、15mを超える大型機龍の映像を見た時くらいという集中の度合い。
そうして、全ての話を記憶に刻み込んだ所で

>「自爆装置の使用は認められていますか?」

「……!」

フレイアから、衝撃的な一言が放たれた。
自爆装置の使用――自身の命を犠牲にして、周囲の敵を殲滅する手段の存在は、確かに桔梗も知っている。
だがそれは……到底まともな手段ではないし、ましてやこの年の少女が言う事でもない。
桔梗が思わず画面から目を話し、フレイアの方を見れば、その表情は至って真面目なものであり、冗談の類である様にも見えない。
――――そうして思い出す。自身がかつて学科訓練の際に目を通した、各国の文化に関する資料を。
彼女がどこの国の出身で、どの様な教育を施す国家で育ったのかを。
桔梗は、フレイアに対し口を開こうとし………。

「……」

だが、やはり。彼女は口を閉じた。
桔梗は、このフレイアの発言にさえ興味を持つ事をしなかったのだ。
代わりに。淡々と……まるで他者との繋がりを拒絶するかの様に、アレックスの言葉への返事を返す。

「……私の戦闘スタイルは、対象に接近しての格闘戦です。
 皆様の所属国にも武神の基礎的な戦闘マニュアルは存在すると思われますが……おおよそ、其処に載っている通りの物です。
 私にはそれしか出来ませんので、その通りに戦います」

桔梗の語る内容は、お粗末と言っていい程に情けない物であった。
教科書通りの戦いは、誰にでも出来る。戦闘技能を問われてそう答えるのは、自身が脆弱だと言っている様なものである。
恥知らずにもそんな台詞を吐いた桔梗は、更に言葉を繋げる

「質問はありません。適切に仕様してください」

その言葉は単純で、まるで自分自身にさえ興味が無いような響きを帯びていた。

61 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/06/20(土) 02:54:09.59 0
(……なんていうか、変な人達ばっかだなぁ、ここ)

>「……正統皇国で私が所属していた部隊は、第13特殊部隊。他国においては『亡霊』などと呼ばれていたと記憶しています。
  私に身内を害された方などいらっしゃいましたら、作戦決行の前に直接仰ってください。
  ……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」

『亡霊』の名は内藤も聞き覚えがあった。
まだ人と人が戦争をしていた頃、汎用機をベースにした凡庸な武神を相手に、竜夜を駆る部隊が全滅させられた事があった。
恐ろしいほど精密な攻撃を前に、竜夜は地を蹴り距離を取る事すら出来ずに撃破されていった。
遠巻きにその状況を見ていた騎竜乗りはそう話していた。

その時に挙がった名前が亡霊だ。奴らは亡霊だったに違いないと。
内藤は別にその部隊に親しい人達がいた訳ではない。
だが、ここで名乗り出てどうなるのか、と思う。

>「それはどうかな?もしも私が君に身内を害された者であれば・・・
  今この場で君を撃つだろう」

そうだ。本当に『亡霊』に恨みのある者がいるなら、彼女を撃つのが戦場からこの場に移るだけだ。
まさか、お互いが納得行くまで話し合おうという訳でもないだろう。
それとも決闘まがいの事でもして、恨みを解消するつもりなのか。

(……まるで、誰にも迷惑がかからなかったら恨まれても、害されてもいいみたいな口ぶりだな)

内藤は気味が悪いと感じていた。
まだ二十歳にも満たないだろう少女が、どうしたらこんな暗い目が出来るのか。
どうしたら、こんな目をさせる事が出来るのか。

>「オゥ!失礼、お嬢さん。ちょうど私が自己紹介をする番がきたみたいなのでね」

>「この白衣の天使が、君達の武神と機龍を癒してくれるだろう。
  そして、もしも彼女に恋をしてしまったのなら・・・どうか思い出してほしい。
  彼女の中に入っているのは、この私だ」

(こっちはこっちで……どうしたらこんな明るく振る舞えるんだ……?
 ていうかジャイアントの製作者ってこんなんだったのか……あの堅実な機体を?この人がぁ……?)

勿論暗いよりはずっとマシなのだが、これはこれで接し方と反応に困る。
とりあえずニッポン人らしく、愛想笑いでも浮かべようか。

>「いい加減にしておけ、貴様達」

そう思った内藤が唇を僅かに吊り上げたところで、甚く剣呑な声が響いた。

>「一体この場を何と勘違いしている? これから戦場に赴く前に――いや、そうでなくともだ。

(うーん、いるよね、こういう軍人。いや、軍人に限らないけど、軍人には特に……)

内藤は小さく溜息を吐く。
見るからに堅物で、自分が正しいと信じているから遠慮も配慮もない。
内藤の苦手なタイプだった。

62 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/06/20(土) 02:55:01.20 0
>「ちっと待てや、アマギっつったか」
>「同じ部隊の中だろうが、階級が一緒だろうが、俺は認めねーぞ。
  機竜が上!武神は下だ!武神乗り共はせーぜー毛虫みてーに這いつくばって前面投影面積削減しとけや」

(こういうのも……わりとよくいるよね。うーん……参ったなぁ)

そして、自分の才や実力を信仰していて、それが唯一無二の価値あるものだと思っている。
そういう人間も内藤は苦手だった。どちらも話していて疲れるからだ。
てきとうに返事して逃げ出せるならまだ良いが、今回はそういう訳にもいかない。

>「ひとまず私も自己紹介をぉ。カンパーナ社から参りましたぁ。主任エンジニア、および警備軍少尉。
  フォルトゥナータ・フォルテと申しますぅ。以後お見知りおきを……」

最後になんだか内藤とは仲良くなれそうなテンションの女性が挨拶を述べる。
手渡されたドリンク缶には、なんだか彼を突き刺すような言葉が表示されていた。

(能ある鷹は爪を隠す……うーん、でも隠してばっかってつまんないよね。
 それにそれって、隠さなきゃ避けられちゃう程度の爪しかないって事じゃないの)

いたのだが、内藤は自分の失言に関しては極めて鈍感だ。
なにせそれで不快な思いをするのはいつだって自分じゃないからだ。

(それにしても……なにこのギスギスした空気。居心地最悪なんだけど……)

逆説、自分が不快な思いをするとなると、話は違ってくる。
内藤は剣呑な空気を吸いながらいつ終わるのかも分からない共同生活をしたくない。
任務なんてもってのほかだ。だから解決策を思索する。

怠惰の為には全力を尽くすのは、ニッポン人の典型的な基質だった。
いかんすべきかと内藤は頭を悩ませ、そして閃いた。

(そうだ!盛大に喧嘩を売ろう!とりあえずロジーと天城君だな!めっちゃ沸点低そうだし!)

字面だけではふざけているようにしか思えないが、それは極めて真面目な判断だった。
まず第一に、内藤は「ギスギス」よりも「バチバチ」の方がマシだと考えた。
考えたと言うより感じたと言った方が的確だが。

前者は濁り停滞しているが、後者は少なくとも動きがある。
つまり「収まる所」に転がり込める可能性が生じる。
それに意見の衝突が起これば、その過程で相手の人となりが垣間見えてくる。
少なくとも、相互理解の姿勢が一切感じられない今よりは、より『部隊らしく』なれるだろう。

天城は徹底的な縦社会化が自分達を軍隊にすると言った。
だが内藤はそうは思わない。

必要なのはお互いを理解し、受け入れる事だ。
それが自分達を、生まれも育ちも違う複数の人格を『一つの個』に、『部隊』にしてくれる。
内藤の考え、もとい感じ方はそうだった。

ともあれ、内藤は机に右手を突いた。
そしてまずは隣のギーガーから煽ってやろうと体の向きを変えつつ立ち上がろうとして、

>「……荒れんなクソ虫共、ブチ転がすぞ」

獣の唸り声のような制止と、木材の砕ける音が会議室に響いた。
内藤は思わず動きを止めた。

63 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/06/20(土) 02:55:25.01 0
>「いいかァ、階級だとか規律だとか、敵とか味方とか、誰が偉いとかなんとかはこの際投げ捨てろ」
>「俺が頭で、お前らは全部横一線のチームメイト」
>「和気あいあい、てのは難しいだろうが、『あの国は気に入らんがコイツラは殺したくねェな』と思えるぐらいになってくれると楽だ。俺が」

(おー、見た目は頭にトウモロコシ乗っけた変なおっさんだけど、ちゃんとした管理職じゃん。こりゃいいぞ)

ニコニコ顔のまま内藤は姿勢を元に戻した。
これでギーガーと天城には明確な敵が出来た。

(そして敵の敵は味方ってね。あの二人の発言は正直どうかと思うけど、
 中佐殿は中佐殿で方針が投げやりだし。ここは一つ……)

>「そこのちびっ子、今言った通りだからとりあえず座れ」
>「但しナイトウ、テメーは立ってろ、俺の敵だ。あと椅子寄越せ」

(ここは一つ、やっぱり盛大に喧嘩を売ろう!ただし、そこのモロコシおじさんに!)

>「承知いたしました…しかし、どうせなら私の椅子をお渡しした方が…」

「いいよいいよ、気にしなくて。……あぁいう「お誘い」は国防軍でもたまにあったから」

内藤は朗らかにそう言うと自分の椅子をサウスウィンドの元へ運ぶ。
その表情には、僅かな喜色が浮かんでいた。

今後の展望については非常に単純な内容だった。

「あ、僕の竜夜は真っ黒ですよ。うーん、気に入ってたんだけど、塗り替えちゃうなら……どうしよっかなぁ。
 色の指定は……出来ますよね。だったら……藍と茜かなぁ」

想像したのは明け方の空だ。
騎竜に夜をもたらす機体で、人類の夜明けを切り開く。
内藤はそういう「カッコイイ感じ」が好きだった。

>「それから……クソッタレ共の情報共有だ」

ホログラムに表示されたのは、現行型の騎竜の倍近く大きい『滅び』の姿だった。
それに対して内藤が抱くのは、恐怖や絶望ではない。
どうすれば倒せるか。それだけだった。

「……そういや、奴らってエネルギーに対してはどうなんです。例えば、燃やしたりとか。
 人が乗ってる機体には結構有効ですけど、奴らには効果があるのかとか、分かります?」

竜夜の主兵装は斧槍だが、敵の情報は知るだけ知っておいて損はないだろう。
自分だけでなく他の誰かにも役に立つかもしれない。

>「それと、実際の編成を決めたいからテメェ等の戦闘スタイルを寄越せ、俺は機龍でブッた斬ってソッコで次、だ」

戦闘スタイル、と言われて内藤はやや考え込んだ。
竜夜は一点特化型の機体だが、その運用法は操縦者の工夫や練度に依存して大きく広がる。
資源に乏しいニッポン国の性質上、そういうコンセプトで作られているのだが、だからこそどう説明したものか悩む事になった。

64 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/06/20(土) 02:55:58.97 0
>「戦闘スタイルとしては、空中から急襲し、翼の刃を使いながら格闘戦をし、戦力を奪ったら宙へ離脱、となっております。
  一応戦線におりましたので、皆様より少ないですが、多少実戦経験はあります」

そうしている内にフレイアの説明が終わってしまった。
まだ考えがまとまっていないのに、と内藤が内心で嘆いていると、彼女が慌てて手を挙げるのが見えた。
その仕草に、もう少し考える猶予が出来たと安堵して、

>「自爆装置の使用は認められていますか?」

「……はぁ!?」

まとまりつつあった考えが、全て吹っ飛んだ。
だがそんなのは今のフレイアの発言と比べれば全くの些事だ。

「駄目に決まってるだろ!神聖帝国じゃそんな事までやってたのか!?」

思わず声を荒げる。
それからはっとして、一度口を噤み、紡ぐべき言葉を模索した。

その最中に、内藤はリューキューで死んでいった戦友達を思い出した。
彼の地では決死隊が募られた。多くの者がそれに志願した。
だがだからと言って、彼らがした事は自爆となんら変わらないのか。
違う。あの部隊に「死を受け入れていた者」などいなかったと、内藤は思う。

「……とにかく、駄目だ。死を覚悟する事と、死を選ぶ事は違う」

そう思うと自然と言葉が出てきた。
自分ですら半ば無意識に、無思考に出た言葉がちゃんと伝わったのかは分からない。
しかしそれ以上の説明は、内藤には思いつかなかった。

>「……私の戦闘スタイルは、対象に接近しての格闘戦です。
  皆様の所属国にも武神の基礎的な戦闘マニュアルは存在すると思われますが……おおよそ、其処に載っている通りの物です。
  私にはそれしか出来ませんので、その通りに戦います」

(……『亡霊』ともあろう者が、教科書通り?
 国が滅んだ今、戦法を隠す意味もないだろうに……やっぱりこの子は、よく分からない)

桔梗の戦法を聞いた内藤はそのように感じ、だが思考はそこで終わらない。

(……でも、それじゃ駄目だ。それじゃ僕は彼女を見る度に気味の悪さを感じる事になる。
 ここでの生活の間ずっと、任務中でもだ。そんなのは嫌だ。やっぱり……もっと皆と仲良くならないと)

深く息を吸って、吐く。

「……それで、えーと、次は僕の戦法だよね」

予期せぬ質問には焦らされたが、今度こそ自分の戦法を述べる番だ。
ついでに、皆と仲良くやっていく為の工夫も凝らさなくてはならない。

65 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/06/20(土) 02:57:09.09 0
「そうだなぁ。とりあえず初っ端に超早いとこ見せつけて、後は牽制したり、撹乱したり、
 もちろん直接相手を撃破したりもするけど……とりあえず、一番槍は任せといてよ」

言い終えてから、内藤はわざとらしく「あっ」と言葉を零した。

「それと質問ではないのですが、幾つか言っておきたい事がありまして。
 とりあえず……サウスウィンド中佐。折角のお誘いを無下にしてしまうのは心苦しいのですが、
 僕には男色の気はありません。他を当たって下さい」

内藤はさらりとそう言い放って、それから周囲の反応を伺ってから、小首を傾げる。

「あれ?……あぁ、すみません。ニッポンじゃ、自分が一度尻を置いた椅子や敷物を他人に譲るのはマナー違反なんですよ。
 で、そこから転じて、「椅子を貸せ」って言うのは、男色家が相手に同意を求める際のサインに使われるんです。
 ですので、てっきり中佐殿もそういう趣味の方なのかと……」

それらは言うまでもないが真っ赤な嘘である。

「いやぁ、申し訳ありません。でも気にしないで下さいね。
 どのみち、この部隊には上官をホモ野郎扱いした者を罰する規律なんてないんですから」

相変わらずのニコニコ顔で内藤は続ける。まずはサウスウィンドへ向けて。

「……なんて事を今後避ける為にも、ある程度のルールは必要ですよ。僕は皆に一理があると思います。
 僕は、出来る事なら皆と仲良くしたい。でも頭ごなしに仲良くしろと言われて出来るなら、僕ら最初から戦争なんてしてません」
 
だから、と言葉は更に続く。

「話をしようよ、色々と。今じゃなくてもいいから。僕らはお互いの事をちゃんと知って、受け入れるべきだ。
 フレイアちゃんの言う通りだ。上辺だけの連携で勝てるほど、奴らは弱くない。
 ……僕達は、この世で一番強い部隊にならなきゃいけないんだぞ。」

そして、次に天城を見る。

「天城少尉、ルールは僕も必要だと思うよ。だけどそれは、君が、君の国から持ってきた、君の常識じゃない。
 だから一緒に作っていこうよ。僕らが仲良くやっていけるような奴をね」

次にギーガーを。

「騎竜乗りのいるこの場所で、あの自己紹介は失敗だった。ごめん、悪かったよ。
 でも……ニッポンの武神は、ただの鉄クズとは一味違うよ。
 君んとこの騎竜にだって負ける気はしないし、なんなら空だって飛んでみせる」

椅子のない内藤は、必然ギーガーを見下ろしながら、不敵な笑みを浮かべた。

「僕は、君に負けないくらい凄い奴だって、これから教えてやるから覚悟しときなよ。『ロジー』」



【仲良くしようよ。でもその過程で衝突が起こるのは仕方ないよね。だから起こすよ】

66 :社長 ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/23(火) 22:48:11.10 0
>「成る程、修理機能を持つ武神ですね。心強い機体です」
とフレイアに真顔で言われたリンネは少し言葉を詰まらせてしまった。
これはいわゆる、ボケ殺しである。
「あぁ・・・うん、ありがとう。
 でも、褒められることには慣れているんだ」
社長の耳は褒め言葉にも敏感であるが、悪口にも敏感である。
「ところでさっき私の事で、誰かどさくさに紛れて事実無根な事をつぶやかなかったか?」
リンネにとってみんなの反応は思ったよりも悪かったが、
それでもニコニコ(あいそ)笑みを浮かべてくれている内藤には心が癒やされた。
しかし、それもつかの間のことである。
>「いい加減にしておけ、貴様達」
ドスのきいた怒声を発したのは天城宗一郎少尉だ。
「おん?どうしたサムライボーイ?
 生理痛なら良い産婦人科を紹介するぞ?」
天城は彼より先に自己紹介をした面々について、軍人として不適切な態度であると叱り始めた。
しかし、リンネとってはどこ吹く風か。
自分には関係ないねとばかりにテーブルのまわりを手持ち無沙汰に歩き始める。
・・・なぜなら彼は軍人ではないからだ。
>「――出過ぎた発言を失礼致しました、中佐殿。自分は瑞穂皇国陸軍、武神第7連隊所属、天城宗一郎少尉であります。
> 搭乗機は零式機動武神。主に近接兵装を用いた、前衛での格闘戦を得意としております。以上」
そう言って天城が直立不動で自己紹介をする間、
ちょうど彼の後ろまで回ってきたリンネは、彼の頭をポコスカ叩く“ふり”をした。
「はて?何か?」
無論、彼が自己紹介を終えて振り向く頃には涼しい顔をしてまた室内をブラブラ歩きまわる。

>「ちっと待てや、アマギっつったか」
どうやらナーバスなのは天城一人ではないらしい。
「あ、君だな。私のことを“いろものがかり”って言ったのは」
そのことはともかく、ロジーが続けて武神を見下すような発言をしたことは、
当然ながら武神製造メーカーの社長としては十分すぎるほど不快であった。
リンネは何か発言しようとしたが、止めた。
隊長の指がフォルトゥナータの方へ向いたからである。

>「皆さんよくしゃべってのどが渇くかと思いますのでぇ、飲み物をご用意させていただきましたぁ。
> うちのスタミナドリンク、評判がいいんですよぉ。景気づけにはもってこいですよねぇ。
> あ、その缶はうちの試作品でしてぇ、ランダムでいろんな文字列が浮かぶのが売りだそうですよぉ」
スタミナドリンクをフォルトゥナータからもらったリンネは、
先ほどとは打って変わって上機嫌になる。
「ほぉ、気が利くねぇ君ぃ〜」
リンネはフォルトゥナータに始めて会ったときから彼女を気にかけていた。
なぜならリンネは彼女が誰よりも早くこの会議室に着座していたのを知っているからだ。
彼女の自己紹介を聞き終えたリンネが彼女に語りかける。
「君のように素敵で気づかい上手な女性に、私の秘書になってもらえたらどれだけ助かることか・・・」
と言いつつドリンクを一口飲んだリンネは、即座に「ブフォッ!?」と吹き出してしまった。
ドリンクの味が悪かったわけではない。ドリンクの缶に次のようなメッセージが浮かびあがったからだ。
『急募:武神エンジニア。待遇厚遇、委細面談、詳細はお近くのスタッフまで』
「ゲホッゲホッ!・・・うん、失礼」
ハンカチで口元を吹きながらリンネはフォルトゥナータにウィンクを送る。
(スタミナドリンクに仕込まれたメッセージによるヘッドハンティング!
 そういうのもあるのか)
「相思相愛・・・という解釈で、良いのかなぁ?」

67 :社長 ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/23(火) 22:49:23.76 0
>「……荒れんなクソ虫共、ブチ転がすぞ」
中佐はそう発言すると同時に椅子を砕いてその威を示した。
そして規律を墨守しようとする天城と、武神を軽視しているロジーをたしなめる。
いや、彼ら二人だけではない。ここにいるメンバー全員がそうだ。
ここにいるメンバーに課せられた使命はただ一つ、敵を倒すことである。
(鉄腕アトムのような髪型をしていても隊長はやはり隊長というわけか・・・)
などとリンネが考えていると、彼がフリーダムすぎるためかこんなことを言われてしまった。
>「あっ社長は座ってて下さい寧ろ黙ってて頂けますか出来れば一生」
「ホーッ!言ってくれるねぇ!聞いたかい、みんな?
 ロスサントスが壊滅する前までは私の事を、
 『天才』だの『連邦の自由と利益を守る者』だの『真の愛国者』だの言ってた連邦軍将校がいまやこれだ!
 もっとも、私としては『死の商人』と言われる方がよっぽど性に合っているけどねぇ!」
リンネは“楽しそう”に隊長に文句を言う。
変におべっかを使われるよりもその方が気楽で良いと思っているからだ。
>「それとそっちの優等生、そいつ一般人だから勘弁……は要らねェな、社長だし」
隊長が天城にそう言うとリンネはさらに悪ノリする。
「そうとも遠慮することはない!武神の改造ならまかせろ!
 私はこの道30年のベテランだ!
 手始めに君の武神に、まばたきと口パク機能を追加してやろうか」
ほとんど脅迫である。

続いて中佐は今回の作戦内容と敵についての説明を始めた。
リンネが、いわゆる『滅びの軍勢』と戦ったのは初めてではないが、
しかし、なぜ彼らが武神や機龍の姿をとり、
何が彼らを倒す鍵になるのか等は今回初めて知ったことが多い。
リンネは珍しく真剣な顔でホログラフィーを睨んだ。
>赤黒く輝くクリスタルから、今まさに敵機龍が染み出す所であった
>「クソッタレ共は赤黒一択だァ、この色に染めてる機体の奴は諦めて塗り替えろォ?最優先で作業して貰えるよう話は通してあるぜェ」
「まるで血の色だな」
中佐の説明を聞きながら、リンネは誰に言うでもなくつぶやく。
>「あ、僕の竜夜は真っ黒ですよ。うーん、気に入ってたんだけど、塗り替えちゃうなら……どうしよっかなぁ。
> 色の指定は……出来ますよね。だったら……藍と茜かなぁ」
「うん、黒色はやめといた方がいい。私も以前それで誤射されたことがある」
とリンネは内藤に相づちを打つ。
どうやら過去に何かあったらしい。
>「一応最重要機密だから資料の方は見てない事にしろ――コイツは、連邦の天才が設計し、しかしかかる費用と自重の問題で廃棄された計画書だァ」
そう言って中佐が体高15mを超える大型機龍の事を説明した時、リンネがすぐに反応した。
「私は知らないぞ?無関係だ」

作戦の説明を終えた中佐はメンバーに二つの事を求めた。
一つは、質問があれば今のうちにしておく事。
もう一つは、自分の戦闘スタイルを申告することだ。
>「戦闘スタイルとしては、空中から急襲し、翼の刃を使いながら格闘戦をし、戦力を奪ったら宙へ離脱、となっております。
>一応戦線におりましたので、皆様より少ないですが、多少実戦経験はあります」
フレイアがお手本のようにそう申告する。
特にどうともおもわず聞いていたリンネだが、彼女の放った次の一言は捨て置けなかった。
>「自爆装置の使用は認められていますか?」

68 :社長 ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/23(火) 22:50:10.04 0
>「……はぁ!?」
内藤が声を荒らげる。
>「駄目に決まってるだろ!神聖帝国じゃそんな事までやってたのか!?」
「そうだとも!お父さんはそんなこと許しません!」
すかさず続けざまにそう叫んだリンネは、
自分に対する突き刺すような痛い視線を感じて、エホンと咳払いをした。
「あー・・・つまり、これは言葉のあややというか・・・
 なんだ、もしも私に君のような娘がいたら、
 君が自分の命を、そんなふうに粗末にしたら耐えられない、という意味だ。
 君にも家族が・・・その・・・いたんだろう?」
フレイアの国が壊滅した事は先ほどの自己紹介で知っていた。
家族の話をするのは酷だったかもしれない。
そう思ったリンネはおどけるように両手を広げた。
「だいたい、今どき人間を乗せた武神を自爆させるなんてナンセンスじゃあないか!
 本当にそれが効果的なら、AIを積んだ武神にそれをやらせたらいい!
 名案だろう!?」
そうジョークのつもりで言ったリンネは、しかし目は一切笑っていない。
「AI・・・武神・・・自爆・・・うっ、頭が・・・」
徐々に顔が険しさをまし、ついに頭を抱える。
リンネは後悔した。
自分の過去の傷口をえぐって笑いをとろうとする行為は二度としない方が良い、と。
「内藤君の言う通りだ。君はもっと自分を大切に思った方がいい」
リンネはぐったりとした様子でそう言った。

リンネは少し休むために桔梗の隣の席にひとまず腰をおろした。
ちょうど彼女が自分の戦闘スタイルを説明しているところである。
>「……私の戦闘スタイルは、対象に接近しての格闘戦です。
> 皆様の所属国にも武神の基礎的な戦闘マニュアルは存在すると思われますが……おおよそ、其処に載っている通りの物です。
> 私にはそれしか出来ませんので、その通りに戦います」
>「質問はありません。適切に仕様してください」
「ねぇ、どうしたの君?あんまり元気無いみたいだけど?」
気を持ち直したリンネが桔梗に馴れ馴れしく小声でそうささやく。
「もしかして天城君に怒られたから落ち込んでるのかな?
 気にするなよ。彼は若さゆえにナーバスすぎるだけさ。
 私もかつてはそうだったが、年をとるにつれて円熟味が増してきた。
 私を見て君もそう思うだろう?・・・思ってないのか?・・・思ってるんだろう?
 そうだろう!そうだろう!
 天城君も将来きっと私のようになるから安心しなさい」
ちなみに、こういう時のリンネはこの会話が天城に聞こえていようといまいとお構いなしである。

>「……それで、えーと、次は僕の戦法だよね」
内藤が自分の戦法を話しはじめたが、それ自体はリンネにとっては退屈だった。
彼の武神であるドラゴンナイトの戦法はよく知っているからである。
しかし、彼が次に話した事はリンネにとって興味深いものであった。
>「それと質問ではないのですが、幾つか言っておきたい事がありまして。
> とりあえず……サウスウィンド中佐。折角のお誘いを無下にしてしまうのは心苦しいのですが、
> 僕には男色の気はありません。他を当たって下さい」
「仕方ないね」
まずは友達から、である。

69 :社長 ◆IgMoxdiK1Y :2015/06/23(火) 22:52:08.34 0
「ルールを決めるってのは、悪くないねぇ!」
リンネは内藤の発言にそう乗ってきた。
「じゃ私から一つルールを提案しよう。
 より敵の殲滅に貢献した人間が偉い、ってのはどうだ?
 だってそうだろう?私達はそのためにここに集まっているんだから!
 稼ぎの良い奴が何よりも優先される!単純明快だろう?」
リンネはロジーに視線を向ける。
「フレイア君が私へ謝罪をしろと君に言ったが、その必要はない。
 なぜなら、君自信が戦場で武神のありがたみを思い知らされなければ心からは理解できないだろう。
 武神と機龍、どちらがより優れた兵種か戦場で答え合わせをしようじゃないかギンガマン君」
椅子があるけどリンネは、勝手に立ってロジーを見下ろしながら不敵な笑みを浮かべた。
しかも名前を間違えている。
「ちなみに私の武神グリントガールは、他の武神を修理することだけが得意というわけじゃない。
 言ってみれば誰しもが持っている二面性。コインの表と裏。
 あらゆる武神を治す能力と、あらゆる武神を破壊する能力を兼ね備えている。
 それを可能とするのが毎秒3ギガジュールのエネルギーを発生させる
 プラズマリアクターを搭載した大型チェーンソーだ。
 こいつをまともにくらって立っていられる武神はこの世に存在しない。
 つまり私の武神はチェスで言うところのキングの駒なのだ!
 私が無事であればゲームは続く。
 そして、敵は私をチェックした瞬間にそれが容易ではないと知るわけだ」
リンネはだんだんと調子に乗ってきた。
「さっきの奥様うっとり巨大機龍の首だって斬り落としてみせるぞ。
 地面にさえ降りていればな!
 ・・・あっ、でも機龍というものは普通は飛んでいるものであって、
 その機龍をまず地面に降ろすのもまた機龍であるから・・・ハッ!?」
リンネは気づいたようである。
「ソーリーごめ〜んなさーい!」
リンネはロジーにそう謝罪した。
「君の活躍に心から期待しているよギガストリーマー君!」

「ところで、民間人は作戦領域内にいるのかな?」
リンネは手持ちの個人端末を操作してホログラフィーに表示された地図にマーキングをした。
それは病院、学校、公民館等のいわゆる避難所として機能できる施設だ。
ただ、なぜか一つだけ『リトルマーメイド』というパン屋までマーキングされている。
「この店のドネルケバブサンドは絶品だと聞いている。
 もしも営業中なら、作戦が終わったらみんなで食べに行こう。
 ・・・こわい顔して睨まないでくれよ、仕事の後の楽しみは誰だって必要だろう?」
それだけではないだろう。
なにせリンネは当たり前のように個人端末でホログラフィーを操作しているが、
彼にそんな権限は与えられていない。
要するに抵抗軍のネットワークにハッキングをかけて勝手に拝借しているのである。
「ここのネットワークセキュリティ甘かったから直しておいたよ。
 ついでにグリントガールのファンサイトを作っておいた。
 礼にはおよばないよ、中佐殿。
 私と君の仲じゃないか」

【フリーダムに戦闘スタイルの申告と質問を行う】

70 :天城宗一郎 ◆b7dhPV6Nj6 :2015/06/27(土) 01:42:32.48 0
>「ちっと待てや、アマギっつったか」

>「ロジスティクス=ギーガー。ロジーって呼んでいいぜ。ただし武神乗り、テメーらはダメだ。
> 所属はISE統合航空戦闘団、階級は三等空尉。――制空竜撃士(ストライクドラグナー)っつったら分かるよな?
> 担当は空挺輸送(エアボーン)、武神のガラクタ共を敵地に放り込んでやんのが俺の仕事だ」

「――――何だと?」

その場を凍り付かせた宗一郎の叱責に、真っ先に食い付いて来た男が居た。

男の名は、ロジスティクス=ギーガー。
聞けばISEに所属する三尉――つまり、少尉の自分と同等階級であり、
更に制空竜撃士(ストライクドラグナー)と言えば、確かISEの中でも年間数人程度にしか与えられない、トップエリートの称号だった筈だ。

如何にも空兵らしいフライトジャケットと、飛行帽姿も様になっており、成る程……確かに容姿だけ見れば、
自信家で自意識過剰な性格を裏付けする、確かな実力と実績を備えているのかもしれないと思える。

――が、やはりブリーフィングの場でこのような物言いをされては、黙っていられないのが宗一郎という男だ。
クールな仮面を被っているが、実は宗一郎もギーガーと同じくらいに負けず嫌いなのである。

「機竜乗りとしての自分に、随分なプライドを持っているようだな、ギーガー三尉。
 軍人にあるまじき貴様の振る舞いは――この際、見過ごしてやってもいい。
 ……だが、これだけの啖呵を切ったんだ。相応の力は持っていると、判断しても良いのだろうな?
 貴様がただの臆病な配達屋≠ナはなく、抵抗軍の戦士たるに相応しい存在であることを祈っておこう」

宗一郎は周囲に睨みを効かせていた眼光を、ギーガーだけへと向ける。

我ながら子供染みた挑発をしている、という自覚はある。
だがこんな血の気の多さが、自分自身の若さ故の未熟さだと認められるほど、まだ宗一郎は大人として成長できてはいなかった。

>「皆さんよくしゃべってのどが渇くかと思いますのでぇ、飲み物をご用意させていただきましたぁ。
> うちのスタミナドリンク、評判がいいんですよぉ。景気づけにはもってこいですよねぇ。
> あ、その缶はうちの試作品でしてぇ、ランダムでいろんな文字列が浮かぶのが売りだそうですよぉ」

>「ひとまず私も自己紹介をぉ。カンパーナ社から参りましたぁ。主任エンジニア、および警備軍少尉。
> フォルトゥナータ・フォルテと申しますぅ。以後お見知りおきを……」

次いで自己紹介を始めたのは、カンパーナ社のエンジニアと名乗る女性だ。
彼女から手渡されたスタミナドリンクの缶に映し出される文字を見て、宗一郎はまた眉を顰める。
ニコニコと当り障りのない笑みを浮かべながら、こちらも中々の曲者なようであった。

71 :天城宗一郎 ◆b7dhPV6Nj6 :2015/06/27(土) 01:43:34.10 0
>「……荒れんなクソ虫共、ブチ転がすぞ」

そして荒れ続けるこの場を静めるため、中佐は椅子を砕きながら喝を入れた。

>「それと一つ言っておく。現状において規律なんぞクソだ」

>「規律に従った結果がこれだァ、これじゃ作戦もクソもねェ」
>「そもそもここまで穴だらけだとマトモな指示なんざ望むべくもねェ」
>「いいかァ、階級だとか規律だとか、敵とか味方とか、誰が偉いとかなんとかはこの際投げ捨てろ」
>「俺が頭で、お前らは全部横一線のチームメイト」
>「和気あいあい、てのは難しいだろうが、『あの国は気に入らんがコイツラは殺したくねェな』と思えるぐらいになってくれると楽だ。俺が」

「――はっ、了解致しました」

本音を言えば、宗一郎はまだ中佐の思想を受け入れたわけではない。
命を賭ける戦場において、自分が誰の命令に従えばいいのかも分からなく、各々が自由な行動を取れば、
兵士達が一つの軍として機能することは無いと考えているからだ。

それ故に上下関係をはっきりさせるためのシステムが階級であり、『上官の命令は絶対』という規律である。
一人ひとりがあくまでも縦方向に繋がり、上から受けた命令を順守することによって、
有象無象の兵隊はようやく軍≠ノなる――という思いは、今も持ち続けている。

だがこの部隊内に限って、隊員が階級の垣根なく横方向に並べと隊長が命令するのであれば、それにもまた従わなければならないのが宗一郎の信条だ。
未だ好き勝手な発言を繰り返すメンバーに、言い返したいことは山程あるが、一先ずここでは黙殺することにして、
今度は隊長が話す作戦について、頭の中身をしっかりと入れ替える。

>「見りゃ分かるだろうが、武神が楽に通れるのはこの三本、各都市への接続用の産業道路だけだ」
>「でェ、この三本にそれぞれ3隊ずつを振り分け、三方向から核のある市庁舎を目指す、てのが今回の作戦だァ」
>「どこぞの都市が時間差自爆なんぞした結果ァ、『核』を破壊すればその核から産まれた連中も纏めて消滅する、て事が分かってる。その後は各個撃破で任務完了、分かり易いなァ?」

>「質問とかあるなら今の内に全部言えよォ?」
>「それと、実際の編成を決めたいからテメェ等の戦闘スタイルを寄越せ、俺は機龍でブッた斬ってソッコで次、だ」

「専門は陸戦における近接・強襲攻撃、及び偵察作戦です。それに付け加えて――今回の編成について一つ、進言させて頂きたいことが御座います」

提示された作戦は、戦力を均等に振り分け、3方向からそれぞれ目標に向かって進軍するというシンプルな内容だ。
一隊員である自分が、その作戦自体に口出しするつもりは当然なかったが、少しばかり気に掛かる点がある。

「我々が進む南ルートには、A隊とB隊が先行するとのことですが、
 抵抗軍という急造の組織で、専門の偵察部隊も編成されておらず、また各部隊間での緻密な連携も期待できないとなれば、
 やはり我が隊からも、敵軍に対して独自に威力偵察を行うのが妥当かと思われます。
 そしてその役目には偵察として充分な機動力を有し、この種の任務経験もある自分と、
 空中挺進(エアボーン)を担当する、ギーガー三尉が適任かと考えますが、如何でしょうか」

宗一郎が話した威力偵察とは、敢えてこちらから小規模な攻撃を仕掛けることによって、
監視だけでは分かりにくい、正確な敵の配置や規模を探るという偵察作戦の一種だ。

これが通常の軍隊であれば、専門の偵察部隊を以って当たるのが普通だが、
抵抗軍内にはそういった部隊も無く、更に敵が『滅びの軍勢』という人類にとって未知に近い相手ともなれば、
作戦の成功確率を可能な限り高めるために、こういった類の偵察は必須だと考える。

そして、その相方としてギーガーを指名した理由――これは二つある。

一つは、やはり威力偵察のためには部隊編成の最小単位である、二人一組(ツーマンセル)以上の戦力を用意するのが望ましく、
武神と機竜ならばそれぞれ陸と空に振り分けて偵察を行える上、それが空輸用の機竜とならば、
現地に先行する時や、逆に離脱する際にも、極めて迅速な移動が可能となる。

更に二つ目の理由――どちらかと言えば、こちらの方が大きい部分を占めるのだが、
大口を叩いたあの男を、敢えてパートナーに指名することで、
宗一郎自らその力を試してやろうという、明確な挑戦であった。

72 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/28(日) 07:37:43.94 0
異国の者の集う中、文化の差、気遣いの行き違い、そしてプライドのぶつかり合いによる白熱は止まらない。
ロジーが半ば売り言葉に買い言葉で言い放った挑発に、急ごしらえの同僚たちは思い思いの反応を返してきた。

>「あ、君だな。私のことを“いろものがかり”って言ったのは」

「あんたは黙ってろ。カタギだからって手加減なんかしねえぞおれは」

当たり前のように口を挟んできたリンネをひと睨みして黙らせる。
黙らせたというより、リンネの方が空気を読んだだけなのだが、ロジーにはどっちだって良いことだ。
最も直截な挑発を受けた堅物軍人の天城・宗一郎はまっすぐにこちらを見据え、圧のある眼光を向けてきた。

>「機竜乗りとしての自分に、随分なプライドを持っているようだな、ギーガー三尉。(中略)
  貴様がただの臆病な配達屋≠ナはなく、抵抗軍の戦士たるに相応しい存在であることを祈っておこう」

「てめえ……!言葉に気をつけろよ国粋野郎。生まれた時から軍人ですみたいなツラしやがって。
 瑞穂皇国ってのは血統って奴を重んじるらしいが、今すぐてめえをアマギ=クランの末代にしてやろうか」

配達屋呼ばわりに、腰の拳銃を抜かなかった自制を褒めるべきであろう。
代わりに敵意たっぷりの視線で天城の眼光と張り合う。
そこへ駄目押しのように先ほどの直立少女レシタールが言葉を放った。

>「ロジスティクス三等空尉、空尉の言葉は同じ機龍乗りとして恥ずべきものとしか思えません。
 (中略)私はこの部隊の仲間として、武神に乗る者への謝罪を求めます」

「ああ?レシタールお前、こいつら武神乗りの肩持つってのか?
 セカンダリ(中等部教育)も終わってねえようなガキが、大人のおれに口答えするんじゃあ、ねーぜッ!」

ロジーはショックであった。
武神に対する軽視は全世界の機竜乗りの共通認識だから、まさか味方のフレイアに後ろから撃たれるなんて思ってなかったのだ。
その動揺を強い言葉に変えて、一回りも年齢の違うフレイア吐き出すその様は、情けなさの瞬間最大風速を叩きだしていた。

>「私の番ですねぇ。分かりましたぁ、でもその前にぃ」

過熱した雰囲気をものともしない間延びした声が挙がった。
音源を視線でたどると、角縁メガネの向こうで華やかに微笑む女性の姿があった。

>「皆さんよくしゃべってのどが渇くかと思いますのでぇ、飲み物をご用意させていただきましたぁ。

女性は笑み顔を崩さず持参したクーラーボックスから人数分の飲料を取り出す。
配布されたのは、縦長の真っ黒な缶。商品名もなにも書いてない。

>「あ、その缶はうちの試作品でしてぇ、ランダムでいろんな文字列が浮かぶのが売りだそうですよぉ」

「へえっ。はやりのデジタルサイネージってやつか。どうやってこんな小さい缶に搭載してんだ」

女性の笑顔に再び毒気を抜かれた(ちょろい)ロジーは感心しながら缶を見る。
果たせるかな、黒塗りの缶表面に共通語の文字が浮かんできた。

>『これ飲んで目覚ませ馬鹿』

「んだとぅ!?」

女性を二度見するが、変わらず彼女は微笑み続けている。

73 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/28(日) 07:38:16.87 0
周りを見渡せば各々に向けたそれぞれ異なる文字が書いてあって二度驚きだ。
直前の会議の内容を反映したメッセージをいつ、どうやって仕込んだのか謎過ぎるが、それ以上に、

(あんなツラして毒舌かよ!)

しかも直接言うより手が込んでいて後味厳しい指摘である。
メッセージについて言い返そうにも『たまたまですよぉ』と言われればそれまでというタチの悪さも十分だ。
この女には勝てないと、一発で認識させられてしまった。
最早激情にかられるのもむなしくて、ロジーは無言で缶のタブを開け、中身を一口啜った。

「……うまい!強めの炭酸がカーっと突き抜けたあとに甘さの波状攻撃が脳にガツンと来るッ!!
 例えるなら!風邪でヘロヘロの時に差し入れで貰ったよく冷えた桃缶みてーな!
 そんな身体の求める第四の栄養素的な旨味が効くゥ〜〜ッ!」

こういうスタミナ系ドリンクはISEの基地でも酒保で取り扱いがあり、ロジーも任務前後に愛飲している。
しかしISEで一般的に流通しているドリンクとは違い、独特の薬臭さがこれにはなかった。
単純に、美味しいのである。

>「ひとまず私も自己紹介をぉ。カンパーナ社から参りましたぁ。主任エンジニア、および警備軍少尉。
 フォルトゥナータ・フォルテと申しますぅ。以後お見知りおきを……」

「おいこのドリンクもっとくれよ。金なら出す、一本いくらだ?ロット発注ならいくらになる!?」

まさに疲労がポンと飛ぶ誰もが求めた夢の飲料。
この戦いが終わったらISEに持って帰って部隊の連中にも教えてやろう。
ゆくゆくは酒保でも取り扱ってもらって安定供給を――

>「……荒れんなクソ虫共、ブチ転がすぞ」

バキャッ!と凄まじい音がして、一同が振り向いた先には隊長が立ち上がっていた。
その足元には椅子だったと思しき木片が転がっている。割り砕いたのだ。

>「ロジー……って言ったなァ、小僧」

サングラスの向こうで、天城を凌駕する鋭さを備えた眼光がロジーを射すくめる。

>「(中略)んな事も分からねェで仲間を見下すようなクソ虫にも劣るクズに用はねェ、次は無いぞ?」

「ぐ……」

流石のロジーにも逆らっちゃいけない相手ぐらいは分かる。
出向してきた多国籍部隊で、その長官の言に反駁するなどもってのほかだ。
そしてそれ以上に、このサウスウィンドという男から、有無を言わせない何かをロジーは感じた。

>「和気あいあい、てのは難しいだろうが、
 『あの国は気に入らんがコイツラは殺したくねェな』と思えるぐらいになってくれると楽だ。俺が」

ロジーはしばらく天城やフレイアの方を睨んで拳を震わせていたが、やがて何かを飲み込んで肩を落とした。
いつの間にか立ち上がっていた椅子に再び、今度は痔を気遣ってゆっくりと腰掛ける。

「……わかったよ。ここじゃあんたが司令官だ、あんたの指示に従うぜ、中佐。
 だけど忘れるなよ武神乗り共、おれはまだお前らのことを認めたわけじゃねーかんな」

74 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/28(日) 07:38:52.17 0
>「あと手前ェ、一応資料来てるが実戦経験皆無じゃねェか、これから死ぬほど積めるから安心しとけ?」

そしてすぐに飛び上がった。

「べ、べ、別に経験ないわけじゃねーし!そういう機会にあんまり恵まれなかっただけだし!!」

顔を真っ赤にしながらしどろもどろに抗弁を繰り返すロジーの姿は皆にどう映るだろう。
悲しいことに、さっきと対して印象が変わらないというのが現実かもしれない。
中佐がぶつくさ言いながら手元のコンパネを操作し、ホログラフィーに作戦企画図を投影する。

>「でェ、この三本にそれぞれ3隊ずつを振り分け、三方向から核のある市庁舎を目指す、てのが今回の作戦だァ」

都市中枢の市庁舎に巣食った『核』を、三方向からの攻撃で潰すのが今回の任務内容だ。
他部隊……A隊とB隊と共に正面南通を我々C部隊が叩く手はずになっている。

>「クソッタレ共は赤黒一択だァ、この色に染めてる機体の奴は諦めて塗り替えろォ?
 最優先で作業して貰えるよう話は通してあるぜェ」

「おれのヒューガには必要ねえな。連中の辛気臭えカラーリングとは真反対の、鮮やかなオシアナスブルーだからよ」

オシアナスブルーは地中海の海色をイメージした美しい金属光沢を持つ青色だ。
見る角度によってそれぞれ異なる表情の色合いを持つ、大陸三大美色に数えられる色である。
ISEの最新鋭機であるF91ヒューガには、そのオシアナスブルーがいっそ下品なくらい各所に輝いていた。
これがまあ、青空の上ではいい感じに迷彩になるのである。

>「それから……クソッタレ共の情報共有だ」

更に追加で表示されたのは、『滅びの軍勢』についてわかっていることの羅列だ。
戦線に参加していなかったロジーにとって初耳である情報も多い。
『放置するとヤバイ』『体積を50%吹っ飛ばさないと死なない』『人類側の兵器を真似てくる』
これらが要点となるだろう。
次いで出てきたのは、15mを越える巨大な機竜とその設計図――機竜は赤黒い色を持っていた。
滅びの軍勢だ。

>「見ての通り、クソッタレ共は完全に再現してやがる」

「するってえとつまりアレか?中等生の考えるような"夢の最強機体"が現実になって襲ってくるってことかよ。
 ……おいおいそりゃタチの悪い冗談だな」

話を聞いてさすがのロジーも青ざめた。
旧型兵器ならともかく、人類が作ることすらできなかった機体すら奴らは造り上げて来るのだ。
軍人はもとより、科学者や設計者からしても悪夢だろう。

「つーか設計図はどこから漏れてんだよ。こっち側にスパイでもいるんじゃねえのか」

滅びの側に図面がリークしていたとかならまだ良い。
最悪なのは、『誰も横流ししていない』にも関わらず敵が図面を再現してきた場合だ。
それはつまり、今後強力な機体をつくろうと図面を引けば、引いた傍から盗用される可能性があるということなのだから。

75 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/28(日) 07:39:36.17 0
>「それと、実際の編成を決めたいからテメェ等の戦闘スタイルを寄越せ、俺は機龍でブッた斬ってソッコで次、だ」

議題はうつり、それぞれの戦闘スタイルを提示する運びとなった。
ロジーは自己紹介の際に輸送担当であると言ってしまっているので、ここは謹聴する。

>「戦闘スタイルとしては、空中から急襲し、翼の刃を使いながら格闘戦をし、戦力を奪ったら宙へ離脱、となっております。

フレイアの機竜戦術は、急降下白兵からのヒット・アンド・アウェイ。
優れた旋回能力と上昇降下能力を要する対地戦術だ。ロジーより一回りも若いのにその語り口は堂に入っている。
だが、続けて投じられた言葉に会議室は騒然となった。

>「自爆装置の使用は認められていますか?」

隣の微笑みデブ、内藤が素っ頓狂な声を上げた。重なるようにリンネも叫ぶ。

>「駄目に決まってるだろ!神聖帝国じゃそんな事までやってたのか!?」
>「そうだとも!お父さんはそんなこと許しません!」

「なんだぁ?なんでおっさんはともかく軍人連中までびっくりしてんだ?
 フツーに積むだろ、自爆装置。敵に鹵獲でもされたらどうすんの?」

――ここでロジーとその他の隊員との、決定的な意識の差が明らかになった。
ロジーにとって、自爆装置とは脱出して乗り捨てた自機が的に鹵獲されないよう処分するためのものだ。
だが、欠如していた認識がある。
滅びの軍勢は、捕虜もとらなければ機体の鹵獲もすることはない。
自爆装置を使うことがあるとすればそれは――

>「……とにかく、駄目だ。死を覚悟する事と、死を選ぶ事は違う」

内藤の言う通り、爆発四散して敵と運命を共にすることだ。

「そ、そうだぜ。何も死ぬこたぁねえじゃねえか。
 世界護ったって、手前が生きてなきゃ誰が勲章受け取るってんだよ!な!」

実際、進退窮まった場合、生還の見込みがないケースに自爆を選ぶのは、戦闘員としては正しいのかもしれない。
救出の為に無茶な奪還作戦を立てる必要もないし、敵に捕らわれて機材や情報を使われることもない。
だが、それは平時から口にして良いような判断じゃないはずだ。
本当に自爆という決断に至る前に、生き残る方法をそれこそ死ぬほど考えるべきなのだ。

ざわついた雰囲気にまったく遠慮しない透明な氷のような声で六角が申告した。

>「……私の戦闘スタイルは、対象に接近しての格闘戦です。(中略) 私にはそれしか出来ませんので、その通りに戦います」

「嘘言えよ、教本通りに戦って『亡霊』なんてあだ名がつくか。それとも足がねえのかお前の機体にはよ」

桔梗の発言にすかさずロジーは口を挟んだ。
彼女が武神乗りであることはもちろん見下しポイントだが、それ以上に気がかりなことが一つあった。
ロジーの挑発に、武神乗りは愚か機竜乗りの者達ですらそれぞれ嫌か悪かの反応をした。
だが桔梗だけが、何も言わず、表情一つすら変えずにいた。
かと言って無視していたというわけでもなく、ただ『語る言葉を持たない』といった姿勢なのだ。

「こえーなぁ、何考えてっかわかんねえ人間と組むってのはよぉー。それが武神乗りならなおさらこえーなぁ?
 ロッカクよぉ、お前もっとなんか喋れや、おれみてーによ。趣味の話とかすっか?おれは漫画とか好きなんだけれど」

ロジーは肩を竦めて桔梗を一瞥した。
誰もロジーにだけは言われたくないだろう。完全に余計なお世話、内藤以上のお節介である。

76 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/28(日) 07:40:13.13 0
その内藤が、自身の武神戦術について申告する。

>「そうだなぁ。とりあえず初っ端に超早いとこ見せつけて、後は牽制したり、撹乱したり、
 もちろん直接相手を撃破したりもするけど……とりあえず、一番槍は任せといてよ」

「それしか出来ませんって言ったらどうだ、ナイトー。ロッカクみてーにな」

ロジーはニヤニヤしながら内藤を小突いた。
内藤は答えず、わざとらしく言葉を付け足した。

>「それと質問ではないのですが、幾つか言っておきたい事がありまして。
 (中略) 僕には男色の気はありません。他を当たって下さい」

「…………なんて?」

一瞬、内藤が何を言ったのかロジーは本気でわかりかねた。
いやさ、わかってからも理解は出来なかった。
できなかったが、凄まじい勢いでサウスウィンド中佐の方を見てしまったことを速攻で後悔した。

「……コレなの?」

小指を立てて恐る恐る問うと、彫刻が掘れそうなぐらい強烈なガンつけと共に否定された。

>「あれ?……あぁ、すみません。ニッポンじゃ、自分が一度尻を置いた椅子や敷物を他人に譲るのはマナー違反なんですよ。
>(中略) どのみち、この部隊には上官をホモ野郎扱いした者を罰する規律なんてないんですから」

「奥ゆかし過ぎだろ、ニッポン人!てめーにはぜってえスケベクッション貸してやんねーからな!!」

敷物の貸し借りにそんな意味を込めるなんて、かの国のコミュニケーションは上級者向け過ぎる。
この調子じゃ他の行動もどんなサインと受け取られるかわかったもんじゃない。
全然関係ないけど持病を負った臀部がきゅっと縮こまるのを感じた。全然関係ないけれど。

>「……なんて事を今後避ける為にも、ある程度のルールは必要ですよ。僕は皆に一理があると思います。
>「話をしようよ、色々と。今じゃなくてもいいから。僕らはお互いの事をちゃんと知って、受け入れるべきだ。
 (中略)>……僕達は、この世で一番強い部隊にならなきゃいけないんだぞ。」

この世で一番強い部隊。
内藤はこのC部隊のあるべき姿をそう形容した。
そして悔しいことに、その一点に関してだけは、全面的に内藤の方が正しいと、ロジーもそう思う。

>「騎竜乗りのいるこの場所で、あの自己紹介は失敗だった。ごめん、悪かったよ。

「……おれは謝らねーぞ。機竜の方が武神より偉いって考えを変えるつもりはねー」

内藤の真摯な態度に、今度はロジーのバツが悪くなる番だった。
目を合わせることができず、吐き捨てるようにして言い返すのが精一杯だ。

>「僕は、君に負けないくらい凄い奴だって、これから教えてやるから覚悟しときなよ。『ロジー』」

「ギーガー三尉だって言ってんだろ、ナイトー。次気安くロジーっつったらぶっ飛ばすぞ。
 おれはてめーらと馴れ合うつもりなんかねえんだ。
 ……だけど、好きな漫画や食い物の話ぐらいだったら、付き合ってやってもいいぜ」

腕を組んで椅子にふんぞり返りながら、ロジーは威勢を失ってそう零した。
精神的に未熟な彼がいま出来る、最大限の譲歩であった。

>「ルールを決めるってのは、悪くないねぇ!」

内藤の提案に乗っかるように、シーナが喜色満面に言い放つ。

77 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/06/28(日) 07:40:48.45 0
>「フレイア君が私へ謝罪をしろと君に言ったが、その必要はない。
>(中略)武神と機龍、どちらがより優れた兵種か戦場で答え合わせをしようじゃないかギンガマン君」

「だからギーガーだって。ウチの上官と同じ間違え方すんなよなあ。
 だけど実戦で黙らせるってのは良いアイデアじゃねーか。文句言いっこなしだぜおっさん」

リンネは立ち上がり、ぐるぐるとよく回るその舌でセールストークの如く自機について語る。
その姿たるや敏腕広報マンだが、この男はもともと技術者じゃなかったか……?

>「君の活躍に心から期待しているよギガストリーマー君!」

「ギーガーだっつってんだろ!!」

本当に、この中年と話していると調子を狂わされる。
年齢不相応の挙動不審っぷりもそうなのだが、大人らしいまともな発言と戯言をスパイラルに織り交ぜてくるものだから、
全部を聞き流すわけにもいかず結果ものすごく疲労する。やりづらいタイプであった。

>「専門は陸戦における近接・強襲攻撃、及び偵察作戦です。
 それに付け加えて――今回の編成について一つ、進言させて頂きたいことが御座います」

折を見て天城が再び発言する。
先刻の諍いがまだ冷えていないロジーはそちらを見ようとせず、しかし話だけは聞き逃さないよう耳を立てた。
彼の提言は、要約するとこういうことだ。
C部隊でも独自に威力偵察を行い、敵戦力分析の裏をとるべきではないか。
そしてその任は経験者である天城と、そのバディとしてロジーが適任である。
――あちらからのご指名だ。そしてその言葉の裏にある意思も、ロジーにはちゃんと伝わった。

「おれに異論はないぜ。お望み通り、敵の後ろなりド真ん前なりに放り込んでやるよ。
 ハエの巣の傍にハエ取り紙を置くようなもんだ。朝飯作るよりも簡単な仕事だぜ」

この期に及んで滅びの軍勢をなめくさった発言をするロジーは、
ベコベコになってしまったボトルに残った水を喉に流し込む。

「だけど忘れるなよアマギ。空挺で機竜に吊られるってのは、命を預けるってことだぜ。
 つまりは生殺与奪の権利を全部おれに寄越すってことだ。そんでそれは真逆でも成り立つ話だ。
 ナイトーはああ言ったが、おれはどうにもお前って人間が気に食わねえ。
 てめえだけが試す側だと思うなよ、おれもお前が信頼にあたうる人間かテストしてやるぜ」

それから中佐を一瞥して、武神乗り達をゆっくりと見る。

「さっきも言ったがおれの担当は空挺輸送だ。つまりは乗っける武神の能力がそのまま俺の戦闘スタイルってわけだ。
 武神には二機まで積める。死にたい奴から手を挙げろよ――死なせてやんねーけどな」


<六角にちょっかい/内藤に合意/天城の提案に異論なし>

78 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/07/01(水) 21:27:40.42 0
「――チト待った、緊急通信だ」

話を手で制し、端末を操作

「――アレックス中佐だ。……あァ、居るが……何?そんな事で緊急回線使うんじゃねェクソッタレ!……あァ、怒鳴って悪かったな、了解だ」

「……アマギ少尉。テンドウ少将とやらからお呼び出しだ。至急本国に帰参せよってなァ」

天城「――ハッ!今すぐでしょうか?」

「あァ、今すぐだ、緊急用の輸送機の使用許可が降りてるから行って来い、駆け足!」

天城「了解しました、アレックス中佐。失礼します」

軍人らしいキビキビした動きを見送った後、溜め息を一つ

「――あァ、総括は後で纏めて言ってやらァ、とりあえずフォルティナータ少尉殿も言いたい事言ってくれやァ」

79 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/07/06(月) 01:42:18.98 0
>「べ、べ、別に経験ないわけじゃねーし!そういう機会にあんまり恵まれなかっただけだし!!」
>「つーか設計図はどこから漏れてんだよ。こっち側にスパイでもいるんじゃねえのか」

(まるっきり童貞の言い訳じゃねェか……とは言わないでやるかァ)
「漏れたルートは不明だァ、が、忘れられたモンに限られてること、各国が抵抗軍に提供してない重要機密が含まれてる事からスパイの線は薄いだろうなァ、概念的な何かであるとかなんとか偉い学者サンは言ってたぜェ」

> 「自爆装置の使用は認められていますか?」

「……自爆装置の使用はナシ、だ。無許可で悪ィが、外部ロックを掛けさせて貰ってる」
「後で仕様書を渡しておくぜ?」
フレイアに対しそれだけを告げ、それ以上は言わない
ここでその是非を問うても意味がないと分かっているからだ
(小さい頃からの『英才教育』って奴ァ……胸糞悪ィなチクショウ)
(だがまァ、思ってたよりズバズバ物言うじゃねェか、結構見所あるなァ)

>「……私の戦闘スタイルは、対象に接近しての格闘戦です。
> 皆様の所属国にも武神の基礎的な戦闘マニュアルは存在すると思われますが……おおよそ、其処に載っている通りの物です。
> 私にはそれしか出来ませんので、その通りに戦います」
>「質問はありません。適切に仕様してください」

「教科書通り……まァそうだな、練度がおかしいだけだ」
かの『幽霊』と対峙した事のあるアレックスは知っている、その『教科書通り』の恐ろしさを
基本に忠実、故に強い。だが、だからこそ
(今回の戦いでは注意しねェとなァ、『痛み』のない連中相手にどこまでやれるか……コイツが一番危なっかしいか)

>「あ、僕の竜夜は真っ黒ですよ。うーん、気に入ってたんだけど、塗り替えちゃうなら……どうしよっかなぁ。
> 色の指定は……出来ますよね。だったら……藍と茜かなぁ」

「あー……何色だそれ。まァいい、許可証出しとくから整備課の『班長』てェ野郎に伝えとけ」
「それと燃焼・エネルギー系は機械にダメージが入れば有効だ、熱暴走とかな」
「基本、『中身』はいねェモンとして考えた方がいいが」

>「そうだなぁ。とりあえず初っ端に超早いとこ見せつけて、後は牽制したり、撹乱したり、
> もちろん直接相手を撃破したりもするけど……とりあえず、一番槍は任せといてよ」
「チッ、やっぱ戦闘スタイルはご同輩じゃねェか、じゃ俺と突撃だな」
そう言ってメモを取り、更に言葉を続けようと

>「それと質問ではないのですが、幾つか言っておきたい事がありまして。
> とりあえず……サウスウィンド中佐。折角のお誘いを無下にしてしまうのは心苦しいのですが、
> 僕には男色の気はありません。他を当たって下さい」

……した途端、暫し呆然
ややあってから発言の真意に気付き、盛大に吹き出す

「……ックハ!ハハハハハ!そうかそうか、ソイツァ悪かったな内藤!」
「OKOK、俺が悪かった、ハハ、面白ェじゃねェか、オイ!」

中佐という立場で、多くの上官が失われた現状、当然のようにアレックスも外交をする事がある
故に、そんな事がないのは百も承知だが、故にこそ
「ああ、いい、実にいい。オイお前ェら、他にも言いたいことあるなら言えよ?」
「あァ、遠慮はいらねェ、全部受け止めてやらァな」

>「……僕達は、この世で一番強い部隊にならなきゃいけないんだぞ。」
「そうだ、最悪な事に俺達が世界を救うってんだからな、その位じゃなきゃいけねェ」
(さァて……ナイトウほどモノを言える奴がいるかどうか、だなァ)
思いつつ、次の意見を

80 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/07/06(月) 01:42:30.91 0
>「ルールを決めるってのは、悪くないねぇ!」
>「じゃ私から一つルールを提案しよう。
> より敵の殲滅に貢献した人間が偉い、ってのはどうだ?
> だってそうだろう?私達はそのためにここに集まっているんだから!
> 稼ぎの良い奴が何よりも優先される!単純明快だろう?」

「良いこと言うな社長、じゃ一番は俺だな?」
「……ま、実力主義も悪かねェが、逸り過ぎても後ろが困る」
「敵は10倍は居るからなァ、程々で頼まァ」
相も変わらずフリーダムなリンネに対し、そォいやコイツにゃ関係ねェなァと内心で呟く
これほどの自由人も居ないだろう、マトモな事も言う分なお質が悪い

>「ところで、民間人は作戦領域内にいるのかな?」
>「ここのネットワークセキュリティ甘かったから直しておいたよ。
> ついでにグリントガールのファンサイトを作っておいた。
> 礼にはおよばないよ、中佐殿。
> 私と君の仲じゃないか」

「帝国の生真面目君をからかうネタになるから構わねェぜ、むしろもっとやってくれェ」
クックッと笑った後、真面目な顔になり

「――そこがキモだ。連中、非武装の相手には積極的に手を出さねェ。消滅には巻き込むがなァ」
「とりあえず……こことここ、それからここは消滅を確認してる」
幾つかのマーカーの色を変え、それから消す
残ったマーカーのうち、進路に近い幾つかを示し
「この辺りも居ない可能性が高い、クソッタレ共が溜まってるからな」
「――これがこの作戦が“奪還”である理由の一つだ」
「都市を奪還し、生き残りの民間人を保護する。そのためにも、マーカーのある建物は極力崩さない事を目指せ」
まァてめェらの命が最優先ではあるがなァ?、と続け、全体を見渡す

「――さァて、作戦を纏めるぞ」
「威力偵察だがまァ必要ねェ、A隊隊長は連邦の知り合いでなァ、データリンクで情報はくるようになってる」
「――が、分隊はする。先行と後詰めだなァ」
「とにかく連中を確実に始末しねェと進めねェ、だから先行が部位欠損等で3割以上削って、後詰めが確実に消滅を狙う、てのが基本の作戦だ」
「先行は俺とナイトウ、ロジーは内藤を運んでやれ」
「後詰めは社長とロッカク、それからフレイアだな」
「一応、今、アマギの代わりの人員を要請してる。ソイツがフレイアと組む事になるらしいから、合流したらフレイアは遊撃だなァ」
「ああ、フォルティナータ、アンタは悪ィが通信兵を頼む。人員が一気に足りなくなってなァ、アンテナとかを設置して回る役が必要だ、アンタの機龍なら余裕だろォ?」

「――以上でブリーフィングは終了だ。作戦開始は二日後の1200時、集合時間は0900時だ、遅れるなよ?」
全員に告げ、アレックスは立ち去る
作戦開始までにやるべきことは山積みなのだ、恐らく次に会うときは戦場だろう

【作戦決定、各自解散で次回は戦場】

81 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/07/07(火) 16:00:16.12 O
ブリーフィング後、渡された仕様書を読みながらドックへと向かう。
内容には自爆装置以外にも、『騎乗用ハードポイントシステム』『長距離飛行用充電式小型燃料槽』なるものについて書かれていた。
それらへの結論はあっさり出し、先程までのブリーフィングを振り替える。

>「駄目に決まってるだろ!神聖帝国じゃそんな事までやってたのか!?」
>「……とにかく、駄目だ。死を覚悟する事と、死を選ぶ事は違う」
>「そうだとも!お父さんはそんなこと許しません!」
>「内藤君の言う通りだ。君はもっと自分を大切に思った方がいい」
>「そ、そうだぜ。何も死ぬこたぁねえじゃねえか。
 世界護ったって、手前が生きてなきゃ誰が勲章受け取るってんだよ!な!」
>「……自爆装置の使用はナシ、だ。無許可で悪ィが、外部ロックを掛けさせて貰ってる」

特に自爆装置使用への反応に驚かされた、しかも外部ロックまでされるとは…命令に不服は無いが、自国との違いを味あわされた。
あの六角准尉ですら、ほんの少し反応を見せていた気がする。
これが『普通』なのだろうか?
咄嗟に返した言葉にも、微妙な反応を貰うだけだった。

「…家族も…いませんでしたからね、捨てられていたそうなので。そういった兵士にはよく自爆命令が出ます。
AIより確実に敵を引き寄せ、まとめて…
実際その命令が下った事もありますが、困ったことに回路不備で起動しませんでした。
…無理やり倒して抜け出しましたが、その後は扱われ方が変わりましたね…」

腫れ物のように、もしくは役立たずとして。
その頃から軍服も、全体的に緩くなって困っていた気がする。
死ぬべきときに死なない軍人はいらない、それが神聖帝国だった。
フレイアは珍しかったのだ、自爆も出来なかったのに、無謀な戦いから無事帰還してしまうなど。
上官は扱いに困ったようで、彼女を危険な部隊に編入させるようになった。
それでも、生き残ってしまった。終いには国唯一の生き残り、とんだ予想外だ。
と、思考が逸れてきたのでブリーフィングについてへと考えを戻す。
あの場の会話で、更に発言した相手は、中佐を除けば内藤准陸尉とロジスティクス三等空尉。
確かその内容は…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
>「あ、僕の竜夜は真っ黒ですよ。うーん、気に入ってたんだけど、塗り替えちゃうなら……どうしよっかなぁ。
 色の指定は……出来ますよね。だったら……藍と茜かなぁ」

「藍も茜も、暗闇の中では黒と赤に見えてしまう色だと思われますが?」

フレイアのツッコミスキルが1上がった!
と何処かに表示されたような気がしたが、そんなわけはないだろう。
しかし目測のみで敵を判別するのは面倒だ。
出来れば仲間は分かりやすい色をしていて欲しい。

>「セカンダリ(中等部教育)も終わってねえようなガキが、大人のおれに口答えするんじゃあ、ねーぜッ!」

「いえ、高等部教育まで終わっており、機械に関しては大学レベルまで、神聖帝国兵には施されています」

資料を見ればわかることだ、だが言い返したというより訂正しただけだ。
自分が貶められるのは、気にもならないのだから。
どうせ死んでいたはずの自分が、今さら何を求める―――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

82 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/07/07(火) 16:03:15.32 O
これ、思い出す必要があっただろうか?
廊下を歩きながら首を傾け、疑問を解決しようとするがピンと来ない。
しいて言うならば、今までならどちらの発言もしなかっただろう、という部分だろうか?
もし表情に出ていたら、とても不思議そうな顔をしていただろう。だがそれもドックについたことで終わる。
ワイバーンの改修を行う人物を探し『長距離飛行用充電式小型燃料槽』とやらの位置を話し合う。
話し合う、などと言ってもすでに決めてしまっていたのだが。

「主燃料層は胸部コックピットの背後にあります。ですから小型燃料層は遠くに…頭部カメラ付近に組み込みをお願いします」

離して配置する事で、片方の破損を補えるように依頼する。
問題は『騎乗用ハードポイントシステム』の方だ。
誰が乗るのか?そもそもそんな機構初めて聞いた。
武装らしい武装のないワイバーンには適任だろう、だが己の技術が他人に直接関わるのは…正直厄介だ。
そもそも…

「…兵士は考える必要は無い、でしたね」

唐突に思い出した自国の教え。正しいのかは知らない、これから知ることになるのだろうから。
それからはメカニックに混じり、ワイバーンの改修をした。
仕組みを理解した上で扱う、それが一番効率的だから。
(…本当に?)
出来るなら自爆装置の外部ロックについても知りたかったが、さすがに口止めされていたようで…
(…本当に?)
いっそ装甲を減らし、出力そのものを上げてしまおうかとも考え…
(本当に、そう考えた?)
…途中で、部屋に戻った。

作戦の日はすぐにやって来た。
自分達は遊撃機、動き方は状況次第だろう。
騎乗すると聞いていた相手が、一度見たことがある人物だった事は驚きだったが、どうということはない。
何故か一時独房にいたらしい、そちらの方が気になるというものだ。
一体何をしたのだろうか?
聞くのは悪い気がしたので、自分が関わっていたなどとは知らないままだ。

「カイ准尉、準備はよろしいですか?」

返答を聞き、フレイアは目を瞑る。
これから先共に戦う仲間。
守るべき世界、忘れてはいけない喪われた人々。
…いつか来るであろう終わり。

「…行きます」

死した者と死に行くものの為の戦いへ、白竜は飛び立つ。

83 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/11(土) 05:13:05.55 0
ニッポン人は、自分の快不快を行動原理として強く優先する。

ブリーフィングが終わり、皆が会議室から去っていく中を、内藤は全速力で駆け抜けていった。
肥満気味な体型からは想像出来ないほど素早く、かつ理想的なフォームで、他の隊員を見る間に追い抜いていく。

気がかりだったのだ。本国に呼び戻されていった天城少尉が。
これで瑞穂皇国は抵抗軍に対して何の協力も提供していない事になる。
そのリスクは、恐らく大きい。それでも彼を呼び戻さねばならない程の事が起きたのだ。

何か、何か声を掛けたかった。
それで彼を取り巻く環境に変化が起こる訳ではない。

だが内藤は天城と、一度は仲間として一堂に会し、仲良くしようと、そう言ったのだ。
その相手を何の言葉も見送りもなしに、去って行かせるなど、気分が悪い。
だから内藤は走った。

(緊急用の輸送機……それも多分、僕らの機体と同じハンガーに収容されている筈だ……。
 そうでなくとも彼の機体も同時に輸送されるなら、それなりの準備時間がかかる……もしそうなら、まだ間に合う……多分!)

格納庫に辿り着いた。滑走路へ続く正面ゲートが開いている。
勢いのまま外に飛び出す。
輸送機にまさに今搭乗しようとしている、天城の背中が見えた。

「天城君!」

咄嗟に叫ぶ。しかし、言葉が続かない。何か声を掛けたかった。
だがいざその段に至ってみると、何を言えばいいのか、分からなかった。

彼を待ち受けるものも知らないのに、なんと声を掛ければいいのか。
答えは出ない。元々、ある訳がないものなのだ。

天城が振り返った。遠すぎて表情は見えない。
だがその姿に、内藤には何故か、リューキューで決死隊に志願した同輩の影が被って見えた。

互いに向き合っても、やはり言葉は出てこない。
しかし気がつけば、内藤は敬礼をしていた。
言葉を伴わない、故にただ純粋な敬意を示す動作を。

答礼は返ってこない。
それでも良かった。所詮これは内藤の自己満足だ。

自分はここまで走ってきて彼を見送った。
そうする事できっと、言葉では表現出来ない、彼への尊重が伝わった。
自分自身がそうと信じられれば、それで良いのだ。

「……はー、久しぶりに思っきし走ったなぁ。こりゃお腹が空くぞ。
 そういや……ここのご飯ってどうなってるんだろ。聞いときゃ良かったな」

だから清々しい程あっさりと気分と思考を切り替えて、内藤は格納庫へと戻った。
そしてそのまま自機の方へ向かい、傍にいた整備員に声をかける。

「すみません。僕の機体なんですけど、色を塗り替えなきゃいけないらしくて」

そこまで言ってから、はっとフレイアの指摘を思い出した。

>「藍も茜も、暗闇の中では黒と赤に見えてしまう色だと思われますが?」

「……うーん、結構違うと思うんだけどなぁ。でも色の見え方って人種によって違いがあるとも言うし……ちょっと待ってね」

内藤は腕を組み、首を傾げて考え込む。

84 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/11(土) 05:13:49.06 0
「市街地なら連邦のUCP迷彩が効果ありそうだけど……そもそも奴らって迷彩の効果あるのか?
 あちゃー、これも聞いときゃ良かったな……まぁいいや。どっちにしてもUCPはあまりにパッとしないし……」

ふと、視界の端に眩い光を感じて、内藤は片目を閉じた。
それから改めてそちらを振り向くと、随所に金属質な青色の塗装が施された機竜があった。

(あー、アレがロジーの……確かに綺麗な色だけど、ああいうのはアクセントとして散りばめた方がいいと思うんだけどなぁ。
 やっぱ西洋の方の感覚は、こっちとは違うんだなぁ……いや、待てよ?)

何かを思い付いたのか、内藤のニコニコ顔が更に喜色を帯びた。

「整備員さん、塗装なんですけど、ホワイトと「スカイブルー」のタイガーストライプでお願いします。班長さんそう伝えて下さい」

そして整備員へと向き直り、周囲に聞こえるようわざと大きな声でそう言った。

「いいでしょ、スカイブルー。僕の機体にはピッタリの色だ。ねぇ、ロジ……」

それからロジーの方を向いて声をかけ、わざとらしく口を抑える。

「っと、君はその名前を呼んで欲しくないんだったっけ。
 嫌がる事を無理にするのも悪いし、ここは大人しく引き下がるよ」

しかし一呼吸置いてから、内藤は更に続ける。

「ところでニッポン人は結構恥ずかしがり屋でね。恋人や意中の相手でも、名前で呼び合うって文化が薄いんだ。
 好意や交際を無闇に言い広めても、大抵は面倒事に繋がるだけだってね。
 ま……徹底しすぎて、かえってバレバレな奴もたまにいるんだけど」

滔々と語り、最後に一言付け加える。
 
「それとは全く関係ないけど、君の事だけは絶対にちゃんと苗字で呼ぶよ。ねぇ、ギーガー?」

ニヤけた表情を、繕おうともしなかった。



二日後、内藤は出撃の日の朝を迎えた。
気負いはない。
なにせ彼はこれから、世界を救う為の戦いに臨むのだ。
「カッコいい」が大好きな内藤はただ、リューキューの時と同じように静かな高揚を感じていた。

格納庫では空色に染まった自身の愛機が待っていた。
粋な塗装ににんまりと笑ってから、背部ハッチへ続く階段に足をかけ、一歩ずつ上っていく。
そして搭乗し、合一。

超々タングステン製の斧槍を手に、離着陸場のロジーの元へ向かう。

「やぁ、「ギーガー」。今日はよろしく頼むよ。」

苗字を強調して呼びつつ、ヒューガのハードポイントの位置を確認しつつ、片膝を突く。
それを左手で掴み、ヒューガの飛翔を待つ。

飛び立ったら槍は右腕で抱きしめるように抱え、穂先は進路と同じ方向を向くように。
加えて左腕と腹部の力で体を丸める。
機竜に輸送される際の、武神の待機姿勢だ。
竜夜は極めて軽い機体ではあるが、それでも空気抵抗は極力減らすべきなのは当然だ。

85 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/11(土) 05:16:24.55 0
「……ところで、これは移動に支障が出ない程度に聞いてくれればいいんだけど。
 ニッポンじゃ、出撃前の兵士は互いに何か「話」をするって習慣があるんだ」

不意に、内藤は無線のチャンネルを部隊全体に広げてそう切り出した。

「で、僕には毒島って友達がいるんだ。それが結構面白い奴でさ。
 親が佐官なんだけど、コネで出世したって後々絶対めんどくせーって、わざわざ兵卒から入隊してきたんだ。
 けどすごく賢いんだよ。お勉強が出来るって言うよりは、知恵が回るって感じで」

語り出したのは、他愛のない話だった。

「そう、普通思いつくかい?武神の卓越した五感を使えば超遠距離から女子寮のお風呂を覗き見する事が可能だなんてさ。
 初め聞いた時は天才かと思ったね。……女の子達には申し訳ないけど、まぁあのプランには物凄いロマンがあったのさ」

話は更に続く。

「だから僕達は迷わずそれを実行に移した。基地内の給水パイプの音から女子の入浴時間を推定して、
 その時間帯に訓練用武神の格納庫に向かった。女子寮ならともかく、格納庫だからね。
 簡単に潜入出来たよ。その日その時間に訓練機が使われていない事も確認済みだった。既に作戦の成功は目の前だった。そして……」

と、そこで内藤は言葉を区切る。

「……続きは帰ったら話そっかな。「話」は最後まで語らない。ここまでが習慣なんだ。
 皆も、もし良ければ何か話をしてよ。
 一緒に帰って続きを聞かなきゃなと思えるような、気になる奴をさ」



【おおむね与太話】

86 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/07/12(日) 01:45:34.84 0
進んでいく会話を、桔梗は座席に座ったまま身じろぎせずに記録する。

>「話をしようよ、色々と。今じゃなくてもいいから。僕らはお互いの事をちゃんと知って、受け入れるべきだ。
>フレイアちゃんの言う通りだ。上辺だけの連携で勝てるほど、奴らは弱くない。
>……僕達は、この世で一番強い部隊にならなきゃいけないんだぞ。」

内藤の言葉……協力と協調による強さを得ようと語りかける言葉も

>「もしかして天城君に怒られたから落ち込んでるのかな?
>気にするなよ。彼は若さゆえにナーバスすぎるだけさ。
>(中略)天城君も将来きっと私のようになるから安心しなさい」

リンネがおどけたながら囁いた言葉も

>「嘘言えよ、教本通りに戦って『亡霊』なんてあだ名がつくか。それとも足がねえのかお前の機体にはよ」
>「こえーなぁ、何考えてっかわかんねえ人間と組むってのはよぉー。それが武神乗りならなおさらこえーなぁ?
>ロッカクよぉ、お前もっとなんか喋れや、おれみてーによ。趣味の話とかすっか?おれは漫画とか好きなんだけれど」

ロジスティクスの一瞥……挑発じみた、コミュニケーションを促す言葉も

>「教科書通り……まァそうだな、練度がおかしいだけだ」

アレックスの作戦指示や『亡霊』に対しての評価さえも、六角桔梗は『記録』をした。
記憶では無く、記録。意志の疎通や相互理解など微塵も感じさせない、拒絶の色すら見えない対応。
例えるなら、学生が試験項目を機械的に暗記する行為に等しい態度を、結局桔梗はブリーフィングが終わるまで取り続けた。
そんな、まるで人の乗っていない武神の様な態度を取る桔梗であったが……この日、ただ一つ。
ただ一つだけ、彼女から能動的な行動をして見せた。

皆が退出していく最中。最後に廊下に出た桔梗は、自身と反対方向に歩いていく人物の背中に向けて声をかけた。

「……ロジシ……ックスさん」

ロジスティクス=ギーガー。
機龍至上を是とする、この場で唯一の『実戦』経験が皆無な兵士。
長い名前に噛みつつもその男の名を読み上げた桔梗は、モニターが放つ機械的な明かりを背に、言葉を紡ぐ。

「……もしも将来。貴方が誰かを殺そうと思った時は、その時はどうかきっと……殺す事の意味を考えてから殺してください」

それだけ。一方的にそれだけを告げると、桔梗は先程までと全く変わらない態度で、彼と真逆の方向へ再び歩みを進める。
……何故、これだけの個性的な兵士が揃う中で、桔梗はロジスティクスのみに言葉を投げかけたのか。
その理由と意味は、桔梗本人だけが知っている。だが、それを口にする事は無く、桔梗はその場を歩き去って行った。

87 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/07/12(日) 01:47:26.25 0
・・・
2日後――――作戦決行日。

桔梗は、自身の搭乗する武神、量産機である『アレス』の傍に立ち、機体の最終チェックを行っていた。
全身を灰色に塗装されたその武神は、片膝を付いた状態で待機状態を取っており、
武骨な外装と重量感と合わせて、遠目で見れば石造りの人形にでも見える代物である。

ロマンや美術的価値を捨て去ったその機体を、桔梗は関節部や外装部、兵装である槍も含め、
一つ一つ自身の記憶にある整備マニュアルを一から再現しつつ、実戦で不具合が出ないかの確認を続けていたのだが

「……」

不意に、横に向いてしまう視線。
六角桔梗という少女にとって、武神の整備途中に気が漫ろになるという事は非常に珍しい事であるのだが、今回に関してはそれも仕方ないと言えるだろう
何故なら彼女の視線の先にあるのは、今回同じく後詰めを務めるリンネ=シーナが駆る武神。

『RX-02 グリントガール』と言うらしいその武神の容姿は、簡単に言えば――――美少女であったのだ。
まるで看護婦の様な装甲を纏うその武神は、武骨で簡素な『アレス』とは真逆の趣味に全力投球をした様な外観設計が成されており、
多くの戦場を経験してきた六角でさえも見た事が無い特殊な武神であった。
無論、大手武神メーカーの社長であったリンネの機体であるので高価な部品と高度な製造技術が用いられているのであろうが、

「……この機体は、戦場でどれ程戦えるのでしょうか」

小さな声でぽつりと呟く。
果たして、実戦でこの機体がどの様な活躍が出来るのか、桔梗には想像が出来なかった。
機龍の爪を受けて、武神の拳を受けて、この精密機器の塊の様な武神はどこまでなら動けるのか。
暫くの間、桔梗は想像の翼を広げていたのだが

(……いえ。何か問題があったとしても、私が解決すればいい話ですね)

やがて、視線を元に戻し自身の武神のチェックに戻っていった。

・・・
暫くの後に、武神のチェックを終えた桔梗。彼女は膝立ちになっている武神の凹凸を利用し、
素早く器用にその首元まで登ると、武神『アレス』との合一を果たした。
階段を用いない武神への搭乗は、熟練の武神乗りなら誰もが持っている基本技能であるとはいえ、
桔梗の合一までの速度は群を抜いており、恐らくは何百何千回も同じ動きを繰り返したのであろう事を想像させる。

「……視界良好。不具合無し」

肉は鋼に、血は電流に。いつもの様に自身の感覚が、人間のものから武神のものへとすっかり切り替わった事を確認した桔梗は
軽く手足を試動させつつ、後詰めとしての今回の自身の役割を脳内で反復する――そんな最中

>「……ところで、これは移動に支障が出ない程度に聞いてくれればいいんだけど。
>ニッポンじゃ、出撃前の兵士は互いに何か「話」をするって習慣があるんだ」

響く通信音声。声の主は、先行任務を務める内藤であった。
彼は語る。優しげな声で、ややセクハラめいた他愛無い話を。
……それはきっと、兵士が生きて帰る為の一つの儀式で、彼の国の様式美なのだろう。

「……通信回線の正常稼働を確認しました」

だが、桔梗はそんな彼の声に応える事は無かった
淡々と通信回線の状態を告げる桔梗は、対話にも調和にも……まるで、そこに自分は要らないとでもいう様に彼の声を切り捨ててしまった。


そして両手に槍を掴み、灰色の『亡霊』は再び戦場へ向かう。

88 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/07/12(日) 20:31:44.56 0
作戦決行日。
軽めの朝食を済ませたリンネはそのまま武神格納庫へ移動した。
>「あっ!おはようございます!お疲れ様です!」
「やぁ、おはよう」
廊下で若い整備班の二人組とすれ違ったリンネは軽快に挨拶をした。
赤と金色に塗り分けられた真新しいパイロットスーツを来て、
フルフェイスのヘルメットで顔の隠れたリンネは、
整備班の人間にとってはどうしても油まみれのツナギを着たヒゲ男(>>28)とは一致しないようだ。
「ん?」
リンネが格納庫に降りた時、ちょうど桔梗が自分の武神の最終チェックをしているところだった。
腕前を拝見するつもりで遠目から見ていたリンネは、
ふと彼女がグリントガールに気をとられているのを見逃さなかったのだ。

>「おい!」
「ひゅい!?」
その時、とても聞き覚えのある声から自分の背中へ言葉をかけられたリンネは、
思わず裏声になりながら振り返った。班長である。
>「リアクターの調整は終わったのか?パイロットさんよ」
「あ・・・ああ、終わった。昨日終わらせた」
>「そうか。・・・他に手伝える事は?」
「いや、もう十分だ。ありがとう」
その言葉を聞いた班長がその場から離れるのを見て、リンネは胸をなでおろした。
もしも自分が身分を隠して整備班に紛れていたことがバレたら、
少なくとも班長からは、地獄に落ちた罪人に裁きを言い渡す閻魔大王の
ような顔をされるに違いないと思っていたからだ。

しかしホッとしたのもつかの間。
>「おい!」
「ウェーイ!!」
>「なんだその叫びは?」
「あー、その、なんだ、突然だが気合の雄叫びだ!」
再びリンネに声をかけた班長は天井クレーンで釣り上げられた自転車を指さした。
>「あれはセリーヌか?」
「ああ、セリーヌだ。よく知ってるな」
セリーヌとは有名自転車ブランドの一つだ。
>「息子が持ってた」
「そうか」
その自転車は、人間が乗る自転車にしては大きすぎるものであった。
というより、それは武神が乗るための自転車なのである。
誰であろう、グリントガールを乗せるためにリンネが廃材をリサイクルして作ったのだ。
わざわざセリーヌブランドに似せて作っているのはリンネのこだわりである。
>「さっきからえらく動揺してるな」
「いや!何でもない!ちょっと気分が高揚してるだけさ!武者震いってやつだよ」
>「そうか」
再び班長がその場を離れたのを確認して桔梗に視線を戻すと、彼女はすでに自分の仕事に戻っていた。
(グリントガールが好きなのかな?)
まさか自分の心配をされているとはこの時のリンネに知る由もない。
(彼女をモデルに武神を作るとしたら、どんな服にして、どんな機能を付けようか・・・)
リンネは最終的にRXシリーズを48体くらい量産するつもりなのだ。
果たして彼女が記念すべき3号機になる日は来るのであろうか?

89 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/07/12(日) 20:33:22.81 0
>「おい!」
「・・・今度はなんだ?」
班長に三度声をかけられたリンネはウンザリした様子で振り向いたが、
次の班長の言葉にはっと息を呑んだ。
>「お前はノロマだがセンスはいい。無事に帰って来い。
> そして、また顔を出せ。いつでもしごいてやる。」
リンネはしばし沈黙する。
「何のことかわからないが・・・」
リンネは顔のバイザーを上に持ち上げた。
この人に対しては、どうやら顔を隠すのは無意味らしい。
班長には敵わないな、とつくづくリンネは思った。
「考えておくよ」
リンネと班長は互いの拳を突き合わせた。
思えば班長が笑う顔を見るのはこれが初めてかもしれない。
>「・・・だが俺に嘘ついてた代償は高いぞ?」
そう言われたリンネは自分の青ざめた顔を隠すためにバイザーを下におろした。

整備を終えた桔梗が颯爽と武神に乗る様子を見ていたリンネは自分も真似してみようと思ったが、
グリントガールのスカートの八号目付近で無念のギブアップとなった。
激しい息切れが終わったところでリンネは個人端末を操作する。
「アップル!」
リンネはグリントガールに搭載されたAI、アップルに呼びかけた。
『ごきげんよう、リンネ様』
グリントガールから少女の声を模した電子音声が流れる。
「このままでは搭乗できない。姿勢を低くしてくれ」
『了解しました』
グリントガールがアップルにより自動的に動くが・・・
「違う。四つん這いじゃだめだ。それでは乗り込めない」
『では別の姿勢を』
「正座はだめだ。スカートアーマーが床に引っ掛かってるじゃないか。
 三角座りもだめだ。キラーチューンを背負ってるのを忘れるな」
『こちらはどうですか?』
「うんこ座りなんてだめ!女の子なのに、はしたない!」

突如グリントガールは今までの指示を無視して立ち上がると、
まるで人形でも抱えるようにリンネの体を持ち上げた。
「おいおいおいおい!!」
『この手に限ります』
アップルにそう言われたリンネはガクッと首をうなだれる。
「あぁ・・・結局こうなるのか・・・」
トホホといった感じのリンネをコックピットに押し込んだグリントガールはリンネと合一を果たした。
『メインシステム、本能モードを起動。リペアツール、アクティブ』
少し離れてその様子を見ていた班長はあきれて思わず呟いた。
>「こいつ大丈夫なのか・・・」

90 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/07/12(日) 20:34:26.39 0
「こちらも通信回線は良好だ。あれから中佐とデートはしたのか内藤君?」
内藤がチームのメンバーに無線で話しかけているところにリンネの声が割り込んできた。
「武神で女子寮のお風呂を覗き見するなんて、いいアイデア・・・
いや、実にけしからん!度しがたい変態だ!
内藤君は作戦終了後、直ちに報告書を作成してくれたまえ!」
ニッポンでは出撃前の兵士が互いに何か話をするのが歪みねぇ作法らしい。
こんな面白いことに乗らないリンネではない。
話したいことは山ほどあるのだ。(赤い洗面器の男の話とか・・・)
だが、今回はそのうちの多くを次回までお預けにしなければならない。
優先度の高い話題があるからだ。
リンネはいつになく真面目に話題を切り出した。
「あんまり面白い話ではないかもしれないが、聞いて欲しい。
 私はロスサントスで滅びの軍勢と戦った後、
 ここに落ち着くまで各地を放浪していた。
 その間、もちろん滅びの軍勢の一部と戦うこともあったが、
 一番厄介だったのは・・・荒んだ心に武器を持った、人間達だったよ。
 滅びの軍勢の仕業に見せかけるために
 機体を赤黒く塗って略奪を繰り返していた野盗もいたし、
 滅びの軍勢は天からの使者だと信奉するカルト教会もあった。
 みんな私のRX-01で叩き潰してやったけどな。
 だが、本当に危険なのは・・・」
リンネは声のトーンを落とした。
「アップル、マイクオフ、無線周波数帯からサウスウィンド中佐を除外した後マイクオン」
『仰せのままに』
リンネは素早くアップルにそう指示した。これで、ここから先の会話は隊長には聞こえない。
「もっと問題になるのは、滅びの軍勢が完全に消滅したその後だ。
 今でこそ滅びの軍勢に対抗するために各国が力を合わせている状態だが、
 それも永くは続かないだろう。そうなれば新しい戦乱の時代が始まる。
 私が儲かるってだけならそれでも構わないが、
 問題は滅びの軍勢を軍事目的で利用しようとする者が、遅かれ早かれ必ず現れるってことだ。
 なにしろ文字通り世界を滅ぼせる力があるんだからな」
そう話しながら、リンネはブリーフィングの時フレイアから聞かされた話を思いだしていた。
もしも滅びの軍勢まで利用した戦乱が始まれば、彼女のような存在が無限に増え続けることになるのだ。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
大人として、娘を持つ父として、なにより人間として・・・
「つまり最後の敵は結局、人間ってことだ。
 私個人としてはサウスウィンド中佐を信用しているが、
 さらにその上にいる背広組の連中は何を考えているかわかったもんじゃない。
 我々を利用して、何かを画策していないとも限らない」
そこまで言った後、アップルが周波数帯を元に戻した。ここから先は隊長にも聞こえる会話である。
「まぁ、とにかく今できるのはとにかく敵を倒すことだけだ。
 みんな生きてここに帰ってこよう」
いつもの明るいリンネが帰ってきた。

91 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/07/12(日) 20:34:57.43 0
「やあ桔梗君」
桔梗が乗ったアレスの横に並ぶように、武神用自転車に乗ったグリントガールが停まった。
「まさかそのまま徒歩で戦場に行く気か?だったら後ろに乗っていけよ。
 少しでも武神の膝にかける負担を減らしておいた方がいい。
 特に君の武神は年季が入っているみたいだからな。合理的な判断だ。
 それに、何より・・・」
リンネにとってはこっちの方がより大切なことであるが・・・
「この自転車はオシャレだ!そうだろう?」

【チャリで来た】

92 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/07/12(日) 21:23:43.94 0
>>91の訂正

「ギガンテス君、ちょっとした賭けをしないか?」
リンネはロジーに無線でそう声をかけた。
無線周波数帯から女子を除外しているので、これが聞こえるのは男子だけである。
「作戦終了時間までに、私が桔梗君を笑わせる事ができたら私の勝ち。
 私が彼女を笑わせられなかった時や君が彼女を笑わせる事ができたら君の勝ちだ。
 面白そうだろ?何を賭けるかは君が決めたらいい」
もしも他の男子がこの賭けに参加しようとしたら、リンネは喜んでそれを受け入れるだろう。

「やあ桔梗君」
桔梗が乗ったアレスの横に並ぶように、武神用自転車に乗ったグリントガールが停まった。
「まさかそのまま徒歩で戦場に行く気か?だったら後ろに乗っていけよ。
 少しでも武神の膝にかける負担を減らしておいた方がいい。
 特に君の武神は年季が入っているみたいだからな。合理的な判断だ。
 それに、何より・・・」
リンネにとってはこっちの方がより大切なことであるが・・・
「この自転車はオシャレだ!そうだろう?」

【チャリで来た】

93 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/18(土) 09:06:46.82 0
ロジーが勢い良く啖呵を切った途端、中佐が無線機を取り出してなにやら二三言言葉を交わす。
ほどなくして、天城が本国へと送還されることが決定した。
上の決定だ。天城は幾分か不満そうな顔をしたが、鋭く御意を返すと踵を向ける。
ロジーもきっと、同じ表情をしていた。

「とっとと戻ってこいよアマギ。おれが昇進しててめーなんぞ鼻息で飛ばせるようになっちゃったらもう相手してやんねーぞ」

最後は意識して憎まれ口を叩いた。
天城は一度だけ立ち止まり、こちらを一瞥すると、何も言わず作戦室を辞していく。
少尉同士の話はそれで終わった。
ミーティング後に内藤が天城を追いかけて走っていったが、ロジーはそれに倣おうとはしなかった。
おれとアマギの間にはそれで十分だと、そう思ったのだ。

>「――以上でブリーフィングは終了だ。作戦開始は二日後の1200時、集合時間は0900時だ、遅れるなよ?」

「了解。座談はこれでしまいにしようぜ、そろそろ古傷がうずいてきやがった」

無論、尻のことである。

 ◆ ◆ ◆

>「……ロジシ……ックスさん」

作戦室からドッグへ向かう途中、背後から消え入りそうな声で呼び止められた。
ロジーがイヤホンをつける前だったからよかったものの、環境音にボロ負けしそうな小さな声だった。
六角・桔梗。『亡霊』の名を持つ武神乗りだ。

「ロジスティクスな。ロジス・ティクスで区切ると言いやすいぞ。つーか素直にギーガー三尉って呼べや」

ニッポンや瑞穂やイザナのような東洋国家の言語体系に慣れていると、
大陸西洋の長い舌をベロンベロン振り回すような発音法が苦手になると聞いたことがある。
ロジーは鼻で笑いながら正しい発音法を教えた。しかし次の桔梗の発言で彼の余裕は崩れた。

>「……もしも将来。貴方が誰かを殺そうと思った時は、その時はどうかきっと……殺す事の意味を考えてから殺してください」

「ああ?そりゃどういう意味……」

ロジーが詰問する間もなく、それだけ言って桔梗はスタスタと歩き去ってしまった。
殺すことの意味。そんなものは、敵だから殺すに決っている。
ロジーは高等な戦闘教育を受けた軍人のエリートだが、まだ敵兵を殺したことはなかった。
殺すための訓練をどれだけ重ねても、実際に命を奪った経験のない者はいつまで経っても未熟な童貞野郎だ。
ロジーはずっとそのことがコンプレックスだった。童貞がコンプレックスだった。

(殺すことの……意味)

無論、実戦経験はなくとも軍事組織に所属し軍事行動に関与している以上、この手が汚れていないとは思わない。
ロジーが空挺した武神が敵を殺せば、それは正しくロジーによって殺されたも同然ではないか。
ロジーが輸送した補給物資によって戦線を拡大し、結果多くの敵を殲滅したとなれば、ロジーの手は多くの血に染まっているはずだ。

殺すこと。相手の生命をうばうこと。
それは罪深い人間の外道を歩む行為であると同時に――ただの軍事行動の一環に過ぎない。
軍人とはそういうものだろう。戦争とは、そういうもののはずだ。

ロジーは桔梗の言った意味を何度も胸のうちで反芻した。
答えは出ない。どういう意図で放たれた言葉なのか、いまのロジーには見当もつかない。
だが、一つだけわかることがあったので、ロジーはそれを呟いた。

「……ちゃんと喋れるんじゃねーか、ロッカク」

94 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/18(土) 09:07:13.31 0
 ◆ ◆ ◆

ドッグでは二日後の出撃に向けて整備作業の大詰めが行われていた。
ロジーは機関部の整備と武装のチェックだけで良いが、機体の色を塗り替えなきゃいけない連中は大忙しだ。
整備班詰め所の手狭な喫煙所の中で、ロジーは禿頭の初老の整備士と並んで一服つけながら自機を眺めていた。

「武装らしい武装は主砲の35.6mmだけだな。弾だきゃあうんと積ませてやるからぶち撒けてこい」

「もっと良い装備ねーのかよ爺さん。散弾とか徹甲弾とかよぉ」

「効きゃあしねえよそんなもん。
 連中は体積の半分を切り離さねえかぎりコクピット抜こうが機関部を貫こうが動き続ける。
 確実に仕留めたいなら大口径で吹っ飛ばすか、近づいてぶった斬る、これよ」

滅びの軍勢には、既存の武神や機竜の戦闘技術の効果が薄い。
つまるところ本来であれば急所であるはずの場所に一撃くれても停まらないわけで、
対滅びの戦争初期には何人ものエースパイロットをそれで失ったらしい。
老整備士は指に挟んだ煙草の火で斬撃の軌道を描く。

「一番オススメなのは刃渡りの長え剣で中心線狙っての唐竹割りだな。
 正中線なら左右どっちに避けられても3割は斬り飛ばせる。あとは後詰のトドメ待ちだ」

「おれは機竜乗りだ。剣なんか持てねえよ」

「爪があるだろうがよ。牙も、ついでにしょっぱい大砲もだ。敵に肉迫できねえビビリから死んでいくのが今度の戦場だ」

そういうもんかね、とロジーは煙と一緒にため息をついた。
なるほど従来の常識が丸ごと覆されるようなことばかりだ。
教導隊では、戦線から突出した馬鹿から狩られると教えられたが、ここではまったくの逆。
肉迫できなきゃ、近づく勇気がなければより高性能な敵の砲火に晒されて死ぬだけなのだ。
喫煙所の換気扇に吸い込まれる煙を眺めていると、こちらの手元に老整備士の視線を感じた。

「そいつぁ葉巻か?」

「ああ、シガリロだ」

シガリロとは小さく巻かれた葉巻のことで、葉巻を吸うほどの時間のない忙しい兵士が愛飲する嗜好品だ。
ものにもよるがロジーのシガリロは、班長の吸っているいわゆる紙煙草とは値段が一桁違う高級品である。

「クソ、良いモン吸ってやがるな、機竜乗り様はよ」

「そりゃあおれたちゃ人類の至宝にして最終兵器だぜ?煙草ぐらい高いの吸わなきゃ嘘ってもんだぜ」

ちなみにISE小国家連邦体の南部は亜熱帯にかかる為、良質な煙草葉を特産としている。
その流れでISE所属の兵士に官給品として与えられる煙草はロジーのシガリロのように上等なものだった。
胸ポケットから金属のシガー・ケースを取り出すと、中にまだ10本程度残っていることを確認。
ロジーはそれを丸ごと老整備士に差し出した。

「良かったら、これ。どうせ機竜の中は禁煙だしな」

老整備士はケースに入った上等な葉巻を見てごくりと喉を鳴らした。
煙草呑みにとって葉巻はご馳走のようなものだ。特別な日に開ける高級なワインのようなものなのだ。
だが老整備士は何かを吹っ切るように首を振ると、ものすごい勢いでぶんぶん振ると、溜息と共に言葉を零した。

「……やめとく。形見になったらいけねえや」

「縁起でもねえよ!?」

95 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/18(土) 09:07:51.09 0
 ◆ ◆ ◆ 

格納庫では内藤が自機の色合いについて何やら悩んでいた。
ロジーはニヤニヤしながら近づいて、我がヒューガの色彩デザインについて聞かれてもいない講釈を垂れようとした。
しかし声をかける前に内藤は何かを思いつき、気色悪い喜色満面となった。

>「整備員さん、塗装なんですけど、ホワイトと「スカイブルー」のタイガーストライプでお願いします。
 班長さんそう伝えて下さい」

「スカイブルぅ?お前、おれと被るじゃねえかよナイトー」

ロジーが抗議の声を上げると、内藤は口角を上げながら振り向いた。

>「いいでしょ、スカイブルー。僕の機体にはピッタリの色だ。ねぇ、ロジ……」

ロジーの片眉がぴくりと動くのを知ってか知らずか、内藤はわざとらしく口を抑えた。

>「っと、君はその名前を呼んで欲しくないんだったっけ。
 嫌がる事を無理にするのも悪いし、ここは大人しく引き下がるよ」

「ん、おう、わかってんじゃあねえかナイトー。殊勝なデブだな」

拍子抜けするとともに思わず素で返すと、内藤はますます笑みを濃くして言う。

>「ところでニッポン人は結構恥ずかしがり屋でね。(中略)
 ま……徹底しすぎて、かえってバレバレな奴もたまにいるんだけど」
>「それとは全く関係ないけど、君の事だけは絶対にちゃんと苗字で呼ぶよ。ねぇ、ギーガー?」

「ホントに関係ねえんだろうなあ!?」

全く関係ないけど爆弾を抱えた臀部をきゅっとすぼめながらロジーは声を荒らげた。
ニポネーゼの重点な奥ゆかしさは先刻痛烈に体感したばかりだ。
なんというか内藤の笑顔からは、笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点であることを想起させるような、
具体的に言うと眦を下げ口端を引き上げても目が全然笑ってない生々しい恐怖感があった。

コイツとの会話はどこに変な地雷が埋まっているかわからない。
おちおちしていれば謎の暗黙コンセンサスによってこちらまで同類に仕立てあげられかねない。
YES/NO枕は偉大な発明だと思ったが、ニッポン人はその遥か上を行く合意形成のプロフェッショナルだ。

「おれ西洋人だから!社交辞令とかわかんないタイプの人だから!
 まったくおめーと話してると異文化コミュニケーションの勉強になるぜ!
 でも誤解を招くといけないからおれは気持ちをそのまま言葉にして伝えるね!死ね!!」

そしてロジーは気付いていなかった。
彼らは空挺のバディを組んで作戦地域へ出発する。
青の機体に乗ったロジーと、青に塗り替えた内藤の二人でだ。

……彼らはお揃いで出撃するのだ。

96 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/18(土) 09:08:17.86 0
 ◆ ◆ ◆ 

出撃当日。
ロジーはいつも通りに定刻に起床し、シャワーを浴び、ドライヤーを当てて歯磨きをした。
隊員食堂では出撃兵に優先的に食事が割り当てられるため、整備士や基地職員の行列を尻目に朝食。
ベーコン三枚とクロワッサン、皿いっぱいのスクランブルエッグとトマト一個と加糖ヨーグルトを食べた。

整備は前日までに終わっている。
搭乗前点検も全て完了済みだ。燃料は往復分入っているし、弾薬もフル装填。
機竜特有の鉄扉すら紙のように裂く爪や、岩をも咀嚼できる牙もグラインドをあて研ぎ澄まされている。

整備士達が慌ただしく出撃準備に入る中、ロジーは喫煙所で最後の一服をした。
機竜の中は余計な換気設備を省く為に禁煙だ。
軽食や水分補給は可能だが、トイレがないので作戦時間によってはおむつの装着が必要になる。

「いいよな武神は、乗ってりゃ腹も減らねえしウンコもしなくていいんだから」

とくに排便の必要がないというのが素晴らしい。
ウォシュレットのついたトイレを探して何十分も練り歩いたり、便座で難産に苦しまなくて良いのだ。
何より、何時間も姿勢を変えられずに座りっぱで持病が悪化するようなこともない。

カタパルト式パドッグにヒューガが吊られて運ばれてきた。
ロジーはきっちり吸い終えたシガリロを灰皿へ突っ込むと、HUD付きのヘルメットを引っ掴んで喫煙所を出た。
整備士達の物々しい表情とは対照的に、非常にリラックスした態度でエレベーターに乗る。
キャットウォークを命綱もなしに平然と渡って、ヒューガのコクピットに飛び込んだ。
起動済みのOSが自動でHUDに接続し、ヘルメット内に様々な情報が投影された。

「出撃シーケンス。フューエル・クリア、バレット・クリア、メインプロトコル、オールクリア。
 スラスターイグニッション……ガントリーカムに減速機接続……飛翔翼展開、っと」

ヒューガの折りたたまれた飛翔翼のロックが解除される。
半透明な翼膜は、特殊な力場を形成し常に最適な条件で風を受ける滑空の翼だ。

>「やぁ、「ギーガー」。今日はよろしく頼むよ。」

ディスプレイに見知った笑顔が表示された。
ニヤけ面は今は武神と合一している為、この画像は予めインセットされた内藤の顔写真だ。
ロジーはそちらに一瞥もくれず、最後のコンソール操作を終えた。

「三尉をつけろよ、デブ助野郎。てめえのポンコツが風圧で千切れ飛ばねえよう精々丸まっとけ。
 あとはおれが、奇蹟を運んでやるからよ」

制空竜撃士――奇蹟の子――ロジスティクス=ギーガーの初陣にして伝説は、ここからはじまる。
始まっていかなきゃいけないのだ。

「F91ヒューガ――抜錨(ウェイアンカー)!!」

リニア式カタパルトがパドックを砲弾に変える。
強烈な後ろへのGに首を持って行かれそうになりながら、ロジーが前方から視線を切ることはない。
ほんの一秒にも満たない時間で加速しきった機竜は、正しく砲弾の如く射出。
即座に広げられた翼が膨大な大気をしっかりと掴み、空へと駆け上がっていく。
スラスターの光芒に押されるようにして、青の機竜と青の武神は一つの機影となって蒼穹を貫いた。

97 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/18(土) 09:09:09.40 0
 ◆ ◆ ◆
ニヤけ顔からオープンチャンネルで通信が入った。

>「……ところで、これは移動に支障が出ない程度に聞いてくれればいいんだけど。
 ニッポンじゃ、出撃前の兵士は互いに何か「話」をするって習慣があるんだ」

「出撃するまでもなくおめーは普段からベラベラ喋ってんだろ。なんなの?常在戦場なの?」
ロジーは茶化すが、内藤のトーンはいつもの戯言に比べて幾分か静かだった。

>「そう、普通思いつくかい?武神の卓越した五感を使えば超遠距離から女子寮のお風呂を覗き見する事が可能だなんてさ。
 初め聞いた時は天才かと思ったね。……女の子達には申し訳ないけど、まぁあのプランには物凄いロマンがあったのさ」

「…………」

ロジーはいつの間にか茶々を入れることをやめ、謹聴の姿勢をとっていた。
ごくりと硬い生唾を飲み込む。内藤の真に迫る語り口が、聞く者にそうさせる。
桔梗がさっきから黙りっぱなしだが、きっとあいつもムッツリに違いない。

>「……続きは帰ったら話そっかな。「話」は最後まで語らない。ここまでが習慣なんだ。
 皆も、もし良ければ何か話をしてよ。
 一緒に帰って続きを聞かなきゃなと思えるような、気になる奴をさ」

「ああああ!?なんだよ!教えろよどうなったんだよ!!風呂は覗けたのか?バレたの?つーか武神ってそんなことできるの!?」

ロジーはテンション上がってコンソールをバシバシ叩いた。
彼自身、教導隊で武神に搭乗したことはあるが、そんな発想微塵も思いつきもしなかったから、目からウロコであった。
せめて5年前に聞いておきたかった!
なんなら機竜使ってそれこそ超高高度から露天風呂を空撮するとかそういう使いかたもできたのに!

>「……通信回線の正常稼働を確認しました」

「ロッカクお前やっぱ聞いてたんじゃねーか!お前の武神はそういうこと出来んの!」

与太話は大概にしておけという言外の警告だったのかもしれないが、コミュニケーション初心者のロジーにはわからない。
ただ一つ言えるのは、当時の内藤は女の子にも興味があったんだなということだ。

>「武神で女子寮のお風呂を覗き見するなんて、いいアイデア・・・いや、実にけしからん!度しがたい変態だ!
 内藤君は作戦終了後、直ちに報告書を作成してくれたまえ!」

「克明に描写しろよ!参考文献としてフランス書院文庫を貸してやるから!」

馬鹿共の与太話は回り続ける。
しかし真っ先に乗っかった抵抗軍のトップ・オブザ・イロモノのリンネが不意に声を落とした。

>「つまり最後の敵は結局、人間ってことだ。私個人としてはサウスウィンド中佐を信用しているが、
 さらにその上にいる背広組の連中は何を考えているかわかったもんじゃない。
 我々を利用して、何かを画策していないとも限らない」

「……まさか。考えすぎだろオッサン」

リンネの声色には、冗談を言う時のあの緩い雰囲気が欠片も含まれていなかった。
真面目・戯言スパイラルの真面目の方が不意に顔を出して、ロジーは鼻白む。
そして同時に、詮無きことであるという強い自覚もあった。

「それによぉ、おれたちの仕事内容を考えてみろよ。
 滅びの奴らを一匹残らず駆逐してやれば、軍事利用なんて計画があったとしても見事におじゃんってわけだ。
 真面目に働いて世界平和、大変結構じゃねーか」

ロジーには重大な認識が欠落していた。
滅びの軍勢を絶滅されては困る連中がいるのなら、そいつらが大人しく駆逐させてくれるわけがないのに。

98 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/18(土) 09:09:46.35 0
「それよりもっと明るい話をしようぜ。これからの話だ。
 世界を救ったあと、お前らはどうなりたいの。おれはISEに戻ってこの功績でバリバリ出世したい。
 たくさん給料貰って、エナレスの一等地にでけー家立てて、良い車乗って、おやじとおふくろ呼んで――」

ロジーは遠い目で言った。

「名医にかかって持病を克服してえな……」

高度が航行域に達し、安定軌道に乗ったあと、ロジーには下を見る余裕ができた。
分かっていたことだが、基地の外は酷い光景だった。
土地は焼け焦げ、アスファルトは剥がれ、遠くに点在する街からは今も黒煙が上がっている。
滅びによる侵略だけじゃない。それを受けて各地で人が動き、火事場泥棒がはびこり、野盗が出現しているのだ。

「コラテラル・ダメージってやつか……ただ滅びの軍勢倒しゃ全部解決、ってわけにはいかねーんだろうな」

敵を駆逐しても、壊れた街や失われた秩序が元に戻るわけじゃない。
二度と同じかたちには直せないと分かっていて、それでも正しいかたちを目指して空いた穴を埋めていくしかない。
結果、どんなにいびつな形状になろうとも。

「道路が無事なのは、武神の出撃用に最優先で保全してくれたからなんだろうな……って、んん?」

バックスクリーンで後続の確認をしていたロジーがぎょっとした声を上げた。
舗装し直された道路を自転車で爆走する人影がある。
二度見したのは、その縮尺があまりにもあっぱらぱーだったからだ。

ビルと肩を並べられそうな巨大な人影が、ニケツで自転車を漕いでいた。
しかも後ろに乗ってる方は足を揃えて横に腰掛けている……いわゆる『耳すま乗り』である。

「なんだありゃ……武神か!?」

巨影は、武神だった。いや、武神と言って良いのだろうか。
ニケツの灰色の方は一般的な汎武神だが、漕いでいる方はあからさまに美少女なのだ!

>「ギガンテス君、ちょっとした賭けをしないか?」

そしてイロモノ武神から通信が飛んできた。
やっぱりというかなんというか、リンネの声だった。

>「作戦終了時間までに、私が桔梗君を笑わせる事ができたら私の勝ち。
 私が彼女を笑わせられなかった時や君が彼女を笑わせる事ができたら君の勝ちだ。
 面白そうだろ?何を賭けるかは君が決めたらいい」

「ズルいわーーーーッ!!
 おっさんそんな出落ちの塊みてーなカッコで登場しながら良いこと言うんじゃねーよ!
 なに、笑わせるってそういう嘲笑いでいいの?おっさん最強すぎない?」

フツーこういう文脈で出てくる笑顔って、もっと綺麗な流れで微笑む的なアレなのに、
リンネは最初っから全開で笑わせに来ている。こいつはヤバイ。

「だけどいいぜ、売られた喧嘩は買わなきゃおれじゃねえ。
 その賭け乗った!おれが勝ったらあんたの会社でロジーモデルの機竜作って売れよ。
 おれが負けたら――」

ロジーは自信を持って言った。

「――武神に乗って女子浴場に突撃してやるよ」


<墓穴>

99 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:37:59.98 0
【罪と罰/Zero】


『――――なあ、新入りさん』


その声は、独房を囲む薄い壁面の向こう側から響いて来た。


『人間が罪を犯すのは、何故だと思う?』


小さな格子窓の下、剥き出しの床上で片膝を立てていた傭兵は、
緩慢な動作で首を擡げ、正面の鉄扉に虚ろな視線を投げかける。

「俺に話し掛けちゃいけないって規則じゃなかったのか? ……早く食事をくれ」

あまりにも小さな光源から僅かに確認できる程度の日照の減衰と空腹感の増幅。
この暗く狭い部屋に押し込められてから、それが傭兵の時間感覚の全てだった。

沈黙と静寂。

食事のトレーが出入りする為だけに設けられた鉄扉の低く狭いスリットに、変化は無い。
日に一度の食事の代わりに、今日は腹の足しにもならない問答をくれようって言うのか。

「ずいぶんと難しいコトを聞くんだな。
 きっと俺には答える資格が無い。それが違うって言うなら……
 ……罪に問われてでも、求め続けなきゃならないモノが在るから、かもしれない」

今度は、即座に"声"が返って来る―――押し殺した嘲笑と共に。

『ククク……ならば罰があるのは、何故だ?
 神の造り賜うた写し子たる人間は皆、等しく罪人だと言うのに。
 何故、罪人が罪人を裁き、この様な罰を与える? そして何故、誰も神を裁こうとしない?』

「俺は神様なんて信じちゃいない。
 けど、本当に神様が自分に似せて人を作ったのなら、
 罪から逃れられない運命ってのは、神様だって同じなんじゃないか」

『それは実に人間らしい答えだな……ああ、実に愚かな人間らしい。
 人間は限り無く無知だ。罪とは何なのか。今、言葉を交わしている相手が誰なのか。
 滅び消えゆく間際まで何事をも知らず、何も見ず、何も聞かず……そうだろう? ―――"Χ(カイ)"』

「……あんた一体、何者なんだ。それに今、最後に何て――」

『――クク……フハハ……フハハハハハッ!!』

狂気と狂喜を孕んだ哄笑。その反響から、傭兵は一つの推論に到った。
この巫山戯た声の主は、おそらく自分と同じく――――独房に繋がれて居る。
考えてみれば当然だ。扉に近づいて来る靴音など最初から聞こえなかったのだから。

『俺の名は"Υ(ワイ)"――――神を裁く存在だ』

100 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:39:17.33 0
【罪と罰(U)】

『少年、遠慮は無用だぞ。最大出力で行くがいい』

「やってやるさ……トップギア!!」

『少年、もう一度だけ言うぞ―――最大出力だ』

「これが限界だ……見てわからないのかよっ!」

『見れば判る程度の物理的な限界など、精神力で越えてみろと言っているのだ。
 それは"人間の持つ力"をダイレクトに出力へと変換するマシンなのだからな』

「だから、必死にやってる!」

玉となって流れ落ちる事すら叶わず飛び散る汗が、輝き砕けてジャケットを濡らした。
傭兵は、パイロットスーツの類を着用していない。このマシンには必要が無いからだ。

『少年、私を失望させてくれるなよ。君は今、こう考えている。"未だ先は長い……
 ……ペース配分を考えなければ、自分は潰れてしまう事になる"―――違うか?』

「作戦開始まで時間が無いんだ。
 こんな俺でも、待っててくれる仲間がいる。
 だから、ここで時間を食っちまってたら俺は、みんなに……」

『だが少年、それは本当に本心からの言葉か?
 時間というものは……無限に分割され連続した、一瞬の積み重ねだ。
 今この瞬間ですら全力を出せない者が、トータルで全力を出し切ったと言えるのか』

「積み重なる、瞬間……?」

『故郷の父上が良く言っておられた。
 "―――ミルフィーユという菓子があるだろう。
 あれは生地が積み重なればこそ、素晴らしい食感を生み出す。
 もし、そうでなかったら、それはミルフィーユではない……ただのフィーユだ"』

そこまでを一息に言い切ると、第二班長は満足げに腕を組んだ。そのバストは豊満であった。

『かく言う私も幼き砌には、この言葉に励まされていたものだった。
 旧世紀の毛利元就という和菓子職人が残した名言なのだぞ?』

「大昔に死んじまった誰かが言ったコトなんて、俺には関係ない。
 けど、今ここに居るあんたの言葉なら……信じて走ってみるさ」

ハンドルを握り直して姿勢を正した傭兵が、フットペダルを深く踏み込む。
この時、この場所で、自分に出来る"全力の瞬間"を積み重ねるために。

少年は、夢想する……この身はすでに一張の弓だ。
番えるべきは、決して折れる事の無い意志の矢だ。

その決意に―――

「行こう、相棒……うおおおおおおっ!!」

―――マシンは獣の咆哮の如き唸りを以って応えた。

101 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:40:03.07 0
【罪と罰(T)】

"この非常時に基地を騒がせた罰"として、俺は、第二班長の下で丁稚奉公をさせられていた。

姐さんは言った。

『――――傭兵少年、君は電磁誘導を知っているか』

俺は答えた。

「第二班長、何だか猛烈に嫌な予感しかないけど、それは知ってる」

『傭兵少年、ならば、君の任務の詳細を通達しよう』

「第二班長、その詳細ってのは?」

『傭兵少年、電磁誘導だ』

―――ダメだ。この姐さんは、どことなく姉さんと似ていて、たぶん何かが危(おかし)い。

「……あのさ、向こうの班じゃ格好良さげな感じで整備してるみたいだけど、
 "MP40!"とか"トルクとチェックペン!"とか、あんな感じの作業なのか?」

『少年、整備班が複数ある理由が分かるか』

「それは……ひとつの班だけじゃ整備フロアをカバーしきれないから、分担作業してるんだろ」

『そう、役割分担だ。故に、君の言う"格好良さげな"事の担当班があれば、そうでない班もある。
 そして、武神や機龍達の本体は第一班(むこう)、それ以外が第二班(こちら)の領分という訳だ』

「……で、姐さんの言う"それ以外"と、この自転車には一体どういう関係があるんだ?」

『口を慎め、少年。これは断じて自転車などではない!
 無限輪転発電システム、名付けて"ハムスター・ホイール弐号"だ!
 君には、これより各種バッテリーの蓄電補助作業に従事してもらうのだぞ? 蕭やかにな!』

「どう見てもダイナモをバッテリーに直結させただけの自転車だっ!? ……蕭やかに、か」

『そのマシンが過去に捨て去った名前なら好きに呼ぶがいい。
 ―――だが、今は"ハムスター・ホイール弐号"だ。いいな?』

「……分かったよ。それで、一号機の方は誰が乗るってんだ?
 まさか、姐さんと並んで景色の微動だにしないツーリングか」

『壱号は、ヤス整備員に乗り逃げされたきり見つかっていない。
 発電に不要な荷台や前カゴを取り払っていないプロトタイプだったものでな。
 整備フロアの海は広大だ。工具を積んで持ち運びするのに丁度いいとでも考えたのだろう』

その時、傭兵に電流走る――――意外! 犯人はヤスッ!

『あいつも今頃は、独房で根性を叩き直されてるだろうさ。
 そう言えば、少年も先週までは独房入りの憂き目に遭っていたのだったな。
 君に先んじてヤス整備員も放り込まれていた筈だが……小五月蠅いのが居なかったか?』

溜息と共にミリタリージャケットの袖を捲り上げ、二号機に歩み寄りながら―――

「……やめよう、その話は」

―――傭兵は、このラボに来て初めて、神という存在を蕭やかに糾弾した。

102 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:41:11.18 0
【罪と罰(V)】

『よくやったぞ、少年。ときに……君はワラビ餅などは好んで食べるか?』

つい、と手渡された折箱には"皇室御用達 創業六百有余年 伊邪那美庵"の揮毫があった。

『先日、故郷の父上が大量に送り付けて来てな。いささか処理に困っていた。
 私は酒の肴にさえなれば酸いも甘いも気にはせんが、それでも限度はある』

「そういうコトなら、ありがたく貰っておくけど……食べるのは作戦後にしよう。
 率直に言えば、どうせなら固形物よりもスポーツドリンクの方が今は嬉しい」

運動直後の身に、こんな粘着力の高そうな物体を捻じ込めば、
食道(ノド)で滞留(ジャム)って、たぶん死ぬ。主な死因は黒蜜。

『……ふむ。それは率直かつ年長者への配慮に欠いた物言いだな。気に入ったぞ。
 もう一つ、私からの餞別だ。これも持って行くといい。いずれ役に立つ時が来る』

「結束…バンドだと……?」

『ああ、ソレは当家に所縁の品でな、母上が未だ十二の時分、父上が――』

「――いや、そっちはいらない。あんたの実家の愉快な家庭事情の話も、現物も」

『だが、作戦が近いのだろう? "結束バンドが無かったせいで即死しました"
 などといった極まった状況に陥らねばいいのだが……私は、とても心配だ』

「なんだそれ怖っ! 滅びの軍勢の生態、怖っ!?
 心配が要るのは、その極まった発想の方だっ!」

『……?』

「……不思議そうな顔をしないでくれ」

『はははっ!』

「笑って誤魔化してもダメだ!」

それは、第二班長なりの気遣いだったのかもしれない。
絶望的な戦況の中で、最後まで"人間らしさ"を失わない為の抵抗。
死地へと赴く者に見送る者が、征く者が待つ者へと互いに向け合った微笑み。
その本質は優しさなんかじゃない。この部隊そのものを象徴する、人間が持つ強さだ。
おそらく、それは滅亡したハイランダー王国が守るべきだった……俺が守れなかったものだ。

――――第二整備班長は、左眼の眼帯に親指を当てて、何か思い悩む様な仕草をする。

ふとした時に見せる、その所作は、彼女が考え事をする時の癖らしかった。
負傷が元で整備班に転属した武神乗りの噂を、今になって思い出す。
滅びの軍勢との戦いで、人類は余りに多くのモノを失い過ぎた。
……あの左目も、そうして失われたモノの一つなのだろうか。

『この眼帯が気になるのか? ……ああ、そんな顔をするな、少年』

「……すまない。じろじろ見るつもりは無かったんだ」

『いや。これ、ただのものもらいだぞ?
 どうも、この土地の乾いた風は私に合わん。
 ああっ! もー! ちょーかゆいなっ! これは!』

「紛らわしいんだよ、あんたは!」

103 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:42:43.52 0
【シャッフル・コミュニケーション(T)】


『カイ准尉、準備はよろしいですか?』

「……ああ。ラグナエンジン、クォータードライブ。
 フィールド、スタビリティ―――オールクリアだ、何時でも飛べる。
 テイクオフのタイミングは、そっちに任せたよフレイア……いや、レシタール一等兵』

『…行きます』

「―――了解だ。ユー・ハブ・コントロール」



……

レシタール一等兵は、寡黙な少女だ。
機体のスペックノートは共有してるから、出撃自体に支障は無い。
けど、戦場から生きて帰る為には、プロフィールの情報を越えた相互理解が必要だ。

俺の方から何か……何かを言わないと―――

年下の女の子が興味を持ってくれそうな話題か……難しいな。
姉さんがレシタール一等兵くらいの時、どんな感じだったっけ――

『――カーくん。ちょっくらTURUYAでレンタルして来いであります。
 "魔導少女プリズム☆カレン"と"忍者ブレイカー"全巻。
 あとジェンガピザを二秒で届けさせる手配を』

"姉ちゃん、おれじゃ"かいいんとうろく"させてもらえないぞ"

『身体は子供、頭脳は大人と言い張れば意外と何とかなるでありますよ?
 いいから麻酔銃で店員を床に転がしてでも奪い取って来いであります』

"だめだ。また"でいりきんし"のお店がふえちゃうじゃないか"

『ちっ。使えねーでありますね。これだから三次元の弟は――――』


――――ダメだ。姉さんの少女時代は全く参考にならない。


そうだ……第二班長から貰った菓子折りがあった。
作戦後に一緒に食べようって誘ってみるのはどうだろう。
試してみる価値がありそうだ。後は、話を切り出す機会を待って―――

『……ところで、これは移動に支障が出ない程度に聞いてくれればいいんだけど』

〓┃[S-MaTEC]┃<<OPEN CHANNEL>>┃[ACTIVATION]┃〓

不意にアクティベートした通信システムによって、思考が中断される。
シュヴァリアーのマテックがC隊の共有回線を拾ったのか。
発信元は"ドラゴンナイト"―――内藤陸尉だ。

『ニッポンじゃ、出撃前の兵士は互いに何か「話」をするって習慣があるんだ』

陸尉が発するニッポン人特有の雰囲気によって、緊張感が和らいでいく。
傭兵は半ば無意識の内に、システムを共有回線へと乗り入れさせていた。

104 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:44:15.47 0
【シャッフル・コミュニケーション(U)】


『で、僕には毒島って友達がいるんだ。それが結構面白い奴でさ――…』

そういう手もあるのか―――内藤陸尉と毒島さんには心底、感謝した。
直接、相手に話し掛けにくい状況なら、第三者の話題から入ればいい。

〓┃[S-MaTEC]┃「PRIVATE CHANNEL」→《EXTERNAL SPEAKER》┃[SOUND OUTPUT]┃〓

《……あのさ、レシタール一等兵。"イザナミ庵"って知ってるか?》

音声出力をプライベートからシュヴァリアーの《外部スピーカー》へと切り換えた。
内藤陸尉の話を邪魔しない程度、そう遠くない範囲にだけ音声が届けば充分だ。

《色々あって、そこの名物お菓子を貰ったんだ。
 どうやら第二班長の故郷じゃ結構な老舗らしいんだけど……
 ……しまったな。そう言えば、姐さんの出身地が何処か聞いてなかった》

そう。自然な流れに任せて、お菓子を一緒に食べないか誘うだけだ。
簡単なミッションだ。相手は年が近い女の子だし、何も恐れる必要なんてない。
とにかく、内藤陸尉と毒島さんが作り出してくれた波に乗って話す事だけを考えればいい。

『そう、普通思いつくかい?武神の卓越した五感を使えば超遠距離から女子寮の――…』

《甘いの、好きかどうかわからないけど、よかったら君と一緒に、お―――》

この流れなら……いける。
雑談に紛れて、自然に誘いを切り出せる。
内藤陸尉、毒島さん、恩に着る。二人には助けられた。

『お風呂を覗き見する事が可能だなんてさ』

《―――お風呂に入りたいんだ》


……おのれ、毒島――――!!


『続きは帰ったら話そっかな。「話」は最後まで語らない。ここまでが――…』

――――ここまでか。

俺の物語は、ここで最期の時を迎えてしまったのかもしれない。ミッション失敗の原因は毒島。
リセットボタンが有れば迷わず押してる状況だが、生憎、実装されてるのは自爆ボタンだけだ。

『皆も、もし良ければ何か話をしてよ。 一緒に帰って続きを聞かなきゃなと思えるような、気になる奴をさ』

〓┃[S-MaTEC]┃《EXTERNAL SPEAKER》→<<OPEN CHANNEL>>┃[SOUND OUTPUT]┃〓

<<内藤陸尉ほど話し上手じゃないけど……
 それなら、俺も一つ話をしようか――――>>

ヤス整備員、いや……"Υ"。今なら、答えが分かる。
罪があるのは、人が舌を持って生まれて来たからだ。
罰があるのは、人が耳を以て罪の存在を知るからだ。


――――【>>99 罪と罰/Zero】

105 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/07/19(日) 11:47:17.03 0
【シャッフル・コミュニケーション(V)】


『ギガンテス君、ちょっとした賭けをしないか?』

『その賭け乗った!』

〓┃[S-MaTEC]┃<<OPEN CHANNEL>>→<CLOSED CHANNEL>┃[SOUND OUTPUT]〓

<――――俺も一枚、噛ませてくれ。
 個人的な事情があってさ、大金が必要なんだ。
 俺が負けた時の条件は任せる。好きに決めてもらっていい>

リスクの大きい賭けにはなるが、当たった時のリターンも大きい筈だ。
企業のトップや軍隊のエリートなら、余剰資産に期待が出来る。
勝率を少しでも上げるために、可能な限りの手を打とう。

〓┃[S-MaTEC]┃<CLOSED CHANNEL>→《EXTERNAL SPEAKER》┃[SOUND OUTPUT]┃〓

《レシタール一等兵、緊急サポート要請だ……おっと》

しまった……外部スピーカーは不味い。
協力者への打診を、他の参加者に報せてやる理由は無かった。
それ以前に、ターゲットの六角少尉から内容を聞かれる訳にはいかないからだ。

『おれが勝ったらあんたの会社でロジーモデルの機竜作って売れよ。 おれが負けたら武神に乗って――』

〓┃[S-MaTEC]┃《EXTERNAL SPEAKER》→「PRIVATE CHANNEL」┃[SOUND OUTPUT]┃〓

「詳細を説明してる時間は無いけど、これはC隊(の一部)にとって重要かつ極秘の任務だと思ってくれ。
 レシタール一等兵の協力があれば、(俺の経済的な)命運を動かせる筈だ。
 このミッションを成功させるために、俺たちは……」

"人が笑う"という現象は、対象の精神に対する高度に複雑な干渉の結果として現れる。
レシタール一等兵の――六角少尉と同じ年代である女子としての――視点は是非とも欲しい。
それと同時に、自身が一個人としての六角少尉と相互理解を深めることも必要不可欠の様に思えた。

『――女子浴場に突撃してやるよ』

「……女子浴場で六角少尉と深く知り合う必要がある」


――――ギグータス空尉、お前もか。


【レシタール一等兵選択】
ニア
  1.「相互理解の場として、より相応しい場所を提案したいのですが」(社会スキル<一般常識>+3Lv)
  2.「水着ないしバスタオルの着用は可能ですか」(精神スキル<素直クール>+2Lv)
  3.「……」(感覚スキル<危険感知>+255Lv)
  4.その他(任意のスキル+1Lv)

【シーナ社長/ギーガー空尉選択】
ニア
  1.「いっそ武神に乗らず女子浴場に突撃するのはどうだ?」(変態スキル<犯罪教唆>新規取得)
  2.「グリントガールのコスプレをしてもらおう」(変態スキル<女装幇助>新規取得)
  3.「……」(変態スキル<放置プレイ>新規取得)
  4.その他(スキル上昇なし、もしくは任意の変態スキルを新規取得)

106 :名無しになりきれ:2015/07/19(日) 18:55:28.15 0
「よし、全員いるなァ。じゃ各自出立」

機龍の前で吸っていたタバコを、全員揃った所で落として踏み消してから拾って携帯灰皿に放り込む
乗り込むのは、やたらと尖ったフォルムの蒼の機龍
要所要所に施されたオレンジのラインは、戦場において絶妙な迷彩効果を発揮してくれる
他二人よりも深く落ち着いた蒼の機龍の胸部装甲を開き、慣れた動きで乗り込む
座席はバイクを意識した、前傾姿勢で乗り込むタイプのものだ
そもそも座って乗り込むタイプは長時間の戦闘に向かない
フルフェイスヘルメット型のHUDを被り、球体コントローラをしっかりと両の手に握る

「ゲイリー、テスト開始」
『ラジャ。グラヴィティドライブ、オールグリン、メインブースタ、起動確認』
『各部スラスタ異常無し、背部翼、長距離巡航状態で展開』
『長距離用バッテリ、接続確認、光子出力、安定確認』
各部に仕込まれた加速器が淡い光を放ち、ゆっくりと背の翼を広げる
その上には円筒形のバッテリー二つとパラボラアンテナ
長距離航行用の予備バッテリーであると同時に、パージ後は通信の基地局にもなる優れもの
「ゲイリー、アンテナ起動しとけ。ニホン人はおしゃべり好きだからな」
『ラジャ』

全身の加速器の光が更に強くなり、ゆっくりとその機体が浮き上がる
「基地設営用の輸送ヘリも準備いいな?じゃ出発」
ぐ、と全身が押さえつけられるように一度下に沈み、次の瞬間には一団の先頭へと飛んでいく
と、そこで受信
オープンチャンネルで飛び込んで来たのはナイトウやロジーの馬鹿話と、外部スピーカーで戯言を言う変態の言
そして物凄い勢いで各方面から飛んできた報告書提出命令と抗議と逮捕状の申請用紙の山だ

「あー……そこの馬鹿共。C隊用の通信帯を開けたから、そっちに繋げ。俺が死ぬ」
先が思いやられるなァ、と何度目かの溜め息を漏らし。目的地へと飛んでいく
尚、チャリで爆走する問題児は完全に無視だ。最早構うだけ無駄だと判断したらしい

107 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/07/19(日) 18:56:09.10 0
目標の都市よりやや離れた、牧場のある一角で全体に待機命令を飛ばす
そこで背部のアンテナをパージし、設置
輸送ヘリも着陸し、基地の設営を開始している
「一応この地点が今作戦での俺達の拠点だァ、非常時はここまで下がって来い」
「作戦開始は10分後、その5分前には本部から通信が入る予定だァ。大人しく待ってろよォ」

そして5分後。オープンチャンネルに、本部からの通信が、入る
『――諸君。聞こえるだろうか』
『私が『抵抗軍』総司令、元帝国陸軍所属、レフトバーグ中将だ』
『諸君。我々は3ヶ月前、敗北した』
『かの滅びの軍勢に対し、さしたる抵抗も出来ぬまま、自国の領土を、人民を奪われ、そして世界は少しだけ寂しくなった』
『だが諸君、今我等は此処に集った』
『国も、主義も、信じる物も違う我等だが、今ここに集ったのだ』
『いいか諸君、親愛なる戦士諸君』
『我等には空を制す龍が、地を制す神が、そしてそれらを繋ぐ為の絆がある』
『――今こそ反撃の時だ。滅びを齎す、終わりのみを司る軍勢に、今を生きる我らの叫びを教えてやれ!』
『全軍――状況を開始せよ!』

「了解!」「OK」「Tes!」「イエッサー!」「ラジャー!」「押忍!」「把握した」「応!」「ラーサ!」「ypaaaaaa!」「Jud!」「Uryyyyyyy!」
各隊の隊長が、続いて隊員が、応答と鬨の声を上げる
言葉も何も違えど、思いは一つ
必ず、必ず滅びの軍勢を

「さァ、クソッタレ共を叩き潰しに行くぞてめェら!」

――戦闘、開始

108 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/07/19(日) 18:56:18.31 0
「A隊はもう結構先行してやがるなァ、とりあえず俺達は後追いだァ」
「B隊が突入口を確保してる、サクサク行くぞてめェら!」

丁寧に一体ずつ始末を行っているB隊を後目に、まっすぐに突入するゲイルブレイド
少し先に進めば、最低限武装を落としただけの敵機体がそこらに見られる

「随分トバしてるなァ、無理が来なけりゃいいが」
「……と、敵機体捕捉!武神が3、機龍が2、いずれも四肢損傷あり!」
「1ずつ持っていってやらァ、残りはてめェらで始末して見せろ!」

一瞬、加速器の光が小さくなった――と見えた次の瞬間には、爆発的な光と共に隊長機が加速する
そして――上部の加速器が一瞬閃光を放つと同時、その身が下に跳ねる
一瞬前まで居たところに飛び込む、無数の火線
それを最早跳ねるような動きで避け、一気に距離を詰める
通常ならばGにやられるか、あるいは強すぎる加速を制御出来ずに吹っ飛びかねない、危うい挙動
しかしその全てを完璧に制御し、尾を揺らしながら地上の武神に躍り掛かる

「――ゼァッ!」
気合い一閃、4m近い光の刃が右手側で展開したかと思えば、次の瞬間には敵武神の胴と足が別れ、足だけが黒の粒子として解けて消える
それでも尚武器を構えようとする黒の武神を、

「トロくせェ!」

姿勢制御を兼ねて振り回した尾が捉え、その肩と武装をブチ砕く
黒の粒子と消えた敵機を見もせずに、反転して上昇

「いいかァ、消えるまで仕留めたと思うな!」
「多少の損傷なら関係なく動く、確実に仕留めて行けェ!」

すれ違い様に同様のコンボを敵機龍に叩き込み、さらに前進

後を追うならば、四肢の何れかを失った機龍と武神が阻むだろう

【単なる雑魚戦】
【決定ロールで傷を与えるなり、仕留めるなり】

109 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/22(水) 15:55:52.79 0
内藤は「話」を終えて、今度は皆の言葉を待った。

>「ああああ!?なんだよ!教えろよどうなったんだよ!!風呂は覗けたのか?バレたの?つーか武神ってそんなことできるの!?」

まず反応を示したのはロジーだった。
内藤が喜色満面の表情を浮かべる。

「ふふふ、それは帰ってからのお楽しみさ。けど、あの時僕の同期には津出って子がいてね。
 すごい可愛い子だったんだ。連邦の方とのハーフでね。あぁ、今でも忘れられないよ、あの子の……」

>「……通信回線の正常稼働を確認しました」

次に返ってきたのは、ただの言葉。
続きも繋がりもない、断絶の証。

「……オーケー、いいね。かえって「次」が楽しみになる返事をありがとう」

だがその程度でへこたれる内藤ではない。
むしろ次の出撃こそは彼女に「話」をさせてみせるという意志を沸々と湧かせていた。

>「こちらも通信回線は良好だ。あれから中佐とデートはしたのか内藤君?」

「あはは、面白い事言いますね。グリントガール「ごと」恋しちゃいそうだ」

次に言葉を発したのはリンネだ。
彼の冗談に、内藤は事も無げに返答をした。
ニッポン人はその民族性から、聞き流すという行為が得意だった。

>「武神で女子寮のお風呂を覗き見するなんて、いいアイデア・・・
いや、実にけしからん!度しがたい変態だ!
内藤君は作戦終了後、直ちに報告書を作成してくれたまえ!」

>「克明に描写しろよ!参考文献としてフランス書院文庫を貸してやるから!」

今度は、返事はしない。
ただいつもよりも色濃いニコニコ顔を浮かべて内藤は黙っていた。

>「あんまり面白い話ではないかもしれないが、聞いて欲しい。

と、不意にリンネが普段とは違う沈んだ声色でそう切り出した。

>「つまり最後の敵は結局、人間ってことだ。
 私個人としてはサウスウィンド中佐を信用しているが、
 さらにその上にいる背広組の連中は何を考えているかわかったもんじゃない。
 我々を利用して、何かを画策していないとも限らない」

リンネの「話」が終わり、内藤は尚も黙りこくっていた。
何故なら彼の話は内藤にとっては「自分には関係のない事」だからだ。

内藤=ハイウィンド=隆輝は兵士だ。
その使命はより多くの戦果を上げる事であって、国際政治の闇を暴き、打ち破る事ではない。

内藤は別に使命感の為に戦っている訳ではないが、いずれにせよ政治の話に興味などない。
彼にとって戦場で大切な事は「武神に乗って戦っている自分カッコいい」と感じられるかどうかなのだ。

そもそも、まだ見ぬ陰謀に気を揉んでも、何が出来る訳でもない。
ならば気にしても仕方ないし、気にしない。

110 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/22(水) 15:56:58.42 0
「……僕は、大丈夫だと思うけどね。だって……例えば、僕はとてもすごい武神乗りだ。
 で、ロ……ギーガーはすごい機竜乗り。社長はすごい武神開発者だ。
 だったら……きっと、とてもすごい正義の政治家だって、こっち側のどこかにいるよ」

楽観的、それはニッポン人の極めて基本的な気質だった。

>「それよりもっと明るい話をしようぜ。これからの話だ。
 世界を救ったあと、お前らはどうなりたいの。おれはISEに戻ってこの功績でバリバリ出世したい。
 たくさん給料貰って、エナレスの一等地にでけー家立てて、良い車乗って、おやじとおふくろ呼んで――」

重たい空気に耐えかねたのか、ロジーが話題の転換を要求した。
内藤もそれに異を唱える理由はない。

>「名医にかかって持病を克服してえな……」

「……そういや機竜乗りってオムツを履いて排泄してるんだっけ?それも痔には良くないと思うんだよねぇ。
 聞いた話だけど、痔って排泄物に汚染されると炎症を起こして、肛門以外の「穴」が出来ちゃうんだってさ。
 そうなったらもう、自然に治癒する事はないから手術でその穴ごと周りの肉を切除するしかないとか……」

内藤に悪気はない。彼はただ聞き齧った知識を垂れ流しただけだ。
それがロジーにどういう心証を与えるのか、まるで考えていなかっただけで。

「まぁ、それはさておき、これからねぇ。うーん……そうだなぁ。とりあえず、美味しいご飯が食べたいな。
 地元に僕の友達がやってる食堂があるんだけどさ。彼は色んな国を旅するのが趣味でね。
 旅先で食べた料理をよく自分の店で再現してたんだ。中でもアレは美味しかったなぁ。」

そしてロジーに吊られているだけの内藤は呑気な口調でそう続けた。

「シナ国の、カニの卵入りのフカヒレスープ。コンソメとカニの卵を使ったスープなんだけど、隠し味にキョートの醤油が使われててね。
 それが単体でも強烈な二つの味を繋ぎ合わせて、一つにまとめ上げていたんだ。
 そこにフカヒレの淡白さと食感が加わる事で、スープはくどくなり過ぎず、逆にフカヒレも味のなさを補われて……」

と、そこで言葉は途切れた。
自分の言葉の不毛さと威力を内藤本人も自覚したからだ。

「あぁ、クソ、武神に乗ってるのにお腹が空いてきそうだ。
 材料費が掛かるとか言って馬鹿みたいに高かったけど、アレをたらふく飲んでやりたいよ」

言い終えてから、次にあれほどの美味を口に出来るのはいつだろうと内藤は考える。
そして思わず溜息を零した。

111 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/22(水) 15:57:43.97 0
>「なんだありゃ……武神か!?」

それから暫くして、不意にロジーが素っ頓狂な声を上げた。

「え?なになに?作戦区域はまだ先だろ?なんかあったの?」

ヒューガにぶら下がって体を丸めた状態の内藤には地表の様子が視認出来ない。
その為グリントガールの珍妙な移動手段を見る事は叶わなかった。

>「ギガンテス君、ちょっとした賭けをしないか?」

「なんだ、また社長がなんかやってるだけか。ロジ……ーガー、君もさっさと慣れなよ。疲れるだけだぜ」

>「作戦終了時間までに、私が桔梗君を笑わせる事ができたら私の勝ち。
 私が彼女を笑わせられなかった時や君が彼女を笑わせる事ができたら君の勝ちだ。
 面白そうだろ?何を賭けるかは君が決めたらいい」

>「ズルいわーーーーッ!!
 おっさんそんな出落ちの塊みてーなカッコで登場しながら良いこと言うんじゃねーよ!
 なに、笑わせるってそういう嘲笑いでいいの?おっさん最強すぎない?」

「あっ、クソ。またちょっと気になってきちゃったじゃないか。やめてくれよ」

>「だけどいいぜ、売られた喧嘩は買わなきゃおれじゃねえ。
  その賭け乗った!おれが勝ったらあんたの会社でロジーモデルの機竜作って売れよ。
  おれが負けたら――」「――武神に乗って女子浴場に突撃してやるよ」

ロジーは無根拠かつ自信満々にそう宣言する。
これには内藤もやや呆れを禁じ得なかった。
が、同時に思考する。これはチャンスだと。

「……僕は遠慮しとこうかな。彼女の笑顔は僕も見てみたいけど……それはゲームのコインとしてじゃないんだ。
 あれはきっと、下手に触っていいものじゃない。別に彼女に失礼とか、そういう事を言うつもりも、ないけどさ」

内藤は賭けを辞退した。

しかしこの時点で、彼は既にカイと同じく勝利に向けての布石を打っていた。
リンネはおちゃらけた人物だが、同時に大人としての冷静な視点や精神も持ち合わせている。
内藤の発言はそこに楔を打ち込む為のものだった。
彼女の明らかな異常性に、遊び半分に触れる事を言外に非難する事で、勝負に徹する事への抵抗感を植え付けられれば重畳、という目論見だ。

「……やぁ、ギーガー。君、良かったのか?社長を相手にあんな大口叩いて。彼は強敵だぜ。勝算はあるのかい?」

通信形態を囁きモードに切り替えて、ロジーへと声をかける。

「あんな話をした後だからさ、君に負けられると僕も困るんだよね。
 アホな事を教唆した罪でとばっちりを受けたりとか、嫌だし。
 ……君さえ良ければだけどさ、手伝いをさせてよ」

武神の中で笑みを普段よりも殊更に色濃くさせて、内藤は続ける。

「僕が彼女の「敵」になってあげるからさ。……人ってのは、笑わせるよりも泣かせたり怒らせる方が簡単だ」

112 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/22(水) 15:58:49.36 0
ロジーの答えを待たずして、内藤は更に語る。

「例えば君の持病……同じ機竜乗りに揶揄されても、お前だって他人事じゃねーぞで済むけどさ。
 もし武神乗りや、ただの民間人からそれを揶揄されたら?俺の苦労も知らない奴らが馬鹿にしやがってと、思うだろ?
 つまり、相手を笑わせるには精神的な距離が近くなくてはいけない」

笑みとともに、内藤の言葉は加速する。

「その為に、僕が彼女を怒らせるんだ。彼女がどんな価値観を持っていて、どこに地雷が埋まっているのか。それを確かめるのさ。
 それに「敵」がいるからこそ、人は味方を欲するんだ。抵抗軍だってそうやって作られた。だろ?
 敵は僕だ。「味方」の席には、君が着けばいい」

無論、内藤自身も六角とは仲良くしたいと思っている。
だが、どのみち今のままでは彼女に言葉は届かない。
結局、彼女の地雷を、価値観を探る必要はあった。ならば、どうせならその過程でロジーに恩を売れた方が効率的だ。

内藤にとってこの賭けは、ロジーと六角、二人を同時に理解し、距離を縮める為のチャンスだった。
先の言葉とは裏腹に、彼は誰よりもゲーム的に、六角の事を認識していた。

「……とは言え、彼女はその怒らせるだけでも苦労しそうだな。どの切り口から行こうか。
 容姿……は不気味な雰囲気さえなければかなり可愛いし。過去……も自分から亡霊を名乗っちゃうくらいだしなぁ。
 亡国を馬鹿にしようにも……愛国心が豊かには思えない。うぅん……どれも弱い。何か名案はないかな。ちょっと君も考えてよ、ギーガー」





>「一応この地点が今作戦での俺達の拠点だァ、非常時はここまで下がって来い」
「作戦開始は10分後、その5分前には本部から通信が入る予定だァ。大人しく待ってろよォ」

やがて竜夜を吊るしたヒューガは、目標である都市からやや離れた位置にある前哨拠点に辿り着いた。

ヒューガの高度が地表近くまで下がった所で内藤はハードポイントを手放し、飛び降りる。
そのまま空中で姿勢を整え着地。
各関節部を動かし、手足を軽く振る。機械の体が凝る事はないが、人の感覚はその限りではなかった。

>『――諸君。聞こえるだろうか』
『私が『抵抗軍』総司令、元帝国陸軍所属、レフトバーグ中将だ』

そして本部からの通信が届いた。

>『いいか諸君、親愛なる戦士諸君』
『我等には空を制す龍が、地を制す神が、そしてそれらを繋ぐ為の絆がある』
『――今こそ反撃の時だ。滅びを齎す、終わりのみを司る軍勢に、今を生きる我らの叫びを教えてやれ!』
『全軍――状況を開始せよ!』

「……かーっこいいー。こりゃ僕も負けてらんないなぁ」

総司令直々の鼓舞激励に周囲が沸き立つ中、内藤は小さく呟いた。

>「さァ、クソッタレ共を叩き潰しに行くぞてめェら!」

進撃が始まる。
先行したA隊は敵機を強襲し先手を取り、そのまま突破。
損傷を負った敵機にB隊がとどめを刺し、切り開かれたルートを確保する。
流石は帝国と連邦の精鋭揃いと言うべきか、迅速かつ正確無比な動きだった。

113 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/22(水) 15:59:58.22 0
>「随分トバしてるなァ、無理が来なけりゃいいが」

だが、その「流石」はあくまで動きに限ればの話だ。
連邦兵であるA隊はその国民性故か、気が逸りすぎている。
残された敵機が増えすぎれば、処理が遅れる。

連携が甘い。
敵の処理が遅れ皇族の進軍速度が落ちればA隊は孤立する。B隊は焦燥する。
そのどちらも、戦場では死を招く。

内藤の顔から、笑みが薄れた。

>「……と、敵機体捕捉!武神が3、機龍が2、いずれも四肢損傷あり!」
「1ずつ持っていってやらァ、残りはてめェらで始末して見せろ!」

「同胞が先走ってるからって、自分まで焦ったりしないで下さいよ、隊長」

サウスウィンドは上司であり、仲間だ。
その彼が死ねば、気分が悪い。故に内藤は念を押すようにそう言った。

>「トロくせェ!」

しかし直後に彼の戦闘機動を目にすると、すぐに、それが釈迦に説法だったと悟った。
サウスウィンドは機竜乗りでありながら完全に敵の射撃を回避していた。
間合いの取り方と速度、軌道の緩急によって敵が攻撃を行うタイミングを完全に掌握していたからこその芸当だ。
無論、人間性の介入しない『滅び』の挙動は人間よりかは予測しやすい。
だが、だとしても卓越した技術無くして出来る事ではない。

「あーあ、そっちの損傷が軽い方は僕が貰おうと思ってたのに。ズルいなぁ」

内藤は冗談めかしてぼやき、同時に前進を止め、膝を曲げる。

内藤=ハイウィンド=隆輝の機体である竜夜は、他国の武神とは外観が大きく異なる。
装甲は殆ど無い。頭部だけは、竜の頭蓋を模したような兜を被っているが、それだけだ。
加えて、剥き出しになっているのはギアもモーターも伴わない「筋肉」だ。
カーボンナノチューブによって構成された人工筋繊維である。

竜夜を構成する筋肉と骨格は、他国の武神に比べて極めて軽い。
故に、通常ではあり得ないほどの跳躍が可能だった。

地を蹴り、跳び上がった竜夜は付近のビルの壁を足蹴に、更に上昇。
それを繰り返し、ビルの屋上まで到達する。

「やぁ、ギーガー。見せてあげるよ。僕が、君に負けないくらい凄い奴だってとこをね」

言葉と同時、再び、先ほどよりも更に膝を屈める。
押し潰されたバネのように全身を縮こまらせ、跳躍。

瞬間、竜夜は地から天へと逆巻く稲妻と化した。
カーボンナノチューブによる人口筋繊維は自重の数万倍の重量すら持ち上げられる。
その筋力によって打ち出された竜夜は、武神という大体積でありながら、砲弾よりもなお速い。

だがその軌道は、あまりに直線的だった。
遮蔽物のない屋上からの跳躍は、敵の機竜に容易に視認されていた。

機竜の火砲は彼を既に捉えている。
砲火が閃く。
身動きの取れない空中。

114 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/07/22(水) 16:00:54.95 0
内藤の竜夜は、しかし砲弾を回避した。

進路はそのままに螺旋を描く、マニューバにおけるバレルロールのような動き。
何故、それが出来たのか。

答えは竜夜の背面にあるスラスターだ。
プラズマを用いて瞬間的に膨張させた空気を噴射するジェットパック。
その噴射口の角度を変える事で、竜夜は空中での加速や姿勢制御が可能だった。

敵機に次弾を放つ時間は、ない。

「ううううううぅ……りゃあ!」

螺旋を描く事によって生じた遠心力を斧槍に乗せ、一閃。
暴風の如き一撃が敵機の胴体を両断し、黒霧と散らした。

だが内藤の戦闘機動は、そこで終わりではない。
空中で体を反転させ、スラスターを起動。
重力と噴射の二重加速によって高速で地上へ。

着地地点は、敵武神の10メートルほど後方。
竜夜の俊敏性ならば一呼吸で距離を詰め、一撃叩き込める距離。
警戒を解けば、その瞬間に更なる損傷を負う事になる。

初手に無謀な突撃と、凄まじい速力を見せつける事で、相手に常にそれらへの警戒を強いる。
そこまで含めて、竜夜の強みだ。
本来は人間相手にこそ効果を発揮する戦法だが、滅び相手にもまるきり無意味ではないだろう。



【ジャンプ&挑発】

115 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/27(月) 01:02:03.68 0
><――――俺も一枚、噛ませてくれ。個人的な事情があってさ、大金が必要なんだ。
 俺が負けた時の条件は任せる。好きに決めてもらっていい>

「じゃあお前が負けても女子風呂特攻だな。おれのデジカメ貸してやっからばっしち激写してこいよ。
 ――っておーい、聞こえてっか?」

リンネとの賭けにカイ入してきたカイとか言う傭兵の通信が途絶した。
運んでいるはずのフレイアがロストしていないから無事だろうが、心配ではある。
ミーティングに参加していなかったから、ロジーは彼の人となりを知らない。
先週まで懲罰房行きだったと言うからには曲者ぞろいのC隊の中でも殊更に危険人物なのだろうか。

>「……僕は遠慮しとこうかな。彼女の笑顔は僕も見てみたいけど……それはゲームのコインとしてじゃないんだ。
 あれはきっと、下手に触っていいものじゃない。別に彼女に失礼とか、そういう事を言うつもりも、ないけどさ」

「う……。そりゃあ、そうだけどよ」

内藤の突然のマジレスにロジーは二の句を継げなかった。
確かにデリケートな問題ではあるし、桔梗の抱えている事情如何では不謹慎極まりないだろう。
しかしそれでもロジーは見たいのだ。そこのクソデブのニヤつき顔じゃなく、『亡霊』の真実の笑顔を。
それは単なる興味本位だが、そう思うことは間違いではないと彼は考えている。

>「……やぁ、ギーガー。君、良かったのか?社長を相手にあんな大口叩いて。彼は強敵だぜ。勝算はあるのかい?」

通信が秘匿回線に切り替わって、内藤から囁きが飛んできた。
彼の指摘はご尤も、武神でチャリ漕いで来る傑物に笑いというジャンルで勝てる気はしない。
だが笑顔とは、何も不条理なものを観たときに出てくるものだけじゃあないはずだ。

>「あんな話をした後だからさ、君に負けられると僕も困るんだよね。
 アホな事を教唆した罪でとばっちりを受けたりとか、嫌だし。……君さえ良ければだけどさ、手伝いをさせてよ」

「誰が誰に負けるって?ナイトーよぉ。機竜乗り様が武神乗り如きに後塵を拝すわきゃーねーだろ。
 ……んでもまあ?お前がどうしてもっつうなら一枚噛ませてやらんでもないぜ?」

虚勢である。
愛想笑いのスペシャリストである内藤の助力が得られるならこんなに心強いことはない。
だが内藤の提案を聞いて、ロジーは明確に眉を顰めた。

>「僕が彼女の「敵」になってあげるからさ。……人ってのは、笑わせるよりも泣かせたり怒らせる方が簡単だ」
>「例えば君の持病……同じ機竜乗りに揶揄されても、お前だって他人事じゃねーぞで済むけどさ。(中略)
> 敵は僕だ。「味方」の席には、君が着けばいい」

「おまえが"青鬼"になるってことかよ、ナイトー」

ようは、内藤が桔梗とロジーの『共通の敵』になることでロジー達の距離を近づけようという魂胆だ。
如何にもニッポン人の好きそうな使い古された陳腐な茶番だが、使い古されているということは効果が実証されているということ。
確かに何も足がかりがないような現状に比べれば遥かに与し易くなるだろう。

>「……とは言え、彼女はその怒らせるだけでも苦労しそうだな。どの切り口から行こうか。
 (中略) うぅん……どれも弱い。何か名案はないかな。ちょっと君も考えてよ、ギーガー」

「おまえの考えてるそのプランを全部ぶち撒けてやりゃ、きっと怒るんじゃねえかな」

ロジーは肩を竦めて言った。

「悪いがナイトー、そのセンはなしだ。てめーの計画にはどうにもロッカクに対する敬意が欠けてやがる。
 なんつーのかな、うまく言葉にできねえけど、そういう人の心を手玉にとるみてーなのはおれは嫌いだ。
 陰気くせーったらありゃしねえよ、西洋人にゃ合わねえな」

116 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/27(月) 01:02:33.56 0
ロジーはミーティングで顔を合わせた時から、桔梗よりも内藤の抱える闇をおぼろげに感じ取っていた。
こいつは表面的には微笑みを絶やさないし友好的だが、真実笑っているようには見えなかった。
まるで笑顔という頭部外装を着けた武神だ。
彼にとって笑顔とは、対外関係を円滑に進める為のツールに過ぎない。
もちろんそういう愛想笑いは誰にでもあるし必要なものだが、内藤はとくにそれを徹底している。
だから『桔梗がどうすれば笑ってくれるか』ではなく、『人間がどういうときに相手を信頼するか』の話になるのだ。

「そんかしお前も賭けに参加しろよ。お前が見事ロッカクを笑わせられたらおれのことロジーって呼んでいいぜ。
 負けたら覗きネタにして官能小説一冊執筆な」



>「一応この地点が今作戦での俺達の拠点だァ、非常時はここまで下がって来い」
>「作戦開始は10分後、その5分前には本部から通信が入る予定だァ。大人しく待ってろよォ」

内藤を同伴した空の旅は一時途中下車、攻略拠点へ現着する。
ここで一時燃料の補給を行い、巡航仕様から戦闘仕様への簡単な再整備を行う。
コクピットに座ったまま差し入れられたレーションをかじっていると、オープンチャンネルで通信が開いた。

>『――諸君。聞こえるだろうか』

抵抗軍総司令官だ。
彼の言葉はかつて散っていった死者達への手向け。
そして今日まで生き残ってきた生者達への労い。
なによりも――これからを勝ち獲って行く戦士達への容赦のない激だ。
死の淵へ叩き込まれる兵達の最後の背中を押し、きっと戻ってこいと手を引く一言だ。

>『――今こそ反撃の時だ。滅びを齎す、終わりのみを司る軍勢に、今を生きる我らの叫びを教えてやれ!』
>『全軍――状況を開始せよ!』

「テスタメェェェェェント!!」

ロジーもまたコクピットを開き、脱ぎっぱにしてあった軍帽を空へ投げた。
それがひらりひらりと膝の上に落ちてきた時には、既に全軍が行動を開始していた。
急ごしらえのカタパルトでもう一度宙へ舞い上がる。
今度は内藤をぶら下げていないので上昇も迅速だ。
すぐに先行した軽機竜の編隊と同じ高さまで高度をとった。

>「随分トバしてるなァ、無理が来なけりゃいいが」

「とっとと片付けて帰って一杯やりてぇんだろ。おれも催す前には帰りてえな。痔ろうはこえーからな」

行き掛けに内藤に脅されてから、ロジーは必死に痔の諸症状についてググった。
結果、痔ろうとかいう意味不明な病状に行き当たった。内藤の言っていたのはこれだ。
何が楽しくて尻穴をもう一個増やさねばならないのか。
と、そんなことを気にしていたら今度は対空砲火で穴だらけにされかねない。
この期に及んで緊張感のないロジーはAB部隊に比べ心拍数も不自然なくらい安定していた。

>「……と、敵機体捕捉!武神が3、機龍が2、いずれも四肢損傷あり!」
>「1ずつ持っていってやらァ、残りはてめェらで始末して見せろ!」

「あれが滅びの軍勢か……」

前方に赤黒い外装をもった武神と機竜、合わせて5つの機影が現れた。
どの機体にも大小の欠損があり、先行部隊がきっちり仕事したことを黙して語っている。

「ナマで見るのは初めてだぜ。黒地に赤い筋があって、まるで初心者の作ったWebサイトのレイアウトだな」

117 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/27(月) 01:03:02.60 0
しかし本当に武神や機竜の生き写しだ。
ヒューガの画像処理システムで照合したが、シルエットはどこの国の機体にも該当しない。
それでいて、一部のパーツにはロジーの知っている機体と同じかたちが使われている。
まるで――既存の機体をバランス考えずにつぎはぎしたかのような、いびつな完成度の低さが伺える。

「連中の設計者には美的感覚ってやつがねぇらしいな!」

誰ともなくそう感想を漏らすと、風防のすぐ傍で武神と眼が合った。
内藤の軽武神、確かドラゴンナイトとか言った――

>「やぁ、ギーガー。見せてあげるよ。僕が、君に負けないくらい凄い奴だってとこをね」

「おわっ!ナイトー!ここ地上何メートルだと思ってんだお前!」

内藤は答えず、足場にしていたビルの屋上を蹴った。
驚異的なバネによって風になった機体は、砲弾の如く敵機竜に迫る!
だがそんな丸見えの接近を許す敵ではない。

「ばっ、撃たれんぞナイトー!!」

ロジーの警告は、しかし無意味だった。
ドラゴンナイトは空中で軌道を変え、敵の集中砲火を回避したのだ。
機竜には出来ない、機体の軽さ任せの俊敏なマニューバだ。
そして肉迫を果たした青の武神は、黒の機竜を両断する。
体積の50%を失った滅びの機竜は、黒の粒子状に分解されて沈黙した。

「なんだありゃ……あんな武神の機動、見たことねえ……」

ロジーは硬い唾を飲み下した。
そもそも、武神と機竜の間には絶対的な戦力の隔たりがある。
武神は飛べなくて、機竜は飛べるからだ。
極端な話高高度から適当に爆撃してるだけでも機竜は武神に負けることはない。
だからこそ、地上戦に移る前に航空戦で制空権を獲ることが重要なのだが――

(あいつの武神は、機竜を狩れるのかよ!)

油断から対空砲火に晒されて撃墜される機竜の事例は、そりゃもちろん多く学んできた。
武神が装備できる強力な対空火器はこれまでいくつも開発されてきて、少なくない数の機竜乗りがその餌食になってきた。
だが内藤は、ドラゴンナイトは、機竜相手に格闘戦でその喉笛を喰らい潰したのだ。

>『対機竜なら無敵ですよ、僕』

いまさらになってミーティングでの内藤の言葉が効いてくる。
内藤・ハイウィンド・隆輝。
対空戦術のスペシャリスト――!!

「負けらんねえな……武神乗りにはよぉ!!」

その驚愕は、ロジーを鼓舞するのに十分だった。
彼の駆るヒューガは戦闘用の機竜ではないが、その不利を覆してこそ『奇蹟の子』だ。
HUD上に敵機を捕捉。内藤が睨みを効かせていない方の武神だ。
同時にヒューガの主武装(笑)である35.6mm連装砲を展開。
二門の鋼鉄の巨塔が機竜のあぎとの奥からせり出してくる。

――航空戦闘において、よほど肉迫していない限り大砲は当たることはない。
自分も相手も常に動いているし、空気抵抗や慣性や姿勢制御は陸上と比べ物にならないぐらい複雑だからだ。
だから基本的には誘導弾を使うか、機銃の連射でいつか当たることを祈るほかない。
たくさん撃つと実際当たりやすいが、速射の叶わぬ主砲にそれを求めるのは酷であった。

「だから近づいて撃つぜ!」

118 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/07/27(月) 01:03:51.98 0
旋回・加速性能において劣るヒューガで対地戦闘を挑むのは無謀の一言。
だがロジーは迷わず行った。己の才能に対する信頼の顕れだ。
接近に気付いた敵武神が対空砲火を開始する。
鋼の嵐が吹き荒れ、ヒューガが火花に包まれる――だが、装甲は健在!!

「豆鉄砲が効くかガラクタぁッ!!」

ハイトルクカスタムが可能とした、重装甲機竜と較べても特異なほどに分厚い装甲!
厚さ1センチの鉄板をぶちぬく対空機銃ですらかすり傷にしかならない防御により、損傷は極めて軽微!!
HUDには被弾のアラートすら表示されない。ヒューガにとってこの程度は攻撃にもなりやしないのだ。

据え付けのシーカーが敵影をロックし、自動給弾システムが薬室に砲弾を送り込む。
モニタに表示された照門と照星を表す2つの円がレティクルと重なった瞬間、ロジーは引き金を引いた。
ズバッ!と空気を押し出す音と共に大きく機体が揺れる。
駐退機が後退する摺動音を聞きながらモニタを覗くと、吐出された砲弾が敵武神のすぐ後ろに着弾したのが見えた。
弾着観測。コンピュータがすぐに初弾の射出結果をデータ化し、次弾の弾道に補正計算をかける。

二たび、ロジーは揺れるコクピット内で主砲のトリガーを握った。
初弾の反動は機体を大きく跳ね上げ、空気抵抗を真正面から受けて姿勢が戻らない。
500kgもある鉄塊を吐き出したのだから当たり前だが、空中での大砲発射は反動との戦いだ。
未熟なパイロットは一発撃つだけで姿勢を保てなくて墜落してしまうことすらある。
まして35.6mmという大口径は、本来戦艦などに装備するものであって機竜に載せるものではない。
滅びの軍勢相手でなければオーバーキルもいいところ。
こうして失速せずに飛べているだけでも奇蹟のようなものなのだ。

「クセは掴んだ……!」

――そう、奇蹟。
ロジーはその類まれなる操縦センスで機体感覚を的確に把握し、飛翔翼の傾きだけでバランスを制御していた。
旋回能力の極端に低い重機竜で、しかも大口径主砲を撃ったにも関わらず、『飛翔姿勢を保ち続けている』。
ヒューガに唯一の武装としてこの主砲が取り付けられてから二週間も経っていない。
試射だって数回しかこなしていないのに、ロジーは既に適応を始めていた。

腐ってもストライクドラグナー。
機竜立国のISEで、倍率千倍を勝ち越した、本物の天才である。
瞬き一つ終える頃には、ヒューガは完全に姿勢を取り戻し、主砲はまっすぐ前を向いていた。

「ロックンロォーーーーール!!!」

そして二発目が砲火を吹く。
さながら竜の息吹の如く、鉄と炎と煙のカクテルは空と地を一条の線で結ぶ。
陽炎上る大気を突っ切って重量500kgの砲弾は的確に武神の急所――機関部をぶち抜いた。

……機関部だけを、ぶち抜いてしまった。

「あっ」

滅びの軍勢を倒す方法は唯一つ、体積の半分を吹っ飛ばすこと。
ロジーの放った砲弾は機関部を完全に破壊したが、体積で言えば正味15%程度しか除去できていない。
敵武神は胸に大穴開けながらも元気にヒューガの脇を走り抜けて行ってしまった。

「そーだった、弱点とかないんだった連中には!やべえ!!」

ロジスティクス=ギーガー三等空尉。
その記念すべき初陣――撃墜失敗。


【武神に弾をぶち込むも、逃げられる】

119 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/07/27(月) 10:04:39.48 O
通常飛行モードで、各自の通信を聞く。
ニッポンは不思議な部分が多いが、女子浴場の何が興味深いのかは理解不能だ。
可能不可能だけならば武神による覗き見は出来るだろう、ばれなければだが。
…興味はない。
考えなければいけないのは、リンネ社長の言葉の方だ。
>「もっと問題になるのは、滅びの軍勢が完全に消滅したその後だ。
 問題は滅びの軍勢を軍事目的で利用しようとする者が、遅かれ早かれ必ず現れるってことだ」

>「……まさか。考えすぎだろオッサン」
>「それによぉ、おれたちの仕事内容を考えてみろよ。
滅びの奴らを一匹残らず駆逐してやれば、軍事利用なんて計画があったとしても見事におじゃんってわけだ」

その駆逐が大変だとは思うが、軍事利用されては困る。敵が変わるだけではないか。
一匹残らず消し去らなければならない、と今更ながら決心する。
ついでだがロジスティクス三等空尉は随分気楽だな、とも感じた。初戦闘で緊張され過ぎるよりは良いが、あれはあれでどうなのだろう。
…ああ、下の自転車は見ないことにする、便利ではあるのだから。
現実逃避気味に、全てを倒した後を考えた。
帰る場所はない、親族もいない、傭兵をすることならできるが、それも戦が続いた時だけだ。
どう、するべきなのか?
戦う事しか求められなかった自分が、平和を得ても…欲しいものがわからない。
何よりも心配なのは…隊長の上司たち。
リンネ社長の考え通りの場合、自分達を利用するか――
――抹消するか。
例え何の問題もなく解散したとしても、共に戦った者と敵対する事もあるだろう。
絵空事とは思うが、戦争をやる気のない平和な世界になる以外、完全な救いはないのだ。
そんなもの、どうやって作るのやら。
統率だけでも、自由だけでも作れない人類全ての平和。
不謹慎だがそれは、今の方が近いのかもしれない。
現に部隊の人間は国を越えている。人ではないものと、戦う。それは人類一丸となるに相応しい理由になっていた。
…相手はそんな理由で滅びをもたらしに来たわけではないだろうが…。
結局何も言うこともなく、他より旧式のコックピットのカメラ映像と、自らOSを書き換えておいたレーダーを交互に見つめていた。
敵は赤黒と限定しカラーセンサーを働かせ、感知したものにあるだけの交戦記録データを参照させ、敵にだけ反応のさせようとしてみたのだ。
内藤准陸尉の機体カラーを気にした一つの理由でもある。この為に外部カメラが多少増えたが、経費でいいらしい。
テストは出来ていない為、確実に動くかはわからない。

120 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/07/27(月) 10:12:19.00 O
そんな中、カイ准尉から声をかけられた。
他愛もない世間話、と思っていたのだが…

>《甘いの、好きかどうかわからないけど、よかったら君と一緒に、お―――》
>《―――お風呂に入りたいんだ》

「…浴場は混浴ではありません、不可能です」

混浴なら別に気にしないが、この基地は性別で浴場がわかれていた。自国では経費削減で一纏めだったため、少々戸惑った。
それにしても意味がわからない。
話の流れではお菓子の話ではなかっただろうか?
「…その…お菓子なら食べてみたい、ですが…」
知らないものを知る機会は有効利用したい。
イザナミアンとやらは知らないが、元々知らない一般知識の方が多い。
甘いもの自体は好ましいと思えるので、そちらなら是非食べてみたいものだ。
と、思っていると他の話になっていた。

>「詳細を説明してる時間は無いけど、これはC隊にとって重要かつ極秘の任務だと思ってくれ。
 レシタール一等兵の協力があれば、命運を動かせる筈だ。
 このミッションを成功させるために、俺たちは……」
>「……女子浴場で六角少尉と深く知り合う必要がある」

「風呂にこだわりますね」
フレイアの知らない何かが風呂にはあるようだ。
コミュニケーションの場、と聞いたことだけはあるが、そこまで深いなにかがあるのか。
実際六角少尉と風呂に入るならば、自分なら社会的及び軍規的問題は無いだろう。
六角少尉と話をしてみたいとも思う為、個人的に問題はない。
「了解、風呂で対話してみます」
詳しい内容を聞いていなかったと気付くのは、戦闘が終わってからだろう…。
だが六角少尉と入浴、というミッションはしっかりとフレイアに刻み込まれてしまった。
取り消しはきかないだろう。
実際戦闘後真っ先に六角少尉の元へ行くのだが、それは後の話。

121 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/07/27(月) 10:19:46.06 O
>「一応この地点が今作戦での俺達の拠点だァ、非常時はここまで下がって来い」

下がることはきっとない。
飛べずとも、見えなかろうと、最後は敵のなかで迎えたい。
自爆が出来ずとも、至近距離から撃破されれば巻き込むことぐらいできるはずだ。
だから、応答はしない。

通信により作戦開始が告げられる。
『抵抗軍』総司令、元帝国陸軍所属、レフトバーグ中将。
最高の地位を持つその存在は、果たして光か闇か。
…今はただ、戦うだけだ。
そして飛ぶ者も走る者もいる中、先頭を行く隊長が一番に反応するのは、当然な事。

>「……と、敵機体捕捉!武神が3、機龍が2、いずれも四肢損傷あり!」
>「1ずつ持っていってやらァ、残りはてめェらで始末して見せろ!」

その言葉通り、スピードを生かした攻撃で天地で二機が消滅して行く。
内藤准陸尉の超跳躍により、さらに一機が消滅。
ここまではレーダーも捉えていた。
その後ロジスティクス三等空尉の行動もカメラから確認出来たが…あの装甲で随分暴れるものだ。
相手が偶然火力が低い武器だったとはいえ、一歩間違えればただの的だったろう。
その後の主砲の当て方はきれいだが、機関部を狙った辺り、敵がなんだか忘れていたようだ。
「破損敵機確認…排除します」
穴の空いたまま走ってきた武神に狙いをつけ、カイ准尉にも呼び掛けた。
背に乗せている以上、いつもの戦い方は出来ない。
ならばと翼の制御に集中を移す。
機龍としてあるまじき低空飛行、敵機もこちらを攻撃しようと足を止めた。
二人を狙う銃撃を、地を蹴りながらの急上昇で回避する。
下部を銃弾が掠めて行くが、装甲の厚さでは他に負けない。かすり傷とも言えないだろう。
「カイ准尉、その剣を下段水平にして、右斜め下27度に構えていてください」
相手の弾切れと同時にバーニアを切る。
自然滑空体勢となるワイバーンの翼は同じく下方27度に向いている。このままなら敵機ごと地面に激突するだろう。
だがそんな事をするわけではない。
敵機が新たな銃を構えた瞬間に、目の前でバーニア再点火、直ぐ様フルスロットル。
タイミングをずらされた相手が構えた体勢を崩す前に、翼に引っ掻け敵機ごと急上昇する。
地についた脚は再び地面を蹴り、半ば無理矢理空へ向かう。それほどの低空滑空だった。
速度の低いワイバーンでは、予測が外れた時点で当たらなくなる攻撃、そこは詰め込まれた戦闘知識から補足した戦い方。
一瞬浮いた敵機は、シュバリアーの剣とワイバーンの翼刃で三つに切り分けられる。
そのまま二機は大空へ戻ると、カメラ及びレーダーからの敵機消失を確認。
「…真っ二つに出来ないなら、三つにした方が楽です」
一歩間違えれば機体ともども死ぬような操縦、自信はあれどカイ准尉の肝は冷えたかもしれない。

122 : ◆2CuhqF3bRI :2015/07/30(木) 13:15:44.34 0
.

123 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/01(土) 02:23:45.23 0
>「ロッカクお前やっぱ聞いてたんじゃねーか!お前の武神はそういうこと出来んの!」
>「……オーケー、いいね。かえって「次」が楽しみになる返事をありがとう」
>「あー……そこの馬鹿共。C隊用の通信帯を開けたから、そっちに繋げ。俺が死ぬ」

「……」

桔梗が沈黙を決めた後も、通信回線では内藤の話を起点とした搭乗員同士の会話が盛り上がっていた。
主に女風呂の話題というのが問題であるものの、その会話は確かに場の空気を和らげ、
新たに合流した者も含めて、前線に向かう者達の緊張を良い意味で取り去っていた。

>「つまり最後の敵は結局、人間ってことだ。
>私個人としてはサウスウィンド中佐を信用しているが(略)

けれども、そんな会話の中――会話の終盤に告げられた言葉。彼の軍需企業の社長が放った言葉だけは、どうにも色が違っていた。

(……最後の『敵』は、人間)

回線を絞ったリンネがそこで執り行ったのは、ある種の演説。
滅びの軍勢を利用する物が出てくるかもしれないという言葉。
その言葉に対して桔梗が抱いた感情は……諦観であった。
砂漠の様に乾いた、ビル群の様に無機質な心の動き。

今は手を取り合えている人類であるが、滅びの軍勢が消滅すれば再び殺し合いを始める

リンネの語るその未来は、きっと正しい。
このままいけば、恐らくは高確率で現実となる未来予想図だ。
軍需産業を有する企業の代表者として、理論的に導き出した『正』解である

(……リンネさん。けれど私は、貴方の側の考えにはもう……疲れました)

毀れる様な呟きは、心の中。音に出される事は無く、誰にも拾われる事は無い。

>「それよりもっと明るい話をしようぜ。これからの話だ。

ロジスティクスの語る「これから」への展望も存在しない桔梗は
以降、思考を放棄したまま淡々と武神「アレス」で目的地に進もうとし

>「やあ桔梗君」

だが、桔梗に後ろから語りかけてきた者がいた。先程通信回線で演説を行っていたリンネである。
今回同じく後衛を務める立場ではあるが、果たして今この状況で何の用事があるのかと、首を傾げ振り向く桔梗
そんな彼女の目に飛び込んできたのは……

>「この自転車はオシャレだ!そうだろう?」

自転車を思わせる珍妙な形状の機器に乗っている、リンネの武神『グリントガール』の姿であった。
機器に搭乗したまま語るリンネの声色は明朗で、もしも表情がみえればさぞかし自慢げなものであった事であろう。
その愉快な恰好をしたリンネに対し、不意打ちでその姿を見せられた桔梗は暫し沈黙し

「…………その自転車は、素材と費用と時間を犠牲にしてまで作る価値のあるものでしょうか?」

無機質な、疑問を投げかけた。

「……リンネさん、ここは貴方の職場ではありません。
 ……貴方がその自転車に使った鉄板一枚が足りなかった為に、機関部を貫かれる武神や機龍が出る事も……あります」

124 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/01(土) 02:24:21.52 0
意図的に通信から外された為に、複数名から成る『賭け』の存在を知らない桔梗であるが、その第一陣はこうして失敗に終わる事と成る。
もしも、六角桔梗がまともに育ち生きてきた人間であれば、今のリンネの姿に笑顔を見せるなりした事であろう。
だが、桔梗が見せたのは感情の欠落した窘め。AIの返答の様な……いや、或いはリンネの愛機のAIよりも淡々とした返答。
リンネの気遣いは、桔梗に届く事はなかった。今回の事では彼女の笑顔を作る事は叶わない。
笑顔とは、心が活きているからこそ溢れ出るものだ。
その心が活きていないのでは、笑みなど浮かぶ筈も無い。

「……ただ、作ってしまった以上使わないのは逆に非効率、ですね」

まあ、それでも。費用対効果を考えた結果、自転車の後部座席(?)に相乗りをし、
目的地の途上まで乗車した辺り、軍人として見た彼女は実利を取る人間である人物なのが判る。


・・・

>『――今こそ反撃の時だ。滅びを齎す、終わりのみを司る軍勢に、今を生きる我らの叫びを教えてやれ!』
>『全軍――状況を開始せよ!』

「……了解しました」

響く宣誓と、応答の声
オープンチャンネルから響く声は力強く、そこには言葉を放つ者一人一人の信念が乗っていた。
そんな声にかき消される程度の小さな声で返答をした桔梗は、武神『アレス』の身体を動かす。


――――そして、戦場が始まった。


>「……と、敵機体捕捉!武神が3、機龍が2、いずれも四肢損傷あり!」
>「1ずつ持っていってやらァ、残りはてめェらで始末して見せろ!」

先陣を切ったのは、部隊長であるチャーリー。
超高速で動く彼の機龍は、僅かの間に武神と機龍を一機づつ仕留めて見せた。
一見危うげに見えるその曲芸じみた動きは、しかし無傷である機体が実力を証明している
つまり、伊達や酔狂で部隊長という肩書を持っている訳ではないという事だ。

次いで戦場に躍り出るのは、内藤。かれの武神は、驚くべき事に――『空を舞った』。
戦場において、空というのは機龍の領域である。
万全の備え十全な対策を成しても尚、武神は機龍に対して空では分が悪いというのが、世間一般の常識である。
だが、内藤は竜夜という特殊な武神と己の技巧を用いて、その常識を打ち破って見せたのだ。
着地後も油断を見せない事から、彼の搭乗者としての完成度の高さが伺える。
対機龍なら無敵、つい先日の彼の言葉が虚言ではなかった事が、今この場でありありと証明されていた。

更に続くのはロジスティクス=ギーガー
彼の操縦は、経験の差か先の二名と比較すれば安定性を欠くものであった。
けれども――――今回の戦闘において着目すべきはそこではない。
注目すべきは、彼の機体掌握能力だ。
ロジスティックスの機龍は、敵の銃撃を浴びながら主砲を放とうと、決してその体勢を崩す事が無かった。
それも、慣れ親しんだ兵装ではなく、慣れない僅か数週間前に取りつけた兵装を利用して、だ。
恐るべきは、ベテランの機龍乗りでも困難な芸当を難なくやってのける彼の才能。
……最も、ついうっかりと機関部だけを打ち抜くあたり、実戦経験の無さが悔やまれる。

そんなロジスティクスのフォローをする様に動いたのがフレイアとカイ。
中途半端に被弾したことで、未だ稼働を続ける武神に対し、彼と彼女は相手を三つに切り分ける事で完全に沈黙をさせた。
部隊長であるチャーリーの機体操作を剛とすれば、機龍の操作をするフレイアは柔。
武神を背に乗せるという慣れない体勢で、地面すれすれを飛翔するなど、どれ程精緻な操作技術が必要な事だろう。
その飛翔に合わせて見事に対応をしてのけたカイも然り。フレイアに不足した剛の部分を補って余りある働きだ。
この二名は即席とは思えない見事なコンビネーションを見せつけ、滅びの軍勢の武神を相手取った。

125 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/01(土) 02:25:17.51 0
そして、そのフレイアとカイが武神を相手取ったのと時を同じくし、六角桔梗もまた滅びの軍勢の武神と対峙する。

「……胸部の大きな砲は、初期の火砲特化型でしょうか。……かつての武神を模したとは聞いていますが」

眼前に立つ黒と赤を纏う武神は、近代の武神には見られない特徴的な容姿をしていた。
具体的には、その武神は胸部に巨大な砲台を3つ装備しているのだ。
――――巨砲主義。武神と機龍が戦争の主力兵器となったばかりの頃に流行したその設計思想は、
貫通力と破壊力のある砲撃で、遠方から一方的に相手の武神及び機龍を殲滅するというものであり、一時期戦場を席巻した思想でもあった。

「……無線通信、応答無し……偽装ではなく、本物の滅びの軍勢の様ですね」

相手側に通信を試みて、返事が無い事を確認した桔梗は武骨なアレスの腕を動かして、両腕に持つ鉛色の槍を正面に構える。
巨砲主義の武神と対峙する時に気を付けるべきは、当然ながらその火力だ。
通常の武神の装備よりも遥かに大口径なその火器は、例え武神や機龍が相手でも損壊を与える。
この場に辿り着くまでに他の舞台にやられたのだろう。桔梗が対峙した時点で武神は既に左腕を喪失していたが、
彼らの場合メインの武器が砲撃である為、その程度の損害はあまり意味が無い。

そして、恐らくは槍を構えた桔梗の動きに反応したのだろう。赤黒の武神は先程までの牽制をかけていた内藤への警戒を
あっけなく解くと、桔梗へとその胸の砲を向け――――直後に、炸裂音が響いた。
1発、2発、3発。赤黒の武神は、高威力の実弾兵器を次々に桔梗へと向け放ったのだ。
もしも直撃していたのならば武神であろうと損壊させられる威力の砲撃は、高精度で桔梗へと向かい……


「……その戦法では今の時代の武神に勝つ事は困難です」


結果、1発として彼女に命中する事は無かった。
機械制御の射撃が外れた理由。一体この場で何が起きたのかといえば……何の事はない
赤黒の武神と桔梗の様子を、それとなく見ていた者達が気づく事が出来る程度の事

六角桔梗は、自身が両手に持つ槍の表面に砲弾を滑らせ、受け流したのだ。

……字面だけを見れば、何をと言いたくなる事だろう。
どれだけの達人であれ、飛来する銃弾を弾く事など無理な事である。
だが……少し考えてみて欲しい。武神と合一している搭乗者は、文字通り武神と一体になるのだ。
血流は電流に、筋肉は人口筋肉繊維に……そして

「……武神の搭乗者は、砲弾程度であればある程度視認できます。……だからこそ、火砲特化の機体は廃れました」

武神搭乗者の瞳は、機械制御の電子の目に。
その高精度の瞳は、銃弾であれ砲弾であれ、それらを動画のスロー再生の様に目視する事を可能とさせる。
つまり、武神搭乗者は、飛び道具を見てから防ぐ事が可能となるのだ。

この事こそが巨砲主義の武神や機龍が廃れた理由の一つ。
空を支配する機龍が、高高度から一方的に武神を屠れない理由の一端となっている。

126 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/01(土) 02:26:19.95 0
……最も、幾ら目視できるとは言え、今桔梗が行った様な『槍の上に砲弾を滑らせる』という行為は誰にでも出来る様な事ではない。
この技能は、この場に居ない天城宗一郎の母国である瑞穂皇国陸軍の操作マニュアルに、
あくまで『理論上は可能』として紹介されている技能の一つなのだから。

六角桔梗はマニュアル通りの技術しか持たない。だが、そのマニュアルとは、
彼女の母国が世界中の軍事施設から盗み出したものなのである

武神の製造能力に劣る桔梗の母国は、理論上のものから空想の産物まで、あらゆる手段であらゆるマニュアルを兵士達に叩き込んだ。
その結果生まれたのが、『亡霊』であり、六角桔梗という訳である。

「……終わらせます」

そして、砲撃の切れ目に、桔梗は彼の武神へ向けて走り出す。
灰色の武骨な武神は、その巨体を人口の筋力により加速させると、再度の砲撃を行おうとする赤黒の武神の懐に辿り着き――――
ズグリという鈍い音と共に、右の槍で相手の武神の首関節部分を突き刺し、そのまま横に引いて頭部を引きちぎり、
同時に逆の左手の槍で、腰の関節部分狙って突き刺し3分の2程を切り裂いた。

「……アレスの腕力では、動体を引きちぎるのは困難でしたか」

……本来、ここまでやれば武神というものは行動不能になるのだが、今回の相手は滅びの軍勢。
頭を飛ばされようと、腰を半分以上斬られようと、未だその侵攻は止まらない。
不安定な姿勢のまま、無理矢理立ち上がり、何とか砲撃を行おうとしている。
桔梗は、再度槍を構え迎撃の姿勢を取った。


【滅びの軍勢の武神の頭部を槍で引きちぎり、胴体を3分の2程度引きちぎるが、両断できなかった為倒し切れず】

127 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/08/05(水) 06:03:07.01 0
【罪と罰(W)】


"…………その自転車は、素材と費用と時間を犠牲にしてまで作る価値のあるものでしょうか?"


「―――くしゅんっ!」


ライオンヘッド型の特注ガスマスク内部で、間の抜けた異音が籠もる。
現在、ベンチレーターの不具合により危険地帯と化した塗装用ケージの片隅には、
斯かる状況解決の任を帯びて派遣された少数部隊―――防護服に身を包んだ二つの人影があった。

『どうしたというのだ、主よ。邪精の凶風に中てられでもしたか』

「……くしゅ? ここしばらく風邪などひいたこともなかったのだが」

両名の間で鎮座しているのは、無限輪転多段タービン・ポンプ・システム"ハムスター・ホイール参号"だ。
機動兵器の塗装作業が終了して当面の役目を終えた当機を、今度は換気装置に流用する算段だった。

「よもや、誰かが私の噂話でもしているのではあるまいな」

『戯言を―――少なくとも整備班にあっては、生身の女の噂話に現を抜かす者など居ない。
 十字架を背負いし白衣の機械天使に与えられた真名の話であれば、事情は変わるがな』

「ふむ。一理あるなっ! そうすると外部の者の仕業か?
 ……ええい、いったい誰なのだ、そんな不届き物は! けしからん!
 あやうく、昨夜おなかを出して寝ていたせいと、早とちりするところだったではないか」

『―――原因はそれだ、主よ』

「……?」

『いや、おかしなガスマスクを被ったまま首を傾げる所作はどうかと思う』

128 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/08/05(水) 06:14:40.49 0
【罪と罰(X)】


『灰き呪霧を吐き出せし蛇頭よ、その首―――俺が貰い受けた。
 ……っふ。続いて、穢れ淀みし伏魔殿の浄化儀式を執り行う』

ガスマスク二人組の片割れが、圧送式スプレーガンを取り外したタンクの洗浄を開始する。
これで被ったガスマスクがバフォメット型でさえなかったなら、単なる手際の良い整備員だ。

「ははーん。さては傭兵少年の仕業だな? まったく、傭兵少年はしょうがないな」

『先程の与太話の続きか? 呆れたものだ……他人の所為に"なる"まで引き摺る心算か、主よ』

「あいつはしょうがないやつだー、まったくー!」

『ククク……ならば大方、主がヤツの機体に施してやった表面塗装に物言いでも付けているのだろう』

圧送タンクに残留する特殊重金属塗料の洗浄作業は、順調に進んでいた。
固着状態の当該塗料は、急激な加熱時に流動性が飛躍的に増す特性を備えている。
固着していない状態では、熱湯を用いれば洗い流し易くなる程度だが、作業上の影響は無視出来ない。

「できれば……もっとファンシーなカラーリングで、戦場(いくさば)へと送り出してやりたかったな」

―――それ故に、機体への塗布作業は困難を極めた。
塗料の特性により、装甲表面への定着までには絶え間ない冷却が要求される。
加えて、ハムスター・ホイール参号はポンプの構造上、粘性が高い塗料の圧送処理に不向きだった。

『塗料など、神の姿を模した偽りの幻想を、さらなる欺瞞で塗り固める為の道具に過ぎんよ。
 仮初の衣重の鮮褪であれば上等も下等もあるまい……主らしからぬ不手際ではあるが』

「なにしろ時間も人手も足りなかったのだ。
 どこかの誰かが、つまらん窃盗などで独房入りしたから!
 本当なら非常用バッテリーの蓄電作業は、お前の仕事だったんだぞ? ヤス整備員」

『この俺が現世との隔絶の鎖筐から解き放たれるその刻を、座して待てぬ程の事情が在ったと?』

「それは、その。アレだ……なにかの拍子で基地が停電とかになったら困るではないか」

『……砲仙花と謳われた戦獅子も、所詮は人の子だったという訳だ。
 闇に対する根源的恐怖は克服できぬモノなのだろうな、獣も人も』

「私を侮るな! べ、べつに暗いのが怖いなどという意味で言ったのではない」

『……ほう? 俺の邪推だったか。これは非礼を詫びねばなるま――』

「暗いと一人でトイレに行けなくなってしまうので困るのだ」

『――いや、バリバリそういう意味ではないか』

「うるさい、うるさい、うるさい!
 もういいから、向こうで交換用バイザーの仕上げをしてこい。
 いいか、手抜かりなくやるのだぞ? 光学カメラは武神の生命線なのだからな!」

『ククク……御意。
 征くぞ、ハムスター・ホイール!
 世界の光彩を遍く束ねし水晶板の下へ俺を導け……!!』

129 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/08/05(水) 06:17:14.11 0
【罪と罰(Y)】


完全に私物化した変造自転車に搭乗(ライドオン)したバフォメットは旅立って行った。
そのまま黒ミサに降臨(ライドオン)しかねない後頭部へ小さな呟きが投げ掛けられる。

「そう言えば、うっかりポリッシャーのストックを切らしていたのだったな……。
 まー、足りない分は努力(そうい)と根性(くふう)で補えばいいだけだ。
 あいつなら、たぶん何とかならなくても何とかしてくれるだろう」


――――基地を旅立って行ったC隊の連中も、戦場に到着している頃合いだろうか。


「ヤス整備員に、ああ言いはしたが……あまり"眼"に頼り過ぎるなよ、少年?」

『フハ……フハハ……フハハハハハハ――…これ何か足りなくないか、主よー?』

「己の視界に映るモノだけを追いかけていては、いつか―――」

かつて砲仙花と呼ばれた天才狙撃手は、左眼の眼帯に親指を当てる。
もう標的の立体視が出来なくなった、左視野の暗闇を静視する時の癖だ。

「―――いつか、本当に大切なものを失ってしまう。あのときの私たちと同じようにな」



【キャラクター(HKC:背景キャラ)】

名前:"砲仙花"七香(ななか)
年齢:24
性別:♀
所属:皇国軍→抵抗軍
階級:中尉→一等技術士
外見:漆黒に藍色を一滴落とした端麗な長髪を簡素な革紐で一本結にしている
備考:捏造スピンアウト二次創作"鋼の巨人と絡繰の龍・異譚〜鬼哭鏡花〜"のサブヒロイン
   好きなものは花火と酒
   嫌いなものは暗闇と雨


【ユニット(すでに現存せず)】

名称:獅宮(しぐう)スナイパーカスタム
系統:旧世代型・高火力超長距離狙撃武神
性能:速度[5]/出力[9]/装甲[1]
武装:大口径高エネルギー照射狙撃砲"レーヴェテイン"
特殊:狙撃用高出力バッテリー
備考:第二次鬼神戦争終結間際まで現役で稼働していた旧型機、退役後に解体された
   黄道十二宮に対応した姉妹機と共に実戦投入されたが、現存する機体は少ない

   『レーヴェテイン』

   精密さよりも弾速と威力を以て敵機を蒸発させるコンセプトの射撃武装
   発射後に射線を左右に振れる程の長い照射時間および照射範囲を誇る

   『狙撃用高出力バッテリー』

   獅宮退役の際に唯一解体されず保存されていたカスタムパーツ
   後にアレックス=サウスウィンド中佐の手配で整備改修を受け
   試作型武神龍騎兵・改式"シュヴァリアー"の搭載武装となった

130 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/08/05(水) 06:23:13.86 0
【アサルト・コンビネーション(T)】


『――ゼァッ!』

『ううううううぅ……りゃあ!』

『ロックンロォーーーーール!!!』

「まだ動いてるヤツがいる……バックスの方に二機―――いや、こっちに一機来る!」


――――超高速の空戦領域で、遊撃の騎士が抜刀する。


カラーリングに採用されているのは光沢を抑えた重金属塗料。
重厚感に欠けたエアフォース・グレイが機体表面の大部分を覆う。
機体各所に散在する放熱部位とセンサー周辺には塗装が施されておらず、
FRAC複合装甲表層部材のアイボリー・ホワイトが剥き出しのままになっている。


『……胸部の大きな砲は、初期の火砲特化型でしょうか』

「向こうでも交戦状態に入ったのか!? ……ガンナータイプ! レシタール一等兵、捕捉は」

『破損敵機確認…排除します』

「おそらく、射程の差で俺たちが不利だ。一度後退してバックスの二機と合流しよう。
 こっちから注意が逸れてる間に再接近できれば、斬艦刀で真っ二つにしてやれる」

進路上に描かれる幾条もの無色の影線――敵機の掃射――そのほぼ全てを回避し、
あるいは重装甲で弾き返したワイバーンの損傷は極めて軽微。
シュヴァリアー側にも主要部位への直撃は無い。

『カイ准尉』

「どうした……くっ!」

ただし、APFSDSの被弾で左肩外装先端部位が"砕け散らされて"いた。
ラグナロク・フィールドが侵徹速度を減衰させた結果だった。
シュヴァリアーの鋭敏過ぎるリアクティヴシステムは、
ショルダーアーマーを即座にパージする。

『その剣を下段水平にして、右斜め下27度に構えていてください』

「……了解だ、ユー・ハブ・コントロール」

ワイバーン側から送信されたコンバットマニューバーを検証する。
蓄積しているモーションパターンの既存候補に該当動作と一致する項目は無い。
類似候補を検索/参照/選択、リアルタイムアレンジによって瞬時に新規構築/登録を完了させた。

131 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/08/05(水) 06:26:48.58 0
【アサルト・コンビネーション(U)】


機体前面を覆ったラグナロク・フィールドを流線形に展開/空気抵抗を減衰させる。
高空からの急降下/大気の震動。再度ターゲットが射撃体勢に移行するのを視認。

「……そう何度も撃たせるかよ!」

装甲を失った左肩を突き出す前傾姿勢で、両手持ちにした斬艦刀の長刃を後方に引き絞る。
インパクトの瞬間に於ける敵機との空間相対距離および高度を(D=0,H=0)と置けば、こうだ。

[H=+Dsin27°(0≦D)]…… H≒+0.454D

二次元平面グラフ上に水平距離D´軸を取り、機体の絶対座標をプロットすれば、
D´軸線上(H=0)を地表面と見立てた軌跡の視覚化が可能となる。
つまり、実際に機体が描くのは、ごく単純な―――

[H=+D´tan27°(0≦D´)]…… H≒+0.509D´≒+1/2D´

―――だが、重機龍としては無謀極まりない直線軌道だ。
機龍が翼剣を獲物に食い込ませ、推力(ちから)任せの急上昇をかける。
ワイバーンの急加速と同時に振り出された斬艦刀が、鋼と撃ち合い火花を散らす。

発生した衝撃が想定以上に"重い"―――

重装機と比較して構造強度の面で絶対的に劣るシュヴァリアーでは、
単位面積あたりの高負荷に対してアクチュエーターが耐え切れない。

「―――けど、こいつでなら!」

〓┣[RFCS for COMBAT]╂―[Ragnaroc-Field Beam Drive]―╂[IMMEDIATE ACTION]┫〓

当たり負けた刀身をRFBDの補助で切り返し、アッパー・スウィングで振り抜く。
龍の翼と騎士の剣が二重の軌跡を描いて黒鋼を裁断/敵影を虚空に散らした。

[H=-D´tan27°(D´≦0)]…… H≒-0.509D´≒-1/2D´

暗黒の爆発とでも表現すべき滅びの断末魔を背に受けながら、斬艦刀を正眼に構え直す。
一拍の残心を置いて、頭部バイザーの奥に輝く双碧を消灯させた騎士は、
翠緑の旋風と白龍を駆って再び天空の舞台へと翔け上がった。

132 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/08/05(水) 06:33:34.71 0
【ルイナス・レゾナンス(T)】


漠然とした歪みの様なモノを感じている己の意識を、少年は自覚していた。
システムインターフェイスにフィルタリングされたデジタル情報とは別種の知覚。
おそらくは、シュヴァリアーの内部骨格を形成するラグナロク・フレームの感覚そのものだ。
センサーを透過して入り込んで来る様な……その違和感が、少年を過剰な程センシティヴにさせている。

「教えてくれ、レシタール一等兵。君は、どうしてこんな無茶な戦い方を…」

『…真っ二つに出来ないなら、三つにした方が楽です』

「違う……! 俺が聞いてるのは、そんなことなんかじゃない!
 敵機なら何分割にでもしてやるさ……ああ、何機だって落としてやる」

"――――ユー・ハブ・コントロール、いいわね?"

「だけど、人の生命は違う……一つきりなんだ!
 フレイア=レシタールは、この世界に一人しか居ない。
 足手纏いの立場で言えた事じゃないかもしれないけど、俺は」

"――――これで貴方は自由の身になれるわ。また逢いましょう、カイ"

「もう俺は、これ以上パートナーを……」

頭が重い。脳裏にフラッシュバックする記憶が違和感を増幅させている。
薄く冷たいプレッシャーのヴェールに、全身の感覚が遮られている様な。
肌が、自身と一体化している装甲の繋ぎ目が熱く軋みを上げている様な。

「……ごめん。この話の続きは後だ、レシタール一等兵。
 さっきからシュヴァリアーが何かに反応―――いや、違う」

その輪郭は、ひどく朧気で何の確信も与えてくれない。
ただ、予感が囁くだけだ……"何か"が近づいている。


「――――共鳴、してるのか?」

133 :社長 ◆IgMoxdiK1Y :2015/08/07(金) 22:25:28.51 0
時は少し遡る。
リンネは桔梗と戦場までの自転車デートと洒落込むべく彼女に声をかけたのだが、
桔梗の反応はリンネが想像していたほど明るくなかった。
>「…………その自転車は、素材と費用と時間を犠牲にしてまで作る価値のあるものでしょうか?」
「もちろんさぁ!君もそう思うだろう!?・・・思ってない?」
リンネの声が、まるでこれから母に叱られる事をさとった子供のようにトークダウンする。
>「……リンネさん、ここは貴方の職場ではありません。
> ……貴方がその自転車に使った鉄板一枚が足りなかった為に、機関部を貫かれる武神や機龍が出る事も……あります」
「それは・・・そうかもしれないけどさぁ・・・だけど・・・う〜ん(´・ω・`)」
リンネはバツの悪そうな顔(あくまでイメージ)をした。
彼女の言うことはもっともで、それに反論する理由が思いつかなかったからだ。
>「……ただ、作ってしまった以上使わないのは逆に非効率、ですね」
だが、この言葉と共に自転車の後部座席に乗ったアレスを見て、リンネの心がぱっと明るくなる。
「そうだとも!武神の命は足だ!足を大事にすることは大事だ、そうだろう!
 君ならわかってくれると思っていたよ、ハッハッハー!」
リンネはテンプルにカチンとくるような高笑いと桔梗と共に出発した。

空を舞う機龍を上空に仰ぎ、徒歩で行軍する武神を追い抜きながら
二人の武神を乗せた自転車はところどころアスファルトの剥がれた道路を疾走する。
道中でリンネが桔梗に「こういう風に男の子とデートしたことはあったのかい?」
などといった世間話を一方的にしたが、反応は察して知るべしだろう。
牧場で臨時設営された基地に到着したリンネ達は、隊長の指示通り本部からの通信を待つことにした。
「アップル、さっきの賭けの話をログにまとめてくれ。要点だけでいいぞ」
リンネがアップルにそう指示すると、数十秒後リンネの耳にだけ先ほどまでしていた会話のログが再生される。
>「ズルいわーーーーッ!!」
そんなロジーの叫びが真っ先に再生された。

>「――――俺も一枚、噛ませてくれ。
> 個人的な事情があってさ、大金が必要なんだ。
> 俺が負けた時の条件は任せる。好きに決めてもらっていい」
「ああ、いいとも!・・・って誰だ君は?知らないぞ?ブリーフィングの時いたっけ?」
突如通信に介入してきたカイにリンネがそう尋ねると、横からアップルの説明が入った。
『チャーリー隊アーカイブス参照。彼の名前はカイ、RMF-EX07Cの搭乗者です』
「ああ、シュヴァリアーの。なるほど君だったのか。
 大金が欲しいか?ならそうだな、私は・・・」
『シュヴァリアーの接収を提案します』
リンネがカイに何をコールさせるか考えていると、またしても横からアップルの声が介入する。
『なぜならば、私はずっと弟か妹が欲しいと思っていました。
 よって、シュヴァリアーを私の弟にするのです』
「う〜ん?」
この時アップルの声はカイには聞こえていない。
よってカイからはリンネがただ長考しているようにしか聞こえなかったかもしれないが、
その裏ではアップルが『オトウトオトウトオトウトオトウト・・・』
と狂ったように連呼し始めたため、リンネはやむを得ず、手っ取り早く静寂を取り戻せる選択をした。
「君の乗っているその武神を貰おうか。シュヴァリアー・カスタム、興味深い武神だ。
 もちろん、それに見合う掛け金は保証するよ」
ちなみに、この時ロジーからカイも女子浴場に突撃させようという提案があったのだが、
その無線通信をアップルが妨害したのはここだけの秘密である。
>「……僕は遠慮しとこうかな。彼女の笑顔は僕も見てみたいけど……それはゲームのコインとしてじゃないんだ。
> あれはきっと、下手に触っていいものじゃない。別に彼女に失礼とか、そういう事を言うつもりも、ないけどさ」
「おっとぉ〜?つれないじゃないか内藤君。笑う門には福来たるって言葉は君達の専売特許だろう?」
賭けを辞退した内藤にリンネが未練がましくそう言ったが、
少なくともリンネの認識としては、彼が前言を撤回することはなかった。
無論、内藤の企みをリンネが知る由もない。

リンネがログを聴き終わった後間もなく、本部からの通信が入ってきた。
いよいよ作戦開始である。
出自も経歴も異なる戦士達が鬨の声を上げる中、
リンネもまた自分自身を奮い立たせるために声を張り上げた。
「地獄からの使者!リンネ=シーナッ!!」

134 :社長 ◆IgMoxdiK1Y :2015/08/07(金) 22:26:47.96 0
>「……胸部の大きな砲は、初期の火砲特化型でしょうか。……かつての武神を模したとは聞いていますが」
「ああ、その通りだな。まったくナンセンスだよ!武神に戦車の代わりをさせようなんて。
 武神とは本来どうあるべきかを私達で教育してやろうじゃないか」
桔梗と行動を共にするリンネは、間もなく彼女と共に滅びの軍勢の武神と遭遇した。
>「……無線通信、応答無し……偽装ではなく、本物の滅びの軍勢の様ですね」
「だったら遠慮はいらないな。
 私がグリントガールの機動力を活かして側面から回りこんで攻撃する。
 少し引きつけておいてくれ。ただし、無理はするなよ」
そう言ってリンネは自転車をこいで側面のビルの影へ向かう。
しばし、お互いの姿は見えない状態だ。

>「……終わらせます」
一人で敵の武神と対峙した桔梗は、砲弾を槍の上に滑らせて弾くという神業を披露し、
さらに一気に彼我の距離を詰めて敵武神の首を貫き、頭を引きちぎった。
彼女の槍はまだ足りぬとばかりに鮮やかに敵武神の胴を薙ぐ。
>「……アレスの腕力では、胴体を引きちぎるのは困難でしたか」
胴体をあともう3分の1裂けば倒せるという一方的な状況であるにもかかわらず、
油断することなく再び槍を構えるアレスに危なげなところは一切なかった。
まさに戦闘のプロである。
この様子であれば、次の瞬間にも敵武神の命運は尽きたことだろう。
あの男の介入さえなければ・・・

「待たせたな!!」
おそらく誰も待っていなかったであろうリンネを乗せたグリントガールが、
ビルの影から敵武神の側面に向かって、自転車を全速力で漕ぎながら迫った。
そして、ブッピガン!!という派手なSE(サウンドエフェクト)
と共に轢かれた敵武神が吹き飛び、アレスが与えた胴体の損傷部を起点にして二つに割れる。
間もなく敵武神は霧散し、この世から消滅した。
「ふぅ〜っ!危ないところだったな、桔梗君」
敵武神と激突した際にバランスを崩して横にコケていたリンネが、
起き上がりながら、決して危なくなどなかった桔梗に対して事も無げに言った。
「いや、礼には及ばないよ。当然の事をしたまでさ。
 だって私達は同じチームの仲間じゃないか。ハッハッハ!」

【滅びの軍勢の武神を自転車で轢き殺す】

135 :名無しになりきれ:2015/08/12(水) 19:30:12.44 0
「……まァこんなモンかァ」

索敵を継続しつつ戦果を確認
まずは内藤。武神でありながら容易く機龍の領域に踏み込み、一刀にて切り捨てた

「ありャデカいな、何より両断で消滅させたッてのがとンでもねェ」

軍勢を消滅させる為には体積を半分以下にする必要がある――いくら部位欠損があったとは言え、正確に二つに割るのは相当な技量が必要だ
まして、内藤は跳躍中で自由に身動きは取れなかったのだ
対機龍で最強というのも、成程頷ける話である

次にフレイア&カイの即席ペア
機龍と共に戦闘する武神と聞いて少々不安ではあったが、蓋を開ければ簡単な話で

「ありゃ人が乗った外部武装みたいなモンか。わかりやすいコンセプトではあるなァ」

三つに割る、という判断も高評価だ
なにせ大体同じように三つに割れば、確実に半分以下を狙えるのだから
まだまだ連携に拙さはあるが――

「あのガキンチョ、結構いい性格してるよなァ、確実に」

まぁなんとかなるだろうと判断
次は六角

「流石は『亡霊』か。アレがマニュアル通りとかふざけてんだろォ」

かつて相対した『亡霊』は機龍でアレをやっていた
その技量は、下手すると自分すらも凌ぐだろう
後は絶対的な攻撃力だが、

「開発部に資金ブチ込んでるから帰ったら武装積めばいいだけだなァ……武神はそのあたり楽でいィ」

問題はここからだな、と自己判断
社長はとりあえず、

「ふざけすぎててわっけ分からん。次だ次」

最後は――ロジー

「……あれはなァ。典型的な『訓練軍人』って感じだなァ」

要は実戦経験だ、それが明らかに足りていない
腕はいいのだが、その動きも戦術も『訓練通り』……つまりはその先がない

だから、倒せない。だから、見誤る

「訓練積むのは逆効果だなァ、いっそ落とされた方がキッカケになる気がするが」

機龍によってある程度は思考が高速化されているのをいいことに総評を纏め、改めて前を――

136 :名無しになりきれ:2015/08/12(水) 19:30:59.22 0
『C1、C1!こちらA1!』

いきなり飛び込んできた圧縮通信に緊急事態と判断、即座に共有設定にし通信に出る

「こちらC1、トラブルか大佐ァ」
『その通りだ――見えるか!?』

声に従い、ビルの隙間から前方を伺うと――
――見えたのは、金色の輪と、巨大な武神の顔。そして空に放たれた幾条ものレーザー

「――見えたァ!サイズと武装は!?」
『8m級、武装は拡散/集束レーザー砲、重力障壁と重力操作式の浮遊、それから散弾砲だ!』
『比較的広い道路と接続してる、二方向からの敵とデカブツのせいで動けん!至急応援を求む!』
「了解、すぐ向かう!over!」

通信の間も慌ただしく準備を進め、全加速器と武装に改めて火を入れ

「聞こえたな野郎共!デカブツの処理と道路の封鎖を実行すンぞ!」

重力障壁、というのが厄介だ
これを抜くには薄い部分を見極めて突破するか、光学・エネルギー系の武装を使うかだが

「――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!」
「ロジー、フレイア、カイは接続してる道路側の封鎖!」
「――行くぞ!」

武神なら障壁に当たっても対処が容易だが、機龍であれば対応は困難
ロジーは勿論、フレイアもその経験はないだろう
そこまでを判断し指示を出す
余程A隊の方に集まっているのか、前方には殆ど敵影がない
空白地を一気に駆け抜け、大きく蛇行する道を抜けると――見えた

137 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/08/12(水) 19:32:02.44 0
『それ』は、光の輪と翼を持っていた
周囲の塵ごと重力制御で3m程身を浮かべ、光の輪から展開する『障壁』でA隊の攻撃を弾く
一度大きく身を揺らすと同時、障壁が左右に散り、構えた散弾砲が前方のビルを揺らす
横からの道路が合流する三叉路で、獲物に襲い掛かる姿はさながら聖罰を与える天使の如く
その、いっそ神々しいとすら言える黒い天使に、真っ直ぐに斬り込む蒼の機龍
直前で強烈なスピンと上方向へのジャンプを入れ、障壁を――切り裂く
両の手に展開した光剣は滑らかに切り込み、右手側の障壁を散らす
そこで――天使が、見た
一瞬で身を回し、左手の散弾砲を向けるが、敢えてそちら側に切り込む事でタイミングをズラす
相手を見失った散弾が、近くのビルにぶち当たりそれを崩す

「――かかってこいよ、クソッタレ」

外部スピーカーをオンにして、天使に呼び掛ける
無論、滅びの軍勢に声かけなど意味をなさない
だが――確かに、天使型がそちらへと構え直す

戦闘、開始

138 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/08/12(水) 19:32:50.93 0
一方、道の封鎖を命じられたメンバーにも試練が待ち構えていた
肩に大型の砲を二門構え、またその口にもエネルギー光を称えた、黒の機龍
明らかに分厚い装甲を持つその機龍が、地を蹴りアスファルトを削って一直線に飛び込んでくる
――生半可な障壁では、とても止まりそうにない
この道を封鎖する事は、この機龍を止めなければ、果たせないだろう

139 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/08/16(日) 03:43:58.64 0
>「悪いがナイトー、そのセンはなしだ。てめーの計画にはどうにもロッカクに対する敬意が欠けてやがる。
 なんつーのかな、うまく言葉にできねえけど、そういう人の心を手玉にとるみてーなのはおれは嫌いだ。
 陰気くせーったらありゃしねえよ、西洋人にゃ合わねえな」

「……おいおい、人聞きが悪いな。僕はただ、彼女とどうしても仲良くしたいだけだよ。
 でも……確かに君の言う通りだ。このやり方は控えるよ」

ロジーが自分の助力を蹴った時、内藤の答えはそうだった。
そして今、残る敵武神への牽制を行いつつ、内藤は考える。

(……それにしてもまさか、断られちゃうとはなぁ。うーん……よし!仕方ない!盛大にマッチポンプしよう!
 控えるって言ったけど、ありゃ嘘だ!だってどう考えてもこっちの方が効率的だし)

内藤の思考はまるで揺らいでいなかった。

(ま、ロジーの前では控えるよ。これなら別に嘘じゃない。それに……彼は人を一から十まで嫌いになれない奴だ)

ロジーが内藤の人間性を感じ取ったように、内藤もまた、ロジーの人間性を見透かしつつあった。
彼は甘い、と。例え相手が自分の見下している武神乗りであろうと、無駄話には乗るし、その尊厳を無視し切れない。
別にその事を馬鹿にするつもりはない。むしろ内藤自身もそういう人間の方が好きになれる。

だが、それはそれとして、ロジーがそんな甘さを抱えているのなら、それを利用しない手はない。
彼の言葉を無視してまずは六角の地雷を探り、踏み抜き、その事が知られなければそれでよし。
もし知られても「慎重に探りを入れるつもりだったんだけど失敗だった」と自分から非を認めればいい。

非難に対して先手を取るのだ。
彼は甘いからきっとそれだけで自分を責め切れなくなる。と、内藤は踏んでいた。
結果的に六角に探りを入れられた分がプラスとして残る。その方が、効率的だ。

(……既に、ヒントは存在してるんだぜ。気付いてるかい?ロジー)

>……任務中に背中を撃たれてしまうと、他の方の迷惑になりますので」

敵武神の砲撃に対して六角が見せた絶技に目を見張りつつ、内藤は思考を止めない。
今日この時に至るまでに聞いた、彼女が述べた僅かな言葉を思い出す。
まるで「戦場でなければ背中を撃たれても、誰の迷惑にもならない」と言った口ぶり。

(つまり……彼女は、兵士としての自分に強い価値を見出している。
 そして反面……個人としての自分に、まるで価値を感じられていない……ように見える)

ニッポン人は怠惰を好む。
彼らにとっての怠惰とは、ただ怠ける事ではない。
心地よい状態が努力を伴わずに維持され続けるという、一種の概念、心のありようなのだ。

(防衛機制だ。個の無価値を、付加価値で補う……保障、かな?)

故にニッポンの兵士は皆、高度な対戦闘ストレス教育を施される。
戦場の恐怖を、殺人への抵抗を、論理的に分解して、噛み砕いてしまえるように。

>「……リンネさん、ここは貴方の職場ではありません。
 ……貴方がその自転車に使った鉄板一枚が足りなかった為に、機関部を貫かれる武神や機龍が出る事も……あります」

(……まずは、そこら辺を突っついて、確かめてみるかな。どうも完全には、徹し切れてないようにも見えるし。
 と言うより……ここに来ている時点で、破綻してるよね、彼女の「機械」ごっこは)

140 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/08/16(日) 03:44:39.99 0
 


>「あっ」

「あちゃー」

>「そーだった、弱点とかないんだった連中には!やべえ!!」

「いやぁ、でもまぁいい狙いしてたじゃん。ドンマイドンマイ。
 ただの戦争なら今のでスコア1だ。やっぱ大したもんだよ、君」

戦闘開始から早々やらかしたロジーに、内藤は朗らかにそうフォローする。
同時に視線は彼が逃した武神を追う。そして槍を構え、重心を落とす。
が、彼が地を蹴る前に、その視界に上空から銀閃が滑り込んだ。
フレイアとカイによる急降下攻撃だ。

「わお」

瞬く間に敵武神を三等分して上空へと帰っていった二人に、内藤は感嘆の声を零した。
その機動自体は珍しくも難しくもない。
だが装甲の分厚い重武神でのそれは、難易度が一気に跳ね上がる。
機体上部に武神を乗せた状態であれば尚更だろう。

「今のも凄いね。刃筋、上手く立ってないように見えたけど……今のどうやって立て直したんだい?」

独房入りしていたという前情報と胡乱な発言の数々からカイにはやや敬遠気味だった内藤だが、
そんな事は最早すっかり忘れて話しかける。彼とも仲良くしたいと思えたからだ。

また、先ほど六角もまた凄まじい技巧を見せていたが、内藤はそちらには特に言葉を投げなかった。
より良い「機会」があると判断したからだ。

>「いや、礼には及ばないよ。当然の事をしたまでさ。
  だって私達は同じチームの仲間じゃないか。ハッハッハ!」

「……駄目だよ社長、そのやり方じゃ」

そして内藤は、無線には乗らない呟きを零した。

141 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/08/16(日) 03:46:05.12 0
 


>「こちらC1、トラブルか大佐ァ」
>『その通りだ――見えるか!?』

A隊が残した敵機を全滅させ、しかし息をつく暇はない。
隊長によってA隊からの通信が共有され、だがそれを聞くまでもなく、状況は理解出来た。
武神の聴覚が捉える一層激しい交戦音と、そちらの上空に閃く光条。
「ヤバい」奴がいるのだと、分からない方がどうかしている。

>「――見えたァ!サイズと武装は!?」
>『8m級、武装は拡散/集束レーザー砲、重力障壁と重力操作式の浮遊、それから散弾砲だ!』
>『比較的広い道路と接続してる、二方向からの敵とデカブツのせいで動けん!至急応援を求む!』
>「了解、すぐ向かう!over!」

上空の光線を見た時点で分かっていた事だが、レーザーは厄介だと内藤は思考する。
いくら竜夜が速くとも、武神の感覚が弾丸さえも見切れようとも、光には遠く及ばない。
加えて、最低限の対エネルギーコーティングくらいは施されているが、竜夜の装甲は限りなく薄い。
真っ向から挑んでは、勝ち目はない。犬死にだ。それは内藤の思う「カッコいい」とはかけ離れている。

>「聞こえたな野郎共!デカブツの処理と道路の封鎖を実行すンぞ!」
 「――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!」
 「――行くぞ!」

「まっ、なんとかなるか。任せといて下さいよ」

しかし軽い口調でそう答えると、内藤は移動を始めた。
移動に際しての後方への警戒をする素振りを見せて、リンネと六角よりもやや遅れて。





そして天使型武神との交戦が始まり、内藤は緩やかな歩調で二人の後を追う。

「やぁ、さっきのアレ、凄かったね。……アレだよ、砲弾逸らした奴。
 マニュアル通りってのはああいう事だったのか。凄いね。ホント凄い技量だ」

同時に内藤は、いつも通りの口調で六角へと声をかけた。

「……それほどの腕前なら、確かにその機体でも竜夜を仕留める事が出来ただろうね」

通信を「囁き」に切り替えてそう続けた内藤の声色には、僅かな変化も生じていない。

「ただの噂話だと思ってたけど、そうじゃなかったらしい。
 彼は……猫田義高は、確かに君達『亡霊』に殺されたんだな」

内藤は一度、歩みを止める。

「戦場でお喋りをふっかけるのは、ニッポンの風習……って訳じゃないんだけどね。まぁ少し、長い話を聞いておくれよ」

斧槍の矛先は、天使型武神と、六角を同時に捉えていた。

142 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/08/16(日) 03:48:06.29 0
「……彼には恋人がいたんだ。いつも自慢げに話していたよ。写真を見せびらかしてくる事もあった。
 彼と特別仲が良かった訳じゃない。でも……猫田が死んだと聞いた時は、そんなの間違ってると思ったよ。
 彼は、どうしても死ななきゃいけない人間じゃなかった筈だ」

武神の中の彼の笑顔も、仮面のように健在だ。

「……猫田の恋人は、彼を忘れられるんだろうか。どう転んでも……もう彼女の人生は元通りにはならない。
 壊れてしまった。そう思うと……彼の事を思い出す度に、嫌な気分になる。
 彼の事を、思い出したくなくなるんだ。そんな事、思いたくないのに」

別に、と言葉を繋ぐ。

「君を責めるつもりはないよ。戦争だからね。ただ……僕は、理由が欲しいんだ。
 彼が何の為に殺されたのか、知りたい。彼の死が、ただの不運だったなんて、認めたくないんだよ」

それは心にもない言葉だった。

戦場での死に意味などなく、ただの不運でしかない。
たまたまそこに居合わせたから殺し、殺された。他の誰かがそこにいた可能性だってあった。
だから、戦争の中の殺人はただの偶然の産物なのだ。

ニッポンの兵士は実戦に投入される前に必ずそういった教育を受ける。
戦争によるストレスによって兵士の精神状態が悪化する事を防ぐ為だ。
もっとも完全にはそれを受け入れ切れない者もいるが、内藤はむしろその逆だった。

殺人の一つ一つに意味や正当性を求めていたら、苦痛と恐怖で精神が持たない。
だから、そんなものは全て偶然の産物という事にした方がいい。
まさしくその通りだと、内藤は感じた。

そしてだからこそ、彼は殺人の理由を六角に求めた。
彼女から任務を果たした「軍人」ではなく、人を殺した「彼女自身」としての心を引き出す為に。

六角桔梗がどれほど機械めいた振る舞いをしようとも、一つだけ確かな事がある。
彼女はここにいる。彼女は、ここに来た。
滅んだ国の命令を受ける事なく、抵抗軍に合流したのだ。
そこには確かに「人間」としての意思があった筈だ。
内藤は彼女を笑わせて、仲良くなりたいならまず、それを抉り出すべきだと感じた。

「君は何の為に、今まで人を殺してきたんだ?」

143 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/08/16(日) 03:49:03.76 0
 


問いと同時に地を蹴り、内藤は二人の前へと躍り出た。
そのまま天使型武神めがけ、一直線に駆ける。

敵機が散弾砲を構えた。
その砲口が内藤を捉え、轟く。
暴風の如く放たれた散弾は、しかし内藤には当たらない。
ただその影と、地面を抉るのみに終わった。

「おっと、どうしたんだい。新兵だってもうちょっとまともに狙いをつけるよ」

敵機が外した、のではない。
内藤が避けたのだ。
敵機の腕の動きを凝視し、その照準が自分に合った瞬間に姿勢を落とし、一際強く地面を蹴った。
上方から打ち下ろす散弾の軌道は必然、内藤の背後に降り注ぐ。

天使型武神が次弾を放つ。内藤の対処は、先ほどと殆ど変わらない。
自分に照準が合わせられるのを目視してから、右前方へ跳躍。
致死の破壊力が己の真横を貫いていくのを気にも留めず前進。

滅びの軍勢の戦術は「定石」に傾倒している。
彼らは「呼吸」や「駆け引き」を理解出来ない。
狙いを定めたら、次の選択肢は機械的に「撃つ」のみ。
例え相手が受け流しや回避を行える、万全の状態であってもだ。
だから容易く先読み出来る。だから当てられない。

しかし、それでも、滅びの軍勢は強い。

内藤は更に一歩踏み込んで、再び砲撃音。
だが読めている。今度は左前方へと身を躱し、しかし咄嗟に足を止めた。
すぐさま一歩飛び退く。一瞬前にいた場所を散弾の雨が打ち砕いた。
砲撃は尚も止まらない。回避を余儀なくされ、二歩、三歩と、一度は詰めた距離が開く。

「……まるで機関銃みたいに打ってくるなぁ。こりゃ辛いぞ」

「駆け引き」など必要ないほどの圧倒的火力が、滅びの軍勢にはある。
小刻みに稼いだ距離など一瞬で無に帰して、仕切り直せてしまうほどの火力が。
それを遺憾なく発揮するのも、また「定石」だった。

「……仕方ないな」

内藤は再び膝を屈め、重心を落とし、天使型武神を見据えた。

「見せてやるぜ、『ドラゴンフライ』」

瞬間、内藤が、竜夜が跳んだ。

疾風の如く鋭い踏み込みで前へ。
砲撃がそれを迎え撃つ。すかさず跳躍。
跳ぶ先は、側方のビル。その壁面。

壁に指を食い込ませ、体勢を保持。
それを撃ち落とさんと天使型武神の散弾砲が彼を睨み、吼えた。
指を離す。自由落下によって狙いを外す。

壁面を蹴り、対面のビルへ飛び付きつつ前進。
空中へ飛び出した内藤を、散弾砲の照準が捉える。
背部スラスタを噴射し機体を加速、乱回転させ、散弾を回避。

144 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/08/16(日) 03:50:41.81 0
「よっし、記録更新!」

先ほど撤退を強いられた地点を越え、内藤は嬉々と叫ぶ。
そして更に跳躍、跳躍、跳躍。
蜻蛉が縦横無尽に空を駆けるように、散弾を回避し続けながら敵機との距離を詰めていく。

「ほらほら、どうしたんだい!もう僕の間合いに入っちゃう……ぜ!」

隊長は重力障壁を破っていながら、もう一手、トドメを刺す事が出来なかった。
機竜では敵機の付近に陣取って攻撃し続ける事が困難だからだ。

だが内藤なら、武神ならば話は別だ。
障壁を突破して、そのまま追撃を加えられる。
敵の兵装である散弾砲も間合いの内側ならば意味を成さない。

次の跳躍で一息に距離を詰め、速度任せに障壁を切り裂く。
そのままの勢いで懐に飛び込み、叩き斬る。
難しい事は何もない。
内藤は壁面にしがみついた状態で脚部に力を込め、しかし踏み留まった。

天使型武神が構えているのは、散弾砲ではなかった。
内藤に向けられているのは無手の右腕。
その腕の周囲に、空間の歪みが、重力障壁が収束しつつあった。

瞬時に、直感的に理解出来た。
敵機はレーザー砲を使おうとしているのだと。

内藤は全力で壁を蹴り、後方へ跳んだ。
同時にその勢いを利用して斧槍を振り回し、鈎刃を手近なビルの角に引っ掛ける。
そこを支点に弧を描くようにして敵機の射線から逃げ延びた。

直後、眩い光が内藤の一瞬前にいた場所を、壁面もろとも抉り飛ばした。

「うーっわ!今のはヤバかった!リューキューの時よりヤバかった!死ぬかと思った!」

悲鳴紛いの叫び声を上げ、内藤は感覚的に深呼吸をする。
それから再度ビルの壁を蹴り、昇り、屋上に立った。

「どうやら……あのレーザーを使う時は、障壁が完全になくなるみたいだね。
 散弾砲も、発射の瞬間には障壁に穴が空いてる。
 ……うーん、やってやれない事はなさそう、かな?」

無線でそう言いながら、屋上の縁から天使型武神を見下ろす。

「やぁ、僕はここにいるぜ。君がちょっとでも油断したら、今度こそ真っ二つにしてやるよ」

端的に言って、それはただの強がりだった。
レーザーによる迎撃を掻い潜り障壁を切り裂く術を、内藤はまだ閃けていない。

だが、そんな事も滅びの軍勢には分からない。
彼らはただ全てに対応しようとするだけだ。
だからこそ内藤は屋上を取ったのだ。

敵機に、常に自分を撃ち落とせる状態を保とうとさせる為に。
少なくとも、敵の火力を多少は加減させる事が出来るだろうと期待して。


【機械みたいな反応ばっかだけど、中にちゃんと人がいるんだろ?よし、確かめる為に刺してみよう!
 特攻かましてみたけどやっぱ無理そう。とりあえずデコイやろう。
 あと中の人情報の回収】

145 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/22(土) 23:06:41.09 0
桔梗が赤黒の武神の胴を穿たんと再度槍を構えたその時、『奴』はやって来た
鋼鉄の擦過音と、タービンの唸り声。
その巨体は風を突き破り、走り抜ける姿は弾丸列車の如く

>「待たせたな!!」

滅びの軍勢、人類の敵たる赤黒の武神。
六角桔梗が滅ぼし損ねた武神に、真っ直ぐぶち当たり――――粉砕しながら、そいつはやってきた。


社長(リンネ)が自転車(チャリ)でやって来た


>「ふぅ〜っ!危ないところだったな、桔梗君」
>「いや、礼には及ばないよ。当然の事をしたまでさ。
>だって私達は同じチームの仲間じゃないか。ハッハッハ!」

「…………ありがとうございます……ですが、武装は大事にしてください。
 ……先程も言いましたが、その輸送機器の開発費は貴方の資金ではない筈です」

鉄面皮の桔梗もリンネの登場方法に少々驚いたのか、常よりも若干長い間を作りながらそれでも淡々と返事を返す。
そして、そのまま視線をとある一点に向けると、内心で目を細めた。
彼女の視線の先にあるのは、先程リンネが赤黒の武神への突撃に使用した自転車。
フレームが派手に歪み、所々スパークを迸らせているその残骸であった。
桔梗が今は無き祖国で従軍していた頃は、兵装の使い捨ては懲罰の対象であったので、リンネの豪快な消費に何か思う所があったのだろう。

「……はぁ」

だが、その思いが言葉にされる事は無い。小さな嘆息一つ。
それだけで再度前を向き、桔梗はリンネの複数の意味で凄絶なエントリーを受け流してしまった。


・・・

第一の関門を踏破しつつ進軍は続く。
大地を踏み鳴らし、空を裂き。人類の軍隊は滅びの軍勢の中枢へと踏み込んでいく。

そして

>『8m級、武装は拡散/集束レーザー砲、重力障壁と重力操作式の浮遊、それから散弾砲だ!』
>『比較的広い道路と接続してる、二方向からの敵とデカブツのせいで動けん!至急応援を求む!』

共有の無線から響く声に合わせて前方へと視線を向ければ、そこには強大な武神が君臨していた。
特徴的なのは、燦然と輝く光の輪と、羽。
武神であるにも係わらずその身を中空へと浮かべるその姿は、どこかの国の天の御使いの如く。
神々しさすら感じるその武神は、先行していた部隊の攻撃を障壁で遮断しながら、砲弾でビルを穿つ。

「……あの外装は、戦意高揚目的でしょうか」

ポツリと呟く桔梗だが、余程武神開発に詳しい人物でもない限りその問いには誰も答える事は出来ないであろう。

>「――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!」
>「ロジー、フレイア、カイは接続してる道路側の封鎖!」
>「――行くぞ!」

「……了解しました。」

やがて、アレックスの声と突貫を皮切りにして作戦が始まった。
桔梗も淡々と応答を返し、武神アレスの歩を進めていく。

146 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/22(土) 23:07:10.35 0
そして――――それは、その移動の最中の事であった。

>「やぁ、さっきのアレ、凄かったね。……アレだよ、砲弾逸らした奴。
>マニュアル通りってのはああいう事だったのか。凄いね。ホント凄い技量だ」

「……そうですか」

内藤=ハイウィンド=隆輝。
桔梗と同じく眼前の敵を撃破する任務を負ったニッポン国の軍人が、不意に桔梗への通信を行ってきた。
滅びの軍勢との激突の前に行われたその通信に、いぶかしげに返答を行う桔梗であったが

>「ただの噂話だと思ってたけど、そうじゃなかったらしい。
> 彼は……猫田義高は、確かに君達『亡霊』に殺されたんだな」

「……!」

次いで放たれた内藤の発言。その内容に、息をのみ硬直した。
精密機械の様に無感情で無感動であった桔梗に見えるものは――――確かな、動揺。
桔梗の内心を知る事も無く、内藤は語る。まるで日常会話でも行う様な柔らかさで、彼の同僚だったという男の死についての話を。
恋人を残したまま『亡霊』に殺されてしまったという彼の国の兵士の物語を語る。

>「君を責めるつもりはないよ。戦争だからね。ただ……僕は、理由が欲しいんだ。
>彼が何の為に殺されたのか、知りたい。彼の死が、ただの不運だったなんて、認めたくないんだよ」

失われてしまった命の話を経て、最後に内藤は理由を求めた。
六角桔梗という『亡霊』に、内藤は問いかける。
人間の心、その傷口に指を刺しこむ様な問いかけを、薄ら寒い程の笑顔で彼は問いかける。

>「君は何の為に、今まで人を殺してきたんだ?」

「…………私、は」

通信回線に響く桔梗の声。常の通り淡々とした物であったが、そこには珍しく含まれていた。
今の今まで顔色一つ変える事の無かった、六角桔梗の感情が。
そして、その感情は怒りでもなければ悲しみでもない。

「……何の為でもない……何も考えずに殺しましたよ。……貴方の国の人間も、他の国の人間も」

諦観と悔恨。
呟く様に小さな桔梗の声には、僅かではあるが確かにそれが滲みだしていた。

「…………以降、戦闘中の私的な通信は自重してください」

桔梗は内藤の内心など知る由も無いが、それ以上語るべき言葉は無い。或いは語りたく無いとでもいう様に、通信を一方的に切る。
そして、とうとう近づいてきた天使型武神と対峙する。
今しがた呼び起こされた澱の様な感情を抱えたままに。

147 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/22(土) 23:07:37.91 0
――――敵対する天使型武神の性能は圧倒的であった。
無尽蔵に実弾兵器をばらまき、レーザー兵器という超火力と重力障壁という高性能の防御さえも有する。
更には戦闘による精神的な疲弊すら無く、定石と言うある意味最も嫌らしい戦術を繰り出す。
それは、アレックスの高速戦や、今まさに桔梗の眼前で繰り広げられた内藤の曲芸じみた空中戦闘でさえも攻め切る事が出来ない程の猛攻。

……だが、古来より多勢に無勢と言う様に、攻めきれはしなくともこれだけの連撃を受ければ隙は生まれる。
そして、武神が戦闘に用いる数多のマニュアル――――定石を武器とする桔梗が、その隙を逃す筈も無い。
天使型武神が内藤とアレックスの二名と対峙しているこの瞬間、

その場から六角桔梗が消えていた事に気付いた者は一体何人居た事であろうか、

>「やぁ、僕はここにいるぜ。君がちょっとでも油断したら、今度こそ真っ二つにしてやるよ」

「……」

そして、内藤が天使型武神に挑発の言葉を放ったのと同時に、その背後から桔梗は姿を現した。
静かに……敵武神の放ったレーザーによって舞い上がった土煙の中から、まるで亡霊の様に。

桔梗が姿を消していた原理は、極めて単純である。
アレックスが第一射目の散弾……ビルを揺らす程の威力を持つそれを回避したその時、
桔梗は躊躇う事無く崩れ落ちる瓦礫の下方へと向け移動し、そのまま瓦礫が巻き起こす粉塵に紛れたのだ
そして、その後は戦闘により舞い上がる粉塵の中を移動し、或いは自分で撒き上げた粉塵の中に紛れ、その身を潜め続けたのである。

それを可能としたのは、武神アレスの風景に紛れる武骨な鉄色の塗装と、
素人が適当な整備をしただけでも動くと言われる、量産型武神であるが故の汎用性。
何より、六角桔梗自身が持つ泥臭いゲリラ戦における基本技能であった。

其れらを用いて、桔梗は天使型武神が隙を見せるその時を狙い虎視眈々と潜み続けていたのである。

「……障壁頼り、非実態型であるなら」

天使型武神は、A隊の攻撃を弾いているにも関わらず先程のアレックスの攻撃に障壁を切り裂かれた。
つまりは、一定以上の威力の攻撃であれば障壁は突き抜けられる……万能ではないという事である

「……『ランスチャージ』」

呟いた桔梗は跳躍し、槍を握る右腕に力を込めると、愚直にも真っ直ぐにその槍を障壁へ向けて『突き刺した』。
穂先と障壁との間で閃光が迸る。科学により生み出された障壁と、原始的な質量兵器による刺突。

その結果は――――桔梗の槍が直線の軌道を描き、障壁を突き抜ける事で示された。

桔梗が呟いたランスチャージ。
これは、武神の戦闘技術の一つであるが……別段大した技術ではない。
目標物に対し、極力槍の芯をずらす事無く、線では無く点でぶつける事で貫通力を上昇させるという、
要は武術の型に値する技能だ。最も――――桔梗の其れは、生身の練達者が行う其れと比肩して遜色ないものではあるが。

そうして、桔梗の槍はそのまま進み、天使型武神の武神の装甲を貫くかと思われたが

148 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/08/22(土) 23:08:17.24 0
「……っ!?」

そこで、天使型武神が振り向き桔梗を視界に捕えた。
その瞬間、危険を感じ取った桔梗は獣じみた反射神経で自身が突き刺していた槍から手を放し、
そのまま重力に任せて粉塵の中へ再度身を潜める。

その直後――――天使型武神が放ったレーザーが、アレスの左腕を焼いた。

「……く、あっ!」

苦悶の声を漏らす桔梗であるが……それでも損害は軽微、腕が焼き切れる様な事は無かった。
それは、砂煙の中に隠れた事でレーザーが拡散してしまい『狙い通り』に威力が減衰した故。
最も……普段の桔梗であれば左腕にレーザーを喰らう事はなかったのであろうが、何の影響かどうやら桔梗は常より動きが鈍くなっている様だ。

粉塵に塗れ再度距離を取りながら桔梗は通信回線を開く

「……あの武神は、反射速度と火力……何より、地上3mの距離が厄介です。
 ……現状では、距離と障壁に阻まれて私の槍は届きません……リンネさん、思いつく対抗策は有りませんか」

現状を打開する為に桔梗が問いかけた相手はリンネ。
武神の開発会社である彼であれば、欠陥や構造上の弱点、或いは攻略の切欠となる何かを知り得るのではないかと考えての問いかけであった。

【内藤の問いに動揺。背後からの急襲に失敗】

149 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/08/23(日) 22:59:19.18 0
>「破損敵機確認…排除します」

ロジーの撃ち漏らした滅びの武神が駆け抜けるその先に、騎竜とそれを駆る武神の姿があった。
フレイア=レシタールと独房帰りのカイだ。
彼女たちは地面すれすれの低空飛行で敵の武神を迎え撃つ。

『……って、低空すぎじゃね!?』

地面すれすれというのは比喩的意味ではなく本当に下部パーツが瓦礫を掠らんとしているほどなのだ!
如何に旋回能力に優れようとも、ちょっとした起伏に引っかかって横転しかねない挙動は尋常のものではない。
ましてやフレイアの操る"ワイバーン"は装甲特化の重機竜、しかも上に武神を載せている!高度の調整すら容易くはいかない!!
多少の凸凹は粉砕できても、例えば半ばから折れたビルの基礎にぶつかろうものなら大惨事だ。
そしてそうなる可能性は、市街地であるこの戦場において見た目以上に高確率。

「それに高度がねえと武神以上にただの的だぜ!?」

案の定、敵武神は対空銃撃を引っ張り出す。
ロジーの時のような対武神用の豆鉄砲ではなく、本物の対空砲火だ。
対して地を這う騎竜など、三次元機動の優位性を捨てているようなものだ。
空をとぶために極力軽量に造られた装甲は、重力による減衰のない平地砲撃に耐え切れるだろうか!?

敵武神の砲がブーッと冗談みたいな音をたてて火を吹いた。
ワイバーンはそれを急上昇で回避した。

「重機竜(コブ付き)でどうやってあんな上昇を!?」

ロジーが望遠カメラでワイバーン達の戦域を確認する。
足元の地面に、砲火とは異なる砕きの跡があった。
つまりそれは、単純明快な――

「地面を蹴っただとぉッ!」

内藤は武神で宙を蹴り、敵の砲火を回避した。
そしてフレイアは、騎竜で地面を蹴り自機の機動を強引に変えたのだ。
常軌を逸したむちゃくちゃなマニューバ、一歩間違えれば躓いて転んで味方の武神ごとオシャカ様。
文字面では大したことないように思えるその機動は、騎竜乗りからすれば冷や汗しか出ない曲芸テクニックだ。
それこそ人間離れした反射神経か、自機の損害を顧みない捨て身の精神が必要だ。
彼女はどっちだろうか。

「この為の低空飛行か……!」

フレイア=レシタール。
今は亡き国から来た、対地戦術のオーソリティ――!

150 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/08/23(日) 23:00:03.58 0
そして低空高度を保ったまま敵機と交錯!ワイバーンの翼剣が滅びの武神に喰らいつく。
それまでお飾りと化していたライドオン武神、"シュヴァリアー"の斬艦刀が同時に敵機を捉えた。
都合2つに並んだ斬撃は、すなわち敵を三枚おろしにして確実な消滅を狙うもの。
だが、重機竜であるワイバーンに対し、騎乗できるほど軽量な武神であるシュヴァリアーとではバランスがとれていない。
このままではシュヴァリアーの刃が通らず引っかかって失速してしまう。
騎竜にとって速度を失うことはそれすなわち――死だ。
速度がなければ飛べないからである。

「やべえ、援護間に合うか――?」

ロジーが背後から砲撃でもぶち当てて援護しようと操縦桿をぶん回す。
しかし間に合うはずもない。ヒューガの旋回能力では引き返すのにこの街を半周してしまう。
南無三、ロジーは目をつぶりそうになり――実際目をつぶる羽目になった。
彼の目には、シュヴァリアーの刃が一瞬『光を放った』ように見えたからだ。
そして次の瞬間、滅びの武神は予定通り三枚におろされて黒の霧へと分解された。

「なんだ今の……」

敵機を横断したふた振りの刃にはいずれも刃こぼれひとつ無く、その切れ味を冴え渡らせている。
加速度で強引に引きちぎったのではなく、紛れなく刃で『斬った』のだ。

『おいおいおい、今のどうやったんだ!?亡国オモシロ兵器の見本市かよ今日は!』

無線で快哉を叫ぶ彼のHUDに、次なるアラートが表示される。
敵はもう一機残っているのだ。
そしてその敵武神が砲撃を放ったことをシステムが警告してきた。
ロジーは慌てて高度をとるが、幸いこちらに向けて放たれた攻撃ではなかったようだ。
では、誰に?

『ロッカク――!』

敵武神の砲撃は、その目の前で対峙していた桔梗の武神、アレスへと放たれていた。
設計思想を砲戦に極振りした敵武神の一撃は、例え重装甲の騎竜であっても容易く大穴開けて空の藻屑に変えうるもの。
いわんや、相手となるのは同階級の武神。いかに装甲を厚くしようとも意味をなさない破壊力が、アレスに迫る!

>「……その戦法では今の時代の武神に勝つ事は困難です」

射出された三つ子の鋼のあぎとが、桔梗のアレスに喰らいつく。
黒鉄の咆哮は想定された通りの威力を発揮して――しかし期待された効果を発揮はできなかった。
ロジーには、砲弾がひとりでにアレスの脇を通り抜けていったように見えた。
だが、高解像度に分析された結果はその解釈を偽と断じた。
表示されたのは、アレスが自らの槍を砲弾に添え、まるでカタパルトのようにその上を走らせた姿だった。
……自分に当たらないよう軌道を調整してだ。

151 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/08/23(日) 23:00:56.18 0
「…………んん!?」

ロジーは思わず二度見した。
まるで桔梗が槍の表面に砲弾を滑らせて軌道を逸らしたかのように見えたからだ。
そして二度見して、その通りであることを確認した。

「冗談だろおい……!」

冗談だと思いたかったし、冗談じゃねえとも思った。
六角桔梗の成し遂げた行為は、作戦上は『首尾よく敵弾を回避』でしかない。
だが武神・騎竜のパイロットという"技能者"目線で言えば流石のロジーも真っ青だ。

「マニュアル通りってお前……」

どこの世界に、音速超過で飛んでくる鉄塊に細い棒を、完璧な速度とタイミングで合わせられる人間がいるのだ。
それも1センチでもずれれば、ほんの100gでも力加減を間違えれば失敗して自分が死ぬ。
恐怖心とか、もっと根源的な生存本能とかがブットんでなきゃ不可能な芸当だ。
例えるなら、命綱をつけずに建設中のビルの梁で懸垂を何回できるか試すようなもの!
自分の命をベットして、より大きなリターンを求める破滅的ギャンブラーめいた思考!!

何より――桔梗の超絶技巧は、ロジーが信を置く『騎竜至上主義』に大きな影を落とすものだった。
つまり、遠くから砲撃しまくればいつかは勝てるという原則こそが騎竜の優位点だったのに対し、
桔梗は砲撃を逸しながら確実に近づいてきて仕留めにくるという……仕留めに来れる奴がいるという圧倒的事実!

「これが"亡霊"……!!」

彼女の故郷、イザナにはこのレベルの技能者が何人もいるのだ。たとえ過去形であっても、確かな事実だ。
極西の小さな海洋国家で育ったエリートにとって、世界はあまりに広く、そして眩しい。

>「……アレスの腕力では、動体を引きちぎるのは困難でしたか」

だがさしもの"亡霊"とて、絶対的な装甲差は如何ともしがたかったのか、
二槍に食いちぎられつつも敵武神は動き、サイドの砲撃を準備する。
桔梗もまたそこから視線を切らず、油断なく槍を構えた。
両者の間にはしる緊張――

>「待たせたな!!」

そこへ割って入った武神がチャリで全てをぶち壊した。
緊迫した空気も――ボロボロの敵武神もだ。

「冗談だろ、おい……」

巨大な自転車に轢殺されるという史上最もあんまりな死に方で、桔梗といい勝負を繰り広げた武神はこの世を去った。
同時に自転車も殉職する。アレを相打ちで破壊したのが敵武神の最大の戦果だろう。

>「……はぁ」

『……初めてお前の気持ちがわかった気がするぜ、ロッカク』

桔梗の、破壊された武神と自転車を見て隠し切れない溜息にロジーも無線で同調した。
……できることなら、こんなことで同意を得たくはなかったけれど。

152 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/08/23(日) 23:01:59.43 0


>「こちらC1、トラブルか大佐ァ」 >『その通りだ――見えるか!?』

不意に飛び込んできた緊急通信。
次いで送られてきたデータリンクが敵影を拡大表示し、素早く目を走らせたロジーは瞠目した。
武神だ。しかしサイズがでかすぎる。
目算で8メートルはあろうかという長身と、バランスのおかしい巨顔、そして。

「――空飛ぶ武神だとぉッ!?」

その武神は、宙を我が物のごとく闊歩していた。
騎竜の特権領域である空を征く姿はまさに鋼の王者。
神々しささえ感じるそのフォルムは――天使!!

「あれが敵部隊の主力機か……!」

>「聞こえたな野郎共!デカブツの処理と道路の封鎖を実行すンぞ!」

美しいとまで言葉が出てくる前に、隊長の通信がロジーに冷水を浴びせた。
はっとして汗ばむ掌を拭い、操縦桿を握り直す。

>「ロジー、フレイア、カイは接続してる道路側の封鎖!」
>「――行くぞ!」

『て、Tes.!』

追うようにして表示された戦域略図の幹線道路に赤い影。
廃棄されたビルの稜線を飛び越えて急行すれば、地表を走る黒い影。
瓦礫を煙に変えて疾走するその姿は、よく知る爪と牙そして――翼を持っていた。

「――走る騎竜だとぉッ!!?」

黒の騎竜は瓦礫を確かに腕部で掴み、前傾姿勢を保ちながら走っていた。
脚部に比べて構造上腕部の短い騎竜は本来走行には向かないはず。
その不条理を貫いてかの竜に疾走を許すのは、ひとえにその出力任せのゴリ押しだ。
つまりはそれだけ強烈な推進力を持った機体だということ。

そしてマイナス情報はもうひとつ。
見て取れる損傷がどこにもないのだ。
運良く先行部隊の攻撃を逃れたのか――あるいは攻撃をものともしない装甲を持っているのか。
いずれにせよさっきロジーが撃ち漏らした不具の機体など比較にならない運動性を持っている!

『あークソ、トンデモ兵器の博覧会はこっちの専売特許じゃねーってことかよ!!』

153 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/08/23(日) 23:02:50.77 0
コンソールを操作し、僚機を確認。
フレイア機、ワイバーンは健在。
あの低空跳躍マニューバと的確に三枚おろしにした翼剣は重要なアタッカーとなる。
カイ機、シュヴァリアーは一部装甲に微損が見られるが挙動に問題なし。
こちらも体格差を補える粒子剣がある。定石通りの三分割作戦は今回も使えるはずだ。

『レシタール、カイ、おれが先行して砲撃する。
 あの爆走野郎、走ってるってことは足を止めりゃコケるはずだ』

返事を聞かずにロジーは機首を翻した。
黒の騎竜と並走するようにして速度を合わせ、主砲を展開。

『へっ、飛んでる奴を落とすよりずっと楽勝だぜ。わざわざ立体機動の利点を手放すなんてよ。
 いいか、トドメはおめーらがやるけど戦果は仲良くさんぶんこだかんな、覚えとけよ!』

HUDに表示されたレティクルが、2つの円を騎竜の足元で重ねあわせる。
並走しながら横向きの砲撃はバランスを大きく崩すが、ロジーの操縦感覚であれば即座の復帰が可能だ。
息を止め、よく狙う。地上を走っている為高さ方向の軸合わせをしなくて済むのが僥倖だ。

(見た目のインパクトはあるが、走る騎竜なんて所詮は出オチだ。
 最初に相手した武神も大したことなかったし、滅びの軍勢も案外ヨユーだな)

既に彼は、この任務を終えて基地に帰投したあと一杯やる酒の銘柄を考えていた。
何がいいだろう、初陣祝いってことで本国からこっそり持ち込んだ年代物のシェリー酒が鉄板か。
ご当地名物ってことで連邦のテキーラなんかも良い。
あるいはナイトーあたりをちょいと小突けば東洋原産の米酒が出てくるかもしれない。
なんならロッカクも交えて各国の酒を交えて酒宴と洒落こんだって良い。
あのセメント女も酒が入れば多少は素直になるかもしれないし。

考えて、でてきた唾液を、飲み込んだ。
ロジーは引き金を引いた。

「『356マグナムブレェェェェェス』ッ!!!」

ヒューガのあぎとからせり出す連装砲が咆哮した。
その二連の砲火は0.5トンの鉄塊の背を押し、コンピュータの計算した弾道をもって敵の足元へと破壊を導く。
駐退機で殺しきれない反動が横Gとなってコクピットに襲いかかる中、彼はノイズの走るHUDのを片手で抑えて刮目した。


【黒の騎竜に横付けし、足元を狙って二連砲撃】

154 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/08/24(月) 23:34:19.98 0
獲物を横からかっさらう格好となったリンネに対して恨み言の一つでも言うかと思いきや、
桔梗はまるでリンネの保護者のようにこう言って彼を諭した。
>「…………ありがとうございます……ですが、武装は大事にしてください。
> ……先程も言いましたが、その輸送機器の開発費は貴方の資金ではない筈です」
「ソーリーごめ〜んなさ〜い(´・ω・`)」
自転車は丁寧に作られていたが、手負いとはいえ、
さすがに武神との正面衝突に耐えるには華奢であった。
フレームが派手に歪んでいるし、スポークも何本か折れていた。
もちろん、タイヤもパンクしている。
「でも、大丈夫だ!このグリントガールの応急修理機能を使えばこれくらい治すのは容易いことよ!」
そう言うと同時にグリントガールはどこからともなく、
ドライバーやらレンチやらバーナーの類をちょこまかと取り出し始めた。
>「……はぁ」
そんな桔梗のため息もどこ吹く風やら。
リンネは鼻歌まじりに自転車の修理を開始した。
>『……初めてお前の気持ちがわかった気がするぜ、ロッカク』
「ギーガー!無事・・・
 なんだ、生きてたのか。まぁ、そうこなくては面白くない。
 私達の勝負はまだまだこれからだ。油断するなよダービー君?」
リンネは無線で聞こえてきたロジーの声に対して憎まれ口を叩いた。
勝負というのは無論、武神と機龍のどちらがより優れた兵種であるかを
戦場で答え合わせをする事だけではない。

>『C1、C1!こちらA1!』
突如、先行していたA隊からの無線通信が入った。
その意味しているところは、多少他人の話を聞かない性癖を持つリンネにも目で見て理解できた。
先で待ち構えているのはレーザー兵器で武装した巨大な天使型武神である。
>「……あの外装は、戦意高揚目的でしょうか」
「おそらくフラグシップ機として設計されたのだろう。
 まったく、悪趣味な武神だ」
桔梗のつぶやきにリンネがそう応える。
「こちらチャーリーズエンジェル(C隊の天使)だ!
 A隊の大佐とかいう人!聞こえているか!?
 そちらの機龍をすぐに引っ込めさせろ!邪魔になるだけだ!
 あいつはこちらの武神で倒す!」
リンネはA隊の大佐に対して傲岸不遜な態度でそう通信した。
態度はどうあれ、A隊の機龍があの武神に接触し続けるのは彼らに良くないと考えての忠告である。
実際、ゲイルブレイド以外の並の機龍ではあのレーザーを避けきれないと思ったからだ。
初めて見た時、レーザーは空に向かって放たれていた。
それはつまり、狙った獲物が機龍であった事に他ならない。
そして天使型武神はそれ以外に散弾砲を装備しているらしい。
リンネには敵武神のコンセプトが見えてきた。
すなわち空中の素早い敵にはレーザーを使い、地上の武神に対しては散弾砲を使うのだ。
機甲兵器に対して散弾砲を使うのはナンセンスに思えるかもしれないが、
武神は有脚兵器であり、装甲で完全に防備できない関節部分は弱点となる。
質量中心を狙って打てば、拡散した弾頭がそれらを挫くという寸法だ。
そして脚を負傷した武神に待ち受けているのは死あるのみ。
そんな悩みとは無縁であるかのようにふわふわと浮遊する武神に
苛立ちを感じるのはリンネだけではないはずだ。

155 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/08/24(月) 23:35:18.53 0
>「――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!」
>「――行くぞ!」
>「……了解しました。」
「えっ!?ちょっと!?まだ自転車の修理終わってないよ!?
 ・・・もう!」
リンネは仕方なく、修理中だった自転車を放棄して先へと進んだ。
桔梗に追いついたリンネは彼女と(仕方なく徒歩で)並走し、その後ろから内藤がやってくる。
>「やぁ、さっきのアレ、凄かったね。……アレだよ、砲弾逸らした奴。
> マニュアル通りってのはああいう事だったのか。凄いね。ホント凄い技量だ」
内藤が桔梗にそう話しかける。
「ずいぶん謙遜するじゃないか、内藤君。
 君が曲芸飛行して機龍をやっつけたのだって、たいしたもんだろう?
 いやぁ、見ていて気分がスッとしたよ!・・・内藤君?」
リンネは内藤に無線でそう語りかけたのだが、返事はなかった。
その時内藤は、桔梗に囁きモードで会話をしていたからである。
こういう事は初めてではない。一回目は内藤がロジーに囁いていた時だ。
「・・・まぁ、いいか」
しかし、もう一度同じ事があれば、いよいよリンネは内藤に疑問を抱くだろう。
仏の顔も三度までと言うし、仕方ないね。

天使型武神と会敵した隊長以下4名は、
ゲイルブレイドが文字通り切り込むのを合図に各自の戦闘行動を開始した。
すなわちドラゴンナイトはその跳躍力を活かして敵武神を撹乱し、
アレスは瓦礫に紛れて敵武神を葬るチャンスを虎視眈々と待つ。
そしてグリントガールは・・・
「武 神 体 操 第 一 ☆ ーーーーーッ!!」
『武 神 体 操 第 一 ☆ ーーーーーッ!!』
そう高らかに宣言するやいなや軽快な歌のリズムに乗せて、
激しい上下屈伸運動に、ブレの一切無い回転運動、
そして滑らかに洗練された反復横跳びを繰り返した。

説明しよう、武神体操とは!
BCインダストリーが武神パイロットの訓練および戦地での生存率上昇を目的として、
東洋武術の型を参考に編み出したエクササイズプログラムである!
この武神体操を極めし者は、攻撃効果は120%上昇し、防御面では63%上昇する(当社比)
気になるDVDのお値段はニッポン円にして5,980円!
武神パイロットに憧れているそこの君!今すぐ店頭へ急げ!

念の為に言うと、リンネは決してふざけているわけではない。
武神体操をしているのは、ひとえに敵に的を絞らさないためであり、
要するにやりたいことは内藤と同じである。
しかし、敵武神は専ら内藤のみをターゲットにしたので、
リンネの行動は無駄に洗練された無駄のない無駄な動きになってしまった。
「何だよ!私は無視かよ!」
斧や槍を構えた他の武神に対して、グリントガールは目立った武器を手に持っていなかった。
だから“定石”に照らし合わせて危険度が少ないと判断されたのだろう。
油断すれば次の瞬間に真っ二つにされかねない武神や機龍よりも、
怪しげな踊りをする武神を優先して排除する理由は無い。

156 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/08/24(月) 23:36:16.76 0
>「うーっわ!今のはヤバかった!リューキューの時よりヤバかった!死ぬかと思った!」
内藤が間一髪で敵天使型武神のレーザーを回避した時のことである。
>「どうやら……あのレーザーを使う時は、障壁が完全になくなるみたいだね。
> 散弾砲も、発射の瞬間には障壁に穴が空いてる。
> ……うーん、やってやれない事はなさそう、かな?」
「そうか、ならば次にレーザーを発射した時が我々のチャンスだな」
リンネは内藤にそう相槌をうった。
「内藤君、なんか“彼女”の怒りを買うようなセリフを言ってやれよ。
 そういうの得意だろ?
 君が絶対に友達になりたくない奴だと向こうに思わせたらいいんだ。
 簡単だろう?
 君がレーザーにあぶられている間に私が何とかするよ」
“彼女”とは敵天使型武神のことであり、桔梗の事ではない。
あんまりなセリフであるが、リンネは内藤が間一髪レーザーから逃れたのを彼なりの演出だと思っていた。
だから一応、実際に内藤がレーザーに当たるとは思っていなかった上での、彼を信頼してのセリフである。

そして、そのチャンスは間もなく向こうからやってきた。
敵天使型武神が(リンネからすれば)何も無い方向に向けてレーザーをぶっ放したからだ。
フェイント?・・・そう疑うより前にグリントガールは走っていた。
それは杞憂だった。滅びの軍勢の武神は駆け引きを使わない。
「ハーッ!!」
リンネは遮二無二、敵天使型武神に飛びかかった。

>「……あの武神は、反射速度と火力……何より、地上3mの距離が厄介です。
> ……現状では、距離と障壁に阻まれて私の槍は届きません……リンネさん、思いつく対抗策は有りませんか」
「桔梗君か!?君は一体、そんなところで何をしているんだ!?」
そんなところで何をしている?そんなセリフをリンネから言われる筋合いは無いだろう。
なぜならグリントガールは今、巨大天使型武神の太ももにしがみついているのだから。
その様子はさながら、
スーパーでお菓子を買ってと駄々をこねて母親にしがみつく物分かりの悪い子供のそれである。
「既に行動は開始しているよ!今からこいつの背中に生えている羽を“分解”する!」

リンネはこう考えた。
プラズマチェーンソーを使えば障壁を破るのは容易いだろうが、
そのまま空中に浮遊する武神の脛を“ひっかく”ことが決定的な攻撃になるとは思えない。
リンネには背中の羽が重力操作式の浮遊と重力障壁のどちらを司っているかまではわからなかったが、
どちらにしても敵天使型武神にとっては歓迎できない事態を招くに違いない。

リンネはすぐさま、まるで虫が這うようにカサカサと天使型武神をよじ登り、その背中に陣取るつもりだ。
そしてもしも背中に陣取れたグリントガールがどこからともなく取り出すのは、
ドライバーやらレンチやらバーナーの類に加え、高周波メスだ。
もちろん、天使型武神がおとなしくそれを待ってくれるとは思わないが、
もしもリンネの思惑が叶うのであれば、
グリントガールは“修理”と“分解”が表裏一体の関係である事を示すだろう。

【余談だが武神体操の歌を歌っているのはリンネ本人ではなくアップルである】

157 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/08/25(火) 20:34:53.26 O
武神の三枚下ろしには成功したが、カイ准尉の反応がよろしくない。

>「だけど、人の生命は違う……一つきりなんだ!
 フレイア=レシタールは、この世界に一人しか居ない。
 足手纏いの立場で言えた事じゃないかもしれないけど、俺は」

「足手纏いだと思っていたなら、騎乗は許していませんね」

相手はこんな返事は望んではいないだろう、フレイアが単に言われている事がわからないだけだ。
人の命は一つきり、だからなんなのだろう。

「一人の命で百人殺せるなら、もしくは救えるなら、それで事足りますが?」

そう、学んだから。
とは言いつつも、フレイアにしては大真面目に、比較的安全な敵排除を考えた結果だった。
ただ、どう答えるべきかわからなかっただけの苦し紛れな言葉。
武神乗りと機龍乗りの差なのだろうか、と答えないまま戦況を確認すると、六角准尉が槍のみで見事に攻撃をいなしている。
マニュアル通りの戦いとは言っていたが、そのマニュアルのレベルが異常に高い。
だが、こちらからすれば、それこそ危険なミリ単位の戦い。

「…カイ准尉、六角准尉の戦い方も、見た目は十分危険です。私の飛行もそう見えただけでしょう」

六角准尉は確実に出来る自信があるからああ戦える。
自分だって、死ぬことしか考えないのなら機龍に乗りはしない。
死ぬのはどこででも出来る。
背に武神を乗せようと、長く自機であるワイバーンを信頼し、操作する戦いは、否定されると困るのだ。
例え古く、メインがタイピング先行入力式の機龍でも、もう二人きりなのだから。
…その後見えた自転車轢死事件?見なかったことにするに決まっている。
普通の人間サイズの物に乗ってみたいなんて、考えていない。
考えてる場合ではない、のだが…。

「…勿体ない…」

呟いてしまったことには、目を瞑ってもらえるだろうか。

158 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/08/25(火) 20:46:09.20 O
――緊急通信、謎の敵の出現――
>「聞こえたな野郎共!デカブツの処理と道路の封鎖を実行すンぞ!」
>「――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!」
>「ロジー、フレイア、カイは接続してる道路側の封鎖!」
>「――行くぞ!」

「了解」
封鎖地点へ移動しながら見えた敵武神、それはこちらからすれば墮天使のような姿。
空を飛べる武神なんて、どうすれば操れるのか?
その答えが人ならざるものであったなら、初めに思考した人間にとってなんたる奇劇か。
目標へ辿り着いた先にいたのは地を駆ける龍。
天舞う武神、地を駆る機龍、これはなんの皮肉だ。
これを倒さねば制圧は不可能。だが何か、嫌な予感がしてならない。
>『レシタール、カイ、おれが先行して砲撃する。
 あの爆走野郎、走ってるってことは足を止めりゃコケるはずだ』

「了解…何かあったら避ける事を考えてください」

ロジスティクス三等空尉ならば、先手を打つ遠距離火力として最良だろう。
機動から反撃への対応もしやすいはずだ。
何か、が引っ掛かるのだが…。

>『へっ、飛んでる奴を落とすよりずっと楽勝だぜ。わざわざ立体機動の利点を手放すなんてよ。
 いいか、トドメはおめーらがやるけど戦果は仲良くさんぶんこだかんな、覚えとけよ!』

「…利点…?」

待て、何故あの機龍は走っている?
パイロットがいない『普通』の挙動で何故走る?
それは走ることが最善手となるから、飛ぶ事を超えた手段であるから。
それならば、飛行能力が極端に低いのだとしたら…。

「あの機龍、火力…だけではなく、装甲も厚い可能性があります。カイ准尉、バッテリーも使い切り、斬り込む必要があるかもしれません」

案の定、ロジスティックス三等空尉の砲撃だけでは機龍が止まらない。
足への着弾はしたのだ、だが止めきれない硬さを持つ機体スペック。

「ロジスティクス三等空尉、弾がもつならばもういくらか足を撃って下さい。無いなら退避を」

足を止める戦法自体は正しい、もし飛び上がるならば追撃に行くのみ。
翼は互いに持ち合わせているのだから。あれなら上からより下からの方が狙いやすいだろう。

「カイ准尉、斬り込みのタイミングはお任せいたします。今は囮になりながらの回避に専念しておりますので…
場合によっては、飛び降りてバッテリーを利用してください」

謎の騎乗武神よりも、今は攻撃を仕掛ける機龍…ロジスティクス三等空尉の方が狙われやすい。
ならば目前へ飛び、邪魔をするまでだ。
爪や翼が掠めそうな急接近と急上昇、一見驚異な敵として見えれば、奴らには事足りるはず。

【龍の前で牽制しつつ回避体制】

159 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/08/26(水) 01:44:48.32 0
戦場において最も恐ろしいのは何か
それは友軍の裏切りである
特に、一つの部隊内で裏切りが発生した場合、裏切られた側が生き残れる例は少ない

故に――連邦の隊長機には、一つの例外なく共有回線を『盗聴』する機能が備わっている
それはこの状況においても例外ではなく
だからアレックスは、シーナ社長の疑念も、――今し方の秘匿通信も、当然のように聞いていた

六角が通信を切った直後に、内藤に秘匿通信を飛ばす

「俺に介入させんじゃねェぞ、面倒だからなァ」
(この腹黒ならコレで十分だなァ、最悪俺が貧乏くじ引いて有耶無耶にするか……面倒臭ェ)

『第三者が聞いてるぞ』というただの脅しだが、コレで『自ら悪役に徹する』ようなバカな事はしない……筈だ
(汚れ仕事なんぞ上司に押し付けときゃいィんだよ、ニホン人って奴ァ面倒臭ェ)


――意識を戻す
武神程では無いにしろ、機龍にもまた思考速度の加速と知覚強化はある
逆に言えば、余計な事を考える時間もある、ということだ
悪い癖だなァ、と吐息し、敵天使型を見据える

160 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/08/26(水) 01:45:20.47 0
(翼は恐らくバランサー兼放熱フィン、飛びにくくはなるだろうが墜ちはしねェな)
(重力の制御系はあの輪っかに一任、発生装置自体は内部、か?帝国っぽい作りだ)
と、考察を重ね――

「って――馬鹿野郎社長!今すぐ離れろッ!!」

機龍において、相手が組み付いた場合どうするか
――急降下と急旋回、更に急上昇までをセットで行えばいい
無論、コレは機龍だから出来る動きだが――重力制御式ならば、そして先程の身のこなしならば、高速回転と急降下までは容易く行える

故に、天使型はそうした
背中に取り付くまで待った上で、重量制御を逆にかけ瞬間的に降下、地面に接する寸前で停止
翼の補助スラスターを使い、身を回すのも忘れない

或いはこれが内藤であれば、しがみつく事も可能だったかも知れない
だが、今組み付いているのは軍人ではないリンネ=シーナ
更には作業の為に工具を取り出しているとなれば――しがみつき続ける事は難しいだろう
そうして剥がされ、地面に倒れれば――散弾砲の的だ

それは、飛行能力を持つ者が、組み付く相手に対して取る定石――即ち、手が離れる瞬間の急激な移動

故に、動く

161 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/08/26(水) 01:45:41.12 0
「社長!ガード!」

それは瞬間的な動きだ
今、敵武神は、障壁にグリントガールが当たる事を考慮して重力障壁を落としている
故に、回転方向を逆に、抉る様に飛び込み、そして見切りながら尾を振るえば、

「ホームラン……!」

――無論、そのまま尾をぶつければダメージは大きい
だが、『テイルハンマー』ならば、敵機と同じく重力制御装置――こちらは加重を増す為の物だが――を積んだそれならば、本来よりも軽い衝撃で弾く事が可能だ
だからそうする
無論、シーナが何かアクションを起こせば、外れる事もある
だが、狙いはそれだけではない
今、ゲイルブレイドの尾が殆ど掠るような軌道で振るわれた
軍勢があくまで定石を守るならば、狙うのは一時的に無力化されたシーナ社長ではなく――

「!ブースター!!」
旋回を緩めた天使型が散弾砲を構えたのに気付けたのは、戦場のカン
だが、テイルハンマーに出力を食われた状態では、急激な加速は難しい
故に、各所に備えられた使い捨ての燃料内蔵型ブースターに天下
文字通り弾き飛ばされるような初速を得て上空に飛べば、その一瞬後を散弾砲が穿つ

役目を終えたブースターを捨て、だが、と唸り
(超接近戦、てアイデアは悪くねェ……)
(それに、重力制御型なら上昇も平行移動も遅い……今が機、だな)

天使型は漸く回転を完全に止め、再び腕にレーザー光を溜めている
恐らくは拡散レーザー、それで上昇の隙を稼ごうというのだろう
だが――内藤が、六角が、ここまでの隙を見逃すとも思えない
と、A2からの通信
最初の一撃目で武装と片腕をもがれた彼は、唯ひたすらに敵機の情報を分析し――そして今、アレックスにそのデータを送ってきたのだ
そうして導かれた弱点は、

「――輪を狙え!それで落ちる!」

『構造上、直立姿勢では自重を支えきれない』
『全ての重力制御系が“輪”に集中しており、それを砕けば跪く』

その端的なデータを即座に共有――果たして

【社長を救出(物理)】
【頭上を取ったがすぐには攻めれず】
【弱点は共有、天使は隙だらけ】

162 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/09/02(水) 05:50:55.26 0
二度に渡る攻撃の失敗。
天使型武神の圧倒的性能を前に攻め切れずにいる内藤は、しかし笑顔を絶やさないままでいた。
何故か。

>「…………私、は」

先の問答で、六角桔梗の中の「人間」を垣間見る事が出来たからだ。
『亡霊』に殺された男の話を切り出した時、彼女の声色は乱れていた。
極めて微細なものだったが、確かに内藤はそれを聞き取った。
なにせ彼は彼女の心を乱そうとした張本人なのだ。聞き取れない訳がない。

(やっぱり彼女は亡霊なんかじゃなかったんだ。ちゃんとした、人間だった。
 初めて見た時は気味が悪いだなんて思ったけど、今思えば申し訳ないことを考えちゃったなぁ)

>「……何の為でもない……何も考えずに殺しましたよ。……貴方の国の人間も、他の国の人間も」

それは兵士として大正解の回答だ、と内藤は思う。
だが同時に、そうは考えられない人間がいる事も知っていた。
恐らくは六角もまたそういう人間であるという事も。

>「…………以降、戦闘中の私的な通信は自重してください」

(なーんて言われちゃったけど、駄目だよ六角ちゃん。まだ足りない。
 君の笑顔を見る為には、まずはその仮面を剥がしてあげないと)

「それ」は仮面ではなく瘡蓋かもしれない。
などという事は内藤は考えない。内藤は、深く物事を考えない。
殺人と同じだ。深く考えれば、見えなくてもいいものが見えてきてしまう。

>「……く、あっ!」

だから考えない。ただ目的の為に、思い付いた事を思いついたままに実行する。

「あーっ、惜しい。かなりいい線行ってたのにね。運がなかったなぁ、六角ちゃん」

そんな内藤だから、彼は平然とした調子で六角に声をかける事が出来た。
六角の回避が極々僅かに遅れたのが、自分の言葉のせいだなどとは、考えもしない。

「それにしても……ひどいぜ、社長。さっきのはわりと本気で死ぬとこだったんだぜ」

レーザーは完全な先手必勝であり、完璧なカウンターだ。
砲身さえ形成してしまえば後は敵機をなぞるだけ。
0.001秒の猶予さえも与えられない。

もっとも一切の猶予が無いからこそ、予兆の段階で迷わずに退避を判断出来る。
滅びの軍勢には「内藤が大きく跳躍した瞬間に砲身を形成する」ような真似が出来ない以上、
確かにリンネの見込みは正しいとも言えるだろう。

「そりゃ……まぁ、うん。僕も出来ないとは言わないけどさ。カッコ悪いし。
 でも今はちょっと朝ごはんの食べ過ぎで気分が優れないからもう少し時間を……」

>「俺に介入させんじゃねェぞ、面倒だからなァ」

強がり半分に紡がれた内藤の言葉を、隊長の警告が遮った。

163 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/09/02(水) 05:51:33.33 0
強がり半分に紡がれた内藤の言葉を、隊長の警告が遮った。

「……?あぁ、問題ないですよ。彼女の性格は僕の読み通りでした。
 彼女と「仲良く」なれるのも時間の問題です」

しかしその真意を汲み取りかねていた。

ニッポン人は怠惰を好む気質である反面、時と場合によっては自己犠牲を厭わない性向がある。
例えそれが自分にとって不快なものであってもだ。
一見すると矛盾しているように思えるその性向は、しかし極めて単純な言葉で説明がつく。
他者の不幸を見て見ぬ振りするという事が、その不幸を肩代わりする以上に不快だからだ。
つまりは「他者への思いやり」が、ニッポン人に自己犠牲の精神を宿させているのだ。

だが内藤は違う。そんな物は持ち合わせていない。
彼は青鬼になろうなどと考えてはいなかった。
ただどんな手段を使ってでも六角と仲良くしたいだけだ。
部隊の仲間と仲良く出来ていない自分でいる事が、不快だから。
ただそれだけなのだ。

「……君達は、この世に生まれてくるべきじゃなかった」

天使型武神を見下ろしながら、内藤はそう言った。

「意味もなく、ただ奪い、ただ殺し……憎しみや、悲しみしか生み出すことが出来ない。
 ……何の為に、君達は生まれてきたんだ?何の為に、君達は生きてるんだ?」

社長が言った通りの挑発を、淡々と述べていく。

「……答えられないだろ?」

その視界の端に、六角桔梗を捉えながら。

「だからこの世界に、君達の居場所なんてない。いなくなっちまえよ」

内藤は六角桔梗と仲良くしたい。
そして、心が強い人間と、弱い人間、どちらがより他人を必要とするかと言えば、言うまでもない。
後者だ。

(その為に……まずは強い「兵士」の彼女じゃなくて、
 人殺しくらいで塞ぎこんじゃう弱い「自分」を見せてもらわなきゃね)

その結果、六角がどれほどの苦痛を感じようとも、内藤は知った事ではない。

「……と、こんな感じでどうだい?社長。なかなか決まってたと思うんだけど。
 まぁ……さっき見せてくれたロデオの前には霞んじゃうけどさ」

それは彼の快にも不快にもならないからだ。
社長が生死の境目から無事生還したその瞬間にも、内藤の声色にはまるで変化がなかった。

>「――輪を狙え!それで落ちる!」

そして直後に、好機が訪れた。

レーザー砲による迎撃を前に決めあぐねていた攻め手も、長考と長口上の間に考えがついた。
内藤は何の迷いもなく、ビルの屋上から助走をつけて飛び降りた。
背部スラスタも噴射し、猛然と天使型武神へ迫る。

だが敵機は内藤を警戒していた。
全対応、それが滅びの軍勢の戦術だからだ。
形成されつつある重力砲身を帯びた右腕が竜夜を睨む。

164 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/09/02(水) 05:54:28.69 0
「っ……!」

内藤が突撃の勢いを回転に変え、斧槍を振るう。
しかし遠い。槍の間合いに敵機を捉えられていない。
当然だ。滅びの軍勢は目測を見誤ったりなどしない。

だが内藤もそんな事は分かっていた。
その上で彼は挑んだのだ。

竜夜の槍術マニュアルには『竜翼』と呼ばれる特殊な握りがある。
槍の「掴み」をほんの一瞬だけ緩める事で、遠心力によって柄を手の中で横滑りさせるのだ。
槍の間合いは竜が翼を広げるかの如く、倍近くに伸びていた。

けれども、それでもまだ僅かに届かない。

「『竜墜』」

瞬間、内藤は斧槍を手放した。
遠心力を帯びた槍は必然、内藤の手から離れ、それが意味するは即ち更なる間合いの拡大。

「……なんて名前は、今さっき考えたばかりだけど」

槍の狙いは敵機の砲身、右腕。
超高速の落下の中で輪を狙う事は、外した時のリスクを思えば出来なかった。
だがレーザー迎撃を引きつけ、右腕さえ落としてしまえば、天使型武神は隙だらけだ。
急降下によって地面に接する寸前まで高度が落ちている今ならば、六角や社長でも輪の破壊は可能な筈。

「取れるでしょ、これ」

内藤は己の成功を確信していた。
当然だった。失敗する可能性があるとしたら、それは彼には理解出来ないものだからだ。


【本当の君が見たくて
 デコイしつつ先の先】

165 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/03(木) 23:32:50.16 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(Z/[/\) ――SIDE"A"――】

一時的にワイバーンと分離したシュヴァリアーは、黒の黒龍の目を盗みながら、あらぬ方向に遁走していた。
立ち並ぶビルの遮蔽を巧みに悪用して射線を遮り、盗塁を狙うランナーの如く機を窺って敵機から遠ざかる。

「まずは一つ……」

最初のストールンベースは無事に成立。
シュヴァリアーが"騒音を絶やさない移動目標"であるにも関わらず、だ。
おそらく黒の機龍は、定石通りに航空戦力を主たる脅威と見做し、優先攻撃目標に設定している。

「いや……ふたつ、だ」

だが、二度目は時機を逸する。
目と目が逢う――――瞬間、敵機だと気付いた。
なし崩し的にファンタスティック・バイオレンス・泥仕合に突入。

「こっちに気付かれた……やるしかないのかっ!?」

立合い、東は滅びの軍勢部屋、横綱・黒龍山による、目にも鮮やかな拡散龍息張り手が炸裂。
対する西はチャーリー部屋、前頭七枚目・守玻璃亜が、右半身への直撃を受けて声も無く沈黙。
行事の存在しない土俵を走り去った黒の地龍は、ヒューガとワイバーンへの主砲連続射撃を継続。


――――その長すぎる十数秒の後に。


「ぐああああああっ!!」

本来であれば立合いに上がるべきだった断末魔が、"遅れて"シュヴァリアーから響いた。
チャーリー隊の高機動機は、天使型武神の対処に向かった僚機に集中している。
黒の機龍は装甲型だ。突出した出力性能で戦況を切り開く必要があった。

『――今からこいつの背中に生えている羽を“分解”する!』

『ホームラン……!』

「さあ―――そろそろ俺たちも攻守交代の時間だ。
 こっちのグラウンドのランナーを斬りに行こうか」

左右のスタンカリバーを抜剣して駆ける。
迎え撃つ黒の地龍が放った連撃の最終段がクリーンヒット。
路面に弾き飛ばされたシュヴァリアーは、摩擦係数の高いカーリングストーンと化した。
衝撃で取り落とした二振りの騎士剣と装甲片を撒き散らしながら、袋小路に連なる歩車道境界ブロックで停止する。

「くっ……あ、あの機龍……!」

傍らの道路標識を支えにして立ち上がった満身創痍の騎士は――――

「まだだ……たかがメインパイロットをやられただけだっ!!」

――――おもむろにソレを引き抜いて、渾身の勇者パースを決めた。
ラグナロク粒子の光輝が道路標識を彩っていく。
イカれたパーティーの幕開けだ。

166 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/03(木) 23:38:49.40 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(T) ――SIDE"C"――】
【シャッフル・コミュニケーション(V-R1)】

『ギガンテス君、ちょっとした賭けをしないか?』

『その賭け乗った!』

「――――俺も一枚、噛ませてくれ。
 個人的な事情があってさ、大金が必要なんだ。
 俺が負けた時の条件は任せる。好きに決めてもらっていい」

『じゃあお前が負けても女子風呂特攻―――『ああ、いいとも!
 ・・・って誰だ君は?知らないぞ?ブリーフィングの時いたっけ?』

「この場が初対面になった事情(のもつれ)に関しては……触れずにそっとしておいて欲しい。
 あんたには、シュヴァリアーの飛行ユニットの件で割を食わせちまうトコだったはずだけど」

『ああ、シュヴァリアーの。なるほど君だったのか』

「俺はカイ……流れの傭兵だ。
 階級が無いのはあんたと同じだけど、
 借金だったら"武神が買えるほどの"額がある」

『大金が欲しいか?ならそうだな、私は・・・』

「……ところで、さっき誰か他の通信が入ってなかったか?」

『う〜ん?』

「こっちの気のせいか。とにかく、どんな条件でも付き合うよ」

『君の乗っているその武神を貰おうか。シュヴァリアー・カスタム、興味深い武神だ。
 もちろん、それに見合う掛け金は保証するよ』

「――――ハイランダー金貨換算で7700万。それがシュヴァリアー(こいつ)の値段だ。
 そっちが勝ったら、ついでに"専属パイロット"も雇い上げるって条件でコールと行こう」

承諾が得られた場合、その時点で本質的な"賭け"は傭兵の勝ちだった。
ミッションが成功すれば、借金から解放されて晴れて自由の身になれる。
ミッションが失敗しても、雇用主が抵抗軍から社長個人に変わるだけだ。

「レシタール一等兵、緊急サポート要請だ…」

ブラフ頼みで押せる可能性は低い。早急にカードを揃える必要があった。
傭兵は、機体の電脳を介した思考の高速/並立処理を即座に開始する。

「…おっと」

だが、回転り出した意識は――――それとほぼ同時に、"厄介な相手"から捕まっていた。

167 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/03(木) 23:48:02.24 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(V) ――SIDE"C"――】
【アサルト・コンビネーション(U-R)】
【ルイナス・レゾナンス(T-R)】

『今のも凄いね。刃筋、上手く立ってないように見えたけど……今のどうやって立て直したんだい?』

『おいおいおい、今のどうやったんだ!?亡国オモシロ兵器の見本市かよ今日は!』

ハイランダー王国が占有するラグナロク関連技術の粋を集めたRFBDの機能は、多岐に渡る。
機械構造に依存しない駆動力の創出。慣性制御がもたらす対象の急減速ないし急加速。
フィールド形成による防護力あるいは開放による破壊力。その一端が敵機を葬った。

「驚いたのは俺の方だ。目の良いパイロットが多いんだな、この部隊は。今のが"気になる"か?
 傭兵としては、そう簡単に商売道具の切り札を明かす訳にも行かないんだろうけど、
 背中を預ける戦友が相手なら別だ。後で食事でもしながら話をしよう」

滅びの黒い霧――――その残滓を振り払って、灰色の騎士が飛翔する。

「だから……みんなで生きて帰るんだ」

少年にとって、戦う理由はそれで充分だった。
少女にとっての動機は、違うのだろうか―――

「―――足手纏いの立場で言えた事じゃないかもしれないけど、俺は」

『足手纏いだと思っていたなら、騎乗は許していませんね』

「……だったらさ、出来るだけのコトをしたいんだ。俺は死ぬのなんて御免だ。
 けど、自分一人だけが傍観者で居たいとも思っちゃいない。だから……!!」

『一人の命で百人殺せるなら、もしくは救えるなら、それで事足りますが?』

「それでも――――君を失ったら、俺は救われないよ」

『…カイ准尉、六角准尉の戦い方も、見た目は十分危険です』

「六角准尉には悪いけど、あんなのは……無謀なギャンブルにしか見えない」

『私の飛行もそう見えただけでしょう』

彼女達に共通するのは、正規軍人としての訓練に裏打ちされたパイロットの圧倒的な技量だ。
マシンの性能に対する深い理解と確かな信頼。その何れもが、自分には欠けているモノだった。
そのせいで少年は、多くのモノを失った。だからこそ傭兵は、それを繰り返す訳には行かなかった。

「もう俺は、これ以上パートナーを……」

『武 神 体 操 第 一 ☆ ーーーーーッ!!』

「……ごめん。この話の続きは後だ、レシタール一等兵――――」

――――まさかとは思うけど、アレだったっていうのか?
さっきからラグナフレームが感知していた、漠然とした歪みの歪みねえ正体は。
……ああ、なるほど見事に歪んじまってるみたいだ。自転車のフレームもパイロットの常識観念も。

『…勿体ない…』

「俺は思うんだ……自転車なんていう悪魔の機械は全部、この世界から消えちまえばいいって」

少年は、第二整備班で己に課せられた修行(くぎょう)を密かに、かつ蕭やかに根に持っていた。

168 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/03(木) 23:51:32.69 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(W) ――SIDE"A"――】

『こちらC1、トラブルか大佐ァ』

「どうした? まさか、また何かトラブルなのかっ!?」

『その通りだ――見えるか!?』

「そんなコトをいきなり言われたって、俺には話が見えない。
 姉さんがよく言ってた"正義"ってヤツと関係ある話なのか?」

『――見えたァ!サイズと武装は!?』

『8m級、武装は拡散/集束レーザー砲、重力障壁と重力操作式の浮遊、それから散弾砲だ!
 比較的広い道路と接続してる、二方向からの敵とデカブツのせいで動けん!至急応援を求む!』

『了解、すぐ向かう!over!』

「普通じゃない……そんな情報を頭から信用するなんてのは!」

『聞こえたな野郎共!デカブツの処理と道路の封鎖を実行すンぞ!』
 ――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!』

『まっ、なんとかなるか。任せといて下さいよ』

「……俺の方からは、何とも答えてやれないな。
 ゲイルブレイドの集音性能次第じゃないのか」

『……了解しました。』

『えっ!?ちょっと!?まだ自転車の修理終わってないよ!? ・・・もう!』

「今は敵機の対応が先だ、存在意義の確認作業なら後にしてくれっ!」

『ロジー、フレイア、カイは接続してる道路側の封鎖!』

『て、Tes.!』 『了解』「だから、俺が知るものかよっ!」『――行くぞ!』

169 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/03(木) 23:53:37.94 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(X) ――SIDE"A"――】

「――――あいつ!! まさか本当に帝国の天使型……なのか?」

『レシタール、カイ、おれが先行して砲撃する。
 あの爆走野郎、走ってるってことは足を止めりゃコケるはずだ』

「待つんだ、一人で先走るんじゃない!」

『了解…何かあったら避ける事を考えてください』

―――不意に、ワイバーンとシュヴァリアーの騎乗用連結機構がアンロックされる。

「ダメだ……そんな身勝手、認めるわけには行かない!」

『へっ、飛んでる奴を落とすよりずっと楽勝だぜ。わざわざ立体機動の利点を手放すなんてよ。
 いいか、トドメはおめーらがやるけど戦果は仲良くさんぶんこだかんな、覚えとけよ!』

「覚えてるさ! 忘れられるものかよ……だけど!!」

思い直す様に、あるいは何か迷う様にして再連結した。
無論だが、分離状態では立体機動の利点を手放す事になる。
機龍を駆らない武神龍騎兵など、陸に上がった河童も同然だった。

【フレイア一等兵……選択機会なし】
rァ
1.カッパか はっ!
2.なかまに ならないか

『…利点…?』

「そんなコトに今こだわってたって、メリットなんて無いって言ってるんだ!」

170 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/03(木) 23:58:18.46 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(Y) ――SIDE"A"――】

『あの機龍、火力…だけではなく、装甲も厚い可能性があります。
 カイ准尉、バッテリーも使い切り、斬り込む必要があるかもしれません』

黒の機龍の装甲強度は、実際の所おかしかった。
ヒューガの主砲が脚部に着弾して尚、止まらない。

『ロジスティクス三等空尉、弾がもつならばもういくらか足を撃って下さい。無いなら退避を』

その一方で、ワイバーンの機上では、シュヴァリアーのようすがちょっとおかしかった。
ハードポイントの連結先が、本来あるべき機体ではなく斬艦刀に置き換わっている。
そのグリップに縋り付いた騎士は、白龍の空中回避機動に翻弄されるがままだ。
端的に表現するならば"空中引き回しの刑を受ける挙動不審者絵図"の体現。

『カイ准尉、斬り込みのタイミングはお任せいたします。
 今は囮になりながらの回避に専念しておりますので…
 場合によっては――』

「考え直せ! この状況で……シホ少尉でも、それと同じコトを言ったと思うのか?」

『――飛び降りてバッテリーを利用してください』

「ああああっ!? そーいえばそーいう女だったっ!?」

フリーフォールが始まった。騎士は中空で斬艦刀を手放し、白龍に腕を伸ばす。
角度によっては、無表情かつ和やかに手を振りながら落ちて行く光景に見えたかもしれない。
落とし穴に嵌められるリアクションのプロが、全身がフレームアウトするまでの時間を稼ぐ際の特殊姿勢だ。

「エクスカリバーが……!! ――――このわからず屋ぁっ!」

171 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:02:23.42 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(U) ――SIDE"B"――】
【シャッフル・コミュニケーション(V-R2)】

「レシタール一等兵、緊急サポート要請だ…」

《私は反対です》

「…おっと」

大事な場面で厄介な相手に捕まった……"Artificial Neural-link Replacement Intelligence"
シュヴァリアーに試験搭載された、名称通りのサブパイロットシステム、そのβバージョンだ。

《貴方達のやろうとしている事は、乙女の心情を愚弄する所業だ。
 その非道極まる悪行、一人の騎士として……いや、思惟する一知性体として、
 断じて看過出来るものではない。直ぐに前言を撤回し、キキョウに謝罪と賠償をするべきだ》

ハイランダー王国軍機動兵器開発局においてβバージョンと言った場合、
βのBとは人柱(ひとばしら)のBに他ならず、本システムも例外には成り得なかった。
関係者各位の無念が、いつしか与えられた不名誉な開発コード"リプレイサー"に集約されている。

「そうだな……六角准尉には後で、きちんと謝っておくよ」

《わかってもらえましたか、カイ様》

「ああ、だから賠償もきちんとする」

《ええ、騎士として当然のことです》

「だけど、いかんせん今の俺には金が無いんだ……これじゃ六角准尉に誠意が示せない」

《……確かに。貴方の甲斐性の無さは、私も厭と言うほど理解している》

「―――つまり、俺達はシーナ社長との賭けに勝って大金をせしめる必要があるんだよっ!」

《なんと……! そういうことだったのですか。
 面白半分でやっているものとばかり思っていましたが――
 ――私の考えが浅はかだった様だ。早とちりをして済みませんでした。
 栄光あるハイランダーの騎士として、私もキキョウの為に尽力することを約束しましょう》

「差し当たっては、情報整理の協力を頼む。俺が通信に割り込んだあたりのログを出せるか?」

《お安い御用です》

こと戦闘分野と関わらない限りに於いて――――リプレイサーは、ちょろかった。
それ以外の分野に対する全方位ポンコツ性能を再確認し、穏やかな心境のまま……


【検閲により見せられないよ!】


……そっとログを閉じた。新機軸の情報テロか、こいつは。

《どうやら何者かによる邪魔(ジャマー)があった様だ。発信者、妨害者、共に不明です》

「だったら、深入りは止そう……このままアンノウンにしておいた方が安全な気がする」

172 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:18:58.90 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(W) ――SIDE"B"――】

『こちらC1、トラブルか大佐ァ』

《……カイ様。先ほどの通信履歴に関して伝え忘れていた話がありました》

「どうした? まさか、また何かトラブルなのかっ!?」

『その通りだ――見えるか!?』

《ずっと以前から――――私は、可愛い妹が欲しかった》

「そんなコトをいきなり言われたって、俺には話が見えない。
 姉さんがよく言ってた"正義"ってヤツと関係ある話なのか?」

『――見えたァ!サイズと武装は!?』

『8m級、武装は拡散/集束レーザー砲、重力障壁と重力操作式の浮遊、それから散弾砲だ!
 比較的広い道路と接続してる、二方向からの敵とデカブツのせいで動けん!至急応援を求む!』

『了解、すぐ向かう!over!』

《……はい。チーフの情報によれば、"かわいいは正義"とのことらしいのですが》

「普通じゃない……そんな情報を頭から信用するなんてのは!」

『聞こえたな野郎共!デカブツの処理と道路の封鎖を実行すンぞ!』
 ――六角、内藤、あと社長!俺と共にデカブツの対処!』

『まっ、なんとかなるか。任せといて下さいよ』

《カイ様、アレックスの言う"野郎共"には、私も含まれているのでしょうか?
 もしそうだとすれば……非常に心外だ。私に性別という概念はありません》

「……俺の方からは、何とも答えてやれないな。
 ゲイルブレイドの集音性能次第じゃないのか」

『……了解しました。』

『えっ!?ちょっと!?まだ自転車の修理終わってないよ!? ・・・もう!』

《だとしても、これは私の名誉に関わる問題だ――――直接、アレックスを問い詰めましょう》

「今は敵機の対応が先だ、存在意義の確認作業なら後にしてくれっ!」

『ロジー、フレイア、カイは接続してる道路側の封鎖!』

《……あっ。やはり私、ないがしろにされているのでは?》

『て、Tes.!』 『了解』「だから、俺が知るものかよっ!」『――行くぞ!』

173 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:21:33.78 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(X) ――SIDE"B"――】

「――――あいつ!! まさか本当に帝国の天使型……なのか?」

《あの姿……! 見紛う筈も無い!! よもや、この様な場所で出会えようとは――》

『レシタール、カイ、おれが先行して砲撃する。
 あの爆走野郎、走ってるってことは足を止めりゃコケるはずだ』

《――獅子座の私には、運命的な感傷を禁じ得ない》

「待つんだ、一人で先走るんじゃない!」

《カイ様……それは聞けない相談です》

『了解…何かあったら避ける事を考えてください』

《何があろうと、私は奴と刺し違えます――――アイ・ハブ・コントロール》

騎乗状態の強制解除――――ワイバーンからパージされたシュヴァリアーが後方へと滑り出す。

「ダメだ……そんな身勝手、認めるわけには行かない!」

『へっ、飛んでる奴を落とすよりずっと楽勝だぜ。わざわざ立体機動の利点を手放すなんてよ。
 いいか、トドメはおめーらがやるけど戦果は仲良くさんぶんこだかんな、覚えとけよ!』

《……何故、止めるのです。あの日の雪辱を忘れたとでも言うのですか!》

「覚えてるさ! 忘れられるものかよ……だけど!!」

【リプレイサー「ねんがんの コントロールをてにいれました」……カイ選択】
rァ
1.そう かんけいないね
2.殺してでも うばいとる
3.ゆずってくれ たのむ!!

傭兵がコントロールを奪い返す―――だが、RFBDの掌握は不完全だった。
咄嗟に不可視のスラスターで"斬艦刀だけを"加速前進させ、ワイバーンと連結させる。
エクスカリバーのガード部分には、本体のそれと同一規格の固定用ハードポイントが存在していた。

『…利点…?』

《……コントロールを渡してください。私達には、友の亡骸と王国の英霊達に立てた誓いが―――》

「そんなコトに今こだわってたって、メリットなんて無いって言ってるんだ!」

《―――ならば、貴方が忘れてしまっているのは、ハイランダーの騎士としての誇りだ!!》

174 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:25:10.60 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(Y) ――SIDE"B"――】

『あの機龍、火力…だけではなく、装甲も厚い可能性があります。
 カイ准尉、バッテリーも使い切り、斬り込む必要があるかもしれません』

ヒューガの轟砲が戦域の大気を震わせる……完璧な精密射撃だった。
対象の機動性を奪えなくとも、環境に干渉して移動力を落とす事は可能だ。
舗装整備された路面が瓦礫に、地面がクレーターに変じれば走破性は格段に下がる。
実際の所、ギーガー空尉は敵機本体ではなく、接地面の地形破壊を狙っていた様にも観えた。

『ロジスティクス三等空尉、弾がもつならばもういくらか足を撃って下さい。無いなら退避を』

ワイバーンと連結されたエクスカリバーのグリップを辛うじて握り込んだ、シュヴァリアーの右掌。
さらに左腕を伸ばし両手で掴み直そうとする意志と、そうさせまいとする制御が錯綜し拮抗する。

『カイ准尉、斬り込みのタイミングはお任せいたします。
 今は囮になりながらの回避に専念しておりますので…
 場合によっては――』

《離してください! 貴方が手を開かないと言うのなら……私の無理でこじ開ける!》

「考え直せ! この状況で……シホ少尉でも、それと同じコトを言ったと思うのか?」

《シホ様なら、ですか……?》

『――飛び降りてバッテリーを利用してください』

《……ええ。無論、そのようにおっしゃった筈です》

「ああああっ!? そーいえばそーいう女だったっ!?」

《……隙あり! この機体(からだ)は、貰った――――!! 精神的動揺は命取りですよ、カイ様》

シュヴァリアーは、自身とワイバーンを繋ぐ最後の手綱、斬艦刀のハードポイントを解放した。
為す術も無く重力に引かれるままに天を仰いだ視界から白龍は消え去り、空の色だけが満ちる。
無情とも無関心とも分からない、その蒼に向かって腕を伸ばし、灰色の騎士は大地へと墜ちて行く。

「エクスカリバーが……!! ――――このわからず屋ぁっ!」

175 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:31:37.43 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(Z) ――SIDE"B"――】

急接近/急上昇したワイバーンの機影――黒の地龍の視線――その裏側に、灰色の騎士は着地した。
黒の地龍は、光学カメラを除く全てのセンサーで、アスファルトの上に降り立った動体反応を捕捉する。

《黒竜に構っている暇は無い。地形を利用つつ、あの堕天使に接近します》

僅かな時間差を伴って自由落下した斬艦刀が、
機体後方の高架道路を隔てた区画に位置する広場へと墜落して行く。
鋼刃は、その自重で小さな噴水塔を割り裂きながら突き立ち、周辺に水流が撒き散らされた。

「似てるけどあれは違う……ファーヴニルをやったのは"あいつ"じゃない。
 俺達が復讐しなきゃならない相手なんて、もう何処にも居やしないんだ!」

《復讐などでは! 私は……騎士の名誉を取り戻すために戦場に戻ったのです》

「けど、やるコトは同じなんだろ!? あれは―――"あいつ"のカタチを再現してるだけだ」

《そんな事は理解しています。しかし、私は―――"あの姿"をしたモノの存在を許しては置けない》

「頼む、話だけでも聞いてくれ……例の"貸し"を、いくつか使ってもいい!!」

《貴方がそこまで言うのであれば、その条件次第で話を聞きましょう。
 ただし、手短にお願いします。もう私達には時間が残されていない》

「まずは一つ……」

《"ひとつ"、だけですか? カイ殿》

「いや……"ふたつ"、だ」

《それでは、貴方の意見を教えてください、カイさん》

「これは昔、姉さんが言ってた台詞の受け売りなんだけどさ。
 "騎士は名誉の為に戦うのではない。騎士が戦う事で名誉が生まれる"――
 ――最初から順番が逆なんだ。だから、捨て身の戦いより、みんなで生き残る戦いをしよう」

《確かに一理ある……この場は、その信念を尊重しましょう――――ユー・ハブ・コントロール》

「ちなみに、"みっつ"だったら、どうしてた?」

《私が貴方にコントロールを譲り渡すのは、今回が最後になるでしょうね、この駄犬》

「……"ふたつ"で手を打ってくれて助かったよ。まずは、これからエクスカリバーを回収に行く。
 俺たちはサウスウィンド中佐の指示通り、レシタール一等兵、ギーガー空尉と機龍の撃破だ」

シュヴァリアーは二振りのスタンカリバーを抜剣し、不可視のスラスターを焚く。
目指す高架道路、地対空砲撃には絶好と言える地点に座した黒の地龍が、騎士へと頤を向けた。
その間にも射角を自在に変え、青龍と白龍に火線を注いでいるのは、肩部に搭載された左右二門の大型砲だ。

「こっちに気付かれた……やるしかないのかっ!?」

《あの黒竜は、最初から私達に気付いていましたよ》

「だったら、今まで何の為にコソコソしてたんだ!」

《――――迂闊に近づけば、こうなるからです》

そして、中央に位置する第三の砲門が――龍の吐息が――騎士の半身と傭兵の意識を瞬時に灼いて漂泊した。

176 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:34:14.17 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ([) ――SIDE"B"――】

《――――気が付きましたか。
 ですが、もう少し眠っていても構いません。
 黒竜は……どうやら私達を討ち取った心算でいるようだ。
 それに、今はロジスティクスとフレイアが注意を引き付けてくれています》

「……ん? もう朝か……リプレイサー」

《その響きは実に不名誉だ。私を呼ぶのであればアンリと――》

「――気を失ってたのか俺はっ!? どれくらい落ちてた?」

《……そうですね、あれから二十時間ほど経過したでしょうか》

「中途半端にリアルな嘘を吐くんじゃないっ!」

《実際は、概ね十秒弱と言ったところです》

「リプレイサー、シュヴァリアーの損害状況は?」

《カイ、もう一度だけ繰り返しますが、私のことはアンリと――》

「――了解だ、リプレイサー。それでシュヴァリアーの損害状況は?」

《……》

「……」

《神経接続、譲渡します》

「ぐああああああっ!!」

《……貴方を、深手です。痛覚が存在する人間のパイロットにとっては少々、荷が重い》

「ダメージを知った上での、この仕打ちなのか……アンリさん」

《損害状況を尋ねたのは貴方だ。ならば直接"実感"した方が理解が早いと判断したまでです》

「くっ……右肩が、やられてるのか」

《いいえ。右肩から下は全て、です》

「俺の右腕――――!!」

《落ち着いてください。貴方の右腕ではありません》

「武神乗りにとっちゃ、ほぼ同義なんだよ、それはっ!」

《彼我の性能差を考えれば、このままでは不利だ。シュヴァリアーの換装を。
 エアフォース・シルエットが完成している手筈でしたね? 射出の要請先は》

「ああ、その話なんだけど……」

《何を躊躇しているのです? エクスカリバーが手元に無い以上、機動戦に賭けるべきだ》

「……いや、致命的な連絡ミスがあったみたいでさ、あの話はナシになってた」

《―――これで貴方からの"借り"は残り一つですね、カイ》

177 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/04(金) 20:44:36.92 0
【ストレイ・ハード・バーゲンズ(\) ――SIDE"B"――】

『――今からこいつの背中に生えている羽を“分解”する!』

『ホームラン……!』

《ああ―――向こうの会場では歓声が上がっている様ですよ、カイ》

「さあ―――そろそろ俺たちも攻守交代の時間だ。
 こっちのグラウンドのランナーを斬りに行こうか」

《それは構わないのですが、走っている相手であれば"さす"が正しいのでは?》

騎士の刺突/地龍が右前脚の鋭爪を横薙ぎに振う。
地龍の装甲が刺突を弾く/左のスタンカリバーが辛うじて受け流す。
すれ違い様に、騎士が地龍へと蹴りを叩き込む。その反動で僅かに間合いが開く。

「姉さん……そんな高度(むだ)なコトまでお前に教え込んでたのか」

続く左前脚が振り抜かれる――二撃目だ。先端の鋭爪が騎士の胸部装甲を引き裂いた。
その勢いのままに四半回転、重いがリーチの長い龍尾による"追撃"――
――いや、左右の鉤爪は両方フェイクでこいつが"本命"か。

《いいえ。以前、ナナカが自室でそのような事を。走っていたのが人ではなく馬でしたが。
 緩んだ下着姿で杯を片手に叫ぶ、という状況だけはチーフのそれと一致していました》

「なん…だと? 格納庫から、居住区の個室の中の様子までわかるのか、武神ってヤツはっ!?」

やはり内藤文書の記述は真実だった。
ここまで来ると偶然ではない……もはや"必然"―――!!
時空を超えてあんたは一体何度、俺たちの前に立ちはだかってくるっていうんだ! 毒島!!

《いけません、カイ!! その程度で心を乱しては――》

――三連撃。騎士は"本命打"を回避しきれない。右のアームガードが砕け散る/上体が傾く。
龍尾が往復――四連撃。左のサイド・スカートアーマーが拉げる/体幹が均衡を完全に失う。
フルブーストの体当たり――五連撃。腰部アクチュエーターのメインシャフトが軋みを上げる。

「"その程度"だとっ!? それよりもっと色っぽい目撃談があるのかっ!?」

叩きつけられたアスファルトの上を滑る様にして、高架下に弾き飛ばされて行く。
接地面と装甲の鋼が、互いを直に削り合う耳障りな擦過音と火花を撒き散らす。

「バッテリーは無事なのか……? 危なかったぞ、今のは!」

《ええ……今の様な操縦は危険過ぎます。
 センターラインを越えて対向車線上を遡行とは。
 その上、制限速度の60km/hも優に超えてしまっていた》

「くっ……あ、あの機龍……!」

割れた頭部バイザーが遮る騎士の視界/衝撃で打ち撥ねられ路面に突き立った武器/手探りで抜く。

《もう一度、交代しましょう。貴方はともかく、シュヴァリアーのダメージが深刻だ》

「まだだ……たかがメインパイロットをやられただけだっ!!」

《その勇気は称賛に値します。しかし――――それは道路標識です、カイ》

菱形のプレートを彩るハザード・イエローに嗤う黒文字――――"DEAD END(この先、行き止まり)"だ。

178 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/05(土) 21:27:13.41 0
機龍の「脚」を狙ったロジーの判断は見事だった
彼の失敗は――この機龍が「四足歩行」であることを見落としてしまった事だろう

普通、機龍はその構造上二本の脚で立つ
前脚はたいていの場合近接用の爪がついており、またそもそもの構造からして尾の分後方に重心があるからだ

だが――この機龍は違った
この機龍の前脚は大きく、逞しく黒光りしている――武神との格闘戦への備えだろう
その他の関節も可動域を大きくとっており、柔軟な動きを可能とする反面、空中での動作に一瞬の遅れが生まれることになる
空中での機動性を捨て、地上での戦闘に特化した機体――地龍型と呼ばれるタイプの設計だ

故に、四肢を地面についての高速の疾走が可能
ヒューガが穿ったのは、その両の前脚
一度速度に乗ってしまえば、尾でのバランス調整と飛行機能を駆使することで、前脚を上げても速度を落とさぬまま疾走を継続出来る
だからそうして、目の前を飛ぶ機龍を払うための龍息を溜める

――だが、使わない
その動きは、明らかに機龍から降りたシュヴァリアーを警戒している
定石とはややズレる、その行動――
――あるいは。この機龍のルーツ……即ち、「かつてハイランダー王国で正式採用が検討されていた」事が、関係しているのかも知れない
しかし、この戦場において、その問に答える者はいない
滅びの軍勢は、黙して語らず
ただ、目の前の『敵』と相対する

一度目は、その龍息で
二度目は、得意とする格闘戦で
二度に渡りシュヴァリアーを撃退しながら、しかし未だ警戒の姿勢を崩さない
それどころか、ここに来てその歩みを止める
あと一息で、天使型への援護射撃が行える――その位置で翼を広げ、四肢を地面について急制動
傷付いた両前脚では完全には慣性を殺せず、やや滑りながらも旋回

狙いは――今まさに立ち上がった、この機体にとっての『仇敵』――シュヴリアー
両の砲門で後方を牽制しつつ、黒の地龍は再び地を駈ける
一歩目の加速で右の前脚が折れたが、構いはしない
一気に距離を詰め、拡散型の龍息で勝負を決めに行く

【損傷はあり】
【原因不明の拘り、突撃敢行】

179 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/06(日) 00:35:58.77 0
>「桔梗君か!?君は一体、そんなところで何をしているんだ!?」

「……!」

仮に万人に聞けば九千八百人程が『先程まで踊っていた奴が言うな』と返すであろう言葉を放ったの男の名は、リンネ=シーナ。
つい先頃、天使型の武神の迎撃に失敗した桔梗が問いかけを放った、武神製造の分野におけるスペシャリストである。

奇妙奇天烈、奇奇怪怪。
奇人を地で行くように傾奇続けるリンネは、桔梗が気が付いたその時には既に天使型武神の脚部に張り付いていた。

>「既に行動は開始しているよ!今からこいつの背中に生えている羽を“分解”する!」

「……凄まじい、ですね」

そうして、あまつさえ機体をよじ登り、その翼の分解を試みていたのである。
眺め見た桔梗が思わず呟いてしまったのも当然と言えるだろう。

(……姿勢制御、駆動操作……機体の補助動作の完成度が、異常に高い)

はっきりと言えば、リンネの動きは異常であった。いい意味でも、悪い意味でも。
仮に桔梗がリンネと同じ行動をしようと動いても……似たような行為は出来るかもしれないが、恐らくリンネ程スムーズには敢行出来ないであろう。
武神と人間は合一することこそ出来はすれど、基本的な構造が絶対的に異なる。
腕の動かし方から歩む一歩まで、あらゆる動きに微細なラグが存在するのだ。
故に、基本的に武神の搭乗者は経験と技量により武神に自身を似せていくのだが……
桔梗の目から見て、滅びの軍勢の身体をよじ登るリンネの武神であるRX-02 グリントガールは――まるでその齟齬が無いかの様に動いていた。
人間が武神の歯車と化すのではなく、武神の方が人間に合わせているかの様な動き
先程聞こえた謎の体操の副音声を担っていたと見られるAIの性質といい、余りにしなやかな挙動といい……
桔梗から見て、リンネの武神はまるで人間を目指して作られたかの様にすら見えた。
ここまま行けば、目論見通り羽を分解し痛烈な一撃を与えられると思える程の動きであった。

――――と。
そんなリンネの行動を眺め見ていた桔梗に。
武神アレスの通信回線に

>「……君達は、この世に生まれてくるべきじゃなかった」

届く声が、一つ。

>「意味もなく、ただ奪い、ただ殺し……憎しみや、悲しみしか生み出すことが出来ない。
>……何の為に、君達は生まれてきたんだ?何の為に、君達は生きてるんだ?」

オープンチャンネルを通して聞こえて来た声。
内藤=ハイウィンド=隆輝という男が放った、その声。
それは敵の武神に対して語りかけている様でいて――――それでいて一人の人間に切っ先を定めた言葉の刃であった。

>「……答えられないだろ?」
>「だからこの世界に、君達の居場所なんてない。いなくなっちまえよ」

一方通行ではあるが、それは紛れも無く先ほどまでの『会話』の続き
激情に身を焼かせる事で、感情を引き出そうという卑しい計算。
人の心の傷を切り開く事で中身をぶちまけ様とする、悪魔の様な所業。

それを受ければ、桔梗は激怒か……或いは、絶望を見せるだろう。
ただしそれは――――六角桔梗が普通の少女であったなら、だが。

180 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/06(日) 00:36:35.84 0
「……そうですね」

内藤が取った手法は間違っていない。だが……決定的に的が外れていた。
それ故に得られた回答は、ただの『同意』。

「……その通りです」

無いのだ。桔梗が抱える心の虚は、『そこ』にはない。
確かに、桔梗は今まで自身が成し遂げてきた行為に悔恨し絶望し、諦観している。
自身の行為が生み出した結果を聞けば、動揺もする。

だが、そこまでだ。六角桔梗は、自分が何を成してしまったのかを理解してしまっている。
そして、自身がこれから何を成さなければいけないのかを、彼女自身の中で決めてしまっている。

故に、六角桔梗は自身に向けられるあらゆる悪意を受容してしまう。
悪意と害意で心を切開されようと、その傷口に血を流すだけで、傷の痛みを他者へ向ける事はしない。

内藤が真の意味で六角桔梗の精神に刃を刺す為には、六角桔梗がどの様な生き様を辿り、
何を目的にしてこの戦いへ参加しているのかを知らなければならないのだが……きっとそれは叶わないだろう
何故なら、桔梗は自身に言葉の刃を向けた内藤を、今尚『路傍の石』と同じようにしか見ていないのだから。
今の段階で、自身と同じく『人殺し』である内藤に、桔梗が自身の過去を語る可能性は皆無であった。


・・・閑話休題

どれ程驚愕を覚える事態が起きようと、ここは千変万化の戦場である。
滅びの軍勢という敵対者は、感傷に浸っている間待ってくれる程に甘くも無ければ温くも無い。

>「って――馬鹿野郎社長!今すぐ離れろッ!!」

突如として通信回線から響いたのは、焦燥が多分に混ざったアレックスの怒声であった。
そして――――その声の直後である。
リンネに取りつかれた天使型の武神は、その機体が有する重力制御能力を存分に活用し、中空における降下、上昇、転回の三要素。
本来は機龍の十八番である其れ等を以って、その身にしがみつくリンネを振り解きにかかったのだ。

如何な優れた機体とはいえ、空を飛ぶ為に生まれていない以上物理法則には逆らえない筈だ。
それ故に、天使型武神の思惑通り、あわやリンネが地面へと落とされる。そう見えた。見えた、が

>「社長!ガード!」

更に聞こえた声。動いたのは、敵の武神などよりも更に空を熟知した機龍乗りである、アレックスであった。
アレックスの機龍は怪物じみた速力でリンネを葬らんと動く天使型武神に接敵すると、
尾による急襲とブースターによる離脱と言う、ヒットアンドウェイのお手本の様な挙動を見せ、見事に作って見せた。

>「――輪を狙え!それで落ちる!」

敵には致命の。味方には僥倖の【隙】を。


そして、地に堕ちた天使型武神を見逃す桔梗や内藤ではない。

アレックスの動きに追随して動いたのは、内藤。
彼は天使型武神へと向け、ビルの屋上から降下しながらの攻撃を試みた。
重力加速と推進力により威力を増したその斧槍の一撃は、武神を破壊するのに十分な威力を持っているのは間違いない。

そして……届く一撃を届かない様に『見せる』技能も彼は有している。

恐らく、この場で内藤が用いた技能に気付いたのはニッポン国の関係者か、彼の国の槍使いと交戦経験のある人間。
或いは桔梗くらいのものであっただろう。

181 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/06(日) 00:37:05.78 0
「……ニッポン国の槍術、『竜翼』の発展系ですか」

桔梗の出身国であるイザナ正統皇国はニッポン国を蛇蝎の如く嫌っていた為、桔梗自身はその技術を身に着けさせられていないが
その技能の知識だけは桔梗の脳裏に叩き込んである。
距離を騙る魔技に滅びの軍勢が対応出来ないと見た桔梗は、内藤の動きに連携する様にして攻撃が完了するよりも前に動き出した。

目標は、天使型武神の左側面。

全対応が基本である天使型武神は、当然その桔梗の動きにも反応しようとするが――――いくら反応速度が速いとはいえど、
その身体は一つ。左右同時に迫る脅威に対応しきれる筈も無い。
故に、定石通り。当然の帰結として、片腕を捨てる事で最小限の損害でもう一方の敵を確実に撃破するという行動に移る……だが。

ここで、天使型武神の判断を鈍らせる要素が一つ。
六角桔梗の武神アレスが左手の槍を捨て、代わりに単装式の口径が広い銃を握り、その引き金を引いていたのだ。

これまでの戦闘で槍による攻撃しか行ってこなかった桔梗。その戦法の変更を眼前に捕えた事で、
天使型武神は対槍から対砲撃へと戦術の組み替えを余儀なくされるだろう。
けれど――――それで生み出す隙など僅か数瞬にすぎない。弾丸は機体まで未だ辿り着かず、
武神が銃弾に対応するには十分すぎる時間が残っている

機械的である滅びの軍勢に感情があるかなど判らないが、余裕を持ったままに、
天使型の武神は、その左手に持つ散弾砲を桔梗の放った銃弾へ向け放つ事で、迎撃を試みた。
そして、天使型武神が散弾を炸裂させる寸前に……周囲の味方へと向けて、桔梗から通信が飛ばされた。内容は

『……緊急通達です。……武神及び機龍の採光を、7秒の間1割以下に落としてください』

―――――その桔梗の通信の直後、周囲の空間を眩いばかりの光が襲った


……そう、桔梗が放った弾丸は破壊目的の物ではなく、閃光弾だったのだ。
通常であれば実弾で相手を仕留めにかかるあの場面であえて放たれた閃光弾は、
敵機の光学式の探知機器に一時的な機能不全を引き起こさせた事であろう。

仮に。仮に天使型武神が万全であれば、放たれた弾丸をよく見る事で普通の弾丸と異なるのを判断し、別の応対ができたに違いない。
だが――その情報を知る為の一瞬は、桔梗によって奪われていた。

結果、天使型武神は数秒の間感知手段を制限され、迎撃能力が減少する事と成る。
僅か数秒で組み立てられ、僅か数秒で実行された策略が、僅か数秒敵の時間を奪ったのだ。
それは、あらゆるマニュアルを突き詰めた『亡霊』だからこそ出来る、定石(マニュアル)の裏をかく技法であった。

そして、閃光弾を迎撃した散弾の残りを横に跳躍する事で回避しながら、桔梗はこの場に居る最後の切り札(ジョーカー)に通信を飛ばす。

「……リンネさん……『輪』を、お願いします」

【閃光弾は初期装備】

182 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/09/08(火) 22:46:51.04 0
『メインシステム、修羅場モードを起動します』
降下するグリントガールの胸部装甲が展開し、
胸の谷間に隠されていたプラズマリアクターが光輝く。
彼女の体全体が閃光に包まれると、体の各部を覆っていた装甲がスライド展開し、
下半身を包んでいたスカートアーマーは背中に回って、天使の羽のような形へ変形する。
顔を隠していた仮面が十文字に割れて姿を見せた金髪碧眼のその容姿は、
まさに人間の少女そのものであり、この地上に降りたもう一人の天使であった。

地面に着地したグリントガールは、くるんと回転しながら受け身を取り、
敵天使型武神に対して残心の構えをとる。
『私の名はアップル。
 空想する知恵の実、そして人類の味方。
 お見せしましょう、これが・・・』



時間は少し前まで遡る。
敵天使型武神の羽めがけて背中に張り付いたリンネであったが・・・
>「って――馬鹿野郎社長!今すぐ離れろッ!!」
「なんで?今から私が・・・!?」
解体しようとしていた!
しかしそれをおとなしく待ってくれるほど、敵もお人好しではないのである。
急激な降下と急旋回。それはリンネを振りほどくには十分だった。
「アッーーーー!?」
桔梗が目を見張った通り、グリントガールの、
いわば武神が人間を拡大強化するものであるというコンセプトを突き詰めた完成度は、
自他共に認められるほどである。
だが、それが直接戦闘力につながらないことが今証明されてしまったのだ。
では、なぜリンネはここまで人間に近い武神を開発したのか・・・?

>「ホームラン……!」
「HEEEEEYYYY!!あァァァんまァアりだァァアァ!!」
涙がちょちょぎれんばかりのリンネを乗せたグリントガールは、
吸い込まれるようにビルの屋上にあった貯水槽に叩きつけられた。
「ぐへっ!?」
そして、カエルが踏まれたような情けない声を最後に、
グリントガールは激突した貯水槽の水をたっぷり浴びながら沈黙した。
多くの新兵が一度は経験するように、リンネは武神に乗ったまま気絶してしまったのである。
しかし、その時のための備えはすでにできていた。“彼女”の存在である。
『・・・パイロットの脳波の低下を確認しました。
 プランBを開始します』

>「……と、こんな感じでどうだい?社長。なかなか決まってたと思うんだけど。
> まぁ……さっき見せてくれたロデオの前には霞んじゃうけどさ」
『採点の結果は、0点です』
突然、リンネに話しかけた筈の内藤の声に謎の少女の声が響いた。
厳密に言えば、武神体操の歌を歌っていたのは彼女なので、知らぬ声ではない。
グリントガールに搭載されているAI、アップルである。
『答えられないのではなく、カテゴリーエラーの質問なのです。
 意味があるとか、何のためかとか、それはあなたの世界の問題です。
 世界とは、諸条件が集まり生起する結果がワルツのように続いていくこと。
 リンネ・シーナはこの原因を指摘し、その滅尽なることを解きました。
 そして世に平安のあらんことを』
貯水槽に陥没していたグリントガールが、再起動した。
機体そのものに受けたダメージは少ないとは言え、民間人であるリンネにしては、
まるで何事もなかったかのように無造作に立ち上がる。
間もなく知るであろう、そこにリンネが不在であることを。

183 :リンネ ◆IgMoxdiK1Y :2015/09/08(火) 22:47:44.82 0
>「……リンネさん……『輪』を、お願いします」
地上で閃光弾が炸裂した次の瞬間、もう一つの閃光がビルの屋上から助走をつけて飛び降りた。
『メインシステム、修羅場モードを起動します』
降下するグリントガールの胸部装甲が展開し、
胸の谷間に隠されていたプラズマリアクターが光輝く。
彼女の体全体が閃光に包まれると、体の各部を覆っていた装甲がスライド展開し、
下半身を包んでいたスカートアーマーは背中に回って、天使の羽のような形へ変形する。
顔を隠していた仮面が十文字に割れて姿を見せた金髪碧眼のその容姿は、
まさに人間の少女そのものであり、この地上に降りたもう一人の天使であった。

彼女は叫んだ。
『スペシャルデラックスゴールデンデリシャスグリントパーンチィィィ!!』
グリントガールは敵天使型武神の輪を掠めるような軌道で、
落下エネルギーをヒールの一点に集中させた飛び蹴りを放った。(誤字ではない)

地面に着地したグリントガールは、くるんと回転しながら受け身を取り、
敵天使型武神に対して残心の構えをとる。
『私の名はアップル。
 空想する知恵の実。そして人類の味方。
 お見せしましょう、これが・・・』
グリントガールは背中に背負う巨大な十字架、
プラズマチェーンソー・キラーチューンを構えた。

リンネ・シーナは、武神とは地に足をつけて戦うべき兵器だと考えている。
敵天使型武神を悪趣味と評したのもそうであるし、
このキラーチューンもまた刃を回転させた際に強い慣性モーメントを発生させるため、
空中では十分に効果を発揮できないのだ。

『キラーチューン、アクティブ!』

十字架の中心に収められたプラズマリアクターが閃光を放ち、
周囲から生えた超硬合金製の牙を緑色に照らす。
グリントガールの胸のリアクターと共鳴し、
回転する刃が獣の咆哮のような雄叫びをあげて、その名の由来を示すその時を待った。

【プランBのBは、てってー的にぶちのめせ!のBであり、
 その口パクとまばたきは完璧であった】

184 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/11(金) 02:08:28.28 0
「……まァ、お膳立てはしたが……あァ、ゲイリー、向こうどうだ?」
『Jud.――騎士が落龍しました』
「…………は?」
『音声データを拾った所、AIの暴走と思われます』
「……武神の癖に高度AI……いや、社長もそうか。どいつもこいつも常識の外にいやがるな……」
『Jud.全面的に同意します』

普通、武神には火器管制程度のAIしか搭載しない場合が多い
機械と一体となって動く関係上、『一つの身体に二人』いる状態は不都合が生じやすいからだ
とはいえ、動作補助などで使用することは少なくはないのだが……

「身体動かせるレベルのAIてのは貴重だなァ、後でライブラリ参照させて貰っとけ」
『Jud.既に両名に申請を』
「……仕事が早くて助かるわ、ホント」

因みに、機龍には逆にAIが搭載される事が多い
『操縦』する関係上、人力では間に合わない部分を補佐する為で、ゲイリーもまたそういった理由から搭載されている高度AIだ


>「……?あぁ、問題ないですよ。彼女の性格は僕の読み通りでした。
> 彼女と「仲良く」なれるのも時間の問題です」

>「……君達は、この世に生まれてくるべきじゃなかった」
>「意味もなく、ただ奪い、ただ殺し……憎しみや、悲しみしか生み出すことが出来ない。
> ……何の為に、君達は生まれてきたんだ?何の為に、君達は生きてるんだ?」
>「……答えられないだろ?」
>「だからこの世界に、君達の居場所なんてない。いなくなっちまえよ」

「それにしても――ナイトウは駄目かもなァ。ありゃ自分しか見えてねェ」
「他者を見ているようで、その実『仲良くしてる俺流石』とか思うタイプだな」
「――荒療治が必要かもなァ」
『提案:屋上へ呼び出しますか?Yes/Affirmative』
「オイ肯定しかねーぞどうなってんだ」
『演説が気に入らなかったので、その分もお願いしたく』
『私達は戦いを補佐する為に生まれ、主人の戦いの為に生き、主人の為に散っていくのが本懐です』
『彼の物言いは、全ての戦闘AIに対する侮蔑と判断します』
「おめェが怒ってどうするよ。少なくとも、憎しみしか生まねェってこたァないだろう、ゲイリー」


そんな戯れ言を言う間も戦況は進む
眼下では、件の内藤が『投げ槍』で腕を落とした所だ

「腕はいいんだがなァ……ゲイリー、トドメさせるように準備、六角か社長のタイミングで仕掛けるぞ」
『Jud.』

185 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/11(金) 02:09:29.26 0
>『……緊急通達です。……武神及び機龍の採光を、7秒の間1割以下に落としてください』

『視覚情報を音響センサーに切り替えます、炸裂の瞬間ノイズが走りますがご容赦を』

言うが速いか、アレックスの視界がカラーからワイヤフレームの映像に切り替わる
音の反響データを擬似的に視覚化した、夜間時用のモードだ
無論、対武神・機龍用の閃光弾であれば高音等でそれらをズラすのが普通だが、この距離で、来ることが解っているならば大した問題ではない
「滅びの軍勢に効くと思うか?」
『Jud.事前情報の通りならば、通常の武神・機龍等と同程度には有効です』
「そんな報告あったか?まァおめェが言うなら確かだろうよ」

そして――生まれた隙を、しっかりと活かし

>『スペシャルデラックスゴールデンデリシャスグリントパーンチィィィ!!』

  バ  カ
『非常識の塊』が、パワーアップして追撃を仕掛けた

186 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/11(金) 02:09:42.65 0
『――輪の損傷を確認。AIの挙動とは思えませんね、是非参考に』
「しなくていい。あれは真似るな、バカが伝染る」

>『私の名はアップル。
> 空想する知恵の実。そして人類の味方。
> お見せしましょう、これが・・・』
>『キラーチューン、アクティブ!』

グリントガールの名乗り口上を後目に、一気に真下へと加速
狙うのは――既に傷付いた、『輪』
砲台の展開を、散弾砲を手放した左手で開始しているようだが、明らかに構築速度が下がっている
その間も軽口は続き、
『主人がAIに似たのか、AIが主人に似たのか、どちらでしょうか』
「後者だが相乗効果で倍ドン」
『納得しました。ライブラリに追記します』
「それより――来るぞ!」

天使型が、矢のように降ってくるゲイルウィンドに気付き、天に左手を構える――が、遅い

「そんなノロマな展開じゃ――目ェ瞑ったって避けられらァ!」

まっすぐ手を伸ばしていては、内側には咄嗟に腕を振れない
だから天使型の右手側、左方向へ身を振って回避とし、離れた分の射程は

「LightningBlade398……出力、全開!」
『Jud.!』

一気に4m近くまで伸長した光刃で稼ぐ
最早阻むもの無き一撃は、過たず『輪』を断ち切り、ついに天使型が

「――頭が高ェ!」

――跪いた

それでも。
それでも尚、天使型は抵抗を止めない
左腕は再度散弾砲を握ろうとし、脚部は背中のスラスターを使いながらどうにか立ち上がろうとするだろう
その姿は、いっそ哀れに見える

「――トドメをさしてやれ。俺は向こうの援護に行ってくる」
地面スレスレから機体を持ち上げ、再度舞い上がりながら、アレックスは通信に告げた

【隊長とAI大はしゃぎ】
【天使型堕つ、決定ロール有りで最期のトドメを】

187 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/15(火) 00:22:43.00 0
ヒューガの吐き出した砲撃は、狙い過たず地龍の脚部を穿つ。
鋼と鋼のぶつかり合う、金管楽器をぶち撒けたような音を機龍の集音マイクが拾う。
このまま前のめりの重心を支えきれずに地龍は顎で地面を滑る――はずだった。

「やったかッ!?」

やってない。地龍の疾走は健在だった。
足を破壊されて何故――硝煙が切れた向こうに、その答えがあった。

「二足歩行!!」

まるで人間のランナーがそうするように、地龍は後ろ足だけで地を蹴り走っていた。
尻尾で器用にバランスをとりながら、翼のスラスターを推進力に上乗せし、先程よりも速度を上げてさえいる!

「エリマキトカゲかこいつは!」

>「ロジスティクス三等空尉、弾がもつならばもういくらか足を撃って下さい。無いなら退避を」

「上等だ、カンバン下ろすまで撃ってやらぁ――っと!」

地龍の反撃をロールで交わしながら、一度ロジーは距離をとった。
並走しながら足を止めずに連続攻撃は、いくら機体感覚に優れたロジーでも難しい。
やってできないことはないが、命中率を下げて無駄弾ばら撒くのも機龍乗りの矜持にもとる。
躍動する地龍の二本足をレクティルに捉えながら、ロジーは乾いた唾を飲んだ。

(的が減ったな……レシタールと連携して撃墜(や)るか)

高度を上げて後続と足並みを揃えるべく速度を落とし、後部カメラを確認する。
シュヴァリアーが落下傘なしの空中挺進を敢行していた。
ご丁寧に青天でのダイブ、さながら落馬する騎士のようで、実際機龍から蹴りだされた騎乗武神の姿であった。

「お前何をやってるんだレシタール!向きはともかく理由を言えーーーーッ!!」

ワイバーンは空中で余計な重り(有人)をパージ、加速してヒューガを追い越していく。
ロジーも慌ててアクセルを入れ、ワイバーンの斜め右下に潜り込むようにして並走状態に移行する。

『今!背中から行ったぞあいつ!もうちょっと手心とかねーのかよお前!!』

通信でぎゃあぎゃあがなりたてるロジーであったが、地龍の対空機銃がそれを遮った。
こちらも負けじと応射する。残りの脚部には当たらなかったが、地面を穿つことで速度を減退させる。
シュヴァリアーが、つまりはカイが生きていれば追いつけるように。

『地に足が着いてるってのは想像以上に厄介だぜ。アメフト選手みてーな方向転換しやがって』

さっきから相手の砲火の合間を縫って主砲を撃ち込んではいるのだが、
相手もこちらの砲軌道が見えているのか発射と同時にステップを踏んで躱される。
これは4WDの時にはなかった挙動だ。二本足だからこそできる機敏な動き。
そして方向転換を翼のみに頼る滑空とは異なり、地龍は全身を使って回避行動をとれる。

188 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/15(火) 00:23:51.84 0
(機龍の攻撃って奴はどうにも大雑把になりがちだ。空中機動に神経使うからな)

基本的に、ビーグルの接地面というのは少ないほうが小回りがきく。
自動車よりも二輪車の方が細かく旋回できるように、不安定だからこそ"倒れる"方向を制御できれば素早く曲がることができる。
その論で言えば、機龍を始めとした航空機というのは風を受け舞い上がる『全身』が接地面のようなものだ。
したがって機敏な旋回は軽騎竜でも限界があるし、その制御には神経を使う。
地に足つけて攻撃を放てる武神に比べれば、必然その精度は期待することができない。
……だからこそ、多少芯から外れても余裕で撃滅できるような高威力の兵装を使うのだが。

『当たらねえええええええっ!』

当たらなければどうということもないし、どうすることもできない。
ロジーの思う武神と組むメリットはここにある。
戦闘単位として見た場合、機龍による一方的な爆撃、砲撃は確かに強力だ。
しかしその両方共に、地上の固定目標ならともかく武神相手ではわりとひょいひょい避けられてしまう。
故に、確実に相手を撃滅する為の決戦戦力として武神が必要なのだ。
もちろん、制空権の確保下という前提条件はあるが、攻撃の命中率も回避率も武神の方が上だ。
そして黒の地龍は今、二足歩行により機龍の装甲と武神の回避力という二律の防御を得ている。

『だからとっとと来いポンコツ……!』

シュヴァリアーの武神としての機動力と、そして重装甲をも容易く断ち切る斬艦刀。
地龍を撃破するにはその2つが必要不可欠だ。
ついでに言えば、カイを呼ぶ理由はもう一つ……。

>「こっちに気付かれた……やるしかないのかっ!?」

地龍の視覚素子が僅かなサーボ音と共に後方を捉え、首だけをぐるりと半回転させた。
その龍眼の先に、二刀を掲げたシュヴァリアーの姿があった。

「あっ馬鹿」

容赦なく吐き出された機龍の"ブレス"が、僚武神の半身を爆炎色に染め上げた。
復帰早々爆轟に弾かれたシュヴァリアーが吹っ飛んでいくのをロジーはあんぐり口を開けながら見ていた。

>《――――迂闊に近づけば、こうなるからです》

AI音声と思しき警告が耳に入ったが、支援知性ならちゃんと間に合う助言をして欲しい。
いやもしかしたら支援でもなんでもなくて、カイが裏声でアテレコしてるだけなのかもしれないが。

「カイーーーーッ!!」

ロジーは一拍遅れて僚機の名を叫びながら主砲を連打する。
他所を向いているはずなのに地龍はまるで全方位見えているかのように――実際見えているんだろう――回避する。

『クソ、馬鹿が漫才しながらぶっ飛ばされやがった!お前のお友達だろなんとかしろよレシタール!!』

悪態をつきながら、僚機の通信状態に眼を走らせる。
シュヴァリアーの反応は途絶していない。タフな武神だ、直撃は免れたのかもしれないが。

>「ぐああああああっ!!」

189 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/15(火) 00:25:07.73 0
自動で同期される各機体のステイタスに、カイ機の"右腕部重篤損傷"が追加される。
武神でアレはフィードバックやばそうだ……とロジーは他人事ながらに生唾を飲んだ。
感覚同調を切ったのか、平静を取り戻したカイの無線が届く。

>「さあ―――そろそろ俺たちも攻守交代の時間だ。こっちのグラウンドのランナーを斬りに行こうか」

「てめーを待ってたんだよこのスカタン!」

無論、打たせて取る的な謙虚なプレイをするつもりはない。
ロジーはエナレス球団の誇る千両打者であり、エースピッチャーだ。
傲慢な投手は肩を温存し、露払いの先発としてシュヴァリアーがマウンドに立つ。
二刀による白兵戦。一投、また一投と堅実な空振りを積み重ねていく。
そしてここが正念場、三振目――否!強打!!
強靭無比な龍尾による上下往復の痛打、極めつけに巨体での体当たり。
シュヴァリアーは予定調和のように再び砕けた装甲をぶち撒けながら道路を滑っていった。

「カイーーーっ(二度目)!!」
>「まだだ……たかがメインパイロットをやられただけだっ!!」
「致命傷だよなそれ!?」

武神のパイロットにメインもサブもないが、何故奴はこうもボコボコにされてなお立ち上がるのか。
道路標識を杖代わりに――例の粒子を纏わせながら――みたび、シュヴァリアーは復帰する。

「追撃来るぞっ!対応しろよ!!」

無線に叫びながら、ロジーは機首を思い切り跳ね上げた。
舵先を浮かせた機龍は空気抵抗をモロに受け、失速と引き換えに――空を駆け上がる高度を得る。
その動き、重機竜の月面宙返り。

眼下、地龍がドリフトめいたマニューバで旋回し、後続のシュヴァリアーを射界に捉えた。
その漆黒のあぎとには既にエネルギーが充填されていて、いつでも撃発可能な状態。
龍息。機龍が元来持つ三種の武装――『爪』と『牙』に続く最後の一つ。
お伽話の龍が放つ炎の吐息を再現したこの兵装は、機動に優れる武神さえも射界のすべてを焼き払うことで撃滅する決戦武装!
追いすがるシュヴァリアーの半身を灼いた一撃が、今度こそフルパワーで放たれる!!

「――『待』ってたぜェェ〜〜〜〜この『瞬間』をよォォ〜〜〜〜ッ!!」

地龍のブレスが撃ち放たれるまさにその刹那!
ロジーの駆るヒューガF91はその上空で宙返りのフォロースルーに入っていた。
270°ひっくり返ったヒューガのあぎとは大地へ向けて開け放たれている。
そこからせり出すのは――もう顔なじみとなった356mm主砲だ。

レクティルに投影された二円は、遥か眼下で地龍がブレスを放たんと開け広げた顎を捉えた。
ドバッ!と大気の押し出される音と共に、自由落下よりも強烈な火薬の後押しを得た鉄塊が吐き出された。

――ヒューガの主砲では地龍の装甲は破れない。
防御の薄い箇所を狙おうとしても当たらない。
唯一構造的に脆いであろう開口部を狙おうとすれば、それすなわち自身が火線に真正面からさらされざるを得ない。
だからロジーは一捻りの工夫を加えることにした。
地龍の脳天へピンポイントに500キロの鉄塊が打ち落とされる。

「その口閉じてろクソトカゲ!!」

ブレス発射のタイミングに合わせて、その上顎を上から押さえつけてやったのだ――砲弾で。
地龍の龍息の特性は先程のシュヴァリアーの犠牲で既に確認済み。
拡散系のブレスが拡散する前に暴発した場合の威力など、最早論ずるまでもあるまい。

「このおれの初陣を飾る……花火になりやがれ!!」

【ブレス放射の直前でワニワニパニック】

190 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/09/15(火) 09:09:14.87 O
シュヴァリアーが背から落ちたとき、フレイアはため息をついていた。
センサーから集音まで、武装以外は充実しているワイバーンで二人の会話は丸聞こえであったのだから。

>《離してください! 貴方が手を開かないと言うのなら……私の無理でこじ開ける!》
>「考え直せ! この状況で……シホ少尉でも、それと同じコトを言ったと思うのか?」
>《シホ様なら、ですか……?……ええ。無論、そのようにおっしゃった筈です》
>「ああああっ!? そーいえばそーいう女だったっ!?」
>《……隙あり! この機体(からだ)は、貰った――――!! 精神的動揺は命取りですよ、カイ様》

「AIと喧嘩してどうするのです…もしや、あれが馬鹿という存在なのでしょうか?しかもどなたですかシホ様」

結果的に地に落ちる龍騎士をどうしたものか迷ったが、あえて迎えにはいかないことにした。宙で捕まえても、いい的になってしまう。
どちらにせよこの前足では傷付けてしまうだろうし。

>「お前何をやってるんだレシタール!向きはともかく理由を言えーーーーッ!!」
>『今!背中から行ったぞあいつ!もうちょっと手心とかねーのかよお前!!』

「いえ、降りてもらう前にシュヴァリアーのAIが落としました。ハードポイント操作は一任しております」

飛び降りてもらおうとは考えたが、まさかAIによって落ちるとは。機体制御すら奪うなんて、どれ程高性能なのやら。
そもそもあの二人(?)こちらの話を聞いていてくれたのかも怪しい。
だが結果はあまり変わらなかった為、初めに言った通り敵の注意を引き付けようと舞うが…いかんせん武器らしい武器がない身では注視されない。

>『当たらねえええええええっ!』

「叫ばなくてもわかります。あれに当てるのは熟練者でも中々難しいのではないでしょうか」

通信に入る叫び声は、仕方ない事実を言っているだけだ。
寧ろあれだけ近くに当てられる腕は、ミーティングで吼えただけはある力量。
ロジスティクス三等空尉は確かに良いパイロットだ、それでも相手が悪い。
そして黒き龍は落ちた騎士に狙いをつけた。
普段なら、割り込めただろう。だが、拾いすぎた音に、言葉に大事な一瞬が奪われてしまっていた。

>「……君達は、この世に生まれてくるべきじゃなかった」
>「意味もなく、ただ奪い、ただ殺し……憎しみや、悲しみしか生み出すことが出来ない。
> ……何の為に、君達は生まれてきたんだ?何の為に、君達は生きてるんだ?」
>「……答えられないだろ?」
>「だからこの世界に、君達の居場所なんてない。いなくなっちまえよ」

意味もなく殺してきた。
何の為に?生きる理由?
ああ、私にもそんなものはない。
他の『誰か』へ向けられた言葉に、フレイアは過敏な反応を示してしまった。
故に、ただ飛行だけを続けたままで、シュヴァリアーの元へ飛べない。

>『クソ、馬鹿が漫才しながらぶっ飛ばされやがった!お前のお友達だろなんとかしろよレシタール!!』

「居場所なんて…ない。友達がなんなのかも…わからない…私は…」

カイ准尉が二度めの大打撃を受けた直後から、更なる上空へ飛び上がる。眼下には三機ともが見えるほど、高く。
同時にIFプログラムを生成『ワイバーンは内部パイロットの死亡を確認した場合、敵機に特効すべし』
…自爆できずとも、今の機体環境ならばダメージを与える爆発が起こるだろう。
あくまで最悪の可能性用に、それでも確実に発動するように、書き加えた。

191 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/09/15(火) 09:13:22.90 O
距離は離れたが、回線は途切れてはいない。

>《もう一度、交代しましょう。貴方はともかく、シュヴァリアーのダメージが深刻だ》
>「まだだ……たかがメインパイロットをやられただけだっ!!」
>《その勇気は称賛に値します。しかし――――それは道路標識です、カイ》
>「致命傷だよなそれ!?」

「……メインカメラの間違いですかね…」

シュヴァリアーの被害は甚大、AIがなければとうに戦闘不能だろう。
そんな彼らを黒の地龍は狙い、再び地を駈ける。
一気に距離を詰めたその姿は、シュヴァリアーのみを敵としているかのようで…今のフレイアには好都合だった。
機体をひねり天をあおぎ、そのまま翼を一二と羽ばたかせる。そうすればワイバーンは下へ落ち始め、再度機体をひねり地の龍を見定める。
初速がついてからの重力加速は飛ぶより速く、龍への距離を縮める。

>「このおれの初陣を飾る……花火になりやがれ!!」

その間にロジスティクス三等空尉の砲撃により、龍息の暴発が起こる。
申し訳ないが、素晴らしい、と言葉を放つ余裕はGによりない。
アレックス中佐のように速く飛べない、ロジスティクス三等空尉のような武器もない、だから位置エネルギーを利用するのがワイバーン。
勿論ただ落下しているわけではなく、目標点は地龍頭上、つまりは武装。上手くいけばあの強力な武器を破壊できるだろう。
肩の砲から放たれるであろう弾は、頭脳で行った予測にて回避行動を先んじるよう入力済みだ。
もしパイロットに被害を出すほどの攻撃を受けたとしても…先程のプログラムがある。
実際、地龍から迎撃らしき砲撃は飛んできた。だが下から上へ飛ばすには、重力が邪魔をする。ロジスティクス三等空尉の攻撃のお陰か、数もかなり少ない。
お陰で、畳んだ翼の一部や肩の装甲が抉れていっただけですんだ。地まであと数秒という間に、フレイアは自分の存在と言うものを考える。
機体すら、AIが動かすのならば…自分の存在意義は何なのか?死を恐れないだけならば、機械と同じだ。なら、フレイア=レシタールとは何なのだろう。
答えは見つからないまま、地上が近付く。
最後の動きは、回転。
地龍の頭に降ってきた白龍は、首目掛けて尾を降り下ろした。
叩き切れれば最高だが、結果を確認する余裕なく、ちぎれかけている尾でそのまま跳ね―――
―――シュヴァリアーの隣へ着地した。

「私の存在意義などどうでもいい事でした、さあ、乗ってください…You have control」

192 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/09/15(火) 17:22:39.82 0
天使型武神を追い詰めた。
先ほどとは打って変わっての好展開。
だが内藤の表情は、それに反して笑みが薄れていた。

理由は二つあった。

>「……その通りです」

(って、冗談だろ?じゃあなんで、君はここにいるんだ?)

六角桔梗が自分の言葉に対して述べた返事が、あまりにも予想外だった事。
まずそれが一つ目。

(アレは……なんだったんだ?強がりでもない。無視された訳でもない。
 本当に、ただの同意……けど、どういうつもりで?
 ……駄目だ。全く分からない。彼女は、一体何を考えているんだ?)

考えても答えは出ない。
内藤は、あくまで感覚の上での話だが、深く溜息を吐いた。

(……また、これか)

そして閃光弾が爆ぜ、採光を抑えた眩い暗闇の中でそう呟いた。

内藤=ハイウィンド=隆輝は、人の感情を「感じ」取れない。
理解出来ないのではない。
言葉や文章による説明を得れば「そういうものがあるのだ」と解する事は出来る。
そしてあたかも自分が暖かな「それ」を持ち合わせているかのような振る舞いも取れる。

(幾ら覚えても、本当にきりがないなぁ)

しかし、あくまでも上辺だけだ。その本質は、内藤には決して感じられない。
故に、彼は何度かそれが原因で人間関係に軋轢を生じさせてきた。
戦場における殺人観を巡って、同僚との仲が険悪になった事もある。

>『答えられないのではなく、カテゴリーエラーの質問なのです。
  意味があるとか、何のためかとか、それはあなたの世界の問題です』

(……うぅん、それにしてもつくづくアレは図星だった)

そして彼の笑顔が薄れた二つ目の理由はそれだ。
人工知能「アップル」の言葉は、彼の本質を射抜いていた。

「……僕が0点なら、君は100点満点だな」

天使型の「輪」を断ち切ったグリントガールを見て、そう呟く。

内藤には、「生きる理由」がない。
死にたくない理由ではなく、生きる理由。
是が非でもこれを成し遂げるのだという意志の対象が彼にはない。

それだけならば、凡百の人間となんら変わりはない。
だが彼らはただ持っていないだけだ。
心の中には「それ」の台座がちゃんとある。
そこに何も置かれていない事に空虚や焦燥を感じる事もある。

内藤は、自分はその台座すら持っていない事を知っていた。
その事に空虚も焦燥も感じない。自分には「快」と「不快」しかないと。
それが異常である事も、知っていた。

193 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/09/15(火) 17:28:10.05 0
(まぁ……仕方ないな。また新しく覚えよう。今までも、そうしてきたんだし)

だが内藤は、それでも今まで社会生活を送ってきたのだ。
分からないものと巡り合う度に、それがどういうものか理解する努力をして、実らせてきた。
円満な人間関係と、「真人間な自分」を勝ち取ってきた。

(……っと、そろそろやめとこう。こういうのは、深く考えれば考えるだけ嫌な気分になる)

内藤は挫けないし諦めない。
自分が異常な人間だと認めて、そこで足を止めてしまう事は、最大級の不快だからだ。

>「――トドメをさしてやれ。俺は向こうの援護に行ってくる」

「……了解」

天使型との距離は極めて近い。
槍は、天使型のすぐ傍で地面に突き刺さっている。

「あぁ、そうだ。さっきは赤点取っちゃったからね。
 再テストを受けないと。これが最後のチャンスだし」

天使型が散弾砲へ手を伸ばす。
だが竜夜乗りの内藤からすれば、あまりに緩慢過ぎる動き。

「……でも、難しいなぁ。僕の世界と、カテゴリーエラーか。
 と言う事は、100点をもらうには彼女の世界を理解しなくちゃいけないのか」

尚も立ち上がろうと足掻く天使型を、内藤は見下ろす。
視線は外さないまま、地面に刺さった槍を引き抜き、構えを取った。

「……いいや、やめた。どうでもいいや、君の事なんて。
 大事なのは……君らと戦ってる僕は超カッコいいって事だけさ」

散弾砲を掴んだ天使型が、その砲口を内藤へと向ける。

示し合わせたように内藤も動いた。
右手の「掴み」を先ほどの『竜翼』とは逆、穂先に近づけ、柄を腹部に密着させる。
そして体幹を捻転。腹部で柄を押し出すように、腰の回転を槍の加速に乗せる。
放たれた斬撃は、近間の、槍を用いたものとしては異常なほどに鋭く、

「『竜巻』」

瞬間、天使型の左腕の、肘から先が消えていた。
関節部を的確に切断されたのだ。
宙空に投げ出された、天使型の左前腕が黒霧と化す。

「……はい、おしまい」

平時の穏やかな声色で内藤はそう言って、その場から路肩へと一歩退いた。
最後の早撃ち勝負じみた交錯を終えた時点で、もう十分に「カッコいい」は満喫出来た。
要するに天使型から興味が失せたのだ。トドメに拘る理由が、内藤には無かった。

そんな事よりも遥かに重要なものがある。

(僕は、必ず君を理解して、仲良くしてみせる)

蛇の如き執着が、笑顔の奥で炎のように燃え上がりつつあった。


【わりと痛いところに刺さった】

194 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/17(木) 23:35:49.03 0
最善を試みる全対応。
それが故……優秀であるが故に演算ミスを引き起こす。

虚と実を交えた悪辣な桔梗の閃光弾による一撃は、
生身の人間が直視すれば失明を免れない光量を放ち、天使型武神を翻弄する。

貴重な攻撃の機会を利用して放たれた非合理にすら見える一撃は、ただ一つの傷すら相手に与える事は無かった。
だが、代わりにそれは天使型武神の『時間』を簒奪した。
人間にとっては僅かな、しかし武神にとっては黄金にも等しい価値の有る時間。

>『スペシャルデラックスゴールデンデリシャスグリントパーンチィィィ!!』

そして――――その黄金の時間の中で、鋼鉄の天使は降臨する。

>『私の名はアップル。
> 空想する知恵の実、そして人類の味方。
> お見せしましょう、これが・・・』
>『キラーチューン、アクティブ!』

滅びの軍勢の黒の天使、その輪を掠めるように「蹴り」を中空から放ったその武神は、
武神が機械である事を忘れさせる様な、違和感を覚える程にしなやかな動きで回転しながら受け身を取り、
威風堂々と名乗りを上げ、その手に持つ武器……緑に燃えるチェーンソーを構えた。

黒と赤で作られた鉄の身体を持つ滅びの武神。
緑光を纏い輝く、少女を模した体を持つ武神。

それは、大昔に歴史の流れの中に消えた神話にある、対峙する天使と堕天使の様な光景。
グリントガールの奏者――――Artificial Intelligence・アップル
人に非ずして機械の神を繰る者。

地を転がり敵の散弾を回避した事で泥にまみれた桔梗は、武骨な鉄の体を立ち上がらせながら、
君臨するその機体を見て小さく呟く。

「……機体を完全制御するAI……実用化していたのですか……」

用いられている技術への賞賛と、単純な驚きから漏れ出た言葉。

「…………パンチは、何処へ……」

余談ではあるが、呟きの最後に平坦な声色で放たれた台詞は、戦闘の狂騒の中に掻き消える事と成る。

――

195 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/17(木) 23:36:22.21 0
そして、桔梗がグリントガールに注意を向け、戦況を観察しながら体勢を整えている最中――――

>「LightningBlade398……出力、全開!」
>『Jud.!』

先程の天使を追うかの様に、天から一匹の龍が流星の如く降りて来た。

其れは、まるで自身の住処である天空を侵犯した愚者への憤怒を示すかの様に、真っ直ぐに黒赤色の武神へと向かう。
正しく疾風、音にのみ聞こえる迅雷の如く。
身を振る事で軌道を変え、滅びの軍勢の反撃を封殺しながら、

>「――頭が高ェ!」

機龍ゲイルウィンドは其の光刃にて、天使型武神の『輪』を斬り、堕とした。

『 ――――! 』

光刃に破砕され制御装置が失われた事で、黒赤の天使型武神はその身を空へと保つ手段を失った。
過大な負荷によって各部関節は自壊を始め軋みを上げる。その耳障りな音はまるで悲鳴の様であり、
それでいて立ち上がろうと……戦おうとする姿は、いっそ哀れですらあった。

>「――トドメをさしてやれ。俺は向こうの援護に行ってくる」

「……引き受けました」

戦場に生きる者のある種の優しさであり、厳しさなのだろうか。
アレックスは通信回線から桔梗たちにそう告げると、後方のロジスティクス、フレイア、カイの支援に向かって行く。


そして、残るのは半死半生の赤黒の天使。
打ち倒すのは困難ではないが――――恐ろしい。
負傷した獣は、人は、AIは、何をやらかすか判らない。それらは皆、燃え尽きる寸前の蝋燭の様な強さを持つ。
それはきっと、正体不明の滅びの軍勢とて例外ではないだろう。


だが、そんな滅びの武神の前に臆さず立つ影が一つ。

内藤=ハイウィンド=隆輝

先程、桔梗の動揺を誘い、加えてその傷を更に抉ろうとした正体不明の何かを持つ……或いは持たない男。
内藤は今、先程放った槍を再びその手に持ち、立ち上がろうと足掻く赤黒の天使型武神の傍に立っている。
どこか冷めた空気を纏いつつ構えを取る彼は、天使型武神を打ち払わんとし

「……回避を……!」

そこで、天使型武神が動いた。軋みを上げる身体を無理やり動かし、その手の散弾砲を内藤の武神『竜夜』へと向ける。
通常の武神搭乗者であれば、激痛や……或いは想像力(イメージ)の不足から不可能であろう動きを、
自身の損壊を度外視し、滅びの軍勢はやってのけたのである。
敵の動きを察知した桔梗は、内藤に回避の警告を投げかけ――――だが、それは徒労に終わる事と成る。

196 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/17(木) 23:37:13.36 0
>「『竜巻』」

内藤が呟いた直後、一陣の風と共に砲を持つ天使型武神の左前腕が宙を舞い……黒い霧と成って消失したからだ。

>「……はい、おしまい」

実行者は当然、内藤。穏やかな声で言ってのける彼であるが、その所業は尋常のものではない。
槍を体幹の回転と同期させる事により加速し、超速の一撃を見舞う。
言うは易いが行うは難い。『竜夜』という速力に特化した機体の制御を十全に行い始めて行使出来る技能であった。

「……『到達技能』」

そんな内藤の技を見た桔梗は、その脳裏によぎった世間一般では聞きなれない単語を呟く。

内藤が行った技の難度は――――端的に言えば、桔梗が再現不可能と言えば判りやすいだろう。
六角桔梗は、マニュアルに載っている技術であればどれ程高等な技能であろうと実現出来る。
平凡な量産型武神で、理論上だけに存在する机上の空論を現実に行う為の訓練を行って来たからだ。

しかしそれでも、機体と技能が噛みあう事で真価を発揮する類の技能は再現出来ないのである。

今しがた内藤が見せた『竜巻』。あれは『竜夜』と言う武神と、それを乗り熟す優れた搭乗者が行って初めて意味を持つ業だ。
圧倒的な速度を持つ武神がその機体の挙動を十全に掌握した上で行う、高速を超越する為の妙技。
それを実行する為の訓練は、武神『竜夜』を保有していないイザナ正統皇国では不可能である上に、
仮に訓練の果てにアレスで似た動きを拙く行おうと、全く意味が無い。
量産型武神が多少加速しようと、元来速力の高い武神相手はただの的に過ぎないのだから。

其の武神が持つ特性にパイロットの訓練が噛みあう事で生み出される、一種の技巧の到達点。
『亡霊』ですら成しえない、ある種其の機体の頂に到達した技能。それを、桔梗の祖国であるイザナ正統皇国では『到達技能』と呼んでいた。
そして、桔梗の中の定義では内藤の技は紛れも無くその『到達技能』であったのである。


「……敵機損壊大。……沈黙させますので、付いて来て見せてくださいグリントガールAI」

目視した内藤の技巧に僅かな興味を持った桔梗であったが、その事で戦闘を忘れる様な事は無い。
リンネの武神、今はAIによりコントロールされているグリントガールへ通信を飛ばしてから、
射撃時に地面へ投げ捨てていた二槍の内の一本を拾い上げると、天使型武神へ近づく。
それは、止めを刺す為――――ではない。

「……武器を失った武神の最後の切り札は……白兵戦」

桔梗が近づいたのは、滅びの軍勢の天使型武神が見せる、末期の一撃を落とす為であった。

197 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/09/17(木) 23:38:37.02 0
そう。桔梗の予測通りに、天使型武神には最後の一撃を放つ余力が残されていた。
腕を失い、翼を失い、重力という名前の鎖に縛り上げられながらも――――天使型武神は立ち上がったのである。
関節部がスパークを挙げ、動力部に当たる部分からは黒煙が立ち上あがりながらも、
彼の武神は残るエネルギーを動員し、放射しきれない熱により空間を歪めながら前傾姿勢を取り、
接近してきた桔梗に対し、突進をはなったのだ。
洗練されていない何とも泥臭い攻撃であるが……それ故に威力は絶大。
巨大な金属塊の突進は、まともに受ければ出力に特化した武神でない限り受けきれる物ではないだろう。
そして、その進行方向上に居た桔梗は

「……定石通りの判断ですが……応用力が足りません」

淡々と言ってのけ、その直後――――突進する天使型武神を、桔梗の武神アレスが『すり抜けた』。
そして同時に、赤黒の天使型武神の左肩から右脇腹にかけて斜めに亀裂が入り、小さな爆発を起こしたのである。

その光景を見た者は、ある光景を思い出すであろう。
そう……この戦いの序盤。敵の武神が放った砲弾を、桔梗が槍で受け流した光景を。

そして、その想像に間違いは無い。

桔梗は、前傾姿勢で突撃して来る武神のその左肩に、左手に持った槍の穂先を斜めに当てた上でその前面へと滑らせ、
そのまま突進の勢いを利用して彼の武神の前面装甲を削りつつ、最後には自身の左腕も使い強引に体制を崩させながら、
右脇腹まで切り抜くことで、武神を体当たりごと斬り、受け流したのである。

進行方向を意図的に、雪山を滑らせるかの様にずらせば、攻撃が当たる事は無い。
理論上は可能で、そして現実的ではない技術であるが――――それが出来てこその『亡霊』である。
それが銃弾であろうが、武神であろうが、六角桔梗はやってのける。

「……準備はいいですか?」

そして、声をかける桔梗。その相手は勿論――――グリントガールのAI『アップル』だ。

天使型の武神を倒すには、桔梗のアレスでは出力不足である。
だが、彼女が手に持つ装備であれば……きっとそれは、十分であろう。

【体当たりを切り抜ける】

198 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/20(日) 21:57:56.95 0
【シグナル・ジャンクション(T)】


『……緊急通達です』


――――高架下の交差点。
滅亡のその日から、いかなる色をも灯さなくなったLED。
指示すべき車両を失った信号機に隔たれ対峙するのは、灰色の騎士と黒の地龍。
隣接エリアの中空で閃光弾が爆ぜた。その白光を背負いながら、騎士はバイザーの遮光度を上げる。


『……武神及び機龍の採光を、7秒の間1割以下に落としてください』


閃光に漂白された七秒間が始まった。


《その勇気は称賛に値します。しかし――――それは道路標識です、カイ》

「気にする様なコトじゃないさ……この"標識"は"間違い"だったんだからな」

騎士が道路標識(さいしゅうしゅだん)を容赦なく打ち棄てた。
黒の地龍は、路面に刻まれた"一時停止"の白線の前で前進を止めている。
人間の操縦者であれば、勝利の確信が挙動に綻びを生じさせた可能性もあった。だが――
――おそらく、この敵機に限っては警戒体勢を維持したまま、こちらの動静を観測しているに過ぎない。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

――――鳴り響く破滅の予兆が、交戦域の空白を塗り潰していく。
武神と機龍による激しい総力戦は、街に立ち並ぶ建造物に甚大な被害を与えていた。
とりわけ、地上戦の遮蔽物として利用され、あるいは対空火砲に晒される巨大高層建築群の損壊が著しい。

《カイ……貴方は一体、何を――》

「――まだ分からないみたいだな。俺はこう言ってるんだぜ……『"この場所"は"行き止まり"なんかじゃあないッ!』
 機体の現在位置……俺達が地龍型の攻撃で吹っ飛ばされて来た"この道路"に見覚えは無いか?
 それとも、景色を楽しむって発想が無いAIのお前には、どの道路も同じに見えるのか?」

《市街戦においては高架道路の障害など、さして珍しいものでも―――はっ! まさか……》

「どうやら気付いたらしいな、アンリ」

《ええ……ようやく思い出しました。"私たち"が……あの時"どのようにして"地上に降りたのか》

「……ああ、そうだぜ」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

「そして"シュヴァリアー"は、すでにッ! "戻って来ている"のさ……最初の"落下地点"にな」

ドギャァ―z_ン!!

襲い来る衝撃ッ!
先程から倒壊を始めていたビルの一角が、ついに崩れ落ちたッ!
激しい地鳴りの中で、アレスが放った閃光弾の明るさは、徐々(ジョジョ)に薄れつつあるッ!


[/// TO BE CONTINUED...>

199 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/20(日) 23:47:57.57 0
【シグナル・ジャンクション(U)】


《確かに……この位置ならば、あと僅かな距離でブリュンヒルデの声が届きます》

「奴が動き出す前に、賭けに出るぞ。
 エクスターナル・バッテリーを使う!」

《わかりました―――"レオンハート"リチャージ開始。
 数秒ほどでヴァルキリーシステムの稼働域に達します》

「セブンソード・フォーメーション……やれるのか? 一番と二番は!」

《ヴァルトラウテは二時方向、ジークルーネは十一時方向、いずれも黒竜と近い。
 ラグナ粒子の生成量も充分でしょう。しかしそれでは……断言しますが、カイ―――》

『追撃来るぞっ!対応しろよ!!』

《―――おそらく"貴方が"持たない》

「そんなコトはわかってる!
 けど……不味いな、もう少しだけ近づかないと。
 ここで起動しても、エクスカリバーに届かないんじゃ意味が……リチャージは!」

《まだ間に合いません!
 ロジスティクス……簡単に言ってくれますね。
 やはり、ここは近距離のヴァルキリーだけでも呼び戻して―――くっ!》

シュヴァリアーの微細な変化に対して即座に反応し、両の黒翼を開く地龍。
損傷部位を顧みない強引な制動/機体出力に任せた前方への突進。
さらには後方への威嚇射撃を同時に行う、マルチ・タスクだった。

「アンリ……いや、アンリさん! 奴を止めろっ! さっきの"ブレス"を撃たせるな!!」

《無理を言わないでください、カイ……もう一撃だけ、耐えられませんか。
 貴方の高潔な遺志は、私が引き継いで後世に語り継ぎます。
 痛いのは、ちょっとの間だけですから、ね?》

「いいや、限界だ! 死ぬぞっ!? ……無茶を言ってるのはどっち―――だあああっ!」

眼前に両腕を交差させてフィールドを展開する騎士。
防御姿勢で後方へと跳躍/着地/戦乙女の加護領域に踏み込む。
だが同時に、それすら予測していたかの如き精度で放たれた龍の吐息は――――


『――『待』ってたぜェェ〜〜〜〜この『瞬間』をよォォ〜〜〜〜ッ!!』


――――この戦域に存在する、"もうひとつのブレス"だった。

200 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/21(月) 07:20:36.20 0
【ヴァルキリー・システム(T)】

『このおれの初陣を飾る……花火になりやがれ!!』

青龍の射撃精度は、垂直落下の最中に於いても正確無比だった。
直撃した規格外の質量弾が、地龍の頭部装甲を自身と同様の形状に陥没させる。
外装圧壊による半密閉状態の口腔で、放射寸前まで充填された拡散砲のエネルギーが暴発した。

「――――ヒューガのマグナムブレスかっ?!」

《宣言通りの、きたない花火ですね……さすが機龍乗りは、きたない》

「それにしても、初陣……? いま初陣って言ったのか、あの逆噴射空尉は」

黒の地龍は自らの吐息に灼かれながらも、未だ健在な肩部大型砲で対空弾幕を形成。
噛み合わせに致命的な齟齬が生じた顎の隙間からは、紅炎と黒煙が立ち上っている。
その龍頭が不意に爆散した。充分な遠心力と共に振り下ろされた白龍の追撃だった。

『私の存在意義などどうでもいい事でした、さあ、乗ってください…You have control』

《カイ、空から女の子が。
 彼女の白竜が共に駆けてくれるなら、
 "一太刀"あれば充分です―――そうでしょう、カイ?》

「ああ……。ロジーもフレイアも、本当に頼りになる仲間だ。
 この部隊に来て……二人と知り合えて良かったと思ってる」

《ラグナロクエンジン・フルドライブ―――機体出力100%
 シュヴァリアー、モード・ヴァルキリーに移行します》

「そして……やれやれ、間に合ったみたいだ」

《七番"シュヴェルトライテ"――――R-LINKフル・コンタクト》


〓┣━【◎】[VSH:Brünnhilde]⇔[Versatile Armament of R-Link Control Unit for Remotely Integrated Engagement]━┫〓
┏┛
┣━【○】[VST/01:Waltraute]⇔[EAW-KS/R Blade Gun Bit "Standard Calibur"]━┫
┣━【○】[VST/02:Siegrune]⇔[EAW-KS/L Blade Gun Bit "Standard Calibur"]━┫
┣━【●】[VST/03:Gerhilde]─╂─[EAW-SB/R Blade Gun Bit "Standard Calibur"]━┫
┣━【●】[VST/04:Grimgerde]─╂─[EAW-SB/L Blade Gun Bit "Standard Calibur"]━┫
┣━【●】[VST/05:Ortlinde]─╂─[EAW-AD/R Blade Gun Bit "Standard Calibur"]━┫
┣━【●】[VST/06:Helmwige]─╂─[EAW-AD/L Blade Gun Bit "Standard Calibur"]━┫
┣━【◎】[VST/07:Schwertleite]⇔[EAW-GSX Long Buster Sword Rifle "Extreme Calibur"]━┫
┗━【−】[VST/08:Rossweisse]━┫┣━[EADU-VGW High Mobility Flight Unit "Air Force Silhouette"]━┫


「来てくれ、エクスカリバー……いや――――」


傷創の騎士は、右腕で空を衝き上げ、あらん限りの力で五指を広げた。
広域拡大されたラグナロクフィールド領域内部と外部の境界線。
その僅か内側で、広場の小さな噴水塔が振動を開始する。


「――――"来い"!!」


ラグナフレームの共振に応えた冷泉の戦乙女が、契約の騎士の手に約束された勝利を導く。
鋼の楔は、その身を再び刃と成して、進路上に存在するあらゆる障害を斬り裂いて飛来した。

201 :カイ ◆xMZSJ.LKvw :2015/09/21(月) 07:21:37.23 0
【ヴァルキリー・システム(U)】

――――硬質な可動音。手にした斬艦刀のグリップ/ガード/リカッソが割れた。
それと呼応するかの様に左右レッグカバー、フロント/右サイド/リア/スカートアーマー、
続いて左アームガード、右ショルダーアーマー、ブレストプレートが発光を伴って次々に展開。

「居場所が無いんだったら、俺の隣に居ればいい。
 まだ今は、友達だって認めてもらえなくても―――」

機体出力上昇に連動した可変機構/スライド構造の損傷した部位が放熱手段を失って過熱する。
装甲の空隙から溢れ出す翠緑の光輝/粒子の源泉たる内部ラグナフレームの露出。
背部に存在する長短二対四基のスタビライザーだけが例外的だった。
そのスリットからはスタンカリバーの刀身が露出している。

「―――それでも俺は、君のパートナーだ……フレイア」

己の傍らに降り立ち佇む白竜。その傷付いた背中を撫で、灰色の騎士が騎乗する。
左右側頭部ブレードアンテナが正面に移動し、額部メインセンサーの根元に連結。
フェイスガード展開と同時にバイザーが格納され、デュアル・アイに光が灯った。

《レオンハート解放、出力200%! 機体出力共有確認、ワイバーンへの供給を開始します》

「……行こう、ワイバーン」

双翼に纏った翠緑の残光だけを地表に残して―――白龍が飛翔した。
急加速する毎に、粒子フィールドは範囲を広げて機体を覆い、
急制動の度に、暴風の如く渦を巻いて唸りを上げる。

「お前がずっとフレイアの翼だったって言うなら、俺がフレイアの剣になってやる」

シュヴァリアーの装甲表面を覆うエアフォース・グレイの重金属塗料が、放熱効果により急激に剥離し始める。
生成された質量を持った残像は、駆け抜けた軌跡に機影を投射して黒の地龍のセンサーを撹乱する。
翠緑から黄金へと色彩を変えたラグナロク粒子が、両手で頭上に掲げた斬艦刀に集束していく。

「フレイアが、いつか友達と笑い合える未来を……可能性を視せてくれ! シュヴァリアー!!」

――――刹那の間隙の中で、幾度と無く繰り返される急旋回と急上昇。
白竜の機動は、黒の地龍の動体捕捉性能を完全に置き去りにしていた。

《出力供給、ワイバーンからシュヴァリアーへ……出力230%……出力240%……カイ、これ以上は!》

「俺だけじゃない。ロジーだって、みんなだって、きっと同じなんだ。
 戦う理由があるから此処に来た……叶えたい願いがあるから此処に居るんだ! だから今――――」

《出力250%……出力260%……ラグナロクエンジン・オーバードライブ!!》


「――――限界を越えてみせろ! エクス……」


斬艦刀が撃ち出す刀身――高密度高延性の大質量金属――を覆い照射される複層ラグナフィールド・ビーム。
第三層の超音速衝撃波/動的超高圧下の刀身がユゴニオ弾性限界を突破/崩壊/可塑流動性を得る。
円錐形の第二層/刀身はホロウ・チャージ効果により超高速噴流と化して地龍の装甲を侵徹。
第一層/メタル・ジェットの侵徹と同時に高エネルギー化したラグナ粒子が臨界に到達。


「……カリバァァアアア――――!!」


――――極光と灼熱の奔流が、黒の地龍という存在を構成する全ての要素を破壊し尽した。

202 :名無しになりきれ:2015/09/21(月) 20:50:21.38 0
『またね、ゲイリー君』
グリントガールは飛び去るゲイルブレイドに手を振った。
『トドメをさす・・・?ああ、バラバラにしろという意味ですね。
 喜んで。そのためのキラーチューンです』

あらかじめ断っておくことがある。
それは、アップルとその作者たるリンネには、パイロットの固有な必殺技には興味がないことである。
リンネの場合はそれを見極める目を持っていないという事情もあるが(そういう意味では六角とは対極に位置する)、
アップルにそれを完璧に模倣させるような真似もさせない。
それはリンネの兵器開発における考え方によるところがある。
すなわち、特殊な技能や才能がなくても、何時間のトレーニングで、
どのくらいの費用対効果を得られるかを考える上では、むしろこういった職人芸は邪魔ですらあるのだ。
求めるのは誰が扱おうとも、正しい運用法で用いれば必ず一定以上の成果をもたらす兵器であり、
その一つの成果がこのキラーチューンである。

チェーンソーという工具を知らない人間は少ないだろう。
レールに沿って輪廻する刃が披切削対象を連続的に削ぎ落とし、切断する工具である。
では、プラズマチェーンソーとは何であるか?
キラーチューンを兵器たらしめる、工具としてのチェーンソーとの違いはいったい何であるのか?
それを解説するには、まず武神を含めた機甲兵器の装甲に多く使われている鋼について説明しなければならない。
鋼と鉄の違いは、乱暴に言うと中にある不純物が多いか少ないかで決まる。
不純物などと書くとなんだか母材に悪そうな感じがするがそうとばかりではない。
この不純物、特に炭素は、鋼に熱処理を加えた際に鉄の結晶構造を変化させて、強くするのだ。
逆に言えば、熱処理を加える前であれば鋼も鉄もほとんど同じように弱いものである。
キラーチューンは、プラズマの作用を用いて鋼を無理矢理熱処理前の弱い状態に戻してしまうのだ。
(ちなみに航空兵器等に使われるジュラルミンも、いわば不純物の含まれたアルミのようなもので、この場合は銅が炭素のかわりとなる)

滅びの軍勢を構成する装甲は、現実のそれで再現するならば厳選された上質の素材に相当するであろう。
しかしどんなに強靭であろうとそれはジャンケンのパーなのだ。
チョキには決して敵わないところまでしっかりと再現されているのである。

敵天使型武神を受け流した六角がアップルに通信を送る。
>「……準備はいいですか?」
『レディ』
グリントガールは高速回転するキラーチューンの刃を足元の地面に食い込ませた。
下は舗装路。容易く切れないその反作用が、
キラーチューンを介してグリントガールの体を前に引っ張り、彼女の体を猛ダッシュさせる。
リンネは、武神は地に足を付けて戦うべき兵器だと思っているが、飛ぶように滑りながら走ることを禁止してはいない。

キラーチューンが突然止まり、グリントガールを猛烈に引っ張るのをやめた。
しかし、彼女の体は慣性によって前へ前へと進もうとする。
グリントガールはその勢いを殺さずに、まるでバレエか体操選手のようにしなやかに、
停止したキラーチューンを支点に前方倒立回転跳びをし、
今や自分の後方になったキラーチューンを引き抜くと、
−獣は再び目を覚まし−天使型武神の脳天めがけて振り下ろした。

203 :名無しになりきれ:2015/09/21(月) 20:51:41.79 0
高層ビル群に泣き叫ぶような悲鳴がこだました。
機械は泣いたりしない。この音はチェーンソーの刃が装甲を削っている音だ。
頭ではいくらでもそう考えることができるだろうが、
頭から真っ二つに引き裂かれ、本来は乳白色である筈の減磨油が本体と同じ赤黒い色になっていて、
まるで血しぶきのように胸から吹き出すその様を素直に表現するのなら、
悲鳴をあげているという表現の方が腑に落ちる事であろう。
グリントガールの白いボディが返り血で真っ赤に染まる。
『・・・痛い?』
しかしその返り血もまた、二つに別れた天使型武神の消滅と共に無に帰した。
『またつまらぬモノを斬ってしまった』
グリントガールは血ぶりのような動作をした後、キラーチューンを元の位置に背負った。

『やった!勝った!私って強い!
 アオオオォォォオオオオン!!』
そうグリントガールが勝利の雄叫びをあげる。
ちらっと六角のアレスを見た。
『なぜ?叫ばないのですか?
 こういう時に勝鬨をあげるものでしょう?桔梗君もやってください』
六角がこの提案を飲むとは考えにくいだろう。
アップルの雄叫び(というか遠吠え)には何の戦術的価値も無いからである。
『それと、私の事は名前で呼んで?アップルって』
何はともあれ再びグリントガールが雄叫び(完全に遠吠え)をあげる。
『アオオオォォォオオオオオォォォオォォオン!!オォォン!!
 ・・・ォオン!!』

勝鬨を終えて賢者モードになったグリントガールは路肩に退いていたドラゴンナイトを見つけると、
彼の何かに惹かれたのか、ひょこひょこ近づいていく。
きっとそれは、内藤が彼女に“100点”を与えた事とも無関係ではないだろう。
『ねぇ内藤君、知ってる?シナ国にはねぇ「巧言令色鮮(すくな)し仁」ていう言葉があるの。
 言葉で自分を飾って、人から好かれようと愛想を振りまく者には、
 誠実な人間は少なく、人として最も大事な他人を思いやる心が欠けているものだ、という意味よ。
 内藤君もそんな人間にならないよう気をつけてね』
グリントガールはニッコリ笑ってドラゴンナイトにそう話しかけた。
アップルには中にいる内藤の顔まではわからないので、
彼の愛想笑いを揶揄しているように見えるのは偶然である。

204 :名無しになりきれ:2015/09/21(月) 20:52:14.48 0
いや、本当に偶然か?
内藤はこのように、あえて対象の人物を傷つけて本音を引き出そうとするテクニックに覚えがあるだろう。
他ならぬ内藤自身が六角に仕掛けたそれである。
アップルの言葉は聞きようによってはそれの意趣返し、あるいは模倣と捉えることができる。
もちろん、内藤はグリントガールに秘匿して無線通信をしていたのであり、
事実としてはアップルはその内容を把握していない。
だが内藤がアップルを疑う理由があるとすれば、秘匿していた筈の通信内容についてサウスウィンドから釘を刺されたことであろう。
この時サウスウィンドが、秘匿していた無線を傍受した理由が隊長権限であることを説明しなかった。
よって、何かしらの方法(あるいは些細なミス)によってアップルもまたそれを把握している可能性を考えられるからである。

また、内藤(および六角)の脳内には避けて通れない認知の問題が横たわる。
すなわち、アップルに感情があるのか?無いのか?だ。
なぜならばアップルを認識し、それに対するアクションが発生するのならば、
必然的にアップルが何者であるかを瞬時にカテゴリ分けをする必要があるからだ。
例え自分に働きかける作用が同じものであっても、生物と機械に対するアクションは異なるわけで、
すなわちアップルに感情があろうと無かろうと関係無しな行動をとろうと決めた場合であっても、
その認知が発生した時点でアップルが何者であると認識するかの結論は出ているからである。

だが、もしもアップル本人が、彼女に感情が存在するか否かを尋ねたならば、
彼女はすぐにこう答えるだろう。
それはカテゴリーエラーの質問です、と。

ただ、どちらにしてもこの戦いは、ここにいた四人の誰か一人でも欠けていれば勝負は厳しかっただろうから、
止めを刺したのは確かにグリントガールかもしれないが、
その直前に隙を作り出した六角、
グリントガールを救助して輪を破壊したサウスウィンド、
そして文字通り斬り込み役として敵の攻撃を無力化した内藤・・・
仲間の一人にかけるにはあまりに辛辣な物の言い方と言えるだろう。
仮に内藤の心に怒りの感情が発生しなかったとしても、怒られても仕方ないレベルである。

【宇宙CQC】
【蛇と林檎とシックスセンス】

205 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/25(金) 20:00:42.85 0
地上にて、二つの光が上がる

一つは、限りなく人に近しい機械の振るう金属の泣き叫びが、空を踊る天使を打ち倒した光

一つは、龍と人を近しくする騎士が振るう力の爆発が、地を這う絶対強者を引き裂いた光

異なる二種類の光を認め、アレックスは通信を繋ぎ、

「――上出来だてめェら!」

それだけを叫び、近くのビルを切り裂く
道路側に崩れるよう計算された一撃は過たずビルの基部を断ち切り、支流の一本を塞ぐ

武神の機動力ならば越えることは可能だろうが、少なくとも地上からの狙撃は防げるだろう

「よし!ポイント確保!」
「各員、破損状況の報告と調整を開始しろ!」

そう通信に叫び、一度地上に降り、更に指示を飛ばしつつ、

「前、見えるか――あれが目標だ」

――緩やかに続いていたカーブがこの地点で終わり、まっすぐ北を向いた先、およそ500m
二本の、他よりも明らかに背の高いビルが見える
あれこそが目標――『核』を有する市庁舎

「このルートが一番遠くから狙えるそうだ。敵も多いがな」

言葉通り、道沿いに幾つもの影が見える
滅びの軍勢、その武神隊たちだろう
今は動かず、此方を伺っているように見える

「――本部から通信だ。整備が完了した機体が一人、空挺でこっちにくる」

A隊の被害は中々大きかった
総勢10名のうち、行動不能1名、撃墜2名、武装解除1名
幸いにして死者は出ていないが、半数近くが戦闘不能なのは大きい
故に、

「ソイツが合流次第、A隊に代わり先陣を切るぞ!」
「カイとフレイアは後方支援に回れ、社長……じゃねえ、アップル氏は中列で適宜フォロー、新人が前線だ」
「ダメージ受けた奴はしっかり把握しておけよ、必要なら此処まで下がれ、以上!」

206 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/25(金) 20:01:10.38 0
『まあ待てよアレックス、面白い玩具を頼んでおいた』
「……なんすか大佐、玩具?」
『ああ、――――ドラゴニックカノンだ。そろそろ届く』
「……ハァ!?特級機密の決戦兵器を!?よく許可でましたねェ?」
『ごり押した。なんせ世界の危機だ――見ろ』

そう言って指差した先、輸送用の機龍隊が幾つものコンテナを運んで来る
空中から投げ落とされたそれらは、過たず交差点付近の道路へと落とされる
それに近付いてボルトを操作、保護パネルの内側から分割された『砲』を取り出し

『――C隊の武神隊。コイツを組み立てる。手を貸してくれ』

およそ5分後
組み立てられたそれは、異様な形をしていた

エネルギーによる加圧を掛けて出力を上昇させる環状加速器、5台
それを取り付ける砲身、凡そ15m
銃座と一体化した機関部は、やたらとゴテゴテとしていて、更に後方には何故か砲身がはみ出ている

『よし。A3、A4、支えろ。A9は龍砲を接続。A6、A8は電源補助。発射は俺がやる』
言葉に頷き、A隊が配置につく
まず武神二名が砲身を肩で支え、専用ケーブルを首後ろのハードポイントに接続
エネルギーの供給と照準の補佐を行う
次に機龍の一体が、後ろにはみ出た砲身に噛み付く
そうして喉奥の龍砲発射機関と接続し、ゆっくりと加圧を開始
更に残る二体の機龍はそれぞれ機関部の横に移動、『大佐』がケーブルを接続する
最後に機関部の後方から、トリガーと照準器のある銃座に、『大佐』の武神が入り込めば準備完了だ

『機龍3、武神3による連結型龍息加圧装置、ドラゴニックカノン――』
『連邦が誇る移動可能な最大火力だ――5カウントで撃つ。空けた道に飛び込め』

そういって、射撃姿勢に入る
各武神、機龍のラジエーターが悲鳴を上げ、凄まじい量のエネルギーが機関部へと注ぎ込まれる
環状加速器はヒィィン…と鳴き、後ろに接続した機龍の喉からは限界まで加圧された出力が、淡い光を放っている

そのまま空挺の完了を待ち、そして

『5、4、3、2、1――ドラゴニックカノン、ファイア!!』

――力が解き放たれた

207 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/25(金) 20:01:58.34 0
それは、壮絶な『破壊』だった
500mの距離を一瞬でゼロにした極太の光は、一拍の時をおいて爆発
軸線上の何もかもを消し飛ばし、余波だけで幾多の武神が霧と散り、その先に――見える
アレほどの火力を受け、尚も健在
黒い光としか形容のしようのない光を纏い、宙に浮かぶ結晶体
あれこそが――『核』
数多の『滅びの軍勢』を生み出す、正体不明の『ナニカ』――

「――突撃ィ!!」

アレックスが吼え、一直線に駈ける

「あの光、多分光学系の障壁だ!」
「ロジー、射程に捉え次第ぶちかませ!」

僅かに残った機龍を霧と変えながら、ただ真っ直ぐに突き進むゲイルブレイド

――決戦の時は、来た

【派手にやらかす『大佐』】
【核、おめみえ】
【突撃開始】

208 :マハティール ◆3CrrmoSfaUmi :2015/09/26(土) 11:56:40.52 0
時折突風に揺れる輸送コンテナの中に、一機の重武神が佇んでいた。
装甲の隙間から漏れ出る頭部センサの輝きが、合一化した武神であることを示している。

「作戦目標は核の破壊、および滅びの軍勢の殲滅」
「…あの時とは大違いだ、核という存在すら知らないまま僕たちは蹂躙されたんだ」

武神のパイロット、マハティール・バダウィ南洋諸島連合陸軍中尉は静かにつぶやく。
彼の脳裏に映るのは、故郷の残骸を踏みにじる滅びの軍勢。輸送船から見えた真っ二つにされた同僚の武神。
祖国を脱出し、抵抗軍に合流するまで頭から離れなかった光景だ。

「…接触通信をアクティブに。コンテナ切り離しまであと50秒」
『重武神の兄ちゃん、死に急ぐなよ?』

空挺のタイミングを合わせるために接触通信を繋げたところで、重機竜のパイロットが彼に話しかけた。
どうやらオフにしていたつもりの接触通信が、最初から繋がっていたようだ。

『オラァ色んなやつを運んできたがね、お前さんみたいなやつは大体早死にする』
『それも名誉の戦死なんてもんじゃない情けない死に方だ』
「……コンテナ切り離しまであと30秒」
『復讐なんて考えるなよ?そういうのは…エースになってから言うこったな』
「コンテナ切り離しまであと20秒!」

『それと、最後に言っておいてやる。もう作戦空域だ、タイミングが20秒ずれてるぜ』
「えっ?」

重機竜が輸送コンテナを切り離し、重力に引かれて自由落下を始める。
完全にタイミングがずれていたことに気づいたバダウィ中尉は、慌ててコンテナの展開を始めた。

「空挺突入システム第一段階終了、第二段階確認…開閉エラー!」
「国際規格だから合うって話だったのに…!こいつが新型だからか!?」

予定された高度でパラシュートが開くことには成功したが、コンテナの開閉が上手くいかない。
一回舌打ちすると、重武神に搭載された大型マニピュレーターを振るって叫ぶ。

「プログラムがダメなら、こっちだ!」

重武神の大型マニピュレーターを思い切りコンテナの内壁に度も叩きつけ、歪んだ壁を掴む。
大型マニピュレーターの出力が上昇し、金属がひしゃげる音と共にゆっくりと壁がこじ開けられていく。
遅れてコンテナの開閉システムが起動し、ゆっくりとコンテナが開いた。
「通信帯に合わせ。…合わせよし。」
「こちら南洋諸島連合陸軍中尉、マハティール・バダウィ!これより前線指揮下に入ります!」

白と灰色の都市迷彩に染められ、155o散弾砲と55o短機関銃を背中に担いだ重武神"森の人"と共にバダウィ中尉は戦場に立つ。
「前に出させてもらいます、撃ち漏らしと援護はお任せしますよ!」

大型マニピュレーターを使い、器用に障害物だらけの廃墟群を駆け抜けていった。

209 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/28(月) 00:21:26.57 0
地龍の脳天に打ち下ろされた鉄槌(500kg)は狙い過たずその禍々しいあぎとを抑えこんだ。
シュヴァリアーの装甲色を消し炭色に書き換えるはずの豪炎が顎のなかでわだかまり、"暴発"という二文字を確たるものとする。
鼻先から爆炎が吹き抜け、無数の牙が内側からへし折られて四散した。
ブレスは封じた。あとは――

「ぶちかませ、レシタール!!」

ロジーの垂直砲撃を追うようにして白の機龍が急降下。
弾かれたように始まった対空砲火を、まるで泳ぐみたいに『かき分けて』――肉迫!
毎度のことながらフレイアは対空砲火に対する恐怖というものをまるで感じさせない。
そこにあるのは自身の技量への信頼か、はたまた死と隣合わせの状況への迎合か――
グズグズの頸部めがけて振り下ろされた龍尾は、まさに機龍サイズの断頭台!!
先刻武神を三枚おろしにした対地戦術のスペシャリストは、今度は長魚を捌くようにその素っ首を切り落とした。

「いよっし!」

ガッツポースをしかけて、先刻の反省を思い出して自重する。

(ただの機龍ならこれで勝負あり、だけど相手は――滅びの軍勢!)

かの敵を撃滅するのに必要なのは機関部やコクピットの破壊ではなく、体積の半分を切り落とすこと。
だが、それ以外の攻撃が無意味というわけではない。
敵は機龍や武神の構造を再現している。――つまり、こちらとおなじようにものを見て、音を聞いているのだ。
機龍の感覚素子がどこにあるのか、知らないロジーではない。

「メインカメラは――"たかが"じゃねえよな?」

頭部を切り落とされた敵機龍はいま、盲目!
故にこの瞬間、自身の『目の前』で展開されているまぶたを灼かんばかりの激光を認識できない!!

>『私の存在意義などどうでもいい事でした、さあ、乗ってください…You have control』
>「……行こう、ワイバーン」

鋼の騎士が、今度こそ龍に跨って飛翔する。
翡翠の光――ワイバーンと共に先刻武神を斬断したあの粒子が、その光跡だけを存在証明とするように輝いている。

>「――――限界を越えてみせろ! エクス……」

剣のかたちに収束したその光の奔流が、審判の雷槌の如く振り下ろされるのをホバリングしながら見る。
HUDの中で検知エネルギー値が見たこともない数値になっていくのを尻目に、一撃から目を離さないで言った。

『……さんぶんこの約束、忘れんなよ』

>「……カリバァァアアア――――!!」

地龍の黒のすべてが、翡翠の光で塗り替えられた。
貫き、穿ち、抉り取り――地龍を同質量の瓦礫へと変えていくのはメタルジェットの波濤。
原理としては事前資料で見た天城宗一郎のHEAT弾と同じだ。
爆轟によって超圧縮された金属が超高速の液体噴射となって対象にぶち撒けられ、
その圧力で対象がどんなに硬かろうと液化させて貫徹するというもの。
だがその規模は桁違いだった。

210 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/28(月) 00:22:00.31 0
「斬艦刀の刀身を……まるごとジェットに変えただと……!?」

言うまでもなく武神用の、更に斬艦刀ともなれば巨大質量の塊だ。
先述したHEAT弾は、微量の金属を大型爆薬の円形起爆によって超圧力をかけてジェット化させている。
同じことを斬艦刀の刀身でやろうとすれば、軍艦並の巨大な砲身と気の遠くなるような大量の爆薬が必要だろう。
そんなものがシュヴァリアーの腹の中にでもしまってあれば話は別だが、無論そんなわけもない。

その無理を無理やり道理にして押し通すのが、あの翠輝の粒子なのだ。
亡国オモシロ兵器という評を改めよう。
カイ。常識を覆すブラックテクノロジーの申し子――!

地龍のいた場所には融解した金属とアスファルトの塊しかのこっていなかった。
上半身を穿ち飛ばされた時点で、地龍は胞状分解して消滅したのだろう。
唖然としていたロジーに鞭を入れたのは、オープンチャンネルで響く中佐の声だった。

>「――上出来だてめェら!」

基部からぶった切られた高層ビルが道路を横切るように倒れ、即席のバリケードとなる。
速度、角度、どれ一つずれても大惨事になるそれを成し遂げたのは一機の機龍だ。
アレックス中佐の駆るゲイルブレイド。

「なんでもアリだなあのおっさん……」

さらっと神業を披露する上官の号令で、各方面の遊撃に回っていたC隊が集められる。
コクピットの中で蹴伸びをする暇もなく燃料と弾薬の補給が開始された。
兵站班がこんな前線まで出てこれているということは、AB隊による補給路の確保も順調のようだ。
初の反攻作戦、ここまでは大きな損害もなく怖いくらいに堅調だ。

(なんだ、滅びの軍勢ってのも大したことねーな。
 連邦や帝国の連中はなんでこんなのに何ヶ月も手こずってんだ?)

ロジーはHUDを脱いで風を送りながら、声には出さずに思案していた。
まず理由として考えられるのは練度の問題だろう。
なんてったって今日この作戦にはISEの誇る天才機龍乗り、制空竜撃手のロジーが参加している。
AB隊の練度がロジーより劣るからといって、それを彼らの責めに帰すことは酷であろう。
倍率千倍の頂点、その実力は伊達じゃあないのだ。

>「前、見えるか――あれが目標だ」

「市庁舎か。あそこに滅びのクソどもの集合便器があるってわけか」

核。滅びの軍勢の『元』とも言える物体。
その存在を認知するだけでも、かなりの数の友軍が犠牲にあったらしいが――

「クソの在り処はわかった。とっとと便所掃除にとりかかろうぜ」

その重みを理解していないロジーは、軽薄にそう言った。
補給に回っていた後方支援員達もまた、応じるように下品な笑い声を漏らす。
それは戦場特有の軽口で、本人にとってもそれ以上の意味はもたない言葉だ。
……痛い目を、みないことには、わからない。きっと一生わからないだろう。

211 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/28(月) 00:22:31.23 0
バリケード越しに敷かれた急ごしらえの陣地のなか、暫定司令部の方でにわかに色めき立った。
ロジーは招集されていないが、C隊も武神が何機か呼ばれていく。
そして、その場で組み立てられたのは、巨大な『砲身そのもの』であった。

「なんだありゃ……大砲?」

否。砲であるなら必ず必要なはずの基部が存在しない。
がらんどうの筒と、それを支える機構だけ。
そして周囲には武神と機龍達が配置されていく。
一機の機龍が、筒の後ろ側へ噛み付いた。
ハードポイントでがっちり固定された機龍のあぎとには、既に龍息が充填されている。

「まさか……あれって」

最終整備確認をしていた後方支援員が、聞き伝いの情報でその兵器の名前を教えてくれた。
ドラゴニック・カノン。
聞いたことのない兵装名だが、やろうとしていることの意味は機龍乗りなら誰でも理解できた。

「ドラゴンブレスの――延長砲身!」

機龍最強の兵装である龍息を、超加圧して威力を爆上げする、つまりこれは砲ではなく『バレル』なのだ。
カウントに合わせて整備員達が機体から総撤収していき、スクランブル発進可能な状態へとシフトする。
撃ったら行けと、そういうことなのだろう。

>『5、4、3、2、1――ドラゴニックカノン、ファイア!!』

瞬間、周囲が暗くなったように見えたのは錯覚ではあるまい。
目を灼かんばかりの閃光が戦場を一直線に貫き、極光がすべてを蒸発させていく。
これが連邦最強の移動砲台、初の反攻作戦へと投入された決戦兵器――!

>「――突撃ィ!!」

中佐の怒号に背を押されるようにして、ロジーはヒューガのスロットルを最大にした。
出力の殆どをスラスターにくわせて、蒼の龍は再び空へと舞い上がる。
紫電のまだ残る市庁舎までのルート、見下ろせる範囲の敵は殆どが消滅したようだ。
故にすぐに対空砲火にさらされることはないが、やがて周囲の残党がカバーに入るだろう。
そうなるまえに勝負を決める。

>「ロジー、射程に捉え次第ぶちかませ!」

「テスタメント!!」

超高熱によって半ばガラス化した地面を風圧で洗いながら、ヒューガは加速した。

>「こちら南洋諸島連合陸軍中尉、マハティール・バダウィ!これより前線指揮下に入ります!」

212 :ロジー ◆AtJyT58Cgs :2015/09/28(月) 00:23:29.42 0
眼下、不自然にひしゃげたコンテナから一体の重武神が這い出てくる。
敵ではない。繋がった通信が識別票を送ってくる。友軍――それもC隊の僚機だ。
まず見て取れる特徴は、重武神のずっくりとした体型から見てもひときわに巨大な豪腕。
デカすぎて脚部で直立しているのに両腕が地面を擦らんばかりだ。

大変安直な例えで申し訳ないが……まんまゴリラである。
先刻中佐の言っていた空挺でやってくる味方だろう。

>「前に出させてもらいます、撃ち漏らしと援護はお任せしますよ!」

『はっ!テメーの出番はないかもだぜ霊長類!!
 なぜならこのおれ、ロジスティクス=ギーガー空尉が一番槍であの核をぶち壊すからなあああああっ!!』

麾下に入ったばかりの僚機にあんまりな言葉を浴びせてロジーは更にアクセルを入れた。
これで終わりだ。遠距離とはいえドラゴニックカノンを受けてなお破壊しきれていない核の耐久性は脅威的だが、
至近距離から356マグナムブレスをしこたま叩き込んでやれば破壊できない道理はない。

他の誰にも手柄などやるものか。ロジーには野心がある。
故郷ISE統合航空戦闘団で冷や飯を食わされ続けた過去と決別し、制空竜撃手の正規隊員として返り咲く。
万年三尉と呼ばれ続け失墜した名誉を挽回し、出世を重ね、奇蹟の男としてエナレス史に名を残す。
そのためには、この戦いでの功績が必要なのだ。

――人類初の滅びの軍勢反攻作戦における、敵中枢部の破壊。
それは世界全体の発展に寄与する、まさに文字通りの英雄だ。

そしてこの作戦はロジーにとっても初めてとなる。
初めての実践、初陣でそんな強烈な戦功を持って変えれば、上層部だって黙ってはいないだろう。
原隊の誰か一人を補欠に引きずり下ろしてでも、ロジーを正規隊員として扱わなければなるまい。
そうなれば、あとは然るべき戦場で然るべき手柄を立てていくだけ。
こんな簡単な話もない。

……ロジーの心は、共に戦っているC隊の面々や殺し合いを演じているはずの滅びの軍勢には向いていなかった。
彼の心はこの期に及んで、自分を冷遇し続けてきた原隊への反り返った克己心で満たされていた。
抵抗軍など、C隊など、原隊での出世を保障する為の足がかりに過ぎないと、そう思っていたのだ。
隊長との通信回線を切断して、ロジーは滅びの軍勢に呼びかける。

「感謝するぜカスゴミ共……てめーらが出現してくれたおかげで、おれは再びのし上がるチャンスを手に入れた。
 だからあとは、遠慮なく臓物ぶち撒けて散ってくれよ……人類じゃねえ、このおれの未来の為にだっ!!」

核が射程に入った。
間髪入れずにロジーはグリップのトリガーを押し込む。
二連装のマグナムブレスが、高速飛行中とは思えぬ精密な軌道で二発ともに核ど真ん中へと殺到した。


【戦功を焦り、突出】

213 : ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/09/28(月) 02:25:40.03 0
恐ろしく正確に、精密な狙いで放たれた二つの砲弾
しかしそれはあまりにも正確で――故に、狙いやすい

核の両側、砲撃により融けた壁、その裏から二つの影が飛び出す
それらは、サムライのような姿をした、赤黒の武神
獲物は、刀
それぞれ右と左の腰に付けた刀を、交差の一瞬で二度、抜き放つ

結果として得られるのは、四分割された二つの砲弾だ
それらは微妙に広がりながら核に当たり――傷を与えるに至らない

明らかに速度に特化したそれらの機体の眼と腕には、それぞれ片眼鏡のようなものとリストバンドのような物が、左右を違えて装着されている
恐らくは今の早業も、これらの補助によるものだろう

二体の武神は同時にこちらを向き、また腰の位置で手を構える
イザナ、瑞穂、そしてニッポンの三国には馴染みのある構え――居合い
本来達人にのみ許される筈のそれを、機械の補助でもって再現する
鏡写しのような、双子の武士が今、門番として立ちはだかった

214 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/09/28(月) 18:06:24.17 O
シュヴァリアーの傍らに、寄り添うように降り立ったワイバーン。そこへかけられた言葉は、どうにもむずったい感じがして。

>「居場所が無いんだったら、俺の隣に居ればいい。
 まだ今は、友達だって認めてもらえなくても―――」
>「―――それでも俺は、君のパートナーだ……フレイア」

「…承知しました」

返せた返事はこれだけだった。
仲間も、友達も、パートナーも、その違いを理解出来ていないフレイアには、精一杯の承諾だ。
まだまだ知らなくてはいけないことが多いと、痛感させられた。
だが今は、この翼を持って、一撃を放ってもらえるのならばパートナーとやらでいい。
これ以上ダメージを受けないようにと、背にシュヴァリアーを乗せたワイバーンは予測回避に専念する。
最後の瞬間はシュヴァリアー次第、そしてそのタイミングは遠くなかった。

>「――――限界を越えてみせろ! エクス……」
>「……カリバァァアアア――――!!」

騎士の放ったエネルギーは、地龍を消滅させるには十分すぎるもの。地面までも抉る力で、確実に敵の息の根を止めた。
これでお互いバッテリーは使いきった、次の戦いでは同じことはできない。
それでも謎の充足感があった。

>「――上出来だてめェら!」
>「よし!ポイント確保!」
>「各員、破損状況の報告と調整を開始しろ!」

いつの間にやら隊長が近くまで来ていて、ビルを切り裂いていた。
隊長である以上、C隊で最強の機龍乗り、そう実感する切れ味だ。
が、それを伝える言葉が見つからず、報告だけにとどめる。

「…ワイバーン、左肩、左翼小破、尾大破。戦闘続行可能です」

最後の衝撃で尾は完全にちぎれた。しかしまだ戦うには問題ない程度の破損だ。
むしろ、武神であるシュヴァリアー…カイ准尉の状態のほうが気になった。
あれほどダメージを受けているのだから、フィードバックはどれほどか。
AIが搭載されているとはいえ、処理がどこまでついてゆくかはわからない。
……これが、心配という感情だと気づくのは、作戦のあとになる。

215 :フレイア ◆SLsyr0XB/w :2015/09/28(月) 18:08:33.14 O
現れた目標ポイント、多少の補給をしたからといってそこまでの道は近くて遠い。
守りに入る機龍と武神、当然のことながら母体である核を失うわけにはいかないのだろう。
あれを掻い潜るのはいかに行動予測をしようと厳しい、そう考えていた耳に通信が届く。

>『機龍3、武神3による連結型龍息加圧装置、ドラゴニックカノン――』
>『連邦が誇る移動可能な最大火力だ――5カウントで撃つ。空けた道に飛び込め』

先ほどまで武神達で組み上げていた兵器、それは随分コネクターが多いと思ったら、大層なエネルギーを使うものだったようだ。
その威力は…絶大。
長距離極大レーザーとでも言ったところか、巻き込まれたものたちは全て消滅していた。
それでも壊せなかった、最終地点の核。

>「――突撃ィ!!」

隊長の言葉と同時に、白龍もまた飛び立った。…ところにコンテナが落ちてきた。
しかも、内側からこじ開けようとしているらしく、どんどんひしゃげていく。
壊れきる前にコンテナが開いたが、かわいそうな形になってしまった。

>「こちら南洋諸島連合陸軍中尉、マハティール・バダウィ!これより前線指揮下に入ります!」

「…資料にあった方ですね、こちらフレイア=レシタール一等兵です」

戦場だが、名乗りをあげた相手には名乗り返す。仲間ならばそれくらいはいいだろう。

>「前に出させてもらいます、撃ち漏らしと援護はお任せしますよ!」
>『はっ!テメーの出番はないかもだぜ霊長類!!
 なぜならこのおれ、ロジスティクス=ギーガー空尉が一番槍であの核をぶち壊すからなあああああっ!!』

ただ、これまた勢いのある人物のようで、更に反応を返したロジスティクス三等空尉…無意識にため息をつく。
なんというか、まとまりのない部隊だ。
しかもロジスティクス三等空尉は少々、いや大分調子に乗っている気がする。
あんな状態で伏兵にでも襲われたら、と考えるとまたため息がでた。
兵士として、冷静さは一番大切であろうに。技術は人一倍あるのだから尚更目立つ。
今も当然のように放たれた二連砲火、何も邪魔が入らなければ確実に当たる起動だ。
だが、そう簡単には終わらせてもらえなかった。
否、終われるなどと思うほうがおかしい。母体を壊されかねない状態に、守り手がいないわけがないのだ。
砲弾は4に切り裂かれ、威力も殺された。
それを成し遂げた敵は、二機の武神。
なにやら不思議な構えと装備を身に付け、こちらを向いた。

「ロジスティクス三等空尉、危険です。一度離れるべきかと」

砲弾が通用しないことはもうわかった、速度が異常なこともわかった。
ならば自分よりロジスティクス三等空尉のヒューガは、状況的に厳しい戦いになってしまうだろう。
彼は実戦に対する『読み』に特化していない。
一時離脱を急かすよう、ワイバーンはヒューガの前へ出る。
もしあの武神が遠距離攻撃も持っていたならば、いい的になってしまうからだ。
そうでなくとも伏兵に気をつけねばならない、あんな近距離特化型が待ち構えていたのだ、遠距離特化型もいるかもしれない。
『読み』で生き延びてきたフレイアには、多くのIFがあった。故に前に出る。
ワイバーンなら多少の攻撃には揺るがない。
誰も、誰も失ってはいけないのだ。

216 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/10/05(月) 21:36:27.89 0
【ディカラード・ハザード(T)】

『――上出来だてめェら!』

飛び込んで来た通信にノイズが混じる。
大気中のラグナロク粒子濃度が一時的に上昇している影響だ。
出力250%を超えたエクスカリバーの長時間照射が周囲の環境に及ぼした弊害の一つだった。

『よし!ポイント確保!』

『なんでもアリだなあのおっさん……』

『アオオオォォォオオオオオォォォオォォオン!!オォォン!!
 ・・・ォオン!!』

うっかり大事な何かが400%を超えてしまったと思われる獣の咆哮まで聞こえた気もしたが、アレも多分ノイズだ。

《やりましたね、カイ――――やはり、竜の討伐は心が躍るものです》

刀身を失った斬艦刀をフォールドさせ、リアスカートアーマーにマウント。
後方の爆炎の中からセカンドカリバーが、続いてファーストカリバーが帰還する。
逆手にした左右の掌元で速度を殺しながら受け止め、サイドスカートアーマーの鞘に納めた。

《……どうしたのです? これは、叙勲に値する功績ではありませんか。
 よもや、ロジスティクスやフレイアと"さんぶんこ"では不服だとでも?》

〓┣━【●】[VSH:Brünnhilde]─╂─[VARLCURIE-System]━┫〓
┏┛
┣━【●】[VST/01:Waltraute]─╂─[EAW-KS/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/02:Siegrune]─╂─[EAW-KS/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/03:Gerhilde]─╂─[EAW-SB/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/04:Grimgerde]─╂─[EAW-SB/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/05:Ortlinde]─╂─[EAW-AD/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/06:Helmwige]─╂─[EAW-AD/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/07:Schwertleite]─╂─[EAW-GSX Long Buster Sword Rifle]━┫
┗━【−】[VST/08:Rossweisse]━┫┣━[EADU-VGW High Mobility Flight Unit]━┫

《らしくありませんね……何とか言ったらどうなのです、カイ》

全身で傷口の如く開いた可動装甲が、脚部から頭部へと――
――展開時と全く同様の順番で閉鎖され、ラグナフレームの光が減衰していく。
ブレードアンテナ、フェイスガード、最後にバイザーが降りてデュアルアイ・カメラが消灯した。

『各員、破損状況の報告と調整を開始しろ!』

『…ワイバーン、左肩、左翼小破、尾大破。戦闘続行可能です』

《シュヴァリアー、主機及び補機、共に出力低下。
 メインフレームは健在。装甲各部、小破から中破。
 腰部アクチュエーターに微損あり。メインパイロットは―――》

やがて、全てが消え失せた。
装甲と外界を隔てる灰色の庇護も。
ラグナロク粒子を彩っていた黄金の意志も。
特殊塗料が溶け落ちた後に残されたのは、象牙の白色。
それだけが、満身創痍の騎士に纏う事を許された色彩の全てだった。


《―――戦闘続行不可能です》

217 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/10/05(月) 21:37:17.44 0
【ディカラード・ハザード(U)】

《カイ……生きているのでしょう、カイ!》

ハイランダー製の機動兵器は、搭乗者の神経中枢を機体と直結させる事によって初めて運用が可能となる。
無論、その実現には鋼鉄のハードに対応する制御ソフトたる"人間の部分"を保護する機構、即ち――
――稼働リミッターの搭載が不可欠の要件だ。だが、特殊試作機であるシュヴァリアーは違う。

《応答してください、カイ!!》

機体各部ラグナフレームの直接/遠隔脳波制御により、神経接続を遥かに越えた反応/追従速度を得る"ヴァルキリー・システム"
パイロットに逆流する高負荷のフィードバック・ダメージのシェルターとなるべく設計された"アンリ・システム"
機体運用時において、その何れもが設計段階の想定水準に到達不可能な欠陥品だった。
小型高性能化の代償を相殺する手段を、シュヴァリアーは備えていない。

《アレックス、聞こえますか? カイが……》

搭乗者を蝕む激痛と精神的摩耗、脳神経が負う損傷と障害。
そして、その全てを"なかったこと"にする為に生み出された存在。
故に――――アンリ(ANRI-System)は、人間(ヒト)の痛みが分からない。


『5、4、3、2、1――ドラゴニックカノン、ファイア!!』

「光が……拡がっていく……?」

《カイ、ようやく意識が――》

『――突撃ィ!!』

「ああ……大きな光が、点いたり消えたりしてる……ははっ、大きいぞ。
 あっちのもエクスカリバーなのか……? いや違う、違うな。
 エクスカリバーはもっと、バァーって動くもんな」

《……そうですか。貴方は、もう――――》

218 :Interlude ◆xMZSJ.LKvw :2015/10/05(月) 21:38:03.59 0
【ディカラード・ハザード(V)】

『こちら南洋諸島連合陸軍中尉、マハティール・バダウィ!これより前線指揮下に入ります!』

『…資料にあった方ですね、こちらフレイア=レシタール一等兵です』

「中佐の端末から資料を盗み出したのが役に立つなんて――」

《――そのような事実はありません。また"自習室"行きになりたいのですか》

『前に出させてもらいます、撃ち漏らしと援護はお任せしますよ!』

「前に出てこなければ、やられなかったのに!」

《カイ、それは貴方の事です。落ち着いてください》

『はっ!テメーの出番はないかもだぜ霊長類!!なぜならこのおれ、ロジスティクス=ギーガー空尉が一番槍であの核をぶち壊すからなあああああっ!!』

《友軍が何名か突出しています。護りの厚い者達はともかく、あのままではロジスティクスが……》

「……暑苦しいな、ここ」

胸部ハッチ周辺のロックが解除された―――合一を解除する気だ。
蓄積された深刻な循環系ダメージの影響で、機体ANSの遠心性機序が失調している。
アンリは緊急時に際してオーソライズされるリプレイサー権限を発動、コントロールを完全に掌握した。

《くっ―――アイ・ハブ! 戦わないつもりなのですか、カイ!》

「はぁ……出られないのか? おい、出してくれよ……なあ!」

《見損ないました、カイ! もう貴方などに頼るものか、"核"は私達で片を付ける!!》

ドラゴニックカノンと共に、幾つかの輸送コンテナが地表に降下していた。
その内の一つを、シュヴァリアーが上司に無許可(げんばのはんだん)で蹴り開ける。
三組のライオットシールドとプラズマロッドの不正入手に成功した白騎士は、前傾姿勢で駆け出し―――

《……と、言いたいところですが》

「痛(つう)っ!?」

―――初速で得られた運動エネルギーを、即座にヘッド・スライディングの動作へと変換する。
その頭上を斉射が通り過ぎ、背負ったシールドの表面を削った。"核"の護衛武神隊だ。
ドラゴニックカノンに一掃された進路上で、砲撃機体同士の射線網が錯綜している。
再展開を強いられた敵護衛機に対し、友軍機の進軍速度は僅かに分があった。

《ラグナ粒子が再充填される頃には……いえ、おそらく数秒後には形勢が決しているでしょう》

「熱(あつ)っ!?」

鱗翅目の幼虫の如く這いつくばった白騎士は、前面投影面積を削減しつつ匍匐を敢行。
高温加熱によりガラス化した地表を、左右二枚のシールドで交互に抉りながらの前進だ。

「熱痛(あつう)っ!!」

《地表温度は数百度程度に下がっていますが、今はフィールドの断熱効果がありません。
 ……これでも未だ正気を取り戻せないと言うのなら、しばらく貴方は黙っていてください》

滅びの軍勢には、搭乗者へのダメージ・フィードバックが存在しない。
例え白兵仕様の二足歩行武神であろうとも、焦熱の大地に踏み込む事に躊躇は無い。
その事実が彼らのアドバンテージとなるか、ディスアドバンテージとなるかは、友軍機が証明する筈だ。

219 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/10/07(水) 04:00:49.75 0
両腕を失った天使型が、最後の力を振り絞るかのように六角への突進を敢行する。
内藤はそれを、黙って見送った。先ほどの六角のように回避を促す事すらしなかった。

その理由は、彼女の技量に間違いはないと認めているから、だけではない。
もしこれで彼女が負傷すれば、それはそれで彼女との距離を縮める為の切欠になり得るからだ。

(とは言え、彼女なら……)

しかし六角は巨大な砲弾と化した天使型すらも、通常の砲撃と同じように受け流してしまった。

(まぁ、そうなるよね)

内藤の冷めた視線は、その更に奥、巨大なチェーンソーを車輪代わりに疾駆するグリントガールへと移ろう。
『アップル』と名乗るAIが制御するその機体は、それ故に極めて流麗な動作で敵機への接近を果たす。
そして、通りに悲鳴のような切断音が響き渡る。

>『・・・痛い?』

滅びの軍勢はいかなる呼びかけにも応えない。
にも関わらず、そう尋ねた彼女を、内藤は黙って見ていた。

と、天使型にとどめを刺し、暫し大騒ぎしていたグリントガールが、不意に内藤へと歩み寄る。
そして何事かと微かに首を傾げる内藤に対して、

>『ねぇ内藤君、知ってる?シナ国にはねぇ「巧言令色鮮(すくな)し仁」ていう言葉があるの。
  言葉で自分を飾って、人から好かれようと愛想を振りまく者には、
  誠実な人間は少なく、人として最も大事な他人を思いやる心が欠けているものだ、という意味よ。
  内藤君もそんな人間にならないよう気をつけてね』

そう言い放った。
限りなく完璧に近い、しかし紛れも無く作り物の笑顔を浮かべながら。
ともすれば揶揄とも受け取れてしまうその言葉と微笑みに、内藤は、

「……君は、賢いんだな!びっくりしたよ!」

両腕を広げ、寛容な態度と動作で驚きを表してみせた。
その仕草に、困惑や怒りの痕跡はまるで見られない。
当然だ。彼は実際に、怒りも困惑もしていないのだから。

「けど……君は一つ、忘れてるぜ。その言葉は……シナ国製だ。信用性に欠けてるよ。だろ?」

内藤=ハイウィンド=隆輝は感情というものを感じ取れない。
それでも、それを理解しようと努力を重ねてきた。
そんな彼が人工知能の存在に着目するのは、当然の事だった。

内藤はとうの昔に、人工知能に対して自分なりの見識を得ているのだ。

彼にとってAIとは「膨大な情報の集積によって、限りなく感情に近いものを再現出来る存在」だった。
つまり、自分に極めて近い存在。
感情があるように振る舞う事は出来ても、本物のそれを持ってはいない。
それが内藤のAIに対する認識だった。

「それに……ニッポンじゃこうも言うんだ。言葉は身の文、心の使い……ってね。
 意味は……自分で調べた方が勉強になるかな。ねっ、グリントベイビーちゃん」

だから彼女の先の発言も、どこかで学んだ「他人を理解する為の方法」を再現したに過ぎない。
先ほど、滅びの軍勢に対して「痛い?」と尋ねたのと同じだ。

或いはそんな意味すらもなく、どこかで覚えた言葉の羅列を、連ねただけかもしれない。
戦いに勝ったら雄叫びを上げると、学んだ事を何の疑問もなくそのまま出力していたように。

220 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/10/07(水) 04:01:14.86 0
そう、内藤は解釈した。
それが正しいのかは分からないが、少なくとも内藤はそう信じて疑わない。

加えて、彼はアップルが先ほどの通信を傍受していた可能性は低いと結論付けた。
確かに一瞬、まさかと思いはした。だが、

(ただの偶然、だろうなぁ。だって……もしさっきの通信を傍受されていたなら、きっと彼女はその行為に興味を持つ。
 そして直接僕に尋ねるだろう。どうしてあんな事を言ったのかって。
 そうしない理由が、配慮や遠慮という感情が、彼女にはない)

内藤はそのように結論付けた。

>「――上出来だてめェら!」

と、上空から響いた声が内藤の思索を中断させた。
内藤は、竜夜に表情筋に相当する機能はないが、それでもグリントガールへと微笑みかけ、歩み寄った。

「格言もいいけど、僕は君の事がもっと知りたいな。君を見てると……とても愉快だ」

直後にゲイルブレイドの切り倒したビルが轟音を奏で、それと同時に内藤は身を翻した。
そのまま槍の穂先を地面に突き立て、片膝を突いて体を丸める。
風圧と破片群から身を守る為の、本来はグレネードを投擲した直後に取るような防御姿勢だ。

>「――本部から通信だ。整備が完了した機体が一人、空挺でこっちにくる」
 「ソイツが合流次第、A隊に代わり先陣を切るぞ!」

「……なんだか、A隊に悪いなぁ。一番カッコいい所を持っていっちゃうみたいで」

内藤は立ち上がり、槍を肩に担ぐようにして、500メートル先の『核』を見据えた。
数え切れないほどの軍勢が今もなお、抵抗軍の行く手を阻んでいて、その実体は殆ど視認出来ない。
だが、必ず突破出来る。内藤には自分の、そして仲間達の実力に基づく確信があった。

(アレを壊せば……「内藤」君はヒーローになれる)

心中で漏れた呟きに、

(……のか?)

しかし内藤は、すぐに怪訝そうに首を傾げた。

(本当に?なんか、違う気がするぞ。けど……何が違うのか、僕にはそこが分からない)

>『――C隊の武神隊。コイツを組み立てる。手を貸してくれ』

不意に寄越された、聞き慣れない声の無線通信が、内藤の意識を戦場に引き戻す。
内藤は暫く首を傾げたまま、無線の指示に従って、謎の砲身の組み立てに取り組んだ。

「……かぁーっこいいー!なんだこれ!ちょっと社長もいい加減起きなよ!
 どうやって核を壊すのか気になってはいたけど、へぇー、こんなのまで用意してたのか、すごいな連邦!」

しかし五分後に組み上がった『ドラゴンブレス』の完成像を見ると、内藤はすぐにそう歓声を上げた。
「内藤隆輝」ならば、そうするのが自然な反応だからだ。

>『機龍3、武神3による連結型龍息加圧装置、ドラゴニックカノン――』
  『連邦が誇る移動可能な最大火力だ――5カウントで撃つ。空けた道に飛び込め』

「おっと、いけない。巻き添えは御免だ」

大佐機からの通信を受けて、内藤は小走りで脇道へと逃げ込む。
再び身を屈め、対爆姿勢を取った。

221 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/10/07(水) 04:02:28.86 0
鮮烈な炸裂音が響き、振り返る。
核は尚も健在。だがさっきよりもずっと「よく見える」。
闇が、打ち払われていた。

地を、人の世界を、黒に染め尽くしていた滅びの軍勢を掻き消して、竜の息吹が勝利への道を切り開いた。

>「――突撃ィ!!」

号令と同時、内藤は地を蹴った。
ビルの壁を蹴って上昇を繰り返し、ある程度の高度を得た所で壁を掴み、静止。
今度は槍を用いての振り子運動とスラスタによる慣性制御によって前進を開始。
その機動力を以ってすぐに隊列の先頭へと躍り出た。
それでいて、地上、上空の様子を伺う事も欠かさない。

ドラゴニックカノンが制圧出来たのはあくまで射線上にいた、主に地上戦力のみだ。
間道や十字路からはじきに増援が押し寄せてくるし、航空戦力の数は尚も膨大だ。

「おっ」

と、間道から接近する敵武神の一団が見えた。
放置すれば進路を妨害されるか、戦列を分断される恐れがある。

故に内藤は一度前進を中断。
ビル壁を跳ぶように登り、敵機の視界から外れるだけの高度を稼ぐ。

そして、跳躍。高高度からスラスタを用いて急速に接近し、敵部隊の中央に飛び込んだ。

落下の勢いを利用して敵機の首を数体、まとめて切断。
敵は主に砲撃型。姿勢を低く保てば、砲を背中や肩に担ぐタイプの機体は至近距離での攻撃手段を失う。
優先して排除すべき敵が浮き彫りになり、竜夜の速力と内藤の反応ならば対応は容易い。

十秒も暴れれば、後続のA、B隊が追いついてくる。
内藤への対応に追われる敵機の不意を突けば、その道は容易に制圧、封鎖出来る。
そうなったら、遊撃手としての仕事は終わりだ。

A、B隊の攻撃を盾にするようにしてその場を離脱し、再び戦列へと復帰すればいい。

(よし、いい感じだ。光学障壁があるお陰で、中佐もかえってサポートに専念出来る筈だし。
 この分なら余裕で核までの道を制圧出来そう……)

と、不意に内藤の後方に巨大なコンテナが投下された。
何故か、落下の衝撃だけが原因とは考えられないほど損壊したそれの扉から、巨大な腕が這い出してきた。
武神の腕だ。中佐が先ほど言っていた増援かと、すぐに察した。

「こちら南洋諸島連合陸軍中尉、マハティール・バダウィ!これより前線指揮下に入ります!」

通信と共に、その僚機の全容が明らかになる。
内藤が着目したのは、巨大な腕と、巨大な砲門だ。
道を切り開く事にも、逆に封鎖する事にも使える。
あれほど巨大な口径ならば航空戦力に対しても一定の脅威として認識させられるだろう。

「よろしくマハティール君。僕は内藤=ハイウィンド=隆輝だ。
 しかし……君も中々間のいい奴だな!上手い事クライマックスに駆け付けて……」

>「前に出させてもらいます、撃ち漏らしと援護はお任せしますよ!」

>『はっ!テメーの出番はないかもだぜ霊長類!!
  なぜならこのおれ、ロジスティクス=ギーガー空尉が一番槍であの核をぶち壊すからなあああああっ!!』

「えっ、ちょ、おいおい待ちなよ。そんな一人二人で進軍を急いだって、的になるだけ……」

222 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/10/07(水) 04:03:23.91 0
内藤の制止などまるで聞こえていないようで、二人は止まらない。
特に突出が過ぎているのはロジーだ。
直線飛行に長けた彼のヒューガは、見る間に戦列から離れていく。

その様を内藤は冷静に、と言うよりもむしろ、ただ冷たい、そんな視線で見つめていた。

(あぁ、分かった。内藤君は……「ああ」じゃない。危ない所だった)

戦功を焦るその様は、「彼」が理想とする内藤(じぶん)の在り方とはかけ離れていた。

(そして……ナイスだぜ、ロジー。君のお陰で僕は……本当の、ヒーローになれそうだ)

友軍の援護が得られない空域で包囲されれば、速度特化の軽機龍であっても離脱は困難になる。
出力特化で旋回能力に劣るヒューガがそうなれば、尚更だ。
それは最早彼の技量でどうにかなる話ではないだろう。

だが、良くないのはそれだけではない。最も良くないのは、ロジーの被撃墜などではない。
逸れた仲間を助けようと、戦列全体が薄く伸びたり、救助を焦ったまた別の誰かが突出する可能性がある。

>「ロジスティクス三等空尉、危険です。一度離れるべきかと」

「……アレは、良くないぞ。ホントに良くない」

まさに、フレイアがそうしたようにだ。

「定石」でものを考えるならば、最早あの二人は助けに行くべきではない。
内藤が滅びの軍勢ならばこの状況、出来る限りの「釣り」を行う。

可能な限り「無謀な救出者」を寄せ集めて、それから檻に閉じ込め、押し潰す。

退路を立つのは簡単だ。
機龍による包囲と、砲撃型武神の対空砲火を重ねればそれだけで厳重な包囲網となる。

釣られるべきではない。
何とか持ち堪えるように指示をして、あくまで冷静に、だが可能な限り進軍を急ぐ。
それが最善手だ。

だが「彼」がその選択を取る事はあり得ない。
「内藤隆輝」ならば、そんな判断をする訳がないから。

「……あぁ、もう!六角ちゃん!ベイビーちゃん!「辻褄合わせ」は任せたからな!」

言うや否や、内藤は地を蹴った。
他の隊員を置き去りに、弾丸の如き勢いで疾駆。
地を蹴り、ビルの壁を蹴り、跳躍、跳躍、跳躍。
そして、上空へ。

「だぁああああああああ!っ、りゃあ!!」

跳躍の勢いを斧槍に乗せ、敵機龍の首と片翼を一閃。
両断はしない。
それによって一瞬、ほんの一瞬だが、敵機は滞空状態を保とうとする。

「二人とも、急ぐんだ。ここにいちゃ僕ら三人、いつ撃墜されてもおかしくない」

内藤はそこに足をかけ、更に跳んだ。
次なる敵機へ、スラスタによる加速も乗せ可及的速やかに肉薄し、同じく翼と首を切断。

223 :内藤 ◆.GMANbuR.A :2015/10/07(水) 04:06:43.27 0
「分かったろ、ギーガー三尉。これは漫画やゲームとは違う。戦争なんだ。一人じゃ、戦争は出来ない」

そして再び跳躍。
武神の身でありながら内藤は空を駆け巡り、あまつさえ空の王者を地へと追い落とす。
だが、たった一機で戦い続けるには、空という戦場はあまりに広すぎる。

「僕らがまだ無事でいられるのは、僕らが凄いパイロットだからか?」

それでも退く訳にはいかない。
核に防御を強いるだけの火力を誇るヒューガと、その護衛機として最適なワイバーン。
陽動を行うにはそれらを上回る脅威として振る舞う必要がある。

「違う。砲撃がこっちに向かないよう、下で皆が頑張ってくれているからだ。
 これだけの機龍に囲まれたら、地上からの対空砲火なんて見えやしないだろ。
 君がどんなに凄い奴でも、君一人じゃ並みの軍隊にだって勝てやしないんだ」

つまり、がむしゃらに戦い続けなくてはならない。

「ましてや、滅びの軍勢になんて、勝てる訳がない」

機龍を足蹴にしての滞空時間の延長、『竜泳』。
これは本来味方の機龍や竜夜を絡めて行う、空中における遊撃機動だ。
決して敵陣のど真ん中で延々と暴れ回る事を可能とする技巧ではない。

「だけど、僕らが力を合わせれば……アイツらなんかよりずっと凄いチームになれる」

撃墜寸前の敵機を足場にしての跳躍は、地に足を付けてのそれに比べれば遥かに弱い。
更に空には障害物もなく、敵との距離によって狙える内藤が狙える機体は限られてくる。

即ち滅びの軍勢はやがて、ほぼ完璧に、内藤の動きを予測するという事だ。




「だから、まずは皆の所へ帰ろう。それから、一緒に戦うんだ」

また余談ではあるが、内藤は他人の感情の機微を察する事が出来ない。
故に己が理想とする「内藤」を基盤とした正しい言葉、優しい言葉を用意は出来ても、状況によって応用するという事が出来ない。

「焦ったって、何もいい事なんかない。だろ?足並みを揃えていこうよ」

つまり、正しさや優しさが裏目に出る状況や相手を、内藤は見極められない。

224 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/10/11(日) 14:41:17.43 0
グリントガールが手に持つキラーチューンと赤黒の武神の装甲。
明と暗、光と影
対極とも表裏一体とも言えるそれらは、まるで引き合うかの如くに衝突し
戦場に似合わしくない擦過音を悲鳴の如く響き渡らせる。

鬩ぎ合う明暗の均衡は、しかしほんの一瞬

闇が光に勝てる道理も無く――――
かくして天使が手にする光の刃は、見事に黒き天使を引き裂いた。
最後の呪いの様に飛び散ったオイルも、やがて幻の様に消え去り果てる。

>『やった!勝った!私って強い!
> アオオオォォォオオオオン!!』

勝者と敗者を決した戦場で響き渡るは、機械仕掛けの心と鉄の体を持つAIの勝鬨の声。
獣の様なその叫びは、例え人の模倣の様なものと言えどそれがAIが放った声だと聞いた者に思わせる事は無いだろう。
惜しむらくは

>『なぜ?叫ばないのですか?
>こういう時に勝鬨をあげるものでしょう?桔梗君もやってください』
「……グリントガールAI、戦場で目立つのは銃口を集める事と同義です……学習装置に記録してください」

>『それと、私の事は名前で呼んで?アップルって』
「……AIの識別コードは搭乗者が把握していれば十分です」

>『アオオオォォォオオオオオォォォオォォオン!!オォォン!! ・・・ォオン!!』
「……」

そのAIの完成度に興味を示す存在が、この場には居ないという事か。
叫ぶアップルを淡々とした目で見る六角桔梗は、AIという存在を高価なツールの一つと認識しており、今の所そこに人格を見出す事は無い。
人間であるリンネはとうに気絶しており、敵対者である滅びの軍勢の武神は消え去った。
内藤は……彼だけは、一見AIとコミュニケーションを取っている様に見えるが、その実どこかが噛みあっていない様に見える。

「……戦況完了、ですね」

だがそれでも、噛み合わなかろうと意固地だろうと意識を失っていようと消滅しようと。
『人でなし』ばかりであろうと、それでも戦況は決した。
それ故に、それ故に後は決戦を残すのみ。

・・・

225 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/10/11(日) 14:43:05.08 0
天使型武神を迎撃してから暫くの移動の後、分たれた戦線が合流した。
桔梗が周囲を見渡せば、彼女と同じC隊に所属する面々も一機たりとも欠ける事無く存在している事が判る。
最も――その全機が無事と言う訳ではない様であるが。

(……損害が大きいのは、カイ機……次いでフレイア機とリンネ機ですか
 ……放熱熱量を見ると、カイ機は排熱機構が上手く機能していない可能性が高い……)

桔梗の見立てでは、カイ機はこれ以上の戦闘続行は危険な域に入っており、
フレイア機は装備の損壊から、リンネ機は搭乗者が意識不明という異常事態から戦闘を続行させるのは危うい様に感じられる。
とはいえ……訓練ではない実際の戦場であるこの場では、撤退基準は各々かその上官に判断を任せざるを得ない。
その上、この場に居るのは軍属の人間が殆どであり、往々にして撤退の見極めは自身で出来るであろうと思われる。
故に、桔梗は敢えてそれを口に出したりはしなかった。それに

>「なんでもアリだなあのおっさん……」

チラリと視線を向けた先に居る、崩れ去るビルを呆れた雰囲気で眺め見る青年。
彼は、桔梗が見る限り致命的な傷を負っていない。

「……良かった」

ならば、それでいい。
まるでそんな意味が込められているかの様に、彼女には珍しく安堵の混じった言葉を桔梗は呟く

>「よし!ポイント確保!」
>「各員、破損状況の報告と調整を開始しろ!」

「……C隊アレス、右腕に熱線による損壊有り、左腕装甲一部剥離……作戦継続に問題ありません」

一頻り周囲及び機体の状況を確認した後、アレスの通信回線からにアレックスの音声が響いた。
その声は油断の色こそないものの、戦闘の道筋が具体的になったお蔭か作戦開始当初に比べて何処となく力強い。

>「前、見えるか――あれが目標だ」

「…………あれが、滅びの……」

そして、状況確認を終えたアレックスが指し示した先に――『それ』はあった。
数百m先の位置にある高層ビル。かつて無駄な税金によって建てられ怠惰な役人を詰め込んだ、ある意味で平和の象徴であった市庁舎。
そして今は……『滅びの軍勢』。それらを産み出す魔窟と化した建造物。
遠目からでも威圧感を放つそのビルを、桔梗はアイセンサー越しに見つめる。
道中に見える無数の影は滅びの軍勢の武神と機龍であろう。蠢く其れ等を見る限り、標的への道のりはまだ遠い……が。

>『――C隊の武神隊。コイツを組み立てる。手を貸してくれ』

「…………了解しました」

その状況を覆す兵器が、ここに一つ。
無数のコンテナからパーツを取り出し、桔梗も組み立てに手を貸した其れは、15mもの全長を誇る巨大な砲であった

226 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/10/11(日) 14:43:32.27 0
>『機龍3、武神3による連結型龍息加圧装置、ドラゴニックカノン――』
>『連邦が誇る移動可能な最大火力だ――5カウントで撃つ。空けた道に飛び込め』

威風堂々と君臨する、複数の機龍と武神を一個のパーツとする事で完成する破壊兵器『ドラゴニックカノン』。

>『5、4、3、2、1――ドラゴニックカノン、ファイア!!』

カウントと共に放たれた其れは、決戦兵器の名に恥じる事無く威力絶大。
圧倒的なエネルギーの奔流は極太の光の柱となり、射線上に存在するあらゆる物体を文字通り消滅させていく。
立ちはだかる滅びの軍勢の装甲ごと全てを粉砕し、やがて光が去ると……其処には滅びの軍勢の核へと繋がる一本の大きな道が出来上がっていた。

>「――突撃ィ!!」

そして矢継ぎ早に響く号令。
その号令を耳に入れた桔梗は、両手に持つ槍を握り直すと庁舎へと向い歩を進めようとする。

『……アレスの移動速度では、目標到達に少し時間が掛かります……私は、戦線の中央部で道が閉じない様に支えるつもりです』


……本来であれば

本来であれば、この作戦は完勝で終えられる筈であった。
集団が一個の群体となり、作られた道に釘を叩き込む様に進めば、必要最小限の犠牲で勝利を得られる筈であった。
内藤とロジスティクス、或いはアレックスといった速度に優位性を持つ機体が後方支援を受けつつ前線に出、
その後、後衛が前に進みつつ事務的な侵攻を行えば、安全に勝利を獲得出来る筈だったのだ。


そしてきっと、その「@f」が崩れたのは「彼」が切欠だったのであろう。

――――それは遠く空から現れた。

>「こちら南洋諸島連合陸軍中尉、マハティール・バダウィ!これより前線指揮下に入ります!」

「……増援了解しました……イザナ正統皇国所属、六角 桔梗准尉です」

大口径の銃を背負う白と灰色に身を包んだその武神は、桔梗が戦場で見慣れた機体の一つ。
SSIUB-001"森の人"……兵士たちの間では俗称で『ゴリラ』と呼ばれている、
汎用性の強さが売りの桔梗の武神『アレス』とよく似た設計思想を持つ量産型機体だ。

破砕したコンテナと共に降下し、桔梗から少し離れた位置へと無事に着陸したその姿は、
搭乗者の武神操作技術が一定基準を上回っている事を桔梗に知らせる。

>「前に出させてもらいます、撃ち漏らしと援護はお任せしますよ!」

マハティールと名乗ったその男は、アレックスの指示を実直に実行し前線へと向かい走り出す。
本人としては、単に命令に従っただけの行為だったのだろう。
だが……その行為は、ある男の功名心を刺激する結果となってしまった。

227 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/10/11(日) 14:44:11.78 0
>『はっ!テメーの出番はないかもだぜ霊長類!!
>なぜならこのおれ、ロジスティクス=ギーガー空尉が一番槍であの核をぶち壊すからなあああああっ!!』

『……!? ……ロジ……ギーガーさん、その行為はダメです……至急減速し、後衛の援護が届く範囲に戻ってください……!』

飛び出したのは。ロジスティクス=ギーガー。
C隊において最も実戦経験が少ない……人を殺した事が無い男。
故郷において不遇に扱われ、才能を持て余し、その結果行き場のない功名心に囚われたその男は、
人類の英雄になり出世すると言う野望を抱えて突出してしまった――――後衛の援護が届かない程の先に。
その姿を見た桔梗は、平坦ではあるが多分に焦燥の混ざった声で通信を飛ばす。だが、それでもロジスティクスは止まらなかった。

>「感謝するぜカスゴミ共……てめーらが出現してくれたおかげで、おれは再びのし上がるチャンスを手に入れた。
>だからあとは、遠慮なく臓物ぶち撒けて散ってくれよ……人類じゃねえ、このおれの未来の為にだっ!!」

それでも、その突出が成功すれば良かった。
砲弾により滅びの軍勢の核を破壊出来れば、落第スレスレではあるものの及第点にはなる筈であった。
……けれども、その可能性は早々に潰れる事と成る。

放たれた砲弾が、現れた二機の武神により四つに分たれたからだ。

「……居合斬り……滅びの軍勢は、そこまで技巧を再現出来るのですか……」

桔梗の視線の先に映るのは、イザナの歴史書に載っている職業であるサムライを模した様な姿の滅びの軍勢。
其れらによる、居合い――――特殊な構えから放たれる高速の斬撃が、砲弾を切り裂き核の破壊を妨げたのだ。
そしてその事は、状況が最悪の方向に進み始めている事を示していた。

(……技術としては未熟な居合ですが、アレが立ち塞がる以上恐らくギーガーさんの砲撃は通じません
 ……必要な事は、分断される前に一刻も早く撤退をし戦術を立て直す事……ドラゴニっ……大砲の使用は無駄になりますが、仕方ありません)

新たな敵の出現。そして、それぞれの位置関係を見た桔梗は再度ロジスティクスに撤退を進言する通信を送ろうとし

>「ロジスティクス三等空尉、危険です。一度離れるべきかと」
>「……あぁ、もう!六角ちゃん!ベイビーちゃん!「辻褄合わせ」は任せたからな!」

更に、状況が最悪へ向けて一歩踏み込んだ事を知った
内藤とフレイア……共にC隊に所属する二機が、ロジスティクスと同じ域まで彼を助ける為に突出してしまったのである。
速度で勝る二人を桔梗に留めるすべは無く、桔梗は通信回線から聞こえる彼らの会話をただ聞くしかなかった。
そして桔梗は考える

(……あの居合を使う特殊な武神だけであればともかく、周囲の機龍及び武神を同時に相手取るのは、僅か3機では困難です。
 ……定石で考えれば、彼ら3人は切り捨てるしかありません……先走った彼らをデコイにし後続の本隊が核を破壊するのが、
 恐らく現状では最も被害が少ない判断の筈です……)

脳内に真っ先に描かれる戦術は、マニュアルに則り少数の犠牲は切り捨て大多数の生存を選ぶという物。
戦術構成は桔梗の領分ではないが、それでもそれが現状では優れた判断であるということは判る。
軍属の人間であれば、先走った馬鹿を切り捨てるのは必然……だが。

228 :六角 桔梗 ◆0GSSamSswc :2015/10/11(日) 14:44:39.15 0
「……ですが、今の私にはそれを選ぶ事は出来ません」

小さくそう呟くと、桔梗はアレックス及びカイ、グリントガールに向けて通信を飛ばす。

『……C隊アレスです。……これより私は、先行した一団の後方、本隊の中間地点へと向かい……戦線の断絶による彼らの孤立を防ぎに行きます』
『……私ならば、あの数の滅びの軍勢相手であれば4分程の時間を稼げます』
『……その間に、アレックスさん、グリントガールAI、カイさん……動いても構わないと思ってくださった方は、
 申し訳ないのですが私単機を残して先行部隊を援護に行き、撤退の補助か核の破壊を実行してください……どうぞ宜しくお願いします』

『……それから、カイ機AI……あなたの搭乗者の症状には少し覚えがあります。
 ……搭乗者に彼の心臓の鼓動と寸分違わないタイミングで微弱な電気的刺激を送ってください
 ……合一の過剰化から来る意識の混濁であれば気付け程度の程度の効果がある事が、イザナ正統皇国の実験では判明していました』

そう言って、彼らの返事を待たずに走り出す桔梗のアレス。
独断専行である桔梗の行動に、彼らが従う理由も意味も無い。

だが仮に彼らが安全策を取る事を伝えようと、桔梗は宣言した時間の間、撤退経路の維持をやってのけて見せる事だろう。
前線に居る面々を死なせない事は、桔梗が抵抗軍へと参加し戦う理由に直結しているからだ。

―――――

目的地には、既に集まって来た滅びの軍勢の武神と機龍が数機待ち構えていた。
桔梗は、その姿を目撃するや否や両手の槍を前面に突き出しながら突撃を敢行する。
やはり、敵には砲撃に特化した機体が多く桔梗の接近を認識すると雨あられと砲撃を撃ちこんで来たが
「……」
桔梗は止まらない。回避の為に立ち止まる事をする事無く、槍の穂先で砲弾をいなし、逆に速度を上げて進む。
そのまま1機の赤黒の武神とすれ違い……同時に相手の両腕の肩関節部を切断した。
反応が追いついていない相手の武神を相手に、振り向き様、左右逆方向に槍を振り抜き首と腰のジョイント部を切り裂き跳ね飛ばす。
「……!」
直後、敵を倒した事による油断を狙っていたのだろう。アレスの背後からもう一機の赤黒の武神が組みつき、拘束を行った。
同時に、待機していた敵の機龍が放った砲弾が拘束され身動きの取れないアレスへと迫り……爆散する。
砲撃特化の武神の弾丸は、当たれば恐るべき威力を誇る。量産機であるアレスであれば、耐え切る事はまず不可能であろう。
その為、敵機も桔梗を撃破したものと認識したのか転回する為に中空で身を捻ろうとし

その口部に吸い込まれるように一本の槍が放たれ、赤黒の機龍の内部を貫いた。

姿勢制御機構を破壊されたのか、飛行機能に異常をきたし墜落する機龍のアイセンサーに飛び込んできたのは、
赤黒の武神の拘束を柔術の関節技の様なもので外した上で逆に拘束し、機龍の砲弾への盾とした無傷の桔梗の姿。
桔梗は消滅していく武神を放り投げると、もう片方の槍を以って走り、墜落して来る機龍を居合の要領で3度切りつけ消滅させた。

「……これで3機……」

多勢を相手に圧倒的な技巧を以って切り抜けていくその姿は、正しくイザナ正統皇国の『亡霊』と畏怖されるに相応しいもの。
だが……今回の多勢には、終わりが無い。
関節部に堆積する熱と、ドラゴニックカノンの余波で数百度に至った地面の熱により焼かれる感触を覚えながら、
桔梗は先程機龍を貫いた槍を地面から引き抜き、再び現れた数機の滅びの軍勢へ穂先を向ける。

「……持ちこたえます」

229 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 00:30:51.08 0
一応言っとく



ここダメにしてるキチガイは従士とかいう
おっさんな

230 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 00:31:52.08 0
このスレに肥満がいる
誰だと思う?
当ててみ?

231 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 05:31:37.03 0
育ちの悪さと頭の悪さが露呈してるお前な

232 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 07:03:14.16 0
しゃべらないと気がすまない性格なのか?

身を滅ぼすよ

あ、もう終わってるか
ところでここに嵐がいる

233 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 08:02:50.45 0
ひまんって何?

234 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 08:04:21.06 0
>>229
違うよ

ユリウスのせい

235 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 08:41:13.98 0
お前、ユリウス以上に
理性無いちゃうんけ?

236 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 12:13:50.20 0
構うだけ無駄
で、このスレの馬鹿のせいで関係ないスレが被害受けてるんですがそれは…

237 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 12:18:36.27 0
頭沸いてるんちゃう?

238 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 12:37:21.35 0
>>233
要はサクラ
大勢動かして賑わってるように見せる

239 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 12:45:49.49 0
そんな常識どや顔で言われてもな(*^^*)

240 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 14:43:12.82 0
( ̄▽ ̄;)のなあ

241 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 14:45:28.00 0
従士のおじちゃん見てる?
何で働いてないの?

242 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 18:06:18.76 0
相手にしてる奴がお馬鹿

243 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 18:12:42.61 0
ここ荒らしてる奴へ。

割と発言力大きいスレだから
お前らが荒らしたら痛い目見るよ
アク禁まですぐだから。

244 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 19:35:30.61 0
ユリウスもこんなんの被害にあってんだな


アホか

245 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 20:11:29.64 0
            人
         ノ⌒ 丿
      _/   ::(  ∞〜 プーン
     /     :::::::\
     (     :::::::;;;;;;;)
     \_―― ̄ ̄::\
     ノ ̄       :::::::::)
    (   ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
      /  -=・‐.‐=・=-i、     
     彡,  ミ(_,人_)彡ミ  
 ∩,  / ヽ、,  `ー'  ノ        
 丶ニ|    '"''''''''"´ ノ
    ∪⌒∪" ̄ ̄∪

おう、俺や
何か質問あるか?
何でも答えるで

246 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 20:12:28.36 0
            人
         ノ⌒ 丿
      _/   ::(  ∞〜 プーン
     /     :::::::\
     (     :::::::;;;;;;;)
     \_―― ̄ ̄::\
     ノ ̄       :::::::::)
    (   ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
      /  -=・‐.‐=・=-i、     
     彡,  ミ(_,人_)彡ミ  
 ∩,  / ヽ、,  `ー'  ノ        
 丶ニ|    '"''''''''"´ ノ
    ∪⌒∪" ̄ ̄∪

俺はな
曲がったことが嫌いなんや
だからお前らも曲がっとる奴は容赦なく叩くで
あとキャラ評価もするからよろしゅうな
おう

247 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 20:13:48.36 0
>>232
おう
荒らしてどこや?
どこにおるんや?

>>233
デブのことやで
そうお前やな

248 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 20:14:38.74 0
>>235
おう、ユリウスて誰や
紹介してみ?

>>236
どっかの馬鹿ってどこや?

249 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 20:15:54.70 0
今日はここまでな
じゃあの

250 :名無しになりきれ:2015/10/16(金) 20:36:40.07 0
お前リフティスにもいただろ?

251 :名無しになりきれ:2015/10/17(土) 00:11:38.37 0
頭のおかしい人が誅したとか言ってるけど、あれは何なん

252 :名無しになりきれ:2015/10/17(土) 01:36:49.72 0
結局何が引き金でこうなったのか
戦犯はそれを教えてほしい

253 :名無しになりきれ:2015/10/17(土) 19:49:40.65 0
            人
         ノ⌒ 丿
      _/   ::(  ∞〜 プーン
     /     :::::::\
     (     :::::::;;;;;;;)
     \_―― ̄ ̄::\
     ノ ̄       :::::::::)
    (   ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
      /  -=・‐.‐=・=-i、     
     彡,  ミ(_,人_)彡ミ  
 ∩,  / ヽ、,  `ー'  ノ        
 丶ニ|    '"''''''''"´ ノ
    ∪⌒∪" ̄ ̄∪


>>250
おらん
おらんて〜

>>251
あれや
自分が正しいと思うとると暴走して何でもやってまう訳やな
多分自分が偉いと勘違いしとるんやろ

>>252
攻撃的な人間は自分と戦わなあかん
戦いに負けたから、成長できへんからこうなるんや
ダメな奴は何年経っても同じやね

254 :名無しになりきれ:2015/10/22(木) 15:52:37.62 0
お前ユリウスだろ?

255 :リンネ ◇IgMoxdiK1Y:2015/10/24(土) 16:58:19.04 0
>「……君は、賢いんだな!びっくりしたよ!」
内藤は両腕を広げて寛容そうな態度でアップルに応えた。
ここでアップルが内藤に対して何を考えたかはあえて伏せておく。
それはアップルの核心に迫ることだし、今はその必要が無いからだ。
グリントガールは、笑顔にしか見えない得意げな顔を内藤に振りまくだけである。
>「けど……君は一つ、忘れてるぜ。その言葉は……シナ国製だ。信用性に欠けてるよ。だろ?」
『そうかしら?信用できる人間はシナ国にもいるわ。
 私は会ったことがないけれど、リンネから聞いたことがあるもの。
 なんでも、私達の心の研究をしてた人だとか』
>「それに……ニッポンじゃこうも言うんだ。言葉は身の文、心の使い……ってね。
 意味は……自分で調べた方が勉強になるかな。ねっ、グリントベイビーちゃん」
『きっと、そうね。
 わかったわ。今度調べておく。
 これからも一緒に勉強しましょう♪』
アップルは楽しそうに言った。
見ていて面白いと感じる事に関しては内藤と相思相愛のようだ。

内藤とのフランクな会話を終えたアップル・グリントガールは、
幾つものコンテナに分けて搬送されてきたドラゴニックキャノンを目で追った。
連邦が誇る特A級の決戦兵器である。
もしもリンネがそれを見たら、どうして我社に発注しなかったのかと悔しがるに違いない。
>「……かぁーっこいいー!なんだこれ!ちょっと社長もいい加減起きなよ!
> どうやって核を壊すのか気になってはいたけど、へぇー、こんなのまで用意してたのか、すごいな連邦!」
そう内藤が話しかけても返事がなかったので、
アップル・グリントガールは少し困った顔をしながら、こめかみ辺りをコツコツ叩いた。
『ノックしてもしも~し?』
リンネから返事が返ってきた。
「・・・ちっがーう!私と妻は、互いに求め合い、互いに傷つけ合う関係だと、何回言えばわかるんだ!
 やりなおしだ!あぁ・・・妻ぁー!妻ぁー!・・・zzz」
盛大な寝言をぶちまけて、再び沈黙するリンネ。
『すみません、リンネは寝ているようです』
ただし、後にこれは狸寝入りだったことがわかる。
これがリンネ流の、自分のプライドを守ったまま、
この場をやり過ごすスマートなやり方だったらしい。
>『――C隊の武神隊。コイツを組み立てる。手を貸してくれ』
グリントガールは祈祷をすることにした。
『猫の眼(まなこ)と~♪犬のお耳で~♪あなたに~♪ごあいさつ~♪』
そうやって頭の上で手のひらをピコピコさせるグリントガールを、
さぞやA隊の精鋭達は邪魔に思ったに違いない。
リンネはますます起きづらくなり、すっかりタイミングを逸してしまった。

【少女祈祷中 NowLoading…】

256 :リンネ ◇IgMoxdiK1Y:2015/10/24(土) 16:58:46.66 0
「ちょっと待て!?だからってドラゴニックキャノン発射後まで時間を飛ばしていいのぉ!?」
炎の舌に舐められた地上は一掃され、核へと続く焦熱地獄の道が開ける。
過去世にどんな罪を背負ったのか知らないが、その焦熱地獄へ一柱の重武神が投下された。
リンネは中の人に興味は無いが、その武神“森の人”の事は知っていた。
それがきっと中佐が事前に通達していた、先陣をきる者なのであろう。
アップル・グリントガールの任務は彼のフォローである。

『・・・・・・・・・』
とは言うものの、グリントガールの足力では、即座に追いつけそうもなかった。
キラーチューンを使った猛ダッシュは、地面が舗装路だったからこそ可能だった荒業であったが、
ガラス化した現在の道では不可能な所業である。
自転車があれば・・・しかしあれは置いてきたし、すぐにパンクしそうである。
疾風のように飛んで行くゲイルブレイドを見送りつつ、グリントガールは徒歩で移動を開始した。

>『はっ!テメーの出番はないかもだぜ霊長類!!
> なぜならこのおれ、ロジスティクス=ギーガー空尉が一番槍であの核をぶち壊すからなあああああっ!!』
その宣言と共に、時々飛んでくる敵の砲弾に苦戦しながら前進するグリントガールを尻目に、
ロジーの乗るヒューガが核を目がけて一直線に飛んで行く。
「行け!ロジー!やっちまえ!」
リンネは思わずそう叫んでいた。
ロジーにはずいぶんと不快な思いもさせられたが、
同時にリンネは自分が彼に好意を抱いていることも自覚していた。
それはホモセクシャルな意味での好意ではなく、
彼の持つ若いということが美徳であることをまるで隠そうともしない情熱に惹かれるのであろう。

ロジーは間違いなく核を砲撃で破壊するだろうと信じたが、
思わぬ伏兵にそれが阻まれてしまう。
つがいのサムライ型武神がマグナムブレスの弾丸を切り裂いてしまったのだ。
「あれは九六式か?零式が実用化された今では旧式だが・・・簡単ではなさそうだな」
>「……あぁ、もう!六角ちゃん!ベイビーちゃん!「辻褄合わせ」は任せたからな!」
そう叫んで内藤のドラゴンナイトは飛び出して行った。
核の破壊が失敗した今、ヒューガは極めて危険な状態にある。
すぐにフォローに向かえるのは、同じ機龍であるフレイアのワイバーンと、
武神らしからぬ足力をもったこのドラゴンナイトだけだろう。
「だぁああああああああ!っ、りゃあ!!」
ほぼ同時に六角のアレスもフォローを開始する。
>『……私ならば、あの数の滅びの軍勢相手であれば4分程の時間を稼げます』
>『……その間に、アレックスさん、グリントガールAI、カイさん……動いても構わないと思ってくださった方は、
> 申し訳ないのですが私単機を残して先行部隊を援護に行き、撤退の補助か核の破壊を実行してください……どうぞ宜しくお願いします』
「撤退だなんてとんでもない!すぐに前線に援護に行く!
 今が核を破壊する絶好のチャンスなんだ!」
リンネは六角に無線でそう答えた。
「桔梗君、君が笑うまでは、簡単には死なせないぞ」

257 :リンネ ◇IgMoxdiK1Y:2015/10/24(土) 16:59:12.77 0
少し先で、まるで幼虫のように地面を匍匐前進で移動する白い武神が見えて来た。
カイの乗る、満身創痍のシュヴァリアーである。
そんなシュヴァリアーをグリントガールがひょいと小脇に抱えて持ち去った。
その体格差はまるで大人と子供であったので、造作もなかった。
『兄弟というのは良いものです。愛でてよし、食べてよし』
「こらー!一人でお世話できないのにそんなの拾ってくるんじゃない!」
グリントガールは砲撃の合間を縫ってビルの影に隠れる。
『ところで、さっき女の声が聞こえたわね。
 一体誰なの?』
グリントガールは修羅場モードのままリペアツールを起動した。
しかし、リペアツールは本能モードの出力に合わせた状態で使うように調整されている。
その証拠にアップルが取り出したリューターは、
初めて歯医者に連れてこられた子供のトラウマとなる例のアレみたいな
キュイーンという甲高い音をやたらと響かせている。
内蔵モーターの回転数が高すぎるのだ。
「待て、アップル。シュヴァリアーの体を穴だらけのチーズにするつもりか?
 それに、まずは“森の人”の支援が先だ」
グリントガールは、修羅場モードへ変形した時と逆の手順、
つまり各部の装甲がスライドして関節部や肌(?)を覆うようにスライドし、
少女の顔も赤い十字が描かれた仮面の下に隠れた。
『メインシステム、本能モードを起動します。
 リンネ様のご帰還を歓迎いたします』
内藤のドラゴンナイトの陽動が功を奏したのか、地上への砲撃が止んだ。
その隙に、リンネ・グリントガールは核へと続く道へと躍り出た。

「中佐、さっきはずいぶんと痛めつけてくれたじゃないか」
リンネは、さきほどサウスウィンドが自分を
テイルハンマーで吹き飛ばした事を思い出させるために嫌味を言う。
「これはちょっとしたお礼だよ。なぁに、遠慮せずに受け取ってくれ」
地上から、まるでハンマー投げでもするように、
グリントガールが体ごと回転しつつキラーチューンをブーメランのようにして、
空にいるゲイルブレイドに向けて放り投げた。
と同時に、ゲイルブレイドに無線でとあるイメージが送信される。
それはゲイルブレイドがテイルハンマーで、
キラーチューンをサムライ型武神に向けて打ち返す絵だ。
砲弾を切断できる刀を持つとは言え、砲弾と違い、
超硬合金製の刃を持つキラーチューンを容易くは斬れないだろう。
もしも外れても(というかおそらくそうなるが)、
サムライ型武神が自分のアドバンテージとなる
俊敏さを殺すようなその武器を使おうとするとは考えにくい。
ならば、グリントガールが両手で扱うそれも、
“森の人”であれば片手で扱える手頃な鈍器や盾となるだろう。
無論キラーチューンをチェーンソーとして起動するには出力と規格の問題から不可能であるが、
はなから無いよりはマシである。

258 :リンネ ◇IgMoxdiK1Y:2015/10/24(土) 16:59:39.21 0
「さて、次は君だ。私のギャラは高いが今日は破格だ。
 どこが感じるか素直に教えてごらん?」
リンネ・グリントガールはシュヴァリアーの修理を開始した。
「痛かったら右手を上げてくれ。痛くなかったら右手を上げてくれ」
誤字ではなくて、要するに四の五の言わずに治療させろ、という意味である。
なぜならリンネは急いでいるからだ。
早く内藤と六角を正しい意味で楽にしてあげるために、
最前線で核の破壊をフォローしなくてはならない。
だからシュヴァリアーの治療も、最低限の機動力と攻撃力の回復にとどまるだろう。
「しかし私は妥協しない・・・ん?間違ったかな・・・?
 だが問題無い。私は天才だ」
ちなみに、ナノマシンは使っていない。

シュヴァリアーの修理をひとまず切り上げたリンネ・グリントガールは、
核へと続く道の、左右のビルの影に交互に移動しながら前線へと近づく。
サムライ型武神との戦闘領域へ入ったリンネ・グリントガールは、
最寄りのビルの影から彼らの様子をうかがうと、再び隠れた。
「よし、次は・・・石破天驚ストナーサンシャインだ」
『そんな装備はありません』
「無ければ、作る。それがエンジニアだ。
 あのドラゴニックキャノンに負けるわけにはいかない。
 なぜならば、私はBCインダストリー2代目代表取締役社長、リンネ=シーナだからだ」
そう言うやリンネ・グリントガールは、リペアツールを使って何やら左腕に細工を始めた。

【キラーチューンを滅びの軍勢に向けてシュウウウウウットゥ!超!エキサイティィィンッ!】
【愛をとりもどせ】

259 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/10/24(土) 17:00:42.07 0
「チッ、やっぱそう簡単にゃ行かせてくれねェか!」

高速の機動で機龍をまた一つ切り裂き、眼前の敵を見る

――500m
ゲイルブレイドにとっては静止状態からでも5秒で詰めることが出来る距離であり、本来ならばないも同然の距離
それが、酷く遠い

(テイルハンマーなら核も叩けるが・・・流石にサムライすり抜けるのは厳しいなァ)

故に――ロジーの突出も、さしたる問題ではないと判断
武神ならまだしも、空中で三次元機動を取れる機龍を包囲して身動きが取れないようにする・・・というのは、少々難しい
ましてや、この付近に配備されているのは武神隊だ――旧式の砲撃装備をかわせないようでは、『天才』などと呼ばれはしないだろう

だから、それを援護するようにフレイアと内藤が出てきたところで、一瞬思考が固まった

「今は仲良しごっこやヒーローごっこしてる状況じゃねえんだがなぁ・・・」
『仕方ないでしょう、中佐。それより現状どうするかが先決かと』

すでにフォローのために六角が遅滞作戦を開始している
ただ、機龍乗りたるアレックスにとって見れば、それはロジーのためというよりは内藤のためのものに見える

「――西と東は?」
『西方面隊がよくやってくれてますね。敵機龍の半数以上を引き付けているようです』
『東側は――大型武装の準備中との情報が』
「よし、それに合わせて仕掛けるぞ――思考加速、30秒よこせ」
『Jud――ご存分に.』

260 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/10/24(土) 17:01:06.33 0
「六角、2分で十分だ。パダウィ、早速で悪いが右をしとめろ。左は俺が狩る」
「いいかァ、そこの馬鹿3人!道を空けてやるから突っ込め、敵より速くだ!」
「数で劣ってンのに遅効なんてやってる場合じゃねェんだよ!」

――確かに、ここまでは進軍できている。ただし、消耗を省みない強引な進行で――だ
数と機体の質で劣っている以上、ゆっくりとした進軍ではそれこそ囲まれて潰される
そのあたりの判断が甘いのは、やはり戦術的な目が育っていないということかと一人結論付けつつ、全身の加速器を起動する

>「中佐、さっきはずいぶんと痛めつけてくれたじゃないか」
>「これはちょっとしたお礼だよ。なぁに、遠慮せずに受け取ってくれ」

「ハ、悪いな社長、丁寧なのは苦手でな!」
そう軽口を返しながら、急降下

「ゲイリー、――始めろ!」
『Jud!ロジカルリミッター、解除。フル・アクセラレーション――アクティブ!』
尾の端でキラーチェーンのスリングを引っ掛けながら、一気にサムライ型武神に迫る
――無論、本来ならば、達成できないはずの行為
それを実現するのは、一つの技術だ

そもそも、機龍の処理速度が武神に劣る最大の理由は、「人の脳が耐えられないから」である
感覚器そのものはむしろ機龍のほうが良質なものを積んでいることが多い
だが、機械と一体化し、機械の処理能力を使うことが出来る武神と違い、人の脳に外部的に情報を伝達することしか出来ない機龍では、脳への負荷が大きすぎる
故に、機龍の処理能力は武神のそれより意図的に落とされている――しかし
――もしも。その負荷に耐えられるだけの脳を持つ人間が、いるのならば
――もしも。人と意識を共にし、負荷の一部を肩代わりすることが出来るAIがいるのならば

その答えが、ゲイルブレイドであり、ゲイリーであり、――アレックスだ
30秒。それが、アレックスが武神の処理速度を得られる、ギリギリの時間だ
今のアレックスには、世界のすべてがゆっくりと動いて見える――故に、武神の専売特許である「見切り」も、たやすく行える

そうして引っ掛けたキラーチェーンと共に、まっすぐにサムライ型武神へと突撃を敢行
ギリギリの位置で機体を跳ね上げ、尾の動きでキラーチェーンを放つ
同時、閃く二線
連動して放たれた双子の斬撃が、キラーチェーンを弾き――破壊するに至らない

261 :GM ◆Zeo.W3miH/Qp :2015/10/24(土) 17:01:55.25 0
弾かれたキラーチェーンは、バダウィの「森の人」のほうへと弾かれる
そして、アレックスはさらに動く
使い捨てブースターに火を入れ、全身を振り回す
鋭角部から水蒸気の尾を引きながら、驚くほど小さくロール
身を捻り、真横から一閃
ただそれだけで、残心状態の侍が二つに分かたれ――尾の一撃に散らされる
片割れが慌てた動きで振り向き、構える――つまりは、後ろに無防備な姿をさらす
そしてサムライの意識が外れたということはつまり――『核』は、無防備

さらに――東の空から、光の「斬撃」が核へと飛び込んでくる
それを放ったのは、先の天使型に近しい、だがより攻撃的なフォルムを持つ純白の武神――総司令の機体
ドラゴニックカノンの一撃と同じく、その斬撃は光に阻まれる
だが――ここで、三方に分かれた部隊のうち、二つが合流する
東側の部隊も、やはり満身創痍。だが、総司令直々の指揮ということもあり、士気は非常に高い

――決めるなら、今しかないだろう

【隊長の本気、そして合流】
【絶好のチャンス到来】

262 :名無しになりきれ:2015/10/26(月) 19:36:00.24 0
            人
         ノ⌒ 丿
      _/   ::(  ∞〜 プーン
     /     :::::::\
     (     :::::::;;;;;;;)
     \_―― ̄ ̄::\
     ノ ̄       :::::::::)
    (   ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
      /  -=・‐.‐=・=-i、     
     彡,  ミ(_,人_)彡ミ  
 ∩,  / ヽ、,  `ー'  ノ        
 丶ニ|    '"''''''''"´ ノ
    ∪⌒∪" ̄ ̄∪

おう
元気か〜

>>254
ユリウスはお前や

>>257
シュヴァリアーの体を穴だらけのチーズにするつもりか?

ってお前チーズ嫌いやろ

263 :名無しになりきれ:2015/10/26(月) 19:36:57.68 0
ワイや
お前らの質問に答えたる

>>259
おう
今回は随分手抜きやなぁ

もうちょっと精進しいや


>>261
どのへんが隊長の本気なのか
もうちょっと説明が欲しいなぁ

264 :名無しになりきれ:2015/10/26(月) 23:51:02.54 0
>>263
            人
         ノ⌒ 丿
      _/   ::(  ∞〜 プーン
     /     :::::::\
     (     :::::::;;;;;;;)
     \_―― ̄ ̄::\
     ノ ̄       :::::::::)
    (   ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
      /  -=・‐.‐=・=-i、     
     彡,  ミ(_,人_)彡ミ  
 ∩,  / ヽ、,  `ー'  ノ        
 丶ニ|    '"''''''''"´ ノ
    ∪⌒∪" ̄ ̄∪

おうなんやお前?ワイの真似すんなやコラ?

265 :カイ ◇xMZSJ.LKvw:2015/10/30(金) 01:02:32.60 0
【セントエルモの非道(T)】


『兄弟というのは良いものです。愛でてよし、食べてよし』

《……ええ。兄弟姉妹というものは非常に興味深い存在です。イルカほどではありませんが》

『こらー!一人でお世話できないのにそんなの拾ってくるんじゃない!』

《アップル……貴女とリンネの間で、どのような取り決めが交わされているのかは知りませんが、
 シュヴァリアーの回収を優先してしまって良いのですか? ルールは大事です。
 ルールを曲げてしまっては、それは最早ルールではありません――
 ――それは最早、ただの曲ったモノです》

『ところで、さっき女の声が聞こえたわね。 一体誰なの?』

《……言わば、顔が見えない文通相手の"ご近所さん"でしょうか。
 通信係の犠牲が不要であるという点では、やや異なるのですが》

『待て、アップル。シュヴァリアーの体を穴だらけのチーズにするつもりか?
 それに、まずは“森の人”の支援が先だ』

『…――カイ機AI……あなたの搭乗者の症状には少し覚えがあります。
 ……搭乗者に彼の心臓の鼓動と寸分違わないタイミングで微弱な電気的刺激を送ってください
 ……合一の過剰化から来る意識の混濁であれば気付け程度の程度の効果がある事が、イザナ正統皇国の実験では判明していました』

《私は"シュヴァリアーのAI"ではありません。厳密には"カイのANRI"です、キキョウ。
 その呼称を今後も使い続ける事を拒否する訳ではありません。しかし、私には……》

『中佐、さっきはずいぶんと痛めつけてくれたじゃないか
 これはちょっとしたお礼だよ。なぁに、遠慮せずに受け取ってくれ』

《……いずれ貴女が舌を噛みそうに思えてならない》

『ハ、悪いな社長、丁寧なのは苦手でな!』

《シュヴァリアーには、搭乗者に内部から"電気的刺激"を与える為の機構が搭載されてないのです。
 ですから仮に、斯かる状況を想定して予め"この補給物資"を手配していたのだとすれば――――》


盾裏にギアアップされた電磁警棒を伸長させず逆手に持ち、騎士の胸を打つ。
一度目は電撃のボリュームを絞り、微弱ながらも確かに鼓動する心音に寄り添う様に。
二撃目は情け容赦の一切存在しない最大ボリュームで、日頃の不満を抉り込む様に殴り付けた。


《――――ふう。見事な慧眼でした、アレックス》


そして三度、傭兵の意志が再び戦場に帰って来た。

266 :カイ ◇xMZSJ.LKvw:2015/10/30(金) 01:03:02.60 0
【セントエルモの非道(U)】

「また、このパターンかっ! ―――アンリ、状況は」

《現在、アレックス、ロジスティクス、フレイア、マハティールが前線を支えています。
 やや離れた位置では、先程からリュウキとキキョウが単独で雑兵の分断と囮を》

「マハティール……誰だ? 九人兄弟の末っ子か?」

《SSIUのマハティール・バダウィ中尉、家族構成は不明です。
 アップルとリンネが、この場に私達を輸送しました。
 おそらく、何か思惑があっての事でしょう》

「了解だ……けど、フォワードとバックスが入れ替わっちまった事情が分からないな」

《貴方は、この状況をどう考えているのですか?》

「俺は――――みんなを信じてる、それだけだ」

《私とて、そう簡単に皆が討たれるとは思っていません。無傷でも済まないでしょうが。
 この戦いには決戦兵器も出ている……ここで後退して敵部隊の再展開を許せば無駄撃ちに終わります。
 もしそうなれば、独断専行を選んだ者達の騎士としての名誉は深く傷付く事でしょう。それは死よりも残酷な仕打ちだ》

「軍人だったら、その決戦兵器とやらで作り出した全軍突撃のチャンスを必ずモノにする義務がある。
 だけど……今の俺は傭兵だ。みんなが、それぞれの"戦う理由"を優先したって構いはしない。
 問題視すべきなのは、今回の報酬額が機体修理費で吹き飛びかけてるって現状の方だ」

《この期に及んで貴方は未だ、そのようなコトを……。
 金、金、金! 騎士として恥ずかしくないのですか!》

「だったら、傭兵稼業のついでに世界も守ってみせるさ。
 ―――あの"核"を放っておいて本当に世界が滅んじまったら、
 俺に報酬を支払ってくれる雇い主が、誰も居なくなっちまうんだからな」

267 :カイ ◇xMZSJ.LKvw:2015/10/30(金) 01:03:38.30 0
【セントエルモの非道(V)】

『さて、次は君だ。私のギャラは高いが今日は破格だ。 どこが感じるか素直に教えてごらん?』

《戻ったのですねアップル、リンネ。なるほど……私達を回収したのは機体修理の為でしたか》

「そういうコトだったら……実は、さっきから何故か全身に耐えがたい激痛を感じてたんだ。
 例えるなら、まるで焼けた鉄板の上を歩かされた後にスタンガンでも食らったみたいに」

『痛かったら右手を上げてくれ。痛くなかったら右手を上げてくれ』

「ドクター、痛みと物理的不具合で右手を上げるコトすら出来ない場合は、どうすればいい?」

《……リンネ、苦労を掛けます。先ずは、右半身から熱変形した可動装甲のリペアを。
 やや難度の高いオペレーションになりますが、不可能ならばパージでも構いません》

『しかし私は妥協しない・・・』

《カイ、貴方の覚える違和感には、相応の深い事情があるのです……不可抗力と言ってもいい》

「シーナ社長、悪いけどついでに脚部バランサーの調整も頼む……その事情ってのは何だ?」

《ええ。キキョウ曰く―――『電気ショック療法で意識が回復するのではないか』と》

『ん?間違ったかな・・・?』

「なん…だと?」

『だが問題無い。私は天才だ』

《私もリンネの見解を支持します。
 カイには栄光あるハイランダー騎士の血が流れているのです。
 その血が多少、うっかり体外にまで流出したところで問題は無いと言えるでしょう》

「……一体、お前らの血は何色なんだっ!?」

268 :カイ ◇xMZSJ.LKvw:2015/10/30(金) 01:04:05.91 0
【グライディング・グラディエイター(T)】

『六角、2分で十分だ。パダウィ、早速で悪いが右をしとめろ。左は俺が狩る』

「サウスウィンド中佐……いや、隊長! 俺にも"命令"してくれっ!
 一緒に来いって命令してくれるなら、覚悟が決められる。
 あんたの命令なら、何も怖くないんだ――』

『いいかァ、そこの馬鹿3人!道を空けてやるから突っ込め、敵より速くだ!』

「――なんだとっ!? "バカ三人"は余計だっ!?」

『数で劣ってンのに遅効なんてやってる場合じゃねェんだよ!』

《……!! これは好都合ですよ、カイ。今のアレックスの言葉、最後まで聞こえましたね?
 先に指示されていた陣形配置、即ち――『カイとフレイアは後方支援に回れ』――
 との命令は、これを以って完全に上書きされたと解釈できます》

「そうなのか? そういうコトでいいんだなっ!? ……フィールドを展開するぞ、アンリ!」

《しかし、機体をフィールドで覆えるだけのラグナ粒子量など、もう残されては――》

「――いや"それでいい"んだ。おそらく……"この量で足りる"」

ラグナ粒子の薄い被膜がライオットシールドの表面をコーティングする。
裏向きで地面へと投げ出したシールドに、シュヴァリアーが飛び乗った。

「摩擦をマイナスすればボード……いや、エアホッケーの円盤(パック)と同じ要領だ」

フィールドが操作する斥力に加えて、高熱の地表から立ち上る僅かな上昇気流さえも利用し――
――ライオットシールドは今、即席のグラヴィティ・リフレクション・ボードと化した。
片膝と片手を着いた姿勢でバランスと重心を確認、足裏を固定する。

《知識に無い競技ですが、概要は察しました。
 私はシュヴァリアーの出力調整に集中しましょう。
 カイ、姿勢制御は貴方だけが頼りです―――ブースト!》

「……ああ。任せておいてくれ、アンリ。
 その代わり、クッション・レールは使えないぜ?
 ―――さっき大佐が全部、吹き飛ばしちまったからな!」

シュヴァリアーは、物理機構スラスターを備えていない。
ラグナ・ジェットが全方位に対してバーニアに相当する推力を発揮する。
方向の異なる短時噴射を小刻みに繰り返し、白騎士は敵機の間を文字通りに滑り抜けた。

269 :カイ ◇xMZSJ.LKvw:2015/10/30(金) 01:04:39.37 0
【グライディング・グラディエイター(U)】

《進路、視界、共に問題ありません。再加速を!
 マハティールが双子の護衛機に向かっている様です。
 一機はアレックスが対応していますが、あの戦闘機動は……》

「……ああ。俺だったら、また流れ星を見る羽目になっちまってるトコだ」

《おそらく、先に倒された方が弟機ですね……兄機(あにき)より優れた弟機など存在しません》

「だったら、後は"核(マザー)"まで一直線って訳だ! アンリ、威力を落とさずに撃てる本数は」

《射撃精度に目を瞑れば六本、必中させるのであれば四本が限度です》

「上等だ……先ずは五番と六番を使う! ホーミング・モードで護衛機へ!」

機体背面のショート・スタビライザーが、歪んだジョイントを破砕しながら展開する。
異音を伴って強制開放されたスリットから、溢れ出した翠緑の淡光が空に零れた。

《了解。ブリュンヒルデ―――R-LINK、ダブル・コンタクト》

〓┣━【○】[VSH:Brünnhilde]─╂─[VARLCURIE-System]━┫〓
┏┛
┣━【●】[VST/01:Waltraute]─╂─[EAW-KS/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/02:Siegrune]─╂─[EAW-KS/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/03:Gerhilde]─╂─[EAW-SB/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/04:Grimgerde]─╂─[EAW-SB/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【○】[VST/05:Ortlinde]⇔[EAW-AD/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【○】[VST/06:Helmwige]⇔[EAW-AD/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/07:Schwertleite]─╂─[EAW-GSX Long Buster Sword Rifle]━┫
┗━【−】[VST/08:Rossweisse]━┫┣━[EADU-VGW High Mobility Flight Unit]━┫

《ターゲット・ロック! オルトリンデ、ヘルムヴィーゲ、共に反応良好です》

「―――聞こえるか、ゴリラ武神!
 そっちに"猫じゃらし"を二本、放り込む。
 ……連携してサムライタイプの片割れをやるぞ!」

機体後方へとパージされた二本の剣が、投げ出された宙空で燐光を増した。
二基それぞれが独立して回転、姿勢制御を行って白騎士の航跡を追従する。

「行けっ! "アサルトダガー"! こっちはゴリラ武神の援護射撃だ、牽制になりさえすればいい」

さらに加速した騎士が、白き弾丸の如く"森の人"を背後から追い抜く。
その場に置き去りにされたアサルトダガーは、銃口となる剣先を右手の九六式へと向けた。
目標と一定距離――"剣の間合い"の一歩外――を維持する空中機動で、全方位から散発的な射撃を繰り返す。

「核(ヤツ)には三番と四番を同時に撃ち込んでやる……"ソードブレイカー"セット!!」

二本一対のロング・スタビライザーが基底接続部を支点に180度の可動。
腰部左右から機体前面に突き出し伸長。二本のドライバーとなる。
展開したグリップを握り、騎士は物理トリガーに指を掛けた。

《……インサイト! 目標は固定された巨大構造体です。この至近距離なら――――》

「――――外しはしない! ……貫けえっ! "ソードブレイカー"!!」

剣峰に深いセレート構造を有した片刃の双剣による狙撃が光学障壁を一点突破し、黒核の装甲を貫通。
その軌跡を追って到達したソニック・ブームの衝撃は障壁を僅かに減衰させるに留まる。
同時に、侵徹したブレードが先端からのラグナ粒子砲零距離射撃を見舞った。

270 :カイ ◇xMZSJ.LKvw:2015/10/30(金) 01:05:13.12 0
【グライディング・グラディエイター(V)】

《ラグナエンジン、ダウン……目標は未だ健在、光学障壁も完全消滅には至っていません》

「ソードブレイカーが完全に入ったのに……急制動だアンリ、この位置は不味いぞ!」

《無理を言わないでください、カイ。今のシュヴァリアーは急に止まれません》

「まさか、ラグナ粒子を使い切ったのか! ぶつかるぞっ!?」

《―――"この量で足りる"と判断したのは貴方だ!》

最高速度で黒核へと直進する騎士には、進路変更の手段など残っていない。
衝突寸前でライオットシールドのテール側に重心移動、ノーズを跳ね上げる。

「うおおおおおっ! カットバック――」

光学障壁に乗り上げ垂直上昇した勢いに任せて縦回転を強行。
左手でシールドのサイドエッジを掴み、右腕で全身のバランスを取る。
前傾姿勢で重心を移動。天地が逆転し機体の真上に来たシールドの中心へ。
回転の進行に合わせてノーズ側へと重心を移行。下降しながらエッジを使ってターン。

「――ドロップターン!! からの……360度サイドスピン(サブロク)だあああっ!」

着地動作と並行し、肩をかぶせて上半身を捻り込む。180度のスピン。
重心移動した逆脚が軸となり、さらに180度シールドを回して停止した。

《くっ……何をやっているのです、カイ!》

「ここまで来て出合い頭の交通事故で死んでたまるかっ!?
 今はエアバッグも使えない状態なんだ、こうするしか……」

《……私は、そういう意味で問うたのではありません。
 ハイランダーの騎士が、このような見苦しい猫背で――》

「――"この姿勢を維持"するんだっ! アンリ!」

刹那、一条の烈光がシュヴァリアーの頭上を掠め過ぎ去り、黒核の障壁へと打ち込まれた。

「こっちが小型機じゃなかったら、今ので首から上が無くなってたな……やれやれだ」

《これほどの砲撃……いえ、斬撃を繰り出せる機体が? 飛来した方位は―――》


「―――ああ、東方面部隊の合流だ」

271 :名無しになりきれ:2015/10/31(土) 13:36:23.43 0
            人
         ノ⌒ 丿
      _/   ::(  ∞〜 プーン
     /     :::::::\
     (     :::::::;;;;;;;)
     \_―― ̄ ̄::\
     ノ ̄       :::::::::)
    (   ::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ノ
      /  -=・‐.‐=・=-i、     
     彡,  ミ(_,人_)彡ミ  
 ∩,  / ヽ、,  `ー'  ノ        
 丶ニ|    '"''''''''"´ ノ
    ∪⌒∪" ̄ ̄∪

おう

ワイの出番やな

>>270
偽者のくせに カイ ◇xMZSJ.LKvw はでしゃばんなや
おう

272 :名無しになりきれ:2015/10/31(土) 13:37:41.11 0
>>269
まず突っ込んどくで

〓┣━【○】[VSH:Br&uuml;nnhilde]─╂─[VARLCURIE-System]━┫〓
┏┛
┣━【●】[VST/01:Waltraute]─╂─[EAW-KS/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/02:Siegrune]─╂─[EAW-KS/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/03:Gerhilde]─╂─[EAW-SB/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/04:Grimgerde]─╂─[EAW-SB/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【○】[VST/05:Ortlinde]⇔[EAW-AD/R Blade Gun Bit]━┫
┣━【○】[VST/06:Helmwige]⇔[EAW-AD/L Blade Gun Bit]━┫
┣━【●】[VST/07:Schwertleite]─╂─[EAW-GSX Long Buster Sword Rifle]━┫
┗━【−】[VST/08:Rossweisse]━┫┣━[EADU-VGW High Mobility Flight Unit]━┫

↑ コレな
コレ考えるのにどれだけかかったん?
知性の低さが丸見えや

ちゃんと考えてから設定練ろな
おう

>>264

偽者はさっさと出てきや
なぁ

505 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.00 2017/10/04 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)